事業者向けの相談

民法改正 第1回《消滅時効に関する見直し》
いつもお世話になっています。
さて、本年6月に国会(衆議院、参議院)を通過し、公布された新しい民法ですが、最近はあまりそのことについて触れるニュースや研修会等も無く、少々不安に思い始めています。
また、新しい民法の施行時期や、変更されたポイントなども全然知り得ないので、知らない間に法律が変わっており、例えば契約書や重要事項などで間違った説明をしてしまった場合、後日紛争に巻き込まれたときには責任を負うのではないかと危惧しています。
そこで、このコーナーで民法改正に関する分かり易い情報を発信して頂けないかと相談した次第です。どうぞ宜しくお願い致します。
先ず、当該新民法とは、平成29年(2017年)5月28日の国会で成立した民法改正法案(民法の一部を改正する法律及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)について、同年6月2日に 官報(号外第116号)に掲載され、公布された法律を言います。それによれば、明治29年の制定から実質的な見直しが行われないまま120年もの時が経過し、現代の社会や経済情勢に即したものとすること並びに国民一般に分かりやすいものとすることが求められていたことを受け、多くの有識者の意見を聞きながら政府(法務省)が改正試案を策定し、委員会、国会審議を経て今回の改正に踏み切ったものであるということです。
さて、その公布された改正法は、民法のうち、「債権法」と呼ばれる章であり、改正内容は多岐に亘りますので、主に重要な部分として消滅時効、法定利率、保証、債権譲渡、定型約款、売主の瑕疵担保責任、そして賃貸借に関する見直しについて本項で解説致します。ただし、書面の都合上、各項目について連載形式での説明とさせて頂きますので、お付き合い願います。
第1回《消滅時効に関する見直し》
(1)債権の原則的な消滅時効の見直し
改正前(現行)の民法では、債権は、原則として、「権利を行使することができる時」から「10年間」行使しないときに消滅するとしています(現民法166条、167条1項・以下現法と表示する)。ここに、「権利を行使できることを知った時から5年」という時効期間を追加(改正民法166条1項1号・以下新法と表示する)し、時効の完成は、そのいずれか早い方の経過によると規定しました。

(2)例外的な消滅時効規定の見直し
現法では、職業別の債権(現法170条〜174条)、定期金債権(同168条)、定期給付債権(同169条)について例外的な消滅時効の規定がありました。また、不法行為による損害賠償請求権についても、被害者保護などの観点から時効の定めが別に規定されていました(同724条)。
具体的に例を挙げれば、職業別ではスナックなど飲食店のツケ払い金銭は1年、建築工事などの請負契約の支払は3年、商法上の商行為とされる債権は5年(商法522条:商法は民法の特別法とされ、商行為に関する規定は商法が優先される。商行為の定義については本項では省略します。)という具合です。
定期金債権とは、例えば年金債権のようにある期間(受給権利者が生存している期間)、定期的に、債権者(受給者)が債務者(機構)から一定額の金銭給付を受けることができる債権(基本権という)を言います。そして「基本権」である定期金債権から、定期的に毎回発生する個別の給付請求権を「支分権」と言い、定期給付債権はこの支分権を含みます。つまり、年金債権から派生する2ヶ月に一度の支給額を請求する権利が定期給付債権であり支分権です。そして、現法では定期債権の消滅時効が第1回の弁済期から20年、または最後の弁済期から10年間、その支払いが滞った場合に消滅時効が完成するとし、定期給付債権は権利を行使出来るときから5年間行使を怠ったときに請求権は消滅するとしていました。ご相談者の職種から、地代家賃、マンション管理費や修繕積立金などがこの定期給付債権に該当します。
更に、不法行為による損害賠償請求権は、現法で損害及び加害者を知った時から3年間行使をしないときは、時効によって消滅する、不法行為の時から20年を経過したときも同様とする、と規定されています。一方、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効は、「権利を行使することができる時から10年」という現法の原則が適用されていました。ただ、人の生命・身体に与えた損害に対する損害賠償請求権については、不法行為に基づく場合も、債務不履行に基づく場合も特別な規定はなく、いずれも原則通りの規定に基づいて取り扱われており、不法行為に基づいて請求をするか、債務不履行に基づいて請求するかで消滅時効に係る期間が異なることから、被害者、加害者にとっての有利不利が問題となっていました。

新法では、これらを出来る限りシンプルに統一し、特別な事柄については特例を設けて権利の保護を図りました。
↓改正内容
図1(民法)債権の種類改正の内容
原則 一般債権 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間
または権利を行使できる時から10年間
職業別の債権
(抜粋)
医師の診療報酬、薬剤師の調剤、助産費用
建築、リフォーム工事請負代金
弁護士、公証人等士業の報酬
生産者、小売業者等の商品代金
理髪店、クリーニング店等の料金
学校、塾等の授業料、教材費など
使用人給料(月または日払いのもの)
交通機関の運賃、旅館ホテルの宿泊費、飲食店の飲食代金など
定期的に生じる債権 定期給付債権
(地代家賃、年金、給料、利息など)
債権者が権利を行使できることを知った時から10年間または権利を行使できる時から20年間
定期金債権
(基本権)
不法行為による損害賠償請求権 人の生命・身体を害する不法行為 被害者などが損害及び加害者を知った時から5年間
または不法行為の時から20年間
上記以外の不法行為 被害者などが損害及び加害者を知った時から3年間
または不法行為の時から20年間
(3)時効の「中断」と「停止」の見直し
現法では、時効の成立を阻止する制度として、「中断」と「停止」という規定がありました。「中断」とは、民法で定める中断事由が時効の完成前に発生した場合に、時効期間をリセットしてスタートに戻すもので、「停止」とは、停止事由が発生した場合に、一定期間時効の進行をストップさせるものでした(その期間だけ時効完成が延びる)。
新法では、「中断」を「更新」、「停止」を「完成猶予」と改め、更新、完成猶予という事由ごとに規定を編成するのではなく、生じた事態の類型ごとに規定を編成し、わかりやすくしました。
例えば、現法147条1項1号において「請求」は時効の中断事由となっていましたが、同153条において、「催告」(裁判外での「請求」)は、6カ月以内に裁判上の請求等をしなければ時効中断の効力は生じないと定めるなど、中断はするが効力が生じない場合があると規定しており、一般的には難解でした。そこで、新法では、裁判上の請求等については、その手続きが終了するまでの間は、時効の完成が猶予され、権利が確定せずに終了した場合においても終了から6カ月間は時効の完成が猶予され、判決等で権利が確定した場合には、時効の更新がなされると規定されました。
その他、大きな変更点は次のとおりです。
※協議による時効の完成猶予の規定の新設
争いとなっている権利に対し、当事者双方が協議を行う旨の合意を書面でした場合には、合意があったときから1年間は時効の完成を猶予することができ、合意の更新も最長で5年まで可能。

(4)適用と経過措置
原則は、改正民法が施行された日(現在は未定)以降に発生した債権について適用がなされます。ただし、不法行為に基づく人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権については、法律が施行される時点において消滅時効が完成していない場合には、新法が適用(時効完成期間が3年から5年に延長)されることに注意です。
2017.12.05
▲一覧に戻る
親亀こけたら子亀もこける??…賃貸人と転借人の法律関係
土地所有者Aと土地賃借人Bは、事業用定期借地契約を締結(公正証書による。借地権譲渡・転貸許諾特約付)し、AB間の借地権を登記。Bは借地上に自己名義の建物を建築し所有権登記を行った後、その建物をCに譲渡しようと考え、Cとの間に事業用定期転借地契約を締結(公正証書)して建物所有権をCに移転した(BC間の転借地権登記は未了)。
この場合、AB間の借地契約の終了及びAまたはBの事情変更など、不測の事態が考えられますが、転借地人Cの権利にどのような影響を及ぼすのか。また、BC間の転借地権設定の登記を行っていた場合はどうか。
宜しくご教示下さい。
ご質問の転借地人Cの権利とは、BC間における転借地権契約に基づき土地を使用収益出来る権利(建物をCに売買する段階で、Bの借地権を譲渡せず、新たにBC間でAB間の事業用定期借地契約に準じる転貸借契約を締結)及び所有権に基づく建物の使用収益及び処分の権利です。また、本件では、これらのCの権利が適法に取得されている前提で、土地所有者A、その賃借人B(BはCの転貸人)の事情変更とは如何なるものが考えられるのか。以下その内容毎にCの権利について解説致します。

1.Bが賃借権を第三者に譲渡した場合
BがAとの間に締結した事業用定期借地契約に基づく賃借権を第三者に譲渡した場合、当該第三者がA及びCとの関係をBから同一の条件で引き継ぐこととなりますので、Cの権利に影響しません。ただし、BがAに、CがBに対してそれぞれの賃料債務等の担保として敷金・保証金等を預託している場合は、賃借権譲渡の際にそれらの清算に関する取り決めを確認しておくことが必要です(賃借権譲渡に関し、敷金は当然に引き継がれないとする裁判所の考え方)。

2.Aが土地を第三者に譲渡した場合
Aが土地(底地)を第三者に譲渡した場合も、B借地権は登記を得ているので対抗出来、Cの転借地権も適法に成立しており且つC名義の建物登記も備わっているので問題なく対抗出来ます。従って、Cの転借地権を敢えて登記する必要は無いと考えます。

3.Bが破産した場合
民法旧621条本文は、「賃借人ガ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ賃貸借ニ期間ノ定アルトキト雖モ賃貸人又ハ破産管財人ハ第617条ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得」と規定しており、賃借人Bが破産宣告を受けたときには、賃貸人AはAB間の賃貸借契約の解約申入れをすることが出来、AB間の賃貸借契約が終了すれば、BC間の転貸借契約も消滅するとしていました。しかし、新破産法が制定されたとき(平成16年)に上記旧621条は削除され、新破産法にも賃借人の破産宣告に基づく賃貸人からの解約に関する規定を置かなかったことから、Bの破産によるAB間の賃貸借契約の解除は出来ないこととなりました。一方、Bが破産した場合に、破産管財人の側から、AB間の賃貸借契約を解除することについては、破産法上は可能です(破産法53条1項)。しかしながら、Bの借地権は破産財団の重要な財産ですので、特段の事情が無い限りBから契約解除をすることは考え難く、管財人が借地権を譲渡することが予想されますので、結果は設問1.と同様です。

4.Bの債務不履行(賃料滞納)によりAが借地契約を解除した場合
AB間の賃貸借契約がBの地代賃料滞納(債務不履行)を理由に解除されると、Cが有していた転借権をもって土地所有者Aに対抗することができなくなります。これは、転借権が賃借権の上に成立しているため、賃借権が消滅すれば、転借権もその基礎を失って消滅してしまうためです。つまり、"親亀こけたら子亀もこける"の論理はこの由です。
そこでしばしば問題となるのが、賃貸人(土地所有者)は適法な転借人から直接賃料を受ける権利を有するという民法613条1項の規定を前提とする主張です。すなわち、転借人CはBに対して債務不履行は無く、Bが地代の支払いを怠ったのであれば、Aから直接Cに賃料を請求すべき、という論法です。しかし、民法613条1項は、賃貸人は転貸人だけでなく転借人に対しても賃料の請求ができる、という意味以外はなく、賃貸人が必ず転借人に対して賃料を請求しなければならない、と規定しているわけではないのです。これは最高裁でも判示(昭和37年3月29日判決)されており、賃借人(転貸人)に賃料の不払があれば、転借人に督促することなく、賃借人(転貸人)に対して、相当期間を定めて未払家賃を催告し、催告期限内に賃借人(転貸人)からの支払がなされなければ、賃貸借契約を解除することができるということなのです。

5.Aに対する抵当権が実行された場合
土地所有者も事業として土地を利用している場合、土地を目的として担保設定し、融資を受けていることがあります。そして、その抵当権が債務不履行等の理由により実行され、競売に付されることもあります。この場合、本件ではAの抵当権設定登記とAB間の事業用定期借地契約に基づく賃借権設定登記の前後によってCの転借権が対抗出来るか否かが決まります。つまり、賃借権も転借権も、その登記または対抗要件を具備した時期が抵当権の登記に遅れるなら競落人に対抗できず、Bに対して明渡し請求がなされると、明渡し猶予期間(6ヶ月)満了と共に本件土地を明け渡さなければなりません。その場合、Cの転貸借(転借権)も存在の基礎を失うことは前述のとおりであり、C建物については収去して明け渡さなければならないこととなります。
2017.10.05
▲一覧に戻る
今更聞けない「耐震基準適合証明」…実は、既存住宅売買の強い味方!
大変お恥ずかしい話ですが、一般仲介業務を多く扱っている弊社の営業でも、住宅家屋証明による登録免許税の軽減対象住宅、所謂木造築20年、耐火25年以内の物件以外、軽減措置はありませんとお客に説明したり、住宅ローン控除も同様との認識でしかなかったりしています。本当は築年数の古い住宅でも耐震基準適合証明を取得すれば、それなりの優遇が受けられることをちゃんと理解しておらず、手続についても無知であるという現状です。
今更ながらですが、築年数が古い住宅の税制優遇措置について解説頂きたくお願いする次第です。
ご質問の「耐震基準適合証明」を利用した既存住宅の税制等優遇措置適用について解説します。
先ず、居住用既存建物の売買取得に関する税制(平成29年8月1日現在)を纏めると以下のとおりです。
1.住宅ローン減税(所得税、個人住民税)
2.住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置(贈与税)
3.不動産取得税に係る特例措置(不動産取得税)
4.認定長期優良住宅に関する特例措置(所得税、個人住民税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税)
5.認定低炭素住宅に関する特例措置(所得税、登録免許税)
6.買取り再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置(登録免許税、不動産取得税)

住宅の購入者にとって、新築住宅(築後1年以内で未入居のもの)か既存住宅(新築以外のもの)にするかは様々な要因によって決定されるので、単に「新築だから」という理由は、購入者アンケートなどでも一番の要因ではなくなってきています。しかしながら、住宅の取得に応じて付随する各種の税金は頭の痛いところであり、出来れば経費は抑えたいと思うのも当然ですが、新築であれば多くの税制優遇措置にあやかれるところ、既存住宅であるが故に優遇措置の適用外という制度の壁に直面し、計算機を叩いて最終的に有利な新築を選ぶ消費者も多いことは事実です。そこには、不動産仲介に携わるプロであっても、税制優遇の適用の可否について知識が乏しく、少しの工夫または必要な手続きを経ることによって新築と変わらない優遇措置が適用されることを見逃してしまっているという残念な状況も耳にするところです(見逃したことで消費者からクレームや損害賠償を求められることも)。

さて、本件では築年数の古い住宅の取得に関して、ということから、木造住宅では築20年を超え、耐火建築物にあっては築25年を超える住宅の取得に際して前述の税制優遇を受ける為には何が必要かを纏めます。
先ず、住宅の要件ですが、国は現在既存住宅の流通市場活性化を命題として住生活基本計画(全国計画・平成28年3月18日閣議決定)を公表していますが、そこには国民の住生活の質の向上が謳われており、どんな住宅でも良いとしているわけではなく、一定水準を求めています。従って、各種の優遇政策も住宅に最低限度の要件を課しています。
1.個人の居住用であって、床面積合計が50m2を以上であること
2.耐震性に関して、築後20年以内(耐火建築物は25年以内)であるか、建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関または住宅瑕疵担保責任保険法人が証明する耐震基準適合証明の交付を受けた住宅であることもしくは住宅性能評価住宅で耐震等級が1〜3であることまたは既存住宅売買瑕疵担保責任保険付保住宅であること
としており、地震災害の多い我が国の住宅の必要条件としての耐震性を重要視しています。

上記の要件が税制優遇適用には必須の共通条件ですので、既存住宅の仲介業務を行うプロの営業マンとしては、必ず押さえておかなければ顧客に思わぬ損害を与えてしまうことになりかねません。中でも、住宅性能評価を受けていない住宅や、瑕疵保証保険を付けていない住宅は流通シェアの相当数を占める(一般のユーザーが売主の場合、割合は高い)と考えますので、物件の媒介等を取得した際には、既存住宅のメリットを最大限活かす為にも、購入顧客に税制優遇をアピールすることが大切です。そこで、最も活用されている「住宅家屋(軽減)証明」について解説しておきます。

既存住宅の購入にあたり、築年数が古い住宅にあっては、住宅家屋証明書の交付申請に耐震性を証する書面の添付が必要です。現在の税制措置(平成30年3月31日まで適用)では、不動産取得税軽減措置について昭和57年1月1日以降の建築物であれば本則4%が3%の税率の適用と、新築時の課税標準額の控除が受けられますので住宅家屋証明は不要ですが、購入者にとって最も関心の高い「住宅ローン減税」の適用については、住宅家屋証明が必要です。つまり、その為には耐震基準適合証明か、住宅性能評価書または既存住宅瑕疵保証保険の付保を引き渡しの前に売主側で揃えておかなければ各種の減税措置の対象とはならないということです(耐震基準適合証明は引き渡し後買主が取得することでもローン減税の対象となるが、その場合は引き渡し前に仮申請が必要となることに注意)。
耐震基準適合証明書取得に限って言えば、木造一戸建ての場合であればまだしも、集合住宅(所謂分譲マンションなど)の場合は、建物一棟全体の耐震性能を調査することになるので、相当な期間と費用が必要であり、区分建物の1室だけを売買する売主または買主が個人で負担できるものではなく、管理組合での決議を経て耐震診断を行い、必要であれば改修工事を行ったうえでなければ交付されません。そのことも営業マンは理解した中で、販売するマンションンの状況を把握しておくことが大切です。
2017.09.05
▲一覧に戻る
やりたい放題の元付け業者?…媒介契約の本旨と不法行為
いつも拝見しております。
さて、この度弊社の購入客の困った問題について相談します。
5月の末にマンション購入にあたり、弊社顧客Aより買付証明書(満額)を売主側仲介業者Cへ提出しました。買付証明書を提出後、業者Cを通じ売主様の了承が得られたということで、契約締結の交渉を進めておりました。
ところが、6月に入り、別のお客Bが業者Cへマンションの購入相談に訪問したところ、Aの購入予定と同じマンションを、金額は当初の売出価格より高い金額で提示して紹介。Bは物件を気に入り同部屋の買付証明書をCへ提出したために契約締結の交渉がAと並行して進められております。
実は偶然にもAとBがお知り合いであったため、このことが発覚し、弊社のところにご相談に来られました。現在まだA、Bいずれも契約には至っていません。業者Cのこのような行為は許されるのでしょうか?何か法的に対処出来ないかと相談致しました。
ご相談の内容から、不動産の取引に関して宅建業者が介在する媒介における一般的な手続を経て現在に至ったものと推測し、回答致します。つまり、本物件は売主側(元付け)宅建業者Cが売主から当該マンションの売却に係る媒介契約を締結し、販売を開始したところ、貴社がそれを知り、購入希望顧客Aに紹介し、買付証明提出に至ったという前提です。
その上で、先ず、購入希望者Aについて、販売希望価格満額での購入申込を書面で行ったということですが、元付け業者がそのような購入希望者に対して媒介契約の目的である売買契約締結に向けた義務を果たさないことには相当の理由が必要となります。例を揚げるなら、Aには当該物件を購入する資力が欠如(年収や自己資金、ローン特約を希望する内容など)していると客観的に判断出来るとか、または反社会的勢力に属する疑いが在るなど、当該契約を遂行する上で売主と協議し、満額の申し込みではあるものの、それを受託出来ない理由が明らかであるというような場合は、当該申し込みを拒絶することも可能と思料します。
しかしながら、本件ではそのような理由は見当たらず、且つ別の購入希望者Bに対しては売主の販売希望価格以上の価格を提示し、売主の意思とは関係なくAの申し込みを排除しようとしたとすれば、元付け業者Cの行為は宅建業法31条(宅建業者の事務処理の原則)の規定に反すると共に、媒介契約の相手方(本件では売主)に対する業務処理の原則(購入希望者が現れた場合の対応=契約の成立に向けた努力義務及び業務処理状況報告義務等)にも反することになります。

一方、Bの立場からすれば、本来売主が希望する価格以上の金額を提示されたことにつき、業者Cの心中を推測(あくまでも推測の域は出ないが)するに、通常媒介契約によって売却依頼を受ける宅建業者は、依頼者(売主)に対し媒介価格の根拠を明示する義務を負い、誠実に売却活動を遂行することが求められているところ、例えば、故意に媒介価格を低廉に抑え、実際には媒介価格以上の金額で販売を行うとするなら、購入希望者が出現したときに媒介業者が自ら物件を買い取り売却することで、その利ザヤを稼ぐことや、中間業者を介在させて仲介報酬を二重に取得しようとする意図が考えられなくもありません。本件において斯様な状況であるか否かは不明ですが、少なくとも媒介価格を超える金額の提示には、仲介報酬が若干増す程度の理由で、売主の利益のために、というような理由は考えにくいと思料します。
従って、万一前述のような意図が取引で実現されるとしたなら、業者の売主に対する詐欺行為(民法96条及び刑法246条・詐欺罪)、信義則違反(宅建業法31条)、不法行為(民法709条)、債務不履行(民法415条)などが浮上すると共に、通常の媒介契約による報酬を超えて得た利益は不当利得(民法703条)と看做されることもあるでしょう(媒介によらず売買契約により転売した事案に対し不法行為による損害賠償を命じた福岡高裁判決:平成24年3月13日判タ1383号234頁、中間者を介在させて報酬を二重に得る宅建業者の行為を権利の乱用として報酬請求権を棄却した浦和地裁判決:昭和58年9月30日判タ520号166頁など参照)。

結論としては、業者間の慣習にも有る買付順位、価格交渉の有無、購入希望者の属性等を考慮して、一番手であるAに何の瑕疵も無いのであれば、元付け業者Cに対して当該契約の締結を申し入れるべきと思料します。また、当該物件がレインズ登録物件であれば、その登録内容を基に、所轄行政庁もしくは元付け業者の所属協会や指定流通機構に紛争の調停を申し出るなどして下さい。更に、本件におけるAの申し込みと売主の承諾(Aの買い付けに対する売却意思の表示)が立証できるのであれば、弁護士に相談し、不法行為に対する法的手段を講じることもご検討されればどうでしょう。
2017.08.05
▲一覧に戻る
買主、借主が宅建業者のときの重要事項説明が不要に!?
平成29年4月1日施行の宅建業法改正内容について
本年4月に施行された宅地建物取引業法の改正箇所が多くあると聞きました。業務に直接影響の大きなものも含まれますか?今回の改正の概要とポイントを教えて下さい。
昨年、第190回国会において、既存住宅の流通市場を活性化し、安全な取引環境の整備を図るため、建物状況調査(インスペクション)の活用等を内容とする宅地建物取引業法の一部を改正する法律が成立し、平成28年6月3日に公布されました。
本法律において、建物状況調査(インスペクション)関係の規定について公布の日から2年以内、それ以外の規定について公布の日から1年以内の政令において定める日から施行することとしていたため、施行期日を平成29年4月1日と定められた宅建業法の改正箇所は以下のとおりです。

1.宅地建物取引業法(以下法)の業務の適正化及び効率化を図る改正
1)法34条の2関係
媒介契約を締結した宅地建物取引業者(以下宅建業者)は、当該媒介契約の目的である宅地又は建物の売買又は交換の申し込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告する義務。

2)法35条関係
宅地又は建物の取得者又は借主が宅建業者である場合における重要事項説明については、重要事項を記載した書面の交付のみで足りるものとし、宅地建物取引士(以下取引士)による説明は要しない(ただし、同書面への取引士の記名押印は省略出来ない)。


2.営業保証金制度等の改善に関する改正
1)法27条及び64条の8関係
宅建業者と宅建業に係る取引をし、どの取引により生じた債権に関し、営業保証金又は弁済業務保証金について弁済を受ける権利を有する者から宅建業者を除外する。

2)法35条の2関係
供託所等に関する本条1項中、「宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者の相手方等」の次に「(宅地建物取引業者に該当する者を除く)」を加える。これにより供託所等に関する説明は、取引の相手方等の宅建業者に対しては不要となる。


3.取引士等に対する研修の充実、その他
1)法64条の3、75条の2関係及びその他所要の改正
宅地建物取引業保証協会は、宅建業者を社員とする一般社団法人に取引士等の研修の実施に要する費用を助成することが出来るものとし、当該一般社団法人に対し、取引士等が職務上必要な知識及び能力を習得するための体系的な研修実施の努力義務を定める。



解説
1.-1)
売買又は交換の申込みがあったときの報告については、購入申込書等の売買又は交換の意思が明確に示された文書による申込みがあったときは、依頼者に対して遅滞なく、その旨を報告することとする。なお、依頼者の希望条件を満たさない申込みの場合等であっても、その都度報告する必要がある。

1.-2)
法35条1項並びに2項では、これまで宅建業者が宅地又は建物の取得もしくは借りようとする者に該当する場合であっても、取引士をして所謂重要事項の説明及び書面交付は省略することは出来なかったが、当該取引の形態においては、取引士による重要事項の説明は不要となることを以下のとおり読み替え規定として本文が改正された。

法35条6項
次の表の第一欄に掲げる者が宅地建物取引業者である場合においては、同表の第二欄に掲げる規定の適用については、これらの規定中同表の第三欄に掲げる字句は、それぞれ同表の第四欄に掲げる字句とし、前二項の規定は、適用しない。
第一欄第二欄第三欄第四欄
宅地建物取引業者の相手方等第一項宅地建物取引士をして、少なくとも次に揚げる次項について、これらの事項少なくとも次に揚げる次項
交付して説明をさせなければ交付しなければ
第二項に規定する宅地又は建物の割賦販売の相手方第二項宅地建物取引士をして、前項各号に揚げる事項のほか、次にあげる事項について、これらの事項前項各号に揚げる事項のほか、次にあげる事項
交付して説明をさせなければ交付しなければ

法35条7項
宅地建物取引業者は、前項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名押印させなければならない。

2.-1)
これまでは所謂弁済業務の対象となる宅建業者の相手方に宅建業者も含まれていたが、今回の改正により宅建業者は営業保証金又は弁済業務保証金から弁済を受けることは出来ない。

2.-2)
従来供託所等に関する事項は、宅地又は建物を取得もしくは借りようとする者が宅建業者であっても説明対象となっていたが、2.-1)の改正により、説明する必要性が失われたことによる。

3.-1)
取引士及び宅建業者に従事する者に対する研修制度は宅地建物取引業保証協会(全日本不動産協会にあっては不動産保証協会をいう)が担っていたが、同一の会員を社員とする一般社団法人(全日本不動産協会及び宅地建物取引業協会)へ当該保証協会の弁済業務準備金から助成出来ることとし、宅建業に従事する者に対する知識及び能力を効果的且つ効率的に習得出来るよう、法令・金融その他多様な分野の体系的な研修を業界団体が実施する(全日本不動産協会にあってはステップアップ・トレーニング等)。

※なお、既存住宅の建物状況調査に関する改正については、平成30年4月1日の施行となったので、事業者の方々においては当該調査(所謂インスぺクション)の実施実務については、本年度中に習熟されるよう留意して下さい。
2017.05.06
▲一覧に戻る
買主との媒介契約は必要か!?…契約の成立と書面の交付
いつも大変お世話になります。業務に直結したQAは業務にとても役立ちます。ありがとうございます。
早速ですが、我々不動産業者が物件の売却を依頼された場合の媒介契約の重要性は研修会等で学んでおり、十分認識しております。一方で、買主との仲介において、媒介契約の締結と媒介契約書の必要性についてお聞きします。
大手などは、当然のように売買契約時点で買主から媒介契約書に署名をさせている場面をよく見ます。これはおかしいですよね?売買契約成立後に媒介契約締結もないだろう、と思います。そもそも買主との媒介契約は特殊な場合を除き、実務的ではないと思いますし、宅建業法を見ても指定流通機構への登録義務について、買主は登録出来ません。法的には必要だというなら、実務に則した納得できる解説をお願い致します。
宅建業法では、媒介契約に関し、次のとおり規定しています。
第三十四条の二  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

まず、本条の解釈として、宅地建物取引業者は宅地又は建物の売買や交換に関する依頼を受けたときは、媒介契約を締結しなければならない、とは規定されていないことが分かります。つまり、媒介(取引に宅建業者が介在すること)の契約(物件探索又は取引の相手方の探索を依頼する内容)を締結したときは書面の作成及び交付の義務(以下書面交付義務という)を負う、という規定であるということです。従って、媒介の契約を締結しない限り、書面交付の義務は負わないということも言えると解釈出来ます。

では、媒介の契約の成立という観点から見た場合はどうでしょう。
宅建業者が取り扱う仲介行為は、準委任契約に基づく事務の委任(業務の委託)とそれに基づく業務遂行と解釈されていますので、民法上委任の規定が準用されることはご存知と思います。委任契約は要式を必要としない(不要式)諾成契約(依頼者の委任の意思表示と受託者の受任=承諾の意思表示で成立する)ですから、不動産仲介における媒介の契約成立要件も同様で、例としては、貴社の店頭に不動産を売りたい客が現れたケースを想定し、貴社の側でその依頼を受けた(口頭で承諾した)場合、その時点で準委任契約は成立し、併せて宅建業法上の媒介の契約も成立していることになります。
※成立=法律関係などが出来上がること、締結=条約、協定などを結ぶこと。

他方、一般的に宅建業者は、媒介契約の成立後、媒介契約の締結という実務をこなしており、本条にいう「書面の交付=媒介契約書の取り交わし」を行っています。しかしながら、これはあくまで実務上の行為であり、媒介契約を締結すること自体は、前述のとおり法的に強制されているわけではありません。
※媒介活動の事実経過から、媒介契約書を取り交わしていないことは媒介契約の成立を妨げないとした事例(東京地裁・平成25年7月3日判決)及び、媒介契約書がないことを理由の一つとし、媒介報酬請求が棄却された事例(東京地裁・平成25年4月26日判決)など、宅建業者の報酬請求における立場は媒介契約の存在に言及されることから、やはり媒介契約締結に基づく書面の交付が重要であることは否めない。

その上で、本件ご質問ですが、宅建業法34条の2に規定される媒介契約においては、宅地又は建物の売主、買主における区別はされておらず、いずれの当事者にも適用されますので、購入希望者に対しても上述のとおり媒介契約を締結する場合は、書面交付義務を負うのは当然です。
また、貴殿のご指摘によれば、売買契約成立後に媒介契約締結は如何なものか?ということに言及すれば、前述のとおり、契約成立と実務的な契約締結を峻別すれば、売買契約成立(売買契約も諾成契約)後、売買契約締結時(時間的な劣後を問題とするのではなく)に、媒介契約を締結(媒介契約はすでに成立している)することは法的に問題になることはないと思料します。

なお、指定流通機構への登録については、指定流通機構側の仕組みに応じた登録が義務付けられているのであり、法34条の2第5項は「当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、」としていますので、宅建業者との媒介契約の相手方が、宅地又は建物の売主である場合の規定であることは明白です。従って、同様に相手方が購入の依頼主である場合には適用されないということです。
2017.04.05
▲一覧に戻る
「クーリングオフ…」事務所以外の場所の定義とは!?
不動産取引でクーリングオフが適用される場合についての質問です。
先日、お客様(土地の買主)と弊社所有分譲地の売買契約を行いました。土地の上に建てる住宅は、あるハウスメーカーに直接依頼しますので、請負契約をお客様とハウスメーカーが同日に契約されました。
そこで話が出たのですが、弊社自らが売主となる土地の売買ですから、クーリングオフ対象取引であることは承知しています。問題は、弊社の事務所で売買契約を締結したわけではなく、お客様が建築を依頼したハウスメーカーの事務所で契約したことです。このメーカーさんも宅建業の免許業者であり、その事務所も契約締結が可能な正規の事務所(モデルハウス等ではありません)です。しかし、このハウスメーカーは、今回の土地の売買契約には絡んでおらず、純粋な建築請負契約のみが受託業務だったことから、そうであれば、宅建業法に規定された「クーリングオフの対象とならない事務所」には該当するのかしないのか、判断が付きませんでした。ご教示下さい。
先ず、宅建業法のクーリングオフに関する規定(事務所以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)を確認しておきましょう。

第37条の2 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。(第1項)

ここで問題となるのが、「当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所」の定義です。
同法では「事務所」を次の様に定義しています。
第3条 宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。(第1項)

つまり、宅建業法に言う事務所は、免許を受けた本店または支店の事務所(その他政令で定める場所を含む)が前提となっており、政令で定める場所とは、「継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」とし、法定の宅地建物取引士を設置しなければ契約等(申し込みを含む)を行えない場所として、
《宅地建物取引業法施行規則第6条の2第1項》
(法第十五条第一項 の国土交通省令で定める場所)
  • 一 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
  • 二 宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲(以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において「一団の宅地建物の分譲」という。)を案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所
  • 三 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所
  • 四 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあっては、これらの催しを実施する場所
と規定しています。

その上で、クーリングオフの説明が必要な場合とは、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、上記事務所等の要件を備えた場所以外の場所で買受けの申込みをした者が、事務所等以外の場所で契約を締結する場合に必要となります(ただし、当該宅地建物取引業者の相手方がその自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあっては、その相手方の自宅又は勤務する場所で契約を締結する場合を除く:法施行規則第16条の5第1項1号ニ)。また、売主となる宅地建物取引業者が、他の宅地建物取引業者に対し代理または媒介の依頼をした場合にあっては、当該代理または媒介を受けた他の宅地建物取引業者の事務所等以外の場所で契約を締結する場合も同様です(法施行規則16条の5第1項1号ハ)。

結論:
本件では、事務所等以外の場所で買受けの申込みをした買主と契約締結がなされた場所である当該ハウスメーカーの事務所が、宅建業法37条の2柱書の「自ら売主となる当該宅地建物取引業者の事務所等」に該当する場合もしくは、当該ハウスメーカーが、売主となる宅地建物取引業者(つまり貴社)から「代理または媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者」の場合であれば、本取引はクーリングオフの適用を免れますが、そのいずれにも該当しないことから、当該ハウスメーカーの事務所は、上記「事務所等」には該当せず、クーリングオフの適用は免れないものと思料します。
2017.02.06
▲一覧に戻る
成年後見と不動産の処分…重要事項説明や契約の実務は?
この度、売主が成年被後見人の不動産を処分する依頼を受けました。その売主の成年後見人は娘さんです。売主は自宅不動産(現在は住んでいない)と、収益不動産をお持ちで、そのいずれも売却する意向です。
ご本人(被後見人)は見た目は普通で、会話も出来ます。このような場合、一応ご本人と契約を行い、後見人にはそれを補佐して頂くような(同意)手続で売買を進めて行けばよいのでしょうか?
実際の取引に関して必要な手続や書類、実務の方法を教えて下さい。

後見人は、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって判断能力を欠く常況にある者を保護します。大体、常に自分で判断して法律行為をすることはできないという場合です。家庭裁判所は本人のために成年後見人を選任し、成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます。従って、成年後見人は代理人ですから、通常の場合の本人と同じ立場で契約行為を行うことになります。
成年後見人には、包括的な代理権が付与されているため、成年被後見人の不動産を処分することも可能です。なお、この処分とは、売買することの他、賃貸、担保権設定なども含まれます。ただし、居住用不動産と非居住用不動産とに分けて考える必要があります。

  1. 居住用(自宅)の処分

    居住用不動産の処分については、家庭裁判所の許可が必要となります(民法859条の3)。この場合で、後見監督人(家庭裁判所は、必要があるときは、申立て、または職権により、適当な人物を後見監督人に選任します・民法849条の2)が選任されているときは、後見監督人の同意を得る必要があります(民法864条)。
    ここでいう居住用不動産とは、被後見人が、生活の本拠として現に居住の用に供している、または居住の用に供する予定がある建物及び敷地をいいます。
    仮に被後見人が現在は入院中であるとしても、退院後に帰る予定の建物はこれに含まれますし、既に施設等に入所してしまい、帰宅の目処は無いにしてもそれまで住居としていた空き家も含まれます。家庭裁判所の許可が必要な処分行為としては、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定の他、贈与や建物の取り壊しなどが含まれると考えられています(純粋な管理行為は許可不要)。
    家庭裁判所の許可を得るためには、後見人が後見開始の審判をした家庭裁判所に申立てを行う必要があり、不動産の全部事項証明書や固定資産評価証明書の他、契約書案(売却先が未定でも必要)の写しや、査定書等を提出する必要があります。これは処分行為の前に行わなければならず、許可を得ないでした行為は無効ですので注意して下さい。

    ※停止条件(法定条件)の特約例
    本契約の売主は成年被後見人であり、本物件が売主の住居として使用されていたため、売買に際して〇〇家庭裁判所の許可を停止条件として契約し、平成〇年〇月〇日までに当該許可が得られなかった場合、本契約は白紙解除されるものとし、売主は受領済みの手付金を無利息にて直ちに買主に返還するものとします。その場合、売主及び買主は互いに損害賠償請求等は出来ません。

  2. 居住用以外の不動産の処分

    居住用以外の不動産は、後見人の判断で処分することが出来ます(後見監督人が選任されている場合はその同意が必要)。処分に際し、最も重要なことはその必要性且つ相当性の有無の判断です。
    必要性とは、被後見人にとって処分が必要であることをいいます。被後見人の生活費や医療費を捻出するための売却であれば必要性があるといえますが、親族等を援助する目的で不動産を処分することは、基本的には必要性がないと考えられています(例えば、親族に不動産を無償利用させるなどということは認められない可能性があるので注意が必要)。
    また、相当性とは、処分が被後見人にとって不利でないことをいいます。つまり、売却の価格や賃貸する場合の賃料なども、一般の取引慣行に照らして相当である必要があります。
    これらを適切に行うことが後見人に課せられた義務(身上配慮義務・民法858条)です。

  3. 契約時の方法と必要書類等

    成年後見人は本人の代理人ですから、全て本人が契約する場合と同じとお考え下さい。ただし、成年後見人の資格を証する書類は別途必要となります。

    • 1) 成年後見人の身分証明書(運転免許証など)
    • 2) 成年後見人の実印(契約書に押印)
      ※法的に契約書に実印は求められていませんが、重要な財産の処分ですから実印を用意します。
    • 3) 成年後見人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
      ※これも2) と同様ですが、印鑑が実印であることの証明として利用します。なお、登記時にも必要となりますが、決済まで3ヶ月以内であれば流用出来ます(ただし、金融機関や司法書士によっては別途請求されることがあります)。
    • 4) 成年後見人登記事項証明書(直近のもの)
      ※登記事項証明書とは、後見登記等ファイルに記録されていることを証明するもので、成年被後見人、成年後見人等の住所・氏名、成年後見人等の権限の範囲、内容などを証明するものです。ただし、被後見人の居住用不動産売却許可審判の謄本(家庭裁判所発行後6ヶ月以内のもの)で代用することも可能です。また、これも3) 同様に登記時にも必要となります。
       ※契約書への署名捺印方法
       売主
       成年被後見人住所、氏名を後見人が記名
       成年後見人
       成年後見人の住所、氏名を後見人が記名し、押印
2016.09.05
▲一覧に戻る
自然死、病死の場合の告知義務と心理的瑕疵による損害賠償
現在管理中の賃貸マンションの一室で、高齢の入居者が死後6日ほど経過した状態で親族が発見し、警察の現場検証と司法解剖によって病死と判明致しました(所謂孤独死でした)。現場は荒らされた様子も無く、女性だったので比較的整理整頓された室内には目立った損傷や汚れも無く、親族、連帯保証人さんらが荷物を片付け、契約を解約されて一件落着となりました。
しかし、当然ですが両隣の入居者からは気持ち悪がられ、お祓いして欲しいとか、部屋を替えて欲しいなどのお声が上がっています。また、次に募集を掛けるにしても、心理的瑕疵を言われるかもしれず、告知も必要かと思います。このような状況ですから、賃料を下げて募集することも考えていますが、その損害やお祓いの費用などは連帯保証人や相続人に請求できますか?また、両隣の方々の要望は受け入れなければなりませんか?出て行かれた場合の損害や、費用の負担を請求されたときは応じる必要があるのでしょうか?

不特定多数の人が入れ替わり、継続的に使用収益される賃貸不動産については、人の死(場合によってはペットなど動物の死も対象となる)に直面した部屋に対するその後の処理及び対応はとても大変です。
又、自殺など事件や凄惨な事故においては格別、病死や自然死など、生き物全てに訪れるはずの摂理にさえも、人によっては嫌悪感や恐怖感を覚え、又その感覚もまちまちですので厄介な問題となっています。

先ずはご相談内容を整理して、本件(賃貸借)に関する対応と事後の処理について、これまでの裁判例などを参考にしながら不動産業者(管理者及び仲介者含む)や家主としての告知義務の基準を考えてみましょう。

  • 1.事件性の有無による対応
    告知義務は、反面的には「借りようとする者が知っておくべき情報」が対象ということになります。一般常識的に、入居する建物において過去に「人の死」があったことは、心理的に嫌悪される事情でしょう。
    人の死について、不動産賃貸借契約における不告知(告知義務違反)を問われた裁判例は多数ありますが、特段の事情を考慮された判例を除き、自殺や殺人事件、火災事故などで概ね23年を経過するまではほぼ告知義務が肯定されており、最低経過年数としての裁判所の考え方を抑えておきましょう。
    一方で、3年以上経過すれば全く告知する必要が無くなるのではないことにも注意が必要です。ポイントは、「借りようとする者が知っておくべき」状況に現段階で在るか、無いかを判断することです。つまり、死亡時の状況や事件の重大さが地域の記憶として未だ鮮明に残っている、事故後に入居された第一次入居者以外入れ替わっていないなどの場合は、次に入居する者にとって知っておくべき情報であると言える(後に聞かされたときに強い嫌悪感を抱くと想像出来る)からです。

    他方、自然死や病死など、事件性が無い死に対する裁判所の考え方は、原則的に告知義務を否定する傾向にあります(東京地裁平成18年12月6日判決・木造2階建てアパートの一室で自然死があり、半年以上経過した段階で次の賃借人に告知を行わなかった事案で告知義務は無いとした)。
  • 2.死亡時の状況と発見時の状態による対応
    次に、不慮の事故や自然死(病死を含む)であっても、それも人々の記憶に残るような現場の状況があったか否かで、告知義務の有無を左右すると言えます。どの程度の状況なら、という基準を定めることは出来ませんが、例えば隣家の火災によって大量の煙を吸い込んだことによる窒息死だとか、ベランダから足を踏み外した転落死など、不慮の事故であってもニュース報道されたり、暫く近隣の話題に上ったりするような状況は勿論、発見まで相当日数が経過したため、遺体が腐乱していたとか、大量の吐血によって汚損の状態が極端にひどかったというものも一定期間の告知義務を肯定される要因となるでしょう。

一方、このような物件を次の入居者に斡旋する場合は、多かれ少なかれ何らかの影響は否めません。実務上は、賃料の減額や大規模なリフォーム、一定期間の募集停止など、家主にとっては経済的損失も馬鹿に出来ないものとして、はばかられながらも自殺や事件を起こした相手方の相続人、保証人などに対する損害賠償を請求したい気持ちは理解出来ます。
これについては、不動産価値の減少=損害の発生・自殺や殺人=不法行為の論理から損害賠償を肯定した判例が多く、一定基準(ライプニッツ係数=逸失利益計算方式)も採用されるに至っています。因みに、賃貸物件内で自殺した無断転借人が物件に与えた損害を賃借人及び連帯保証人に賠償を命じた東京地裁判決がありますので参考にして下さい。
平成22年9月2日判決では、原状回復費用と逸失利益が認められており、逸失利益においてはライプニッツ係数を考慮しながら、1年目は賃料の全額、2年目、3年目は賃料の半額が損害(以下参照)と認められました。

  • 1.原状回復費用相当額金944,475円
  • 2.逸失利益金2,778,752円
  • 1年目:126,000(月額賃料額)×12月×0.95234(ライプニッツ係数)
    =¥1,440,028
  • 2年目:63,000(月額賃料額の半額)×12月×0.9070(ライプニッツ係数)
    =¥685,692
  • 3年目:63,000(月額賃料額の半額)×12月×0.8638(ライプニッツ係数)
    =¥653,032
2015.12.05
▲一覧に戻る
建物賃貸借契約書に印紙は絶対不要なのか!?
高知で主に賃貸仲介、管理をしています。先日、お客から「敷金の預り証に印紙が貼られていない!」とクレームがありました。弊社管理物件で、契約上は弊社がオーナーの代理人として貸主です。敷金は退去時に無利息全額返金の預り金であり、契約書とは別に預り証を発行しています。
建物賃貸借契約書は非課税文書と認識していますので、その契約から発生する預り金であるので印紙は不要と思っていました。今後も同様の事案は頻繁に出てきますので、一度すっきり整理をしておきたく、質問しました。宜しくお願いします。
  1. 建物賃貸借契約書は全て非課税文書ですか?
  2. 個人家主の発行する金銭領収書や預り書は非課税文書ですか?
  3. 敷金・保証金等全額返金する預り金の受取書は非課税ですか?
  4. 手数料支払いに関する約定書は非課税ですか?
ご質問の冒頭、当該敷金の預り証には印紙の貼付が必要です。金額が記載されておりませんので実額は不明ですが、例えば敷金が10万円であるとした場合、その預り証は印紙税額一覧表(印紙税法別表1課税物件表)の17号2の文書(売上金以外の金銭受取書)に該当するので、200円の印紙税が課税されます(平成27年1月現在)。
又、建物賃貸借契約書は不課税文書です。非課税文書ではありませんので正しく理解して下さい。
しかし、その書面に当該敷金の預りについて、敷金の受領の旨が具体的に記載されている場合には、第17号2の文書(金銭の受取書)に該当する場合があります。具体例を以下に記載しますので、ご参考下さい。
例1.『本契約から生ずる賃借人の債務の担保として、賃借人は敷金10万円を賃貸人に差し入れなければならない。なお、この敷金は本契約終了時に賃借人の債務と相殺し、残額を返金するものとします。』
⇒このような約定は、敷金の性格を当事者で取決めたものに過ぎず、金銭の受取書とは異なりますので課税事項には該当しません。

例2.『本契約から生ずる賃借人の債務の担保として、賃借人は敷金10万円を賃貸人に差し入れ、賃貸人は受領した。なお、この敷金は本契約終了時に賃借人の債務と相殺し、残額を返金するものとし、賃借人は敷金返金と引換えに本書を賃貸人に引渡すものとします。』
⇒この文面は、当該賃貸借契約書に敷金の受取を証する書面(金銭の受取書=17号2文書)としての課税事項が記載されています。従って、200円の印紙税が課税されます。

ご質問1.建物賃貸借契約書は全て非課税文書ですか?
前述のとおり、建物賃貸借契約書は不課税文書です。これは契約対象の物件が居住用でも事業用建物であっても同様です。ただし、例2.のように、賃貸借契約書面に課税物件表(例えば17号1売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書、2金銭又は有価証券の受取書で1に掲げる受取書以外のもの)に揚げられている文書によって証される事項(課税事項)が記載されているものは、その該当文書と看做されます。

ご質問2.個人家主の発行する金銭領収書や預り書は非課税文書ですか?
印紙税法の課税対象は課税物件(印紙税法別表1)に指定された文書です。従って個人法人の別で課税、非課税が規定されているのではありません。つまり、課税物件以外の文書は非課税(非課税物件・印紙税法第5条もしくは不課税文書)です。
一般的に、個人間の取引においては印紙税が課税されないという間違った認識は、個人間取引に供される文書全体に及ぶと思いがちですが、文書の性格が課税物件か非課税物件かで判断しなければなりません。
例えば、冒頭の敷金預り証においても、個人家主が業として貸家を提供する者であれば、家主個人名で発行したとしても課税文書とされます。

ご質問3.敷金・保証金等全額返金する預り金の受取書は非課税ですか?
それらは原則課税文書として扱われます。
賃貸借終了の際、賃借人に債務不履行のあるときは当然にその弁済に充当された残額を、債務不履行がなければ全額を返還するという敷金・保証金の法律上の性質は、停止条件付返還債務を伴う金銭所有権の移転であると解されています。この敷金・保証金の預りは、第17号2の文書(売上代金以外の金銭の受取書)に該当することになります(基通別表第一第14号文書の3)。

ご質問4.手数料支払いに関する約定書は非課税ですか?
不動産実務の現場で、不動産の売買仲介に関して取り交わす、もしくは差し入れさせる念書のような文書で、単に仲介手数料の金額を明示し、支払期日を定めた書面をよく見かけます。当該文書は、仲介者に対する手数料支払い意思の確認的な意味で作成し、課税物件表の課税物件欄に掲げる文書(不動産譲渡契約書・第1号)により証されるべき事項の記載が無く、当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書でもないというならば、不課税文書と言えます(印紙税基本通達第2条、第3条)。
2015.07.06
▲一覧に戻る
一般個人が土地に建築条件を付すことの可否…まるで業者の売り方?
奈良県で不動産仲介をしているものですが、この度、約100坪ほどの宅地の所有者からこの土地の半分の売却依頼を受けましたが、その所有者が、残りの約50坪に自宅を建築し、居住する予定です。
その際に、売却予定部分の土地の価格が交渉によって安くさせられた場合を想定して、当社の紹介する工務店で買主が住宅を建築しなければならないとする条件を付けて売却したいと仰っています。つまり、建物の請負金額でその減額分を補うような考えです。
そこで、土地は地主個人が販売し、建物は買主にて建築確認を取得するとして工務店と請負契約をさせる予定です。
このような仲介土地に建築条件を付けて販売して良いものでしょうか?又、この様な販売形態は宅建業法的にいかがなものでしょうか?
先ず、本件内容には問題点が混在していますので、整理しながら回答します。
1) 一般個人が売主となる土地に建築条件を付けることは可能か
建築条件付の土地売買が問題とされたのは、「事業者」である宅地建物取引業者が、その土地の売主として、建築条件を付けて販売する行為が、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律=以下「独禁法」という)第19条で禁止されている「不公正な取引方法」(「抱き合わせ販売」)に該当するおそれがあるとされていたからです(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)。
従って、事業者でない個人が自己の土地に建築条件を付すことについては、独禁法の適用はなく、又「抱き合わせ販売」を行うことが、社会通念上も許されない「無効」な行為であるともいえず、当該販売方法は可能であると思料します。
2) 仲介する貴殿に宅建業法上の問題が生じるか
独禁法の考え方は、建築条件付き販売そのものが直ちに問題となるとはしておらず、諸般の事情を考慮して公正な競争を阻害するおそれがあるかどうかで判断するというのであるから、一般個人の建築条件付き宅地販売(抱き合わせ販売)が上記阻害要因に当たるとは考えられず、当該販売方法をもって仲介する貴殿に、宅建業法31条の業務処理の原則に反する行為として問題となることはないと思料します。
3) 建築条件について留意すべき事項
あくまで、建築条件は買主の自由な選択権を制限することは出来ず、巷に存在する事業者の売り建て方式的土地建物分譲や、買主の権利を不当に制限する条件を付すなどをした場合は、公序良俗に反し無効となるおそれがあるので留意して下さい。
4) 売主土地所有者に対する周知
当該建築条件付き宅地販売における建築条件の意味を十分に理解させることは必須です。例えば、建築条件が停止条件か解除条件かによる違い、指定工務店との関係、建築請負契約締結までの期間の定め、建物価格への利益転嫁の禁止など、事業者が取り扱う当該販売方法と同様に注意すべき事項を説明しておくことが肝要です。
5) 媒介業者の注意点
個人売主が売却する不動産はあくまでも土地のみであるから、貴殿の受ける報酬は当然に土地に対する手数料であることは当然です。又、報酬請求の時期は建築請負契約締結(条件成就)以降であることも注意が必要です。
なお、本件ご相談の前提ではありませんが、事業者の手法とは違い、建築確認を売主名義で取得すること(売り建て形態)は宅建業法に抵触し出来ません。従って、土地建物総額に対する報酬請求は建物部分に関して無効となります。
又、本物件販売に関する広告表示は、事業者のそれと何ら変わりはなく、建築条件についての表示を省略してはなりません。勿論、建築プラン詳細を参考例として表示する等の広告は可能です。
以上のことを念頭に、貴殿は建物の仲介という立場にはなく、あくまで土地の売買の媒介に限定されます(宅建業法36条)ので、それでは割が合わないというなら、一旦事業者が本件土地を取得し建売住宅として販売すべきです。
2015.06.05
▲一覧に戻る
心理的瑕疵の告知期間は?…明確な基準が欲しい業者の苦悩
土地付中古住宅を購入し、自らは居住せずに賃貸物件として活用しようと思っています。この度、お手頃な物件が見つかったので購入を決意したところ、その敷地内の樹木で所有者の家族のお一人が首を吊って自殺していることを告知されました。私自身は、住むつもりもないため、気にしていませんが、これからこの物件を賃貸に出す際に当然事件のことを告知する必要があると思います。しかし、この告知義務はいつまで続くものでしょうか?永遠に告げなければならないなら、賃料水準も低く抑えなければなりませんし、投資効率は上がりませんから、購入を考え直さなければなりません。明確な期間をお示しください。
結論から申しあげますと、殺人や自殺などの事件事故による事実の告知について、事件発生後どの程度の期間を置けば告知の必要が無い、というような明確な基準は無いと言わざるを得ません。
そもそも、不動産の売主や貸主、仲介不動産業者等がそのことを気になさる理由が、不動産の瑕疵(心理的な要因)と判断される事案に関し、「知り得た事実の不告知」として、何らかのペナルティを科せられることを恐れるからですが、その事案(事件や事故)が瑕疵に当たるかどうかの判断も付きにくいという事情が伺えます。従って、まずは告知義務の有無と期間という問題よりも、不動産の瑕疵に当たるのか否かという問題を整理しておくことが有益と思料します。

このような事案に関しては、多くの裁判例が集積されており、概ね以下のとおり裁判所の判断が確立しています。

建物やその敷地に瑕疵があるか否かの判断に、心理的要因も含むとした判例の基準となったのは、昭和37年6月21日大阪高裁が、「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであって、右目的物が家屋である場合、家屋として通常有すべき『住み心地の良さ』を欠くときもまた、家屋の有体的欠陥の一種としての瑕疵と解するに妨げない。」として、心理的欠陥が瑕疵に該当することについて肯定して以来と言われ、心理的瑕疵の該当基準として、「建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的な事情に属しない事由をもって瑕疵といいうるためには、単に買主において右事由の存する家屋の居住を好まぬというだけでは足らず、さらに進んで、それが、通常一般人において右事由があれば『住み心地のよさ』を欠くと感ずることに合理性があると判断される程度にいたつたものであることを必要とする。」と判示してから以降、多くの裁判例が本判示を引用しています。

しかしながら、一般人としての個別的な感覚とは別に、建物や土地の瑕疵をいうのは当然その対象物件であり、その周辺や近隣における同様の嫌悪事情は該当物件の瑕疵とはなりません。よく、分譲マンションの共用部分での事件事故についての瑕疵が取り沙汰されますが、区分所有の室内及び共用部でもその部屋のベランダなど一体として利用する部分以外について、対象物件の瑕疵を論ずること事態、無意味です。
以上を参考に、不動産物件の瑕疵の存否を論じて下さい。

そのうえで、本問に対する検討を行った場合、建物内での自殺ではないものの、事業の用に供する貸家と一体となる敷地内での事件であることから、契約の相手方に対する当該事件の告知義務は生ずるという認識は正しいと言えます。
又、当該事件は戸建て敷地内の樹木での首吊り自殺という特異なケースであり、近隣地域においてもそれなりに印象に残っていることが予想されます。
このような場合、一般的にこれぐらいの期間を経過すれば告知義務を免れるという判断は危険です。なぜなら、本件のような心理的な瑕疵を争った判例でも、事件の特異性、近隣の記憶の風化、地域住民の流動性(例:都会は忘れやすいが、地方村落では長期間に亘り記憶に残る)、当該事件の痕跡の撤去の有無などによって、裁判所の判断も分かれるからです。
又、当該物件の借主となる人物には感覚的に個人差もありますので、それらも考慮して判断すべきと考えます。

そこで具体的なアドバイスとしては、まず購入者(貸主)において、事件の痕跡(該当樹木等)を撤去し、いつまでも残像が残らないように庭の整備をするなど、事件当時の形状を変更することが良策と思料します。そのうえで、上記を総合的に判断して告知の要否を貸主自身で判断するしかないでしょう。
あえて期間をと云われるなら、賃貸借契約の対象物件に鑑み、このアドバイスに従うという前提で、最初の賃借人には告知し、その賃貸期間にトラブル等の発生がなければ、その次からは告知を為さなかったとしても義務違反に問われる可能性は過去の判例等からしても低いと考えます。
2015.03.05
▲一覧に戻る
もうひとつの瑕疵担保責任!…商法526条は免罪符か!?
宅建業者が売主の不動産を売買する場合、買主が宅建業者でなければたとえ法人であっても瑕疵担保責任は免責出来ないと思います。
しかし、買主が個人であっても、家主業を営んでおり、明らかに消費者契約法上の事業者であるというような場合、一般消費者とは違って不動産に関する知識も豊富であり、宅建業者と同等の経験も持っているのに、売主は瑕疵担保責任期間を2年以上とする特約や民法の、発見してから1年以内という特約より買主に不利な特約は許されない、というのは理不尽と思いませんか?相手方が建設業などであればなおさらです。一般消費者であれば仕方ないですが、売主に厳しすぎる法律を何とかしてほしいと思います。
売主が宅建業者の土地建物を売買する場合、宅建業法40条1項によって、売主の瑕疵担保責任に関する特約で、責任期間を2年以上とする他は、民法570条・566条の規定に比して買主に不利な特約は無効となります。よって、売主は民法の規定に基づく瑕疵担保責任を負うこととなり、引渡し後10年間(判例によって一般債権の消滅時効と同様に請求権が時効に掛るとしている)程度は常に物件の瑕疵に怯えて過ごさねばなりません。
ただし、当該買主が宅建業者である場合、宅建業法78条において本法の適用除外規定が置かれ、同40条は宅建業者間の取引には適用されず、売主の責任を免除することや、2年より短い期間を特約することも可能です。
一方で、買主が消費者契約法2条2項上の事業者である場合、消費者契約法の適用は受けませんが、宅建業法はそれとは関係なく、買主に不利な特約をすることは出来ません。

以上は、宅建業者であれば概ね理解して業務に運用されていることと思いますが、法理の基本的なところを理解されている事業者は案外少ないのかも知れません。
そこで、民法570条・566条と宅建業法40条を読み解いてみます。
民法570条
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
566条
1.売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2.前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3.前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
宅建業法40条
1.宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第570条において準用する同法第566条第3項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2.前項の規定に反する特約は、無効とする。

先ず、民法では、売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合、それがために契約の目的が達せられないときは、契約解除又は損害賠償の請求が出来、それらの請求は買主が瑕疵を発見してから一年以内にしなければならない、と規定しています。更に民法の規定は任意規定と解されていますので、そもそも瑕疵担保責任を負わないと特約することも出来ます。
そして宅建業法は、業者売主の場合の特約で、民法の規定より買主に不利となるものは無効であるとするのですから、当然瑕疵担保責任は負わないとする特約も無効ですが、契約解除又は損害賠償の請求をなすべき期間を二年以上と規定する特約なら無効としない、としています。つまり、これらはすべて、契約における特約を規定していることが分かります。
一方、契約の内容は自由に定めることが出来ますから、瑕疵担保責任に関する特約そのものをしないということも出来ることを理解しなければなりません。
宅建業者売主で、買主が宅建業者以外である場合、瑕疵担保責任は負わない特約をしたときは、その特約は無効であり、民法の規定が適用されます。特約そのものをしなかった場合、目的物に瑕疵が発見されたら当然民法の規定が適用されます。つまり、宅建業法40条は論じる根拠がないということです。

しかし、ここで取引の相手方が事業者(宅建業者に限らない)である場合、もう一つの瑕疵担保責任に関する法律の存在について、宅建業者間ではあまり論じられていないのではないでしょうか。
商法526条
(買主による目的物の検査及び通知)
商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2.前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3.前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。

法体系として、民法は一般法であり、商法は民法の特別法です。そして宅建業法は民法及び商法の特別法という位置ですから、特別法は一般法に優先する、の理論から、宅建業法の規定が適用されない契約には商法が適用されることになります。
例えば、宅建業者間における売買契約は、瑕疵担保責任について業法40条は適用されず、如何なる特約も有効と述べましたが、何らの特約をしなかった場合、商人間取引であることから商法の規定が適用され、買主が売買の目的物を遅滞なく検査し、引渡し後6ヶ月以内に瑕疵を発見し売主に通知しなければ、原則として売主に瑕疵の存在を理由として契約解除又は損害賠償の請求は出来なくなります。つまり、宅建業法40条が適用されないということと、瑕疵担保責任について何ら特約しないということは全く別の次元であり、宅建業者間取引=瑕疵担保責任免責ということではありませんので注意が必要です。

なお、商法526条を基に、ご質問の売主宅建業者に少しでも有利な契約内容にするなら、買主が事業者(商法上の商人)であるときに限り、瑕疵担保責任については何ら特約をせず、且つ商法526条を除外しなければ、売主の瑕疵担保責任期間を目的物の引渡しから6ヶ月と規定したのと同じことになります。
2014.12.05
▲一覧に戻る
所有権移転の時期!?第二弾…実はとても重要なのです!
不動産売買契約書に用意されている条文に、所有権移転の項目が有るものと無いものが在ります。又、特定しているものと曖昧なものも在ります。
宅建主任者の勉強をしたとき、「所有権移転・民法176条では当事者の意思表示のみによって効力が生じる」と習った記憶がありましたが、実務では、不動産は高額商品なので双方の意思の合致だけでは移転せず、互いの債務の履行(買主の代金支払いと売主の引渡し)があった時に移転すると教えて頂きました。それに対して何の疑問も持たず、重要事項説明でも契約でも、売主さん買主さんにはそのように説明していました。しかし最近は通販やネット販売、量販店の店頭見本による購入など、実際に商品が引渡されるまで相当の時間も掛るような取引が蔓延しています。そんな時代ですので、実際の売買契約書にはどう書けばよいのか、今更ですが所有権移転は何時するのか、という疑問にスッキリした回答をお願いしたくて質問させて頂きました。
日常の生活の中で、所有権は何時移転するのか?という問題に悩まされることはおそらく殆どの方が無いと思います。稀に悪徳商法などに遭遇し、契約解除やクーリングオフといった法律絡みの手続を余儀なくされた経験をお持ちの方などは、相手方とのやり取りの中で「所有権」の存在について議論をされたことはあるかも知れませんが。
勿論、我が国では所有権についての概念を法律が規定しており、その核をなすのが民法です。
(物権の設定及び移転)
第176条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

本条では物権を対象とする権利の設定又は移転を規定していますので、所有権のみの規定ではありません。当然所有権は民法上の物権に定義される権利ですから、包括されてはいますが、それ以外にも地上権、地役権、留置権、質権、抵当権などが規定されています。我が国の民法ではこれを物権法定主義といい、大きく分類して本権(モノの占有を法律上正当付ける権利)として所有権、制限物件、用益物権、担保物権があり、モノの事実上支配状態の保護としての占有権を定めています。つまり、物権の移転とは、実質的支配の移転ということになります。
中でも所有権は、物を全面的に支配(使用・収益・処分)する最も強い権利であり、ご相談者の言われるとおり、その移転に関する概念は日常の取引において非常に重要ですので明確に理解しておく必要があります。

我が国では、前述した通り、物権変動は当事者の意思表示"のみ"によって効力を生じるとしています。これを意思主義といいます(外形的な形式を伴わなければならないとする形式主義に対峙する)。ただし、当事者間で特約を付けることは可能ですので、不動産取引においても様々な特約が優先されているのが実務です。貴殿ご指摘の契約における特約(契約書に備わった条文)もその現れであり、当事者間において所有権移転の時期を「この時」と約定しているわけです。

【学説的考察】
1)売買契約と所有権移転の関係
不動産業者の皆さんは、お仕事上の契約において所有権移転というと何をイメージされるのでしょうか。おそらく登記の移転(売主から買主への所有権移転登記)ではないでしょうか。ここがそもそもの考え方の間違いの元ですので、一度整理をお願いします。
前述したように、所有権移転とは物権変動であり、実質的支配権が移転することを指します。一方、売買契約は法律上債権契約であって、物権とは区別されています(我が民法は各編に総則を置く法体系=バンデクテン体系)。登記はその物権変動の第三者対抗要件であり、所有権移転が何時起こったかを公示するための手続に過ぎません。従って、不動産売買において民法176条の規定を純粋に解釈すると以下の通りとなります。

物権行為・当事者の意思表示(所有権移転)⇒債権行為・売買契約、支払いと引渡し

2)物権行為の独自性否定説(判例・通説)から見た所有権移転
判例・通説では、この物権行為に独自性は無い(物権行為の独自性否定)としています。つまり、当事者の意思表示とは売買契約のことであり、その時点で所有権も移転するので所有権のみを移転させる物権行為は必要ではないということです(特約の在る場合はそれによる)。

3)物権行為の独自性肯定説(反対説)から見た所有権移転
売買契約のような債権契約について、所有権の移転という物権変動を発生させるには常に独自の物権行為を必要とする考えです。従って、民法176条の「意思表示」とは、物権的意思表示を指す。つまり、引渡しや代金支払い、登記など、物権変動を目的とする外形的行為がなされるときに表裏一体で存在する観念的な「意思の合致」を言うとしています。この考え方によると、特約等の例外規定(所有権移転時期の特定)は不要と言うことになり、実務上の一般取引通念における所有権移転時期を理論的に説明できるとしています。

【所有権移転時期の特定】
これまでの学説的考察を理解したうえで、一般取引においては判例・通説(物権行為の独自性否定)に従い契約条文を作成することとなります。
1)所有権移転時期を特定しない契約
この場合は、売買契約成立のときに所有権は移転します。又、危険負担は不動産の引渡しに関係なく債権者(買主)が負うこととなります(民法534条1項)が、特約で債務者の負担とすることは可能です(民法536条1項)。

2)所有権移転時期を引渡しの時と特定する契約
売買契約の成立と共に移転する所有権については引渡しの時と特定します。この場合は、所有権移転・引渡しと買主の代金支払いが同時履行の関係に立つよう特約します。又、危険負担は前記1)と同様です。

【まとめ】
不動産の売買契約は特定物の売買であり、内容は千差万別です。従って所有権移転時期についても当事者双方の合意によって様々です。ただ、大多数を占める一般的な取引においては、売主買主双方の利害の均衡を図り、判例通説の立場を採りながら抵当権等負担の除却・消除、果実の収取時期等に配慮して所有権移転時期を特約することが通念です。又、他人物売買の買主の所有権取得や農地法上の所有権移転については、それぞれ法定条件が存在しますので、単に代金支払いにより所有権が移転するという特約には注意を要します。
2014.06.05
▲一覧に戻る
瑕疵担保免責特約の有効性は?…土壌汚染対策法と民法による責任の違い
この度、分譲事業の用地として一般個人の所有する土地約5,000m2を購入致します。売主は、当該土地に関する一切の瑕疵担保責任の免責を条件として要望しております。この土地は古くは農耕地(田や畑)として利用されていたらしく、現在では市街化区域内で地目変更もされ、宅地として登記された後も未利用地で、現在は雑木林となっています。当該地を管轄する行政庁に確認したところ、土壌汚染対策法による指定区域ではなく、これまで近隣も含めて問題にはなっていません。
そのような土地ですが、弊社が購入したあと、土壌調査の結果、有害物質等が発見され、汚染が判明した場合、売主に対して汚染除却の請求は出来ますか?又売主がそれを拒否した場合、本契約を解除して且つ損害賠償の請求は出来ますか?
近年、有害物質による土壌汚染事例の判明件数の増加が著しく、土壌汚染による健康影響の懸念や対策の確立への社会的要請が強まっている状況を踏まえ、国民の安全と安心の確保を図るため、土壌汚染の状況の把握、土壌汚染による人の健康被害の防止に関する措置等の土壌汚染対策を実施することを内容とする「土壌汚染対策法」が、平成14年5月22日(水)に成立し、29日(水)公布されました。それ以降、土地取引の現場では、土壌汚染に対する関心の高まりとは反面、そもそも土壌汚染とはどのような状態を言うのか、又土壌汚染対策法自体が何を規定しているのかなどについての誤った認識も目立ってきています。

さて、本件では土壌汚染対策法(以下法という)による指定区域(法第6条1項「要措置区域」)ではないとしていますが、そもそも本法では指定区域に指定する順序として、都道府県知事による調査命令(使用が廃止された有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設)の跡地については法第3条により必ず出される(利用方法による例外あり)他、法第4条では3,000m2以上の土地の形質の変更の届出を義務化し、それを受けた都道府県知事が、当該土地に土壌汚染のおそれがあると認めるときに命令が出されます。又、それ以外の土地においても都道府県知事が土壌汚染による健康被害が生ずるおそれのある土地と認める場合も同様(法第5条)。それぞれ3条、4条、5条調査と呼びます)もしくは自主調査による申請(法第14条)があって、その調査報告の結果、当該土地に法施行令第1条列記の特定有害物質によって汚染されており、且つその汚染が環境省令基準に適合しないと認められる場合に指定がなされます。
従って、本件では土地の利用方法と造成工事の内容によっては、4条調査が命じられる可能性はあります。

以上、ここまでは土壌汚染対策法に基く調査と指定について述べましたが、当該地が自主調査や4条調査の結果、同法に規定する汚染が認められた場合、当該地の汚染土壌の搬出、処理においては法の定める方法により貴殿が対処しなければならず(所有者責任=状態責任)、土壌汚染対策法と民法の瑕疵担保責任や債務不履行の問題とは区別して考えなければなりません。

次に、本件ご質問に関する回答としては、貴殿が土地の土壌汚染についてご心配が拭えないのであれば、契約の条件として土壌汚染の事前調査をお勧めします。何故なら、民法の瑕疵担保責任は無過失責任であるところ、土壌が汚染されていたことを売主が知らなかったとしても通常は売主に瑕疵の修復を請求できますが、当事者の約定による担保責任の免責もまた有効な特約であるから、これを覆すには売主の悪意、有過失を貴殿が証明しなければならないからです。又、貴殿が土壌汚染について有り得るかも知れないと心配していた事実があったのに契約を締結したことは、貴殿に過失が有るとされる可能性も否定できません。土壌汚染に関する契約後のトラブルは近年増加しており、懸念を抱いたまま契約に臨むのは良策ではありません。

一方で、本件土地については、土壌が汚染されていることを疑うに足りる使用履歴や過去の事象が存在せず、当事者の約定により土地の瑕疵について売主の責任を免責とする特約がなされた契約であって、引渡し後において買主の調査の結果、土壌汚染対策法規定の有害物質に指定されていない汚染が発見され、その範囲が甚大であって汚染の除却が必要で、多大な費用を要することが判明した場合はどうでしょう。

この場合は、土壌汚染対策法の問題ではなく、広く地中埋設障害物や心理的要因による瑕疵なども対象とした、所謂物件の隠れた瑕疵が発見された場合に該当します。更に当事者双方に過失が無いとすれば、これはもう対象不動産には通常有すべき性状(性質と状態)を欠くものであるとし、契約の要素そのものに錯誤があったとして契約の無効を主張するしかありません。確かに、過去の裁判例では、瑕疵担保免責特約について特約の有効性を否定するものも存在しますが、それらの共通点は買主に予期せぬ過大な負担を課すことまで想定した契約内容ではないことが注視されており、例えば通常の取引価格より著しく廉価な価格設定がされているとか、瑕疵が買主の契約目的を著しく阻害するほどの負担ではないなどの場合、特約は有効とされるなど、当事者の取引の均衡を重要視していることに注意が必要です。従って、本件の場合に上記のごとき買主の主張が認められるかどうかは、発見された瑕疵の内容と、当事者間の事情が大いに考慮されると思料します。
2014.05.07
▲一覧に戻る
中古住宅の構造検査(インスぺクション)って?…中古住宅流通は活性化するのか!?
マイホーム取得を夢見る主婦です。
今年の4月以降、消費税が8%に上がり、新築注文住宅や新築建売が買いにくくなりそうで、中古住宅の選択も視野に物件探しをしています。最近のチラシやネット広告に、「インスぺクション済み」とか、「中古住宅の瑕疵保証(5年)」などのキャッチを目にします(主に大手不動産仲介物件)。これは、今の流れなんでしょうか?地元の不動産屋さんでは、このような検査や保証はお金が掛かるので出来ないのでしょうか?
国土交通省では、中古住宅・リフォームトータルプラン(平成24年3月)に基づいて、消費者が中古住宅の取引時点の物件の状態・品質を把握できるようにするため、第三者が客観的に住宅の検査・調査を行うインスペクションにつき、検査・調査を行う者の技術的能力の確保や検査・調査の項目・方法等のあり方について検討を行い、今般「既存住宅インスペクション・ガイドライン」をとりまとめました(平成25年6月17日)。中古住宅・リフォームトータルプランとは、同省が提唱する持続可能な社会資本整備政策の一環として、欧米諸国に比して極端に流通量の低い我が国の中古住宅(建築後、人の居住の用に供したことがある既存住宅)の流通活性化と、昭和56年6月を起点とする「新耐震基準」に合致しない既存住宅の安全性確保のための耐震診断及び同改修工事促進を主な目的に、建築・不動産等市場関係者の連携を基にした取り組みに対し補助、助成を行うなど、住生活基本法(平成18年6月8日法律第61号)の理念に則した施策です。

【インスぺクションとは】
現在民間事業者により実施されている「インスペクション」といわれるサービスは、中古住宅の売買時検査のみならず、新築入居時の検査やリフォーム実施時に行うものなど様々であるのに対し、目視等を中心として中古住宅の現況を把握するために行われる現況検査を基本とした簡易的検査を、中古住宅のインスぺクションと定義している。

そこで前述した「既存住宅インスぺクション・ガイドライン」においては、中古住宅売買時の利用を前提とした目視等を中心とする基礎的なインスペクションである既存住宅の現況検査について、検査方法やサービス提供に際しての留意事項等について指針を示す一方、ガイドラインに沿って建築・不動産関連団体等は、平成23年頃より「中古住宅流通活性化に関する協議会」を設立して、消費者並びに事業者が利用しやすいインスぺクションのパッケージを研究開発してきました。その内容は、各協議会等において若干の違いはありますが、基本的には1.建物構造上、主要な部位(基礎・土台・柱・屋根)の腐食や劣化(蟻害検査含む)2.雨水の侵入を防ぐ箇所(屋根・窓・開口部)の劣化や漏水等の有無3.住宅設備配管等の劣化などに対し、現場で足場等を組むことなく、歩行その他の通常の手段により移動できる範囲を基準に小屋裏や床下については、小屋裏点検口や床下点検口から目視可能な範囲で(戸建て住宅の場合)、又共同住宅においては、専有部分及び専用使用しているバルコニーから目視可能な範囲を、一定の研修等を履修した建築士等の資格者が非破壊調査により把握し、その調査・検査結果を依頼主に対し報告することとしています(その他耐震診断、住宅履歴等登録保存、中古住宅瑕疵保証保険などはオプションとして用意されています)。

このインスぺクション・パッケージはすでに幾つかの協議会又は団体が開発し、販売していますので、ご質問にあるような「大手不動産会社だけ」の特典ではなく、全ての不動産業者及び一般消費者が利用出来る商品となっています。ご安心ください。

【インスぺクションは中古市場活性の起爆剤となるか】
このように、中古既存住宅を購入しようとする消費者にとっては安心感を得るインスぺクションではあるが、住宅性能評価制度のような性能保証とは違って、所謂"粗さがし"的に映ることもあり、検査主体が売主となる取引にあっては積極的に行わないこと、又買主にあっては売主や売主側仲介会社の協力が得られにくいことなどの懸念が報告されています。これらの懸案事項に対処するためには、現在の中古既存住宅流通における仲介制度の慣習を根本的に変えていくこと(例えば宅建業者による物件売却査定時には必須とすることや、流通過程において未検査物件との差別化を図るなど)が求められます。又、一定の価値を認めさせる証明が可能であれば、住宅ローン金利優遇や地方税減税措置が与えられるなど、官民の支援体制の構築も必要と言われています。
2014.03.05
▲一覧に戻る
ネット広告表示も要注意!?…取引条件なら表示必須です!
最近の広告違反事例についてご相談します。
「ルームクリーニング費用、除菌消臭費用、鍵交換費用や保証会社と賃貸補償委託契約を要するのに、その費目及びその額を記載していないもの」について、広告違反とされた事例があると聞きました。この項目の認識、内容、表現方法・文例等について、ご教授を宜しくお願い致します。
又、「広告違反事例」とありますので、広告時・募集時に必要である費用という認識でしょうか?契約時や退去時の場合は、どの様に認識し、明記すればよいでしょうか?

質問1 「ルームクリーニング費用について」
ルームクリーニング費用については、汚れ具合等により、ルームクリーニング費用が変化すると考えられますので、金額を明確に記載できないと思われますが、どの様に認識して、どの様に表記すればよいのでしょうか?

質問2 「除菌消臭費用について」
除菌消臭費用は、現地にて、建物の間取、大きさが確認出来れば、算出できる費用であると認識しております。その為、間取、大きさが現地確認出来れば、見積を依頼して、見積金額により、請求できるものと思いますので、「除菌消臭費用 ○○円」というような明記になるのでしょうか?

質問3 「鍵交換費用について」
鍵の複製については、鍵が特定できれば、見積を取得し、見積金額を提示できると思いますので、その見積金額を提示すれば、項目及び費用が提示できますので、そのような認識でよいのでしょうか?
次に、紛失した場合は、お客様の問題によるため、シリンダーを含めた鍵の全交換になろうかと思いますが、この場合も、鍵及びドアが特定できれば、見積を取得し、見積金額を提示できると思いますので、その見積金額を提示すれば、項目及び費用が提示できますので、そのような認識でよいのでしょうか?

質問4 「保証会社と賃貸保証委託契約について」
建物の賃料がわかれば、保証会社により設定されている保証料算出式に当てはめ、保証料が算出されますので、その金額を明記しておけばよいという認識でしょうか?
しかしながら、お客様の希望、例えば、駐車場等が含まれてくる場合、賃料と駐車場の合計金額についてなど、金額に変化がある場合はどうすればよいのでしょうか?
ご推察の通り、不動産の広告における表示基準は、公正取引協議会による表示規約(不動産の表示に関する公正競争規約)に規定されている項目が最低限度の基準となります。
従って、本件(賃貸居住用)において、表示規約上の表示義務が課されている項目は、ご質問のうち、4の「賃貸保証契約が契約の条件とする場合の保険料の額」のみ(表示規約別表8.9参照)と思われがちですが、同規約8条及び15条に規定される「取引の条件とする事項」は全て対象となりますので注意が必要です。因みに同規約上、その他賃貸借物件広告関連では、礼金の額、敷金・保証金の額と償却の額又は割合、損害保険契約(火災保険等)を条件とする場合の保険料の額、管理費・共益費の額も表示事項です。
以上が、広告時、賃借人の募集に対する表示規約上の必要事項です。

次に、宅地建物取引業法における検討も必要です。契約締結時、宅建業法35条に基づき説明しなければならないとされる同条の列記事項のうち、
1項7号:
代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的

1項14号:
その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令

と定められており、業法施行規則第16条の4の3第11号:敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項に包括され、それらは重要事項において説明することを要するとして、解釈運用されています。又、地方公共団体による条例(ガイドライン等)においても説明事項として指導の対象となっていますので、ご自身の管轄行政庁の条例等をご確認下さい。

そのうえで、ご質問に対する回答として、
質問1潤オ3(ルームクリーニング費用、除菌消臭費用、鍵交換費用及び紛失対応)

先ず、募集時に取引の条件として設定されている賃料等以外の金銭であれば広告表示に該当し、予め金額が固定されているような場合は、金額を明示します。退去時に金額が見積り等によって確定する場合は、その旨を表示します。
又、重要事項の説明対象となりますので、金額が契約時点で未定であっても「見積りの金額による実費清算」として説明が必要です。それぞれの項目に対する文例等は記載省略しますが、広告時及び契約時に予見され、退去時にトラブルに発展しそうな内容であれば、出来るだけ具体的に清掃補修箇所等を特定して、実費精算が必要な旨を記載して説明するようにして下さい。

広告表示関係
火災保険、家賃保証料、クリーニング費用等、如何なる名目、項目であっても入居者に対して加入若しくは費用負担を課すことが条件として確定している場合は、広告表示に該当しますので、金額確定の場合は金額明示、未定の場合は実費として記載することで表示規約上の問題はありません。

重要事項説明関係
借賃以外に授受される金銭とは、原則的には貸主・借主間において授受される金銭を指しますが、実務的に仲介業者や工事業者に直接支払う費用であっても、本質的には貸主が負担すべき債務を特約によって借主に負担させている費用は法35条1項7号に該当しますので、説明が必要となります。
又、契約終了時の金銭の清算に関する事項の説明においては、出来るだけ詳しく説明し、取引の相手方に理解を求めることが肝要です。従って業法上においては金額の明示までは求められておりませんが、固定費の場合は金額明示が望ましいことは勿論です。

質問4 「保証会社と賃貸保証委託契約について」
広告表示関係
1)保証会社により設定されている保証料算出式に当てはめ、保証料が算出されますので、その金額を明記しておけばよいという認識で問題なしと思料します。
2)通常計算式において算出される金額を明示出来るのであれば、駐車場を含む場合は〇〇円と二段表示し、未定の場合は、(ただし、駐車場等の賃料も保証の対象とする場合は別途保険料が加算されます)として問題なしと思料します。

重要事項説明関係
外部事業者との賃貸保証委託契約については、宅建業法上の明記はありません(法37条2項)。これは、賃貸借契約において貸主に対する賃料債務の保証に関する特約で、人的保証(保証人又は連帯保証人)を用意するのと同様、賃貸借契約の内容に関する当事者間の約定であって、宅建業法の範疇ではないからです。しかしながら、貸主等(賃貸管理業者や仲介業者を含む)が当該保証会社との契約を借主に強いる傾向もみられるところ、当事者間の約定として契約書にその内容を記載すべきです。
2014.02.05
▲一覧に戻る
新・中間省略取引の契約はどうする?…知らずにすると怪我をする!?
新中間省略登記を使って第三者のための契約を締結しようと思っています。契約書や重要事項説明書にはどのように記載すればいいのでしょうか?又、元の契約(A-B)の契約金額(Bは弊社)を最終の買主(C)に明示する必要はあるのでしょうか?司法書士さんから説明されてしまうのでしょうか?
おさらいですが、中間省略登記は、主にA-B-Cと順次所有権が移転した物権変動の過程において、なおAに登記が存する場合、A-Cに直接移転登記をなすことを言います。平成16年の不動産登記法改正により、所有権の移転に関して「登記原因証明情報」の添付が必須となったため、A-B,B-C間の物権変動が明らかにされ、法の規定に従いそれぞれに公示(登記)することが求められることとなりました。これにより、上記のようなA-Cへの直接の所有権移転登記は認められなくなりました。
しかし、「第三者のためにする契約」や「買主の地位を譲渡する契約」など、一定の類型の契約により実体上もA-Cと直接所有権が移転した場合には、現行制度の下でも直接の移転登記の申請は有効であることや、不動産の流動化、土地有効利用促進の観点から、現場取引の費用低減ニーズに応える必要もあるとして、登記制度を所管する法務省は一定の類型に該当する各申請があった場合、具体的な「登記原因証明情報」の明示をもとに、いずれも可能であるという見解を示しました。以下、紙面の都合上、その契約及び登記申請における具体的ポイントのみを記しておきますので、十分ご理解のうえご活用下さい。
なお、当協会では、登記中間省略の取引を推奨するものではありませんので、念のため申し添えます。

【契約の手順】
本件では、当然にAB間、BC間にそれぞれ契約書が存在します。従って、BCに対してそれぞれ重要事項の説明と書面交付が必要となります。

A(所有者・売主)、B(中間者)、C(最終買受人)とします。
AB間の契約をア、BC間の契約をイとします。
イの重要事項説明では売主事項において「売主と登記名義人が異なる」の説明も必要です。
又、契約書条文作成にはア、イの契約条項の「所有権の移転」の項目に該当します。

【例文】
アの重要事項説明書面
1.本契約は、買主が第三者のためにする特約を付し、買主が指定する者へ直接所有権登記を移転する契約であることを確認する(別紙売買契約書案第○条参照)。

アの契約書の特約例(売主はA、買主はBです)
(第三者のための契約及び所有権の移転先及び移転時期)
1.売主及び買主は、本契約が第三者のためにする特約を付した売買契約として締結されるものであることを確認する。
買主は、本物件の所有権の移転先となる者(買主を含む)を指定するものとし、売主は本物件の所有権を、買主の指定する者に対し、買主の指定及び売買代金全額の支払を条件として、直接移転する。

(所有権の留保)
2.売買代金全額の支払いがなされたとしても、買主が買主自身を本物件の所有権の移転先に改めて書面をもって指定しない限り、買主に本物件の所有権は移転しないものとする。

(受益の意思表示の受託の委託)
3.売主は、所有権移転先に指定された者が売主に対して行う「本物件の所有権移転を受ける旨の意思表示」の受領権限を買主に与えるものとする。

(買主の所有権移転債務の引き受け)
4.買主以外の者に本物件の所有権を移転させる時は、売主は、買主がその者に対して負う所有権の移転債務を履行するために、その者に本物件の所有権を直接移転するものとする。

イの重要事項説明書面
1.本契約は、登記名義人と売主が締結した第三者のためにする特約を付した契約によって指定された買主と売主が締結する売買契約であるため、本物件所有権登記は売主を経由しないことを確認する(別紙売買契約書案第○条参照)。

イの契約書の特約例(売主はB、買主はC、登記名義人・所有者はAです)
(第三者の弁済)
1.本物件は、未だに登記名義人が所有しているため、本物件の所有権を移転する売主の義務については、売主が売買代金を受領したときに、その履行を引き受けた本物件の登記名義人である所有者が、買主にその所有権を直接移転する方法で履行するものとする。

2.売主は、売主と登記名義人との間の本物件についての平成○年○月○日付売買契約における債務(買主を所有権の移転先として指名すること、売買代金全額の支払い等)を本契約第○条の所有権の移転及び引渡までに(または同時に)履行し、登記名義人の買主に対する抗弁を除去するものとする。

【留意すべきところ】
1.「Bによる移転先の指定」「受益の意思表示」「BからAへの代金支払」「CからBへの代金支払」がなされた時点で、A→Cへと所有権が移転します。

2.AB間の契約、BC間の契約ともに「売買契約」です。但し、上記の特約は必ず必要です。

3.Aに対して売買代金を支払うのはあくまでもBです。CはBに対して代金を支払います。

4.地位譲渡契約との違いは、地位譲渡であればBは契約関係から離脱し、CがAに代金を支払うことになるのに対し、この契約では、Bは契約から離脱せず、売買代金はBからAに支払われます。

5.CにはAB間の売買代金がいくらなのかを教える必要はありません(地位譲渡契約との違い)。

6.Cへの融資を金融機関が認めない可能性があります。事前の確認は必須事項ですので、十分に金融機関と協議してから進めることが肝要です。又、登記を委任する司法書士にも予め当該契約の内容を説明し、登記原因証明の作成を依頼する必要が生じます。
2014.01.06
▲一覧に戻る
高圧線や鉄塔の影響を受ける土地売買など…重要事項の説明内容は?
電力会社の高圧線が上空を過っている土地の売買や住宅の売買、賃貸など、宅建業者として気になる重要事項の説明についての相談です。
対象物件の登記情報に地役権が設定されているものは容易に判断できるのですが、地役権登記の無いものや、隣接する土地で高圧線下と看做されない土地などの対処はどのように考えればよろしいのでしょうか。
まず、前提の整理を行っておきましょう。
1)高圧線とは
電気設備に関する技術基準を定める省令(以下技術基準)
(平成九年三月二十七日通商産業省令第五十二号)最終改正:平成二四年九月一四日経済産業省令第六八号
(用語の定義)
第一条
六 「電線」とは、強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体をいう。
八 「電線路」とは、発電所、変電所、開閉所及びこれらに類する場所並びに電気使用場所相互間の電線(電車線を除く。)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物をいう。

(電圧の種別等)
第二条  電圧は、次の区分により低圧、高圧及び特別高圧の三種とする。
一  低圧 直流にあっては七百五十ボルト以下、交流にあっては六百ボルト以下のもの
二  高圧 直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては六百ボルトを超え、七千ボルト以下のもの
三  特別高圧 七千ボルトを超えるもの

つまり、高圧線とは、直流750V以下、交流は600Vを超え、7000V以下の強電流電気の送電の為の電線と電線路設備(地中、架空含む)と、特別高圧(7000Vを超える交流)電線及び電線路設備の総称として使用される言葉。又、電線には、通信回路のような弱電流電気の伝送に使用されるものやケーブルは含まれておらず、それらを電線とは呼ばない。 要するに100V 以上の電源回路に使用される裸線、絶縁電線及びケーブルと思ってよい。
一方、「鉄塔」とは、本件の場合高圧送電用鉄塔を言い、技術基準においては、架空電線路の支持物の一つを指す。JEC-127「送電用支持物設計標準」に基づいて「鉄塔」として設計されたものを「鉄塔」と定義する。鉄塔として設計されていないEC-129の「鉄柱」と区別する。鉄塔には線路名、鉄塔番号、建設時点が識別できるように鉄塔番号札を掲示してあるので、対象地両方向の鉄塔を鉄塔番号札の情報で特定し、電力会社に電圧、送電線地上高、離隔距離などを問い合わせることが出来る。

2)高圧線下(高圧線下地)とは
電気事業者が電気を送電するために架設した電線が架空された土地を「高圧線下地」という。電気事業者が、電気設備に関して公共の安全を確保するため、技術基準では、架空電線の建築制限や建造物との接近等について定めている。電気事業者は技術基準を遵守しなければならないため、線下の土地所有者との間で私法上の契約をして技術基準に適合するよう、利用制限することになる。つまり、この利用制限の掛る範囲が高圧線下と定義されるのが一般的である。
電気事業者は、上述のとおり土地所有者との間に、地役権設定による地役権設定登記で第三者対抗力を備えているのが一般的(この場合は地役権図面が提出されているので、平面的にその範囲を特定することが可能)であるが、当該登記がなされず、送電線架設保持に関する契約(債権契約)のみを交わしているケースもある。又、例外的に何らの契約も存在しないケースも存在するので、その範囲を確定することが難しい場合も在る。

3)架空電線の建築制限や建造物との接近等
■技術基準133条:特別高圧架空電線と建造物との接近
使用電圧の区分 離間距離
35000V以下のもの 3m
35000Vを超えるもの 3mに使用電圧が35000Vを超える10000V又はその端数ごとに15cmを加えた値
建造物等の建築制限に関していえば、使用電圧のレベルにより建築等を制限する離隔距離が異なっている。

使用電圧が17万Vを超える 使用電圧が
35000V潤オ17万V
使用電圧が
35000V以下
電線を中心に3m+αを半径とする区域と相互(特別高圧架空電線と建造物)の水平距離(第二次接近状態)を3mとし、3m以内の直下の範囲が建築できない。 3mに使用電圧が35000Vを超える10000V又はその端数ごとに15cmを加えた値の範囲は建築できない。 送電線からの離隔距離である直線距離3mの範囲内は建築できない。
※建設可能な高さを算出する計算例
地上より20mに16万Vの高圧電線下の場合
3m+[(16万−35000)÷10000]×0.15=4.875
20m−4.875m=15.125mとなる。

線下地の範囲は、第2次接近状態に相当する送電線の最外線から3mの範囲とされることが多い。
電気事業者との債権契約による賃料は「両側側線の線間幅に左右3mずつの距離を加えた範囲」を対象として算定されている。土地収用委員会の裁決例では、この範囲について不明確なものが多いが、やはり外側線から3mまでのものが比較的多いようである。

不動産調査の注意点
不動産の調査で現地実査をするとき、上空の高圧線を確認することを忘れがちである。対象地の境界や、道路幅員、未登記建物の有無等々、通常視界域の確認には注意を払うが、上空を仰ぎ見ることをつい失念してしまう。「送電線が上空にあれば地役権登記があるはず」と、安易に思い込んでいると、線下地で地役権登記がなされていないものに該当した場合、思わぬ事態に契約そのものが危ぶまれることも覚悟しなければならない。従って、当該対象不動産に高圧線の影響が考えられる場合、前述したとおり最も近くに在る鉄塔に記されている識別情報を確認し、管轄電力会社へ詳細を問い合わせるなどして、建築制限や接近距離などを重要事項として調査することが肝要である。

又、価格査定時の注意事項としては、特別高圧架空電線が対象地の上空を通っており、架空電線の建築制限や建造物との接近等で制約があれば、線下の土地所有者は、そのエリアで最有効使用と判断される建物を対象地上に建築することが困難になるため、経済的価値は当然減価されることになり、この減価の程度は、対象地の最有効使用がどの程度の阻害を受けるかで判断されることになる。例えば、平屋が多い工場地と中高層マンションが標準的利用形態であるマンション適地域では、立体的利用の阻害程度は異なることにも注意が必要である。一般的にこの阻害程度による減価の査定には、国土交通省損失補償取扱要領による「土地立体利用率配分表」、「建物階層別利用率表」が用いられている。

更に、景観や送電線通過による心理的圧迫感、騒音や電磁波等の影響(医学的根拠は希薄で確立された所見は無い)による減価は、購入予定者夫々のメンタル面に大きく依拠するため、物理的減価のような定量的分析は困難である。この減価率を根拠付けていくには、多くの線下地の取引事例の蓄積と送電線の各種要因の属性がデータベース化されて分析され、その属性と減価との相関が統計的手法などで解析することが必要とされる。
(参考:高圧線下地の評価・不動産鑑定士 山田毅)
2013.12.05
▲一覧に戻る
金銭貸借のあっせん…ローンの内容は重要事項の説明事項?
宅建業者が行う重要事項の説明の中に、金銭貸借の斡旋の内容というものがあると思いますが、金銭貸借を斡旋するという意味が最近分からなくなってきました。一昔前までは、市中の銀行などと「提携ローン」なる形で住宅ローンを扱っていましたが、いつのころからか、提携という言葉を使わなくなり(使えないほうが正しいかも)、ローンの事務についても代行することが出来なくなりました。従って今では銀行を紹介する程度で、あとは全て銀行とお客とが直接契約を行うようになっています。そんな場合は、貸借の斡旋とは言えず、重要事項説明もその部分の説明は割愛して良いと思うのですが、業法では「斡旋に係る金銭の貸借が成立しないときの措置」を説明しろとなっており、ローン特約との関係が出てきてしまいます。
重要事項説明義務の内容と流れを整理してご教示願えませんでしょうか?
宅建業法35条1項12号関係
代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置

業法35条は、ご承知の通り宅建業者が取引に関与した場合、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない、とする規定で、宅建業者の最も大切な業務ひとつに挙げられる「重要事項説明と書面交付」を規定しています。その中に在る表記12号の規定ですから当然に説明を求められる事項ですが、当該あっせんが無い場合は割愛出来ることは言うまでもありません。

しかしながら、ご質問にも在るように、「あっせん」という行為の定義が変わりつつあるという原因は、住宅ローンを取り扱う金融機関の手続き自体が、個人情報保護というコンプライアンスの中で大きく変わってきたことにあり、業法35条1項12号の規定と実務の実態とにズレが生じていることは否めません。

国土交通省の「宅建業法の解釈・運用の考え方」ガイドラインでは、当該規定について、次の通り示しています。
35条第1項第12号関係
2.ローン不成立等の場合について
金融機関との金銭消費貸借に関する保証委託契約が成立しないとき又は金融機関の融資が認められないときは売主又は買主は売買契約を解除することができる旨、及び解除権の行使が認められる期限を設定する場合にはその旨を説明する。
また、売買契約を解除したときは、売主は手付又は代金の一部として受領した金銭を無利息で買主に返還することとする。

これは正に融資利用の際に付帯させる特約の内容と同一であり、一般的に住宅ローン等を利用する購入者に対しての保護規定として、宅建業者の実務においても定着しているので、ご相談者の言わんとする、「金銭貸借のあっせん」には関係なく、融資を利用する契約には付帯させるというのが取引の実情です。しかし、法律上は、金銭貸借のあっせんをしない場合は、購入者が融資を利用するとしても、当該ローンの内容及び不成立の場合の措置については説明を割愛しても説明義務違反には問われないということです。

この、一見矛盾するような関係を、実務上の重要事項説明に照らすと、以下の通りと言えます。
1) 重要事項の説明は、取引に関与した宅建業者がその当事者のうち、買主に対して行う義務を負うのであるから、業者自らがあっせんしようとする融資については、買主の意思決定に重大な影響を及ぼす要素であり、業者は当然にあっせんの内容についても告知義務を負う。←法35条1項12号の規定根拠

2) 前記業者が融資をあっせんしない場合、当該規定に基づく説明義務は免責される。
一方で、買主が独自に融資を受けるべく金融機関と契約する場合、ローン不成立のときの解除権を留保する又は、ローン成立を停止条件として契約を締結することを要件とすることなどは一般的である。この場合、契約締結上の特約として、所謂「ローン特約」を約定する。←利用するローンの内容については説明義務を免責される

3) 2)のケースでは、実務上において当該ローン特約の内容を重要事項として説明しているが、これは「金銭貸借のあっせん」に係る規定に基づくものではなく、業法35条1項8号「契約の解除に関する事項」が該規定である。

4) 1)又は2)のいずれの場合であっても、業法37条に規定する書面にはそれぞれローンに関し取り決めた内容(特約)を記載して交付することが求められている。←実務上は一体として「ローン特約」に集約している(業法37条1項7号、同35条1項8号)

これまでの考察により、業法35条に規定される重要な事項の説明と書面交付義務において、関与する宅建業者の金銭貸借のあっせんによる融資の利用と、それによらない場合の融資の利用については根拠規定が異なるにも係わらず、買主が融資を利用しようとしたときは、規定の区別を意識せず重要事項の説明を行っている実態があるので、法35条1項12号の「あっせん」という言葉の意味するところが理解出来ず、実務上の矛盾を感じるということはご理解いただけたかと思います。

最後になりますが、個人情報の関係から最近では殆ど取り扱うことが無いと言われる「金銭貸借のあっせん」ですが、立法の趣旨はやはり「提携ローン」に置いていることは自明であり、買主(一般消費者)よりも提携事業者である宅建業者に情報の優位性が認められる商品の提供という観点から、説明義務を課しているものと思料します。したがって、単に宅建業者が金融機関の名称を列挙して紹介し、ローンの内容について表面的な説明を行った後に買主自らが金融機関と金銭貸借の契約に臨むような、一般的に行われている紹介行為は、「金銭貸借のあっせん」には当たらないと解することも出来、重要事項の説明及び書面交付において、利用するローンの内容まで記載を求められるものではないと思料します。
2013.10.05
▲一覧に戻る
賃貸管理委託契約と印紙税…委任か、請負か、分かれ目は?
不動産業者が行う賃貸管理契約は、印紙税の対象にならないと聞いたことがあります。業務委託契約は準委任契約だとか。一方で、印紙は必要だとおっしゃる税理士さんもおられます。専門家の間でも見解が分かれているのでしょうか?国税庁のQAなどを確認しても、もうひとつよく理解出来ない書き方なので質問しました。印紙は要るのか要らないのか、要るならいくらの印紙か、要らないというならはっきりとした根拠を知りたいのです。どうぞよろしくお願いします。
1.不動産管理契約を結ぶ場合
賃貸物件の不動産管理を不動産管理会社に依頼すると、不動産管理会社と不動産管理契約を結ぶこととなります。一般的な不動産管理契約を想定すると、入居者の賃料回収や相談対応などを主とした契約と、建物のハード面や維持管理までを前提とする場合があります。印紙税での判定で問題となるのは、契約の内容が、単なる委任契約であるのか、請負契約の要素が含まれているのか、ということです。

委任契約の場合は、仕事の完成義務は負わず、委任された行為を善良なる管理者の注意義務(職業や生活状況に応じて、抽象的な平均人として一般に要求される程度の注意義務)で行えばよく、仕事の完成義務は負いません。業務委託は準委任契約と呼ばれますが、準委任行為とは、委任が法律行為を規定するのに対し、それ以外の実行行為(事務や役務)を委任する行為(民法656条)として、委任の規定が準用されるので両者の区別に実益はありません。
例えば、「賃料回収業務、建物清掃業務」などの行為は、役務内容においては準委任の規定する行為ですが、印紙税法の課税、不課税の判断に重要なことは、役務の約定が請負的性格を有しているかどうかによります。
従って、「業務の完成をもって管理料の支払いが確定する」というような内容は請負に該当し、それを含む契約は、行為が委任行為であっても、実態が請負契約と看做され課税文書と判断されますので注意が必要です。
つまり、税務署(国税庁)では、印紙貼付要否の判断(第何号文書に該当するかの判定・所属の決定)は、個々の契約の内容によるとしており、入居者管理契約であるから不課税であるとの決定はなされないということです。

2.貼付印紙税の計算根拠
(1) 第2号文書(請負に関する契約)
1月の各入居者の賃貸借契約の内容が記載されており、かつ、契約期間(3ヶ月を超えるもの)が記載されていること、さらに、1月の不動産管理手数料の賃料に対する割合が記載されていると、管理契約に係る支払金額(印紙税法上は、記載金額といいます)を算出することができます。この場合、支払金額を基に、印紙税が発生します。
例えば、支払金額(記載金額)が、600万円だと、印紙は1万円となります。
支払額の計算方法
(月の各入居者の賃料)×(不動産管理手数料率)×(契約期間)=支払額(記載金額)

(2) 支払金額が計算できない場合
支払金額(記載金額)が算出できない場合には、第7号文書(基本契約)に該当し、印紙(税)は、4,000円です(継続契約)。
支払金額が記載出来ない場合とは、例えば管理手数料を賃料の5%と規定しているが、一棟全室の個々の賃料の記載が無い(一棟全体の賃料総額の記載が無い場合に同じ)など、書面から記載金額が算出出来ないが、対価の発生を約定する内容であるものです。

(3)委任契約による場合(不課税文書:注1)
委任契約とは、民法643条に規定されているとおり、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを行うことを内容とする契約のことをいいます。
しかし、印紙税の課税文書に該当するか否かの判定(課否判定)は、その文書の全体的な評価によって決めるのではなく、その文書の内容として記載されている個々の事項のすべてについて検討し、その個々の事項の中に一つでも課税物件表に掲げる課税事項となるものが含まれていれば、その文書は課税文書となります。 つまり、管理契約=委任契約という定義は成り立たず、管理契約の内容が、請負か否か、によって課税文書かどうかが決まるというのは前述したとおりです。
他方、ビル管理会社の建物管理契約書には、請負に関する約定(修理、修繕、保守などの具体的作業の請負内容)がなされている場合が殆どですから、その場合は課税文書であることに異論は出ないと思料します。しかし、不動産業者が行う賃貸管理業務委託契約は、請負では無い、と一概に言えるかどうかは、契約書の内容に請負的要素が含まれていないことによるということです。

3.委任契約の注意点
委任契約の場合は、委任者・受任者ともに、「いつでも」(=無条件で)契約を解除することができます(民法第651条第1項)。なお、この条項が契約書で修正できるかどうかという点、つまり、解除の権利を契約書で放棄させることができるかどうかについては、争いがあります。従って、委任契約としながら当事者の一方からの契約解除について制限(違約金など)の規定を置く場合、無効とされる可能性もあり、受任者(=サービス事業者)は、突然契約を打ち切られるリスクを覚悟しなければなりません。

補足:収入印紙税の課税の判断については、最終的には、その事業者を管轄する税務署が行っています。国税庁本体や、管轄の違う税務署でも相談自体は受け付けていますが、その相談の回答と管轄税務署との見解は必ずしも一致するとは限りません。これは、弁護士、税理士、行政書士などの専門家による回答も同様です。

このため、最終的に管理業務委託契約書が課税文書に該当するのかどうか、また、課税文書に該当する場合の金額はいくらなのかは、管轄税務署の担当官に実際に契約書を見てもらったうえで判断して下さい。

※注1 不課税文書:課税物件表の何れの号にも該当せず、課税対象とならない文書のことをいいます。つまり課税文書でも非課税文書でもない文書のことです。
2013.09.05
▲一覧に戻る
建築基準法12条1項!?…指定建築物の定期調査とは
重要事項説明の項目にある建築物の定期調査、報告に関する事項の対象に、一般的な区分所有のマンション(延べ床面積が1,000㎡店舗事務所併設無、居住用のみ)は、『建築基準法施行令第16条→第14条の(2)に規定する建築物・階数が5階以上且つ床面積が1,000㎡事務所等に類する用途で保安上危険な建築物として特定行政庁が指定するもの』にあてはまるのでしょうか?

マンション管理会社発行の重要事項に係る調査報告には記入されておらず、管理会社へ電話で確認しようとしたのですが、的を射ない回答でした。「定期点検はしているが、いつ、点検したか、はよくわからない」という内容でした。
そもそも、宅建業法35条の規定にはこの項目が見当たりませんが、重要事項の説明に含まれるのでしょうか。
ご指摘の項目は、確かに宅建業法35条の重要な事項として列記されている中には見当たりませんが、特定行政庁(建築主事を置く地方公共団体)の求めに応じ、違反建築物の将来的な根絶、消費者保護と不動産価値の適正化を目的として、該当する建物を取引しようとする一般消費者に重要な事項として、近畿流通センターが提供する書式に採用したものですのでご理解下さい。

さて、調査報告対象の建築物とは、建築基準法第12条1項→法第6条1項1号の建築物(別表第1(い)欄の特殊建築物)及び政令で定める建築物(同施行令第16条→第14条の(2)に規定する建築物・階数が5階以上且つ床面積が1,000㎡事務所等に類する用途で保安上危険な建築物で、国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物を除く建築物)で特定行政庁が指定するものが該当します。区分所有のマンション=共同住宅の場合、建築基準法12条1項の規定する同法6条1項1号の建築物(別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの)であっても、当該定期調査報告義務の有無は特定行政庁の指定する建築物か否かによりますので、まずは管轄の行政庁にご確認下さい。

そのうえで、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者にその状況の調査(当該建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、当該建築物の建築設備についての第3項=昇降機設備の検査を除く)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならないとしています。
区分所有マンションなどの場合で、法12条に該当する建物は、ご指摘のように管理会社などが定期検査を行っていることが多く、まず、管理会社の重要事項調査報告書を取得する際に、当該調査の有無及び有の場合はその内容を必要事項として依頼します。又、当該建物の所在地の市役所等の建築指導課には、調査報告内容が保管されていますので確認することもできます。

重要事項説明の実務では、同説明書に調査報告内容(別紙添付可)と調査担当建築士の資格氏名及び直近の調査年月日などを記載して説明します。

なお、管理会社は当該事項を把握されていないということですが、当該定期調査報告は、その義務を怠った場合、法101条1項2号に該当し、当該管理組合が100万円以下の罰金を科せられる恐れがありますので、指定されている建築物であれば定期調査をしていないということは無いと思います。
これも再度管理会社に「建築基準法12条1項に基づく定期調査の報告内容を確認したい」とお尋ねください。
2013.08.05
▲一覧に戻る
事業者売主の瑕疵担保責任免責は有効か?…宅建業法以外の制約に注意!
宅建業者ではない事業者(法人個人とも)が売主である不動産を消費者が購入する場合、売主の瑕疵担保責任を免責とする特約の有効性についてお尋ねします。
民法570条が任意規定とされていても、消費者契約法による制約は受けると聞いていますが、実務においてどのような特約が望ましいか、ご教示ください。
又、瑕疵担保責任を負わないという特約に問題がある場合、瑕疵担保責任を負うとしてもその期間は一般個人の場合の2ヶ月とか3ヶ月とかでも問題ないのでしょうか?
民法上、売買契約の売主は、「隠れた瑕疵」の損害賠償責任を負い、瑕疵のために契約の目的を達成できないときは、買主に契約の解除権が与えられます(民法570条本文、566条1項)。しかし、この売主の損害賠償責任と買主の解除権については、民法上は任意規定なので、法の定めと異なる特約が可能です。つまり、当事者双方の合意で瑕疵担保免責とすることも可能となります。

一方、宅建業法では、売主が宅建業者、且つ、買主が宅建業者ではない場合、宅建業者は、瑕疵担保責任が目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法に定める責任と比べて買主に不利な特約を締結することができず(宅建業法40条1項)、これに違反する特約は無効(同条2項)となります。又、売主及び買主のいずれもが宅建業者である場合、宅建業法40条1項の適用はない(同法78条)ので、売主が瑕疵担保責任を負わないこととする特約も可能ということになっています。

さて、消費者と事業者の間には、取引のための情報の質と量、並びに交渉力において格差が存在します。消費者契約法は、この格差に着目し、事業者の行為により消費者が誤認困惑した場合に、申込み、承諾の意思表示を取り消すことができるとし、又、事業者の損害賠償の責任を免除する条項、その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることを定めています(消費者契約法1条他)。消費者契約法は、消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する特約を無効としており、原則的に瑕疵担保責任の全部を免除することはできません(8条1項5号)。
ただし、例外的に、瑕疵の無い物をもってこれに代える、又は瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合等には、損害賠償を免除する特約も効力が認められます(8条2項)。すなわち特約により、瑕疵修補義務等を定めておけば損害賠償義務を免除することが可能となるわけです。

そこで、本問に対する回答としては、民法上、任意の約定が認められる瑕疵担保責任の特約であっても、消費者契約法上の事業者にあたる売主が同責任の全部を免除し、且つ、損害賠償義務も免除する特約をすることは出来ませんが、瑕疵の修補義務を定めたときは損害賠償義務を免除することが可能となります。なお、瑕疵担保責任の履行請求権を制限する期間について、3ヶ月の設定を消費者契約法10条により消費者の権利を制限するとして無効とした東京地裁平成22年6月29日判決もありますので、やはり民法の、事実を知ってから1年以内もしくは宅建業法の2年以上とするなどの注意が必要と言わざるを得ません。
2013.07.05
▲一覧に戻る
『所有権の移転』はいつ?…不動産売買契約上の所有権移転を考察する!
不動産売買契約に関し、所有権の移転時期が契約書等に明記されておらず、当事者間でも何ら取り決めがなされていないような場合、もし買主が残代金を支払わないとか、物件を引き渡した後、代金支払いまでの期間に起きた災害等による損害が出たなどの場合、売主買主の双方が所有権移転時期を巡って対立することも予想されます。全日本不動産協会近畿流通センター標準書式では、明確に「このときに所有権は移転する」という表現が見当たらず、少々不安に思います。流通センターでは、この問題についてどのようなお考えで書式を整備されているのでしょうか。
まず、本件ご相談に関して、不動産の売買契約における所有権移転の時期の考察であることを前提とします。そして、他人物売買の場合を想定していないことも併せて申し添えます。

一般的には、特定物である不動産の売買契約を行うところ、売買契約の特約における「所有権の移転時期」について、当事者(売主・買主)間に特段の合意が無い場合、所有権はいつの時点で移転するのでしょうか。
これには、次の判例によって確立された通説が存在します。

◆昭和33年06月20日 最高裁判所第二小法廷判決 昭和31(オ)1084 不動産所有権移転登記手続等請求 民集第12巻10号1585頁
【判示事項】
特定物の売買と所有権移転の時期。
【裁判要旨】
売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする。(大審院大正二年一〇月二五日言渡判決、民録八五七頁参照)。
【参照法条】
民法176条
【解説】
売買などの契約において、物の所有権がいつ売主から買主に移転するかについて、物権変動について意思主義をとるわが国では、原則として契約成立時に所有権が移転するものとされる。

不動産の売買契約において、一般的には目的物の引き渡し義務と代金の支払い義務が互いに履行されたとき、つまり銀行等において決済を行い、売主は権利書(識別情報登録書)や鍵など、必要書類を買主に引き渡し、買主は代金を支払って、所有権を移転させる手続きを行います。このとき、概念として意識するのは物権変動の対抗要件である「登記」であり、いわゆる所有権移転登記が当事者間の「所有権移転」として認識されています。しかし、法理は形式の如何を問いませんので、形式上の代金支払いや登記手続きとは関係なく、対象不動産の所有権はすでに契約成立をもって移転しているとします。これを物権行為の独自性否定といい、判例、通説となっています。
従って、前記のような不動産の取引を行う場面で、法的にも所有権移転を決済時にさせようとするときは、前述した最高裁判例の要旨にある、「特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たもの」が必要となり、特約として所有権移転時期を定めることとなります(我が国の民法は意思主義を採用)。

【近畿流通センター標準約款の考察】(引用:既存建物売買契約書)
第 6 条  (所有権の移転) 売主は、売買代金全額の受領と引換えに、抵当権等の担保権、賃借権等の用益権、その他買主の所有権の完全な行使を妨げる一切の負担を自己の費用で除去したうえ、本物件の所有権移転登記申請手続に必要な書類を買主に交付し、本物件を買主又は買主の指定する者に引き渡します。

上記、特約文言から、所有権移転時期が明確でないとのご指摘がありますが、特約の目的が(所有権の移転)と明記されていますので、後の文言に売主の義務が規定され、その義務の履行がなされたときに所有権が移転すると解すべきで、明確でないということはありません。もちろん、一般的な表現として「移転する」という表現を記載しても意味が変わるものではありません。
つまり、この標準約款では、対象物件の所有権移転は第6条の特約に基づく売主の義務の履行をもって移転するとしており、「所有権の移転が将来なされるべき約旨」に他ならないということで問題は無いと思慮します。

次に、標準約款第5条には(本物件の引き渡し)に関する特約がなされ、買主の代金支払い(債務の履行)がなされたときに引き渡しがあったものとしています。これは、第6条の所有権移転に際して規定される「売主の義務の履行」を前提とし、買主の債務と同時履行の関係を明確にする意図と解することが出来ます。又、第6条に対して一見意味の無いような特約に思える本条ですが、続く第10条(危険負担等)の基準となっていることが分ります。
つまり、この標準約款では、『民法176条に対する特約として、所有権移転時期を物件の引き渡し時と約旨し、引き渡しは買主・売主それぞれの債務が履行されたときであり、その関係は同時履行である』とする構成になっています。又、特定物売買における危険負担の規定(民法534条1項・債権者主義)に対する不動産取引の特殊性(動産のように直ぐに引き渡せない)を考慮し、引き渡しを基準として危険負担も移転するとして、売主(引き渡し債務を負う者)に危険負担を負わせています。

参考学説:
「物権行為の独自性肯定説」
所有権移転時期に関して、代金の支払時、あるいは登記や引き渡しの時点で物権変動は生じるとする近時の有力な学説。
「売買契約のような債権契約について、所有権の移転などの物権変動を発生させるには他に物権行為を常に必要とする。この物権行為というのは、登記や引き渡しがあったときに行われると解されるので、結果的に形式主義と似た結果になる」という論理に基づきます。その根拠は、次の通りです。
(物権行為の独自性肯定説)から→民法176条の「意思表示」とは、物権移転を目的とする特別の意思表示のことであり、この「物権的」意思表示は、外形行為(登記や代金の支払など)の時点でなされたものと考えられる。
(物権行為の独自性否定説)から→売買契約は有償であることに着目し、代金支払と所有権移転が同時履行に立つべきであるとする(有償性説)。

「段階的所有権移転説」
危険負担の移転時期や、果実収取権の移転時期など具体的な規定によって判断され、所有権の移転時期を特定するのは不可能且つ不必要であるとする。
原  則;
所有権移転は176条に従い契約時である→特約による変更
危険負担;
534条以下の規定に従う。所有権の移転時期の問題ではない→特約による変更
果実収取;
577条に従い、引き渡しの時から買主は果実を収取する→所有権移転に伴う
二重譲渡;
177条に従い、先に対抗要件を備えたほうが所有権を取得する→外形行為
※近畿流通センター提供の契約書標準約款では、本件ご質問に対する回答とは別に、所有権移転の時期について明文規定を追加致しました。
ただし、標準約款による明示は本QAに記載された回答を否定するものではありません。
2013.03.05
▲一覧に戻る
土地の価値がゼロ!?…津波災害警戒区域の指定を考える
津波防災地域づくりに関する法律というものが施行され、その指定区域が全国各都道府県によって指定されていっているようですが、聞くところによると、警戒区域という指定を受けた所は土地が売れず、資産価値がゼロだというようなことも。
地震学者や大学の研究所は、東日本大震災の地震規模も予測できなかったというのに、今度は「30年以内にマグニチュード8以上の地震が起きる可能性は80%」とか、「津波の高さは最大で30M」だとか、大々的に公表して不安を煽っていますね。このせいで、警戒区域に指定されたところは大変なことになっています。不動産業者として、このような法律の意味と説明をどうしたらよいのか、非常に悩んでいます。
平成23年度の第179国会において、津波による災害を防止・軽減する効果が高く安全な地域の整備、利用及び保全を総合的に推進することにより、津波災害から国民の生命、身体及び財産の保護を図ることを目的とした津波防災地域づくりに関する法律(以下「新法」という。)が成立した。新法で新たに規定された「津波災害警戒区域」は、国土交通大臣が定める津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針に基づき、かつ、津波浸水想定を踏まえ、津波が発止した場合には住民その他の者の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における津波による人的災害を防止するために警戒避難態勢を特に整備すべき土地の区域として指定されるものであり、同区域内においては、ハザードマップの作成、津波避難訓練の実施、指定避難施設の指定等の避難の円滑化の措置を講ずることとされている。又、平成24年6月には、同法72条に「津波災害特別警戒区域」の規定が追加され、津波災害警戒区域のうち、「建築物が倒壊し、又は浸水し、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域」について、都道府県知事が一定の開発行為等の制限をすべき土地の区域として指定出来ることになっています。

法律の施行から1年を経過して、現在ではどの程度の地域がこの警戒区域に指定されているのかを調べてみると、現在のところ全国において同警戒区域の指定を受けた区域はありません。
従って、宅建業者が重要事項の説明時において新たに追加された「宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3、第16条の4の7及び第19条の2の6の改正に伴う、宅地又は建物(信託財産として設定されているものも含む。)が新法第53条第1項により指定された津波災害警戒区域内にあるときは、その旨を重要事項として説明する」部分については、非該当として説明を省略して差し支えありません。

しかし、では何故これほどまでに新法の施行による津波災害警戒区域の話題が上ってくるのか。それには複雑な法律の体系と、運用主体である都道府県の新法施行に伴う実質的な調査作業によって行われる段階的な手続きが公表されることによると思われます。
ご質問者においても、指定区域が指定されている、とか、警戒区域に指定されたところ、などという文言から、何か別の指定と混同されていると思われますので、以下に今回の新法施行後の都道府県の対策と実施状況について記載しておきますので、誤解の無きよう整理をして下さい。

  1. 津波防災地域づくりに関する法律(平成23年12月14日法律第123号)第1条には、まず国土交通大臣が基本指針を策定するとしています。この指針は、平成24年1月16日に「津波防災地域づくりの推進に関する指針」として公表され、指針に基づき新法第8条による「津波浸水想定」を設定するという作業を行うことになっています(主体は都道府県知事)。
  2. 津波の被害が予想される都道府県においては、現在この津波浸水想定の設定に着手しており、科学的見地に基づいた沿岸の陸域や海域の地形、地質、土地利用状況等を詳細に調査(基礎調査といいます)し、最大津波の設定とその津波が発生した場合における浸水区域と水深を想定します(津波浸水想定)。これにより、想定される区域には津波被害想定図や避難経路図等が整備されて行っており、いわゆるハザードマップの一部としてすでに公示されている地域がかなり存在します。
  3. 指針に基づく基礎調査を終え、津波浸水想定の設定を行った都道府県知事は、当該想定区域の市町村に通知(新法第8条4項、6項)し、市町村長は津波防災の為の地域づくりに関する具体的な推進計画を策定します。それには、推進計画区域における特別の措置及び一団地の津波防災拠点市街地形成施設に関する都市計画を定め、都道府県と共に津波防護施設の管理、津波災害警戒区域が指定された場合の警戒避難体制の整備並びに津波災害特別警戒区域における開発行為の禁止に関する内容、建築物の建築制限等に関する措置を定めていくこととなります。
  4. 上記1潤オ3の後、都道府県知事により津波災害警戒区域を指定し、且つ警戒区域の中でも特に甚大な被害が予想される区域を特別区域に指定することになります。
以上で述べたとおり、現段階ではどこの地方自治体でも2と3の間ぐらいの進捗状況ですので、まだ災害警戒区域の指定までは進んでいないということです。皆さんが津波災害警戒区域の指定がなされて行っていると誤認されているのは、2で説明した「津波浸水想定区域」の設定に伴い公表されている資料等によるものと思われます(地方自治体によっては兵庫県のように「津波被害警戒区域」という名称で区域の設定を行っているものも見受けられます)。
従って、新法に基づく重要事項の説明は、「津波災害警戒区域の指定はありません。しかし、今後の指定については浸水想定の状況により警戒区域並びに特別警戒区域に指定される場合がありますので留意して下さい」という断りを口頭で結構ですから補足しておくことが望まれます。

それから、もうひとつ。新法の施行とは別に、建築基準法39条に基づく災害危険区域の指定というものがあります(宅建業者に馴染みの深いものとしては、急傾斜地崩壊危険区域などがあります)。これは、「第1項・地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。2.災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める。」と規定され、津波災害「危険」区域という指定がなされる場合があります。これは全国の自治体ですでに相当箇所の指定があり、特に今回の東日本大震災後においては、実際の津波被害が甚大であった地域を指定する例が増えています(例:石巻市の場合、防災集団移転の対象として指定し、総面積は1696ヘクタールで、約6600世帯が移転の対象。気仙沼市は、今回と同程度の津波が来た場合に浸水すると判断した約1380ヘクタールを指定した。指定された区域では、住宅の新築や建て替えは認められないが、気仙沼市は、強固な造りなら再建を認めている。平成23年10月31日の南相馬市が津波災害危険区域指定の第1号で、その後仙台市などが追随している)。
2013.02.05
▲一覧に戻る
重要事項説明書改定!詳しくなった設備等整備状況表の書き方
この度、近畿流通センターのダウンロード版において、飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の整備状況が詳細な内容に変更されています。特に、電気及び排水の部分が詳しくなっており、調査方法や意味などご教示頂ければありがたいです。
飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の整備状況

ご質問の状況表は上記ですが、昨今、会員諸氏よりこの重要事項説明についてのご質問が多く寄せられています。
とりわけ、「配管線の状況」においては、前面道路に埋設もしくは敷設されている管の口径や、そこから分岐され、対象物件に引き込まれている引き込み管の口径なども記載出来るように変更されていることから、どこで調査するのか?ここまで調査が必要か?といったようなご質問が増えています。
近畿流通センターでは、契約書式(重要事項説明書や契約書など)においてひな型を提供しており、一定地域の商習慣などに縛られない「汎用タイプ」として作成しています。従って、それぞれの地域や所轄行政機関においては調査の方法や保管データ、又、証明方法などが異なっている状況下では一概に言えませんが、以下の通り、概ね共通する調査方法を教示致しますのでご参考下さい。
  1. (1)上下水道については各市役所(町村役場)所管課に図面や台帳が保管されていますので、そのデータを複写もしくはトレースして持ち帰ります(例外:大阪市の場合、例えば簡易専用水道については各区役所の衛生環境課が窓口)。
  2. (2)次に、ガス設備ですが、近畿圏は大阪ガス株式会社の所轄ですので、大阪ガス運営のオンラインDB(ガスナビくん)に登録(無料)し、該当データをダウンロードできます。ただし、同DBには、宅地内引き込み管の口径は表示されていません。又、宅地内引き込み(ガスメーターまで)は、ガス事業者の負担(所有権者は事業者)となりますので、配給に問題があるときは無償で交換工事を行うため、特に引き込み管口径まで調査報告する義務は重要事項説明にありませんので割愛は可能です(ケースバイケース)。
  3. (3)

    写真1
    電気は殆どの地域で供給されている設備ですが、最近のユーザーニーズから、住宅設備(コンロやエアコン、PCなどの家電製品)の多様化における電気容量(使用限度)を巡って、不動産取引時の説明不足が指摘されるトラブルが多くなっています。
    これも宅地建物取引業法上の明文規定は置かれていませんが、同法35条1項4号及び14号、同法施行規則16条の4の3、並びに同法の解釈・運用の考え方(国交省通達)などから、重要事項の説明を受ける者の期待に応える説明が求められています。そこで本書では、特に電気設備の欄に詳細な報告内容を記載出来るよう、仕様を変更したところです。
    具体的な調査方法:
    当該物件に引き込まれている電気(電源)がどのような種類のものかを判別する為には、電気メーターを確認します。
    電気メーターにも幾つか種類がありますが、一般家庭では殆どが写真1のようなタイプで、誘導型電力量計と呼ばれるものです(円盤が廻るタイプ)。
    電気メーターを見てみると赤字で単3(三)という表示があれば、電源は単相三線式です(電柱から3本の線を引き込み、1本はアース、赤線が+100V 黒線が−100Vで電位差が200Vとなり、単相200Vと呼ばれます)。最近ではIHクッキングヒーターやエアコンなど、大きな電力を使う機器の電源として単相200Vが使われることが多くなってきました。家庭の電源といえば単相100Vが普通でしたが、この単相200Vは電圧が二倍になるので、大きな電気容量を必要とする家電でも、効率よく動かすことが出来、電気の使用料金も100Vの時と同じです(消費電力量が半分で済むという原理)。しかし、古い住宅などでは、単相二線式(単2)という電源も残っています。この場合は、そのままでは200V製品の使用は出来ず、電気工事が必要となり、当然費用も発生します。

    そこで、本件の電気供給についてどう重要事項に関係するかですが、前述したように、今では多くの家電製品を一般家庭でも当たり前のように使用しますので、購入した後、使えないなんて聞いていない!電気工事が別途必要となった!というようなクレームを防ぐ為に、予め引き渡し時点での電源については最低限、単3なのか、単2なのかぐらいは説明しておくことが望ましいという理由から、本項の追加としています。

    因みに、よく耳にするところの動力電源は、三相三線式という規格で電圧の相が3つあるということです。従って、単相(電位差で200V)とは違って、一つの相(波)がそれぞれ200Vの電圧が掛っている為、大容量の機械(エレベーターや業務用冷蔵庫、ポンプなど)を動かすのに適しており、原則として一般住宅の屋内用には敷設することが出来ないものです。
  4. (4)排水とは、下水を建物や敷地から公共下水道へ衛生的に処理し排出することで、廃水の種類(汚水・雑排水、雨水)によって処理形態に違いがあることを知っていなければなりません。
    1. 汚水(雑排水含む)
      汚水とは、発生形態による分類として生活もしくは事業に起因して排出される廃水をいう(し尿を含んだ廃水、台所、洗面、風呂等から排出される使用済みの廃水、工場や事業者の厨房から排出される廃水等)。
    2. 雨水
      雨水は、自然発生を原因とする降雨、湧水、雪解け水等をいう。
    3. 合流式と分流式
      合流式は、汚水と雨水を1本の管渠に集めて排水する方法で、分流式は汚水と雨水を別々に排水する方式で、汚水は処理場へ送られ、雨水は直接、公共水域(河川等)に放流します。
      合流式の利点は、維持管理と敷設が容易なことですが、雨水により汚水が希釈し排水量が増大する欠点があります。分流式は、配管系統が複数になりますが、下水処理が効率的に行えるなどの利点があります。
      ※取引対象物件の所在地において、合流式か分流式のいずれを採用している地域に在るかは、建物を建築する際の設備工事の費用に少なからず影響するものですから、所轄の行政機関に確認してください。
    4. 浄化槽
      《合併処理浄化槽》
      し尿と併せて雑排水(生活系の汚水)を処理するもので、現行の法律で浄化槽と定められているものです。
      《し尿単独処理(みなし浄化槽)》
      し尿(便所からの汚水)のみを処理するもので、平成13年(2001年)4月1日以降の新設が禁止され、平成18年2月の法律改正時に浄化槽の定義が変更されたことに伴い、構造基準より削除され、浄化槽法上では「浄化槽とみなす」と定義されているものです。
      なお、既設のみなし浄化槽(単独処理)については、下水道等の計画が無い地区に設置されているものについては、浄化槽(合併処理)への転換を図る事を努力することが求められていますので、媒介時においては買主の負担増となることを事前に説明することが肝要です(浄化槽法附則)。
2012.11.5
▲一覧に戻る
「反社会的勢力」の見分け方は?…具体的な手続きを解説!
不動産業を営む者ですが、昨年から契約書や重要事項説明書のひな型には「反社会的勢力」の排除という条項が入っています。その趣旨や意味はよく理解していますが、現実問題として、反社会的勢力に当事者が該当するかどうか、又、該当していることが判明したような場合に、どうやって契約を中止したり、解除したり、違約金を請求(実際に支払ってもらう)できるのか。現場ではどうも実効性が乏しいと思います。ほとんどはそんなものに該当しないと思っていたのですが、「反社会的」には暴力団関係だけではないので、対応の難しさに悩んでしまいます。
2011年11月のWeb広報誌不動産iNS(ECO!)においても、「反社会的勢力排除」と「暴力団排除条例」についての関係と、契約書式上の記載説明について特集させていただきました。しかし、貴殿のおっしゃるように、現場での対応、特に実際に当事者が疑わしい者に該当するようなとき、どうやってそれを調べ、特定し、そして契約の中止や解除にもってゆけるのかについては、どの紙面でも解説されていないようです。そこで、2012年5月号においては、具体的な手続きや対処の仕方について解説したいと思います。

さて、不動産の売買や、建築請負などの業務に際して、まず思い出して頂きたいのが、4年前に施行された法律、「犯罪収益移転防止法(マネー・ローンダリング法)」です。この法律では宅地建物取引業が「特定事業者」に指定され、(1)本人確認及び同確認記録の作成・保存、(2)取引記録の作成・保存、(3)疑わしい取引の届出の三つの義務が課せられました。そのうち、本件ご質問と関連の深い(3)について、同法9条1項に規定する疑わしい取引とされる「組織的犯罪処罰法第2条第4項・犯罪による収益、10条・犯罪収益等隠匿」に該当する可能性がある金銭を利用した取引についての届出義務で、具体的な事例として警察庁刑事局組織犯罪対策部が示した21項目のうち、暴力団員・暴力団関係者等に係る取引があります。
この法律は、取引の中止や契約の解除等、行為の制限を課しているものではなく、単に行政への届出を義務化したものですが、現実論として取引の対価に支払われる金銭が犯罪による収益かどうかや、金銭の出所を隠匿するために取引をしようとしているのかなど、そうそう分るものではありません。従って、事業者は表面上の体裁や雰囲気、つまり服装や乗っている車とか、言動が粗暴であるとか、その風体などで決めつけるしかないわけですが、それでも犯罪収益移転防止法上は届出義務の履行を果たせばよいわけです。
しかし、当事者が暴力団関係者の疑いがある場合、反社会的勢力排除の特約や地方自治体の暴力団排除条例の規定に従い、契約そのものの中止や解除も伴うことから、疑わしい取引の届出どころではなくなってきます。

そこで、契約の相手方が反社会的勢力と看做される人物かどうかを事前に確認する手続きという具体的手法が問題となってきます。これは、いずれの業界においても必要となることから、法務省の指針に基づき、各業界で「反社会的勢力の情報データベース」を構築することとしています。以下、このデータベースの利用方法とその後の手続きについてフローをご参考頂き、実際の運用にお役立てください。
2012.5.29
▲一覧に戻る
仲介会社が手付金保管?…取引関連業務の範疇か!?
最近の取引では売主の債務超過(売買代金よりも抹消金額が大きい)物件をよく扱います。その場合、売主に手付金を交付すると、万が一白紙解約となったときに返還できない(使い込んでしまうなど)ことも想定して、弊社が決済まで預ることも増えてきています。このような場合、抵当権者である金融機関の抹消同意を停止条件とする契約の特約はどのように記載すればベストでしょうか?
ご相談の金銭を預る事務はよく耳にするところですが、本来ならば避けるべきと思慮します。宅地建物取引業法では、宅地又は建物の取引に際し、宅建業者が当事者として金銭を受領もしくは預る行為についての規定(法41条41条の2、64条の3第2項)はなされていますが、本件のように不動産の契約とはある意味別の行為で生ずる債権債務関係における業者の介在を規定するものは無く、一般法に委ねるところとなります。例えば当該行為を不動産の契約とは別の労務提供契約と見るならば、保証協会の業務(弁済業務・一般保証業務)の対象とならないと考えられ、宅建業者が事故(使い込みなど)を起こしても消費者は救済されないということです。
しかし、当該金銭を預る行為が法律で禁止されているわけではありませんので、止むを得ず当該行為をなそうとする場合は、以下の点に十分注意して下さい。

まず、手付金とありますが、停止条件付売買契約を行うのであれば、条件が満たされるまでの間は手付金としての効力が生じないものとなることに注意が必要です。

特約条項記載例
  1. 本契約は売買代金に対し売主の債務(本物件の完全な所有権移転を阻害する売主の負担の抹消に要する金銭の額。以下当該債務という)が超過しているため、当該債務の除去を停止条件として本契約を締結する。
  2. 買主は、本契約締結と同時に手付金相当額として○○万円を売主に差し入れるものとするが、当該手付金は前条の条件成就に至るまでは手付金としての性格を有しない。
  3. 売主は、本契約締結と同時に買主が差し入れた手付金相当額を、本契約の媒介を行った○○株式会社に預託するものとし、○○株式会社は金銭預かり証を交付する。
  4. 第1条の条件が不成就により本契約の無効が確定したときは、売主は受領済みの金員を無利息にて直ちに買主に返還しなければならず、売主又は買主の損害賠償の請求は効力を生じない。ただし、条件の成否が確定するまでに売主又は買主が契約の履行を中止したときは、手付金相当額を違約金として取り扱う。

別途契約の必要性
保証協会では、売主と媒介業者の間に手付金相当額の金銭の預託に関して、別途労務提供契約が生じる可能性を検討し始めています。これは本件売買契約とは別個の契約であり、売主のお金を預ることだけが目的となりますので、注意すべきは、契約の無効が確定又は違約となった場合の取り扱いです。媒介業者は、あくまで売主が受領すべき金銭を保管しているだけですから、勝手に買主に返還するなどした場合、売主から異議が出ることも考慮しなければなりません。従って、当該労務の提供契約も書面で別途取り交わしておくことが望まれます。
2012.4.24
▲一覧に戻る
擁壁のある宅地の売買・・・「現状有姿」はとっても危険!
石積み擁壁のある宅地の売買仲介をします。道路面との高低差は2m以上あると思います。水抜きの穴は5箇所確認が出来、雨の日などはそこから水が出ていることも確認しています。現在、木造2階建の住宅が建っていますが、買主さんはこれを壊して新しい家を新築するそうです。売主はこの土地を大手建設会社から新興住宅地の分譲地として購入し、30年が経っています。重要事項の説明に際し、この擁壁を現状有姿として売主の担保責任を免除する旨説明しますが、問題ないでしょうか。
まず、本件土地は大手建設会社の分譲地とありますので、宅地造成に係る開発許可(都市計画法29条)を受けたものであると推測します。宅地造成等規正法に基づき都道府県又は権限のある市区町村長により指定された「宅地造成規制区域」内に所在する土地であっても、前記開発許可に適合した造成地は擁壁に関して「宅地造成等規制法」に係る特段の許可は不要ですが、本件土地の擁壁が施工された当時の確認申請(工作物)及び検査済み証があるはずですので、所轄行政庁で調査し、その内容(当時の工事内容:擁壁の寸法及び勾配、擁壁の材料の種類及び寸法、裏込めコンクリートの寸法、透水層の位置及び寸法、擁壁を設置する前後の地盤面、基礎地盤の土質並びに基礎ぐいの位置、材料及び寸法及び擁壁の高さ、水抜き穴の位置、材料及び内径並びに透水層の位置及び寸法等調査可能な範囲)を重要事項として記載してください。 併せて、本件擁壁の全部もしくは一部を取り壊し、新たに築造する場合の許可申請の要否等も説明する必要が生じます。

更に、本件買主が当該宅地に新に建築をなすことが明らかであることから、擁壁強度も含めた地盤調査(地耐力)を助言することも大切です。その上で、売主は当該宅地地盤に関する瑕疵の免責を特約し、買主の承諾を得ることが肝要です。ただし、買主が調査し、当初の契約目的(建築計画)が達せられないほどの調査結果が出たときは、契約が無効とされることもありますので、特約が万能というわけではありません。

とにかく最近は集中豪雨や大規模地震など、自然災害に関するユーザーの関心も非常に高く、がけ崩れや土砂流出等、本件土地に被害が出ることも予想されますので、そういったときに説明不備を持ち出されて仲介者の責任もしくは売主の瑕疵担保責任を追及されかねませんので注意が必要です。
2012.3.27
▲一覧に戻る
解体予定の建物(古家)付き土地・・・
完成物件と未完成物件の定義は?
古家付きの土地売買における更地渡し特約上の取扱は、未完成物件に該当するか否か、また手付の額の制限の規定に抵触するか否かをお聞きします。
最近、業者の忘年会で議論が白熱しました!土地を目的とする場合、地上建物を現状有姿で引き渡すなら戸建の売買と同じだから完成物件であるという意見や、建物は取引の目的ではないから、解体して更地渡しを売主負担とするなら、業者売主の場合、未完成物件では?とかです。どうか明快にご教示下さい。
本件ご相談の前提として、まず宅地建物取引業法下における完成・未完成を定義するとき、法第33条、第35条第1項5号、第36条、第41条第1項に「宅地の造成又は建築に関する工事の完了前」という件(くだり)が登場しますのでこれによります。
不動産業務においては「未完成」という言葉を用いているようですが、上記にあるとおり法律では「工事の完了前」と言っています。すなわち、取引の対象となる部分全ての工事が完了していなければ、その部分については未完成であるとされ(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方:平成13年1月6日国土交通省総動発第三号)、重要事項の説明における引き渡す際の形状・構造等の説明(宅地建物取引業法施行規則第16条)、広告開始時期の制限(許認可要件)や、手附の保全措置に係る額の制限等、業務において規制の対象となる基準に採用されています。
次に、用語の定義として、「宅地の造成」とは土地の形質の変更で、具体的には切土もしくは盛土、整地に係る工事(宅地に接する道路の認可等も含む)の施工を言います。又「建築に関する工事」とは、建築(建物を造り上げることもしくは構造物の計画、設計、施工)の概念に添った実際の工事を言います。
つまり、完成か未完成かの判断は、取引の対象物件に掛かる上記工事が全て完了したか否かの時点ということになります。

そこで本件について考察しますと、取引の対象が土地であり、地上に付帯する構造物及び付属物は引き渡しまでに撤去する特約の在るところ、当該撤去に係る工事が前述した宅地の造成もしくは建築に該当するか否かという判断が一つの方法と言えます。その場合、本件建物解体工事は「宅地の造成又は建築の工事」に当たらず、本件は未完成物件ではないという結論を導きます。つまり、業法上の規定による手附の保全及び額の制限(法41条)を考慮するとき、同法に規定する工事の完了前という概念を採用することは当然であり、当該取引において本物件が工事完了前であるという根拠は導き出せないことになります。

しかし一方で、本件土地取引が当該土地上に住宅を建築することを条件として契約されるものであり、住宅建築請負契約の締結を条件に掛からしめるものであるような場合、建築工事の着手における作業の障害となる地上構造物が残存している状態で、「完成宅地」と言えるか否かが問題となります。
不動産の広告規制を定めた自主規制団体である公正取引協議会の表示規約第18条第1項(5)によれば、宅地の造成工事の完了とは、「宅地上に建物を直ちに建築することができる状態に至ったことをいい」と定義されています。この規程は宅地建物取引業法それ自体を制限するものではありませんが、いずれも宅地建物取引の安全と消費者利益の保護に資する目的で運用されているものであり、本件のように特殊な形態の取引(業者売主、建築条件付帯契約)においては、なお同趣旨に鑑みて相手方を保護する必要性が生じるとも言えます。

以上、異なる視点からの考察を経て、本件の回答としては、「当該取引の対象となる宅地の完成・未完成の判断は契約の目的によって考慮すべきところ、住宅建築請負契約を条件とするような取引においては、同地上に残存する構築物の解体撤去が終了した時点、すなわち、住宅建築請負契約に基づく建築工事の着工可能な状態を言い、それまでは未完成の宅地として取り扱うのが相当と思慮します。そのような場合においては、宅地建物取引業法41条各号に定める措置を講じた後でなければ、売買代金総額の100分の5を超え、もしくは1000万円(宅地建物取引業法施行令3条の2)を超える手付金を受領してはならないとする規定に準拠すべきが適当」と考えます。又、土地のみを取引の目的とした場合は、「現状有姿はもとより、更地渡し条件とした場合であっても、建物解体工事並びに整地工事は付帯条件に過ぎず、宅地そのものの造成には該当しないのであり、完成物件として差し支えない」と思慮します。
2011.12.27
▲一覧に戻る
駐車場斡旋行為の重要事項説明!
・・・宅建業法規定の取引とは?
いつもお世話になります。日々の業務の中でも結構頻度の高い、月極め駐車場の斡旋取引において、賃貸借契約の範疇だから「重要事項の説明」が必要という仲間の業者と、宅建業の規定に当てはまらない取引だから不要、という業者で意見が分かれます。実際、駐車場の賃貸契約を斡旋するとき、重説は必要ですか、不要ですか?教えてください。
駐車場の区画を管理・斡旋する行為は、宅建業者において有益な業務の一つとして定着しています。しかし、月極め駐車場の斡旋が主に宅建業者を介して行われているのはなぜなのか。言い換えれば、その行為は宅建業者でないとできない業務なのか?という視点から考えてみると、多くの業者が引っかかっている「駐車場斡旋行為と重要事項説明」という問題に結論を見出すことができます。

まず、駐車場の運営という貸主の立場で業を営むことは、宅建業法の関与するところではないことは当然です。しかし、貸主からの委託を受けて、代理もしくは媒介という態様で駐車場を斡旋する(手数料を得る)ことは、業として建物の一室を賃貸借の目的として斡旋することと類似した媒介業務であり、業法に規定される「宅地もしくは建物の売買、交換もしくは貸借の代理もしくは媒介をする行為」に該当するのではないかという見解が成立します。そこで「重要事項説明」が必要という結論に至るわけですが、そもそも宅建業法には、業の対象となる商品(宅地又は建物)の定義がなされており、その商品を取引の目的にするとき、という前提が存在します。

では、「月極め駐車場の1区画」が宅建業法の宅地に当たるか?という視点で検討してみます。
宅建業法2条1項1号に定義される宅地とは、
  • (1) 建物の敷地に供される土地(現に建物が建っている敷地、将来建物を建てる予定で取引する土地、及び建築予定が無くても建物を建てることが可能な土地を含む※)
  • (2) 都市計画法8条1項1号の用途地域内の土地(道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のもので地目の如何に係わらず、(1)の定義に当てはまるもの)
※一般的な宅建業法の参考書などには、「建物を建てることが可能な(可能になるものも含む)土地」という記述は見当たらないと思いますが、実務上では取引を行う際に宅建業者が関与し、業(利益を伴う商行為)として行なう場合、対象不動産の定義を拡大解釈することが重要な場合もありますのでこれを含みます。

この条文からすると、確かに街中に在る駐車場は「宅地」に当たります。しかし、月極め駐車場の区画を対象と限定したとき、「建物の敷地に供される土地」という概念を当てはめるには疑問(物理的な問題ではない)が生じます。
つまり、当該駐車場の目的は車両の一時保管であり、そのためだけのスペースの確保であるから、建物の敷地に供されることは絶対にない(=宅地には該当しない)ということになり、業法のいうところの「宅地の貸借」には当たらず、別の権利の貸借であるという概念が生まれます(駐車場利用権とか専用使用権などと称される)。そうすると、宅建業者が業法の規定に拘束される行為とは違い、業者でなくても取り扱える商行為であるということになり、上述した「宅建業者でしか駐車場の斡旋はできないのか」という問いに”NO”という答えが導かれることになります。従って、業法35条の説明及び書面交付義務は適用されず、重要事項説明をしなくても業法違反に問われることはない、といえることになります。

又、なぜ駐車場の管理は宅建業者が行っているか、との問いには、結局のところ土地を扱う行為に代わりはなく、駐車場(土地)=宅建業者という結びつきが最も自然であるので、このような慣習が定着しているものと思われます。

ただし、使用目的を駐車場に限るとした場合であっても、権利の設定が賃借権である土地の契約の代理・媒介は宅建業の取引に当たりますので、業法の適用を受けることは当然で、注意が必要です。
2011.11.29
▲一覧に戻る
建築条件付宅地契約の特約
・・・「条件」と「契約解除権」の使い方
建築条件付き土地の契約に際して、(1)土地契約より3カ月以内に工事請負契約を締結すること、(2)工事請負契約が成立せず、又は解除された場合は本契約を白紙解約とすることの条件を記載しようとしておりますが、どのような文言内容で契約書に記載すべきでしょうか?不動産売買契約書と重要事項説明書、工事請負契約書のすべてに入れたほうが良い文言もあれば教えていただけますようお願いします。
まず、建築条件【土地売買に関して、同地上に建築する建物の請負契約を締結することを一体として土地を売るという契約形態】について、厳格に定義することが後のトラブルを防ぐことに役立つと考えます。一般的に、宅地建物取引業者は、建築請負契約とセットの土地売買契約を「建築条件付」と表現していますが、法的な理論構成としては非常に曖昧であり、貴殿ご質問にもあるように、請負契約締結後の請負契約解除においての規定などは、約定されていないものが殆どです。従って、取り扱う当該契約を定義する必要があります。

1)建築条件の「条件」とは。
民法127条には、法律行為の効力の発生又は喪失を一定の条件に掛からしめる契約について、停止条件及び解除条件(同2項)の二つを規定しています。いずれの条件も、契約行為そのものの成立を左右するものではなく、条件を付した契約は、締結時点で有効な法律行為として成り立っているということを覚えておいて下さい。その上で、当該契約の条件(建築請負契約の締結)を(1)停止条件とするか、(2)同請負契約の不成立を解除条件とするのかを、契約当事者(売主・買主)の合意によって定めます。
  • (1)の場合は、売買契約締結後、請負契約締結までの間、売買契約の法的効果を停止するもので、請負契約が締結された時点で前記効果が有効に取り扱われます。
  • (2)の場合は、売買契約締結により有効に発揮された法的効果を、請負契約不成立という事態が確定した段階で失わせるものです。
具体的には、いずれの条件も土地売買契約の法的効果を、不測の事態が起こったときに「白紙状態」に戻すことが目的であれば、(1)、(2)のどちらかの条件を契約に付すことが望ましいと考えます。

2)工事請負契約が解除されたときにも土地売買契約を解除できるようにする。
前記「建築条件付売買契約」の条件は、建築請負契約の締結の可否に掛からしめる条件ですから、一旦請負契約が有効に成立した後に、当事者間において当該契約を解除した場合にも土地売買契約を当然に無効とすることには問題が残ります。このような事態をも想定して土地売買契約を締結するのであれば、土地売買契約の成立の条件と、条件成就後の契約の解除に対応する約定をしておく必要があります。

3)本件に関する具体的な特約
  1. 土地売買契約の条件の例文
    「本契約は、本物件土地上に買主が建築する住宅の建築請負契約の成立を停止条件として契約します。当該条件が本契約締結後3ヶ月以内に成就しなかったときは、本契約の無効が確定し、売主は受領済みの金員を無利息で直ちに買主に返還するものとします。この場合、売主の損害賠償請求権は当然に効力を生じません。」
  2. 請負契約成立後の取り扱い例文の1
    「前項に規定する条件成就後、建築工事着工前に当該建築請負契約が解除された場合、売主は本契約を解除することが出来ます。ただし、当該建築請負契約の解除の理由が買主の責めに帰するときは、違約金として本契約に定める手付金相当額を売主に支払い、売主の責めに帰する場合は、手付金の倍額を買主に支払って本契約を解除出来るものとします。」
  3. 請負契約成立後の取り扱い例文の2
    「本契約は、前項に規定する条件成就後、建築工事着工前に当該建築請負契約が解除され、買主において住宅の建築を行わないことが確定することを解除条件として契約します。条件成就をもって本契約は締結の時点に遡及して無効とし、売主は受領済みの金員を無利息で直ちに買主に返還するものとします。この場合、売主の損害賠償請求権も効力を失います。」
上記のとおり、建築行為の履行を前提とする土地売買契約であって、建築が履行されないときは、いかなる場合であっても「白紙」状態に戻すという場合、停止条件と解除条件を絡めた土地売買契約を締結することで、有効に成立した土地売買契約の効力を喪失させることも可能です。
しかし、実務的には建築請負契約成立後に、当事者が「土地売買契約の履行に着手する」という問題や、実費負担等の金銭的問題も生じますので、「2.例文1」のような解除権を留保させることも有効ではないかと考えます。

また、どの契約にどの特約を?というご質問に対しては、土地売買契約に条件を付す場合、当事者間の約定ですから「土地売買契約書」に特約すれば足ります(重要事項説明は、あくまで物件に関する調査報告ですので記載は求められません)が、契約に関する事項の内、契約解除に関する事項は重要事項の説明対象となっていますので、解除権留保の約定を採用するときは記載説明を要します。他方、建築請負契約書は建築に関する内容の取り決めですので、土地売買の条件等を記載する必要はありません。また、本件と反対の事態(建築請負契約は有効に成立したが、土地売買契約を解除したい)が生じた場合、建築物の敷地が無くなれば建築請負契約そのものの意味が失われ、当事者は当然に契約を解除しなければならなくなると考えますので、その場合を想定し、「本物件の敷地に供する土地の取得が不可能となった場合」の取り決めをされておくことは必要かと思慮します。
2011.10.25
▲一覧に戻る
一般媒介は「抜き放題」!?
他社が締結している一般媒介契約の物件ならば、実務上は売主(又は貸主)と客付け業者が元付け業者を介さずに契約を締結することができると思いますが、法律上や不動産業界での倫理上このような契約をすることは許されるのでしょうか?
つまり、レインズや他のサイトに載っている一般媒介の物件を、掲載業者を介さずに直接売主を突き止めてから仲介することで、業界内での風当たりが強くなってしまうことがあるのかどうかを知りたいのです。
媒介契約に関する法規制の目的は、宅地または建物の売買又は交換をなそうとする目的物の所有者が、宅建業者に対して契約の相手方の探索を依頼する場合、依頼を受けた業者は、書面を交付して媒介の契約を締結すること及び締結する媒介契約に関する内容と、媒介の種類(専任若しくは専属専任)に応じた当事者の義務を規定することで取引事故を未然に防ぐことにあり、あくまで消費者の自由な意思に基づく選択権について、その種類(専任、専属専任、その他)を区分していると理解しなければなりません(宅建業法34条の2)。
従って「法律上は」というならば、「専任媒介契約以外の媒介契約は、所有者が複数の業者と重ねて媒介契約を締結することが可能な契約であるから、結果として既存の元付け業者(他の媒介契約締結業者)を介さず契約の相手方を斡旋することも出来得る」ということであり、レインズや他の広告媒体などに掲出された物件を、「一般媒介」だからといってその所有者を調査し、直接取引をしてもかまわないという「抜き行為の容認」の意味はありません。

媒介契約の主体は常に消費者であって、貴社に対し消費者側から媒介契約の締結を依頼することが前提で、「一般媒介で出しているなら当社にもやらせてください」と業者側から媒介契約締結を迫ることを想定していないのであり、「準委任(民法656条)」と言われる所以です。ですから、指定流通機構の会員間取引規程や広告代理店等の利用規約等には、掲出物件の所有者に対する無断連絡を禁止するなどの規定が見られ、媒介契約の種類の如何を問わずそれらの行為を「抜き行為」と規定しています。

そこで、ご質問に対するアドバイスとしては、貴殿お察しのとおり、既出の一般媒介物件を、ネットワーク等を通じて知った場合に、その所有者等を独自に調査し、元付け業者の承諾なく媒介契約を締結したり直接取引をされたりしたときは、業界全体の慣習として「抜き行為」と看做され、トラブルに発展する公算も大きく、データ入手先から相応の勧告を受けることにも繋がりますので、勧められる手法とは言えません。倫理上を言うならば、貴殿が逆のお立場になってお考えいただいたとき、憤懣やるかたないお気持ちを抱かれると推察いたしますので、やはりそのような行為は慎むべきと思慮いたします。ご注意下さい。
2011.08.30
▲一覧に戻る
貸し駐車場の権利は?
・・・月極め駐車場の敷地売買と重要事項説明との関係
重要事項説明書の占有に関する事項の項目で、第三者の占有に関してお尋ねいたします。現状は駐車場として利用中の土地をこの度売買仲介いたします。引き渡し時までには駐車場契約を全て解約し、立ち退きしていただける予定です。
この場合、駐車場の賃借人は第三者に該当しますでしょうか?
また、該当するなら重要事項説明に駐車場賃借人の氏名・住所等全員分必要ですか?
何を記載するべきなのか教えてください。宜しくお願い致します。
宅建業法35条に規定される列記事項は、宅地建物取引業者の相手方または依頼者に対して説明すべき事項の最小限を規定したものに過ぎないことはご承知のことと思います。
同法35条各号には「第三者占有」について説明義務を明示した規定は見当たりませんが、第1項1号に「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名」および第14号「その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して」の規定に沿い、当該物件の購入者が所有権を取得するにあたって、その権利行使を阻害されるような権利が付随しておれば、契約の目的に多大な影響を及ぼすという観点から、地上権、質権、地役権、抵当権など登記可能な物権(物を直接的に支配する権利)や、登記の可否、有無に係わらず賃借権(賃貸借契約に基づく使用収益権)などに基づく占有が物件上に存在する場合、その内容を取引の相手方に知らせる必要があるのは当然と考えるからです。

では、本件ご相談の駐車場使用契約者は重要事項の説明書式が問うところの「第三者占有」に該当するのでしょうか?
法律的に結論を申しますと「占有」という部分では該当しません。「第三者」には売買契約の当事者以外の関係人であるという部分で該当しますが、この部分はそれほど重要ではありません(法的対抗要件を備えた第三者とは区別します)。

問題としなければならないのは、駐車場の契約者が本件土地を「占有」しているかという部分、言い換えれば駐車場使用契約に基づく利用権の排他性は認められるか、ということです。
貸駐車場としての契約の本質は、その土地で所定の時間(期間)自動車を保管することをその役務提供の内容とし、それに伴う対価を受領することです。当該契約の履行のためには、当然に一定の範囲の土地が必要となりますが、これは当該土地の排他的な独占権(占有権)や管理権を相手方に移転させたものではないということを理解しなければなりません。すなわち、駐車場の利用権は、その土地の利用そのものが目的であり、土地自体に権利が及ぶものではなく、結果として土地が利用されているにすぎないわけです。つまり、「占有権」を主張する場合は、占有ならしめる物権(本権)が必要であり、 駐車場使用契約は、契約であって物権の設定ではないということです。
以上が法律の解釈として押さえて頂きたい内容ですが、実務的にはどうでしょう?
法的には「占有」を認めない駐車場契約といえども、売買契約に基づく引渡しが行われた後もその土地に他人の自動車が居座っておれば当然トラブルになりますね。買主にとっては懸念材料であるということも理解できます。従って、「懇切丁寧」という次元での重要事項説明項目ではありますが、仲介業者として説明しておくほうが無難という考え方もあるのではないでしょうか。
2011.07.15
▲一覧に戻る
急ぐな!危険!・・・未完成物件の賃貸借契約
建物が未登記の新築マンションの賃貸借契約を仲介するにあたって重要事項の説明をしたいのですが、『改正民法395条・短期賃貸借制度の廃止』について相談させて頂きます。
現在地主所有の土地の上にマンションを建築中です。土地には、抵当権の設定がされているのですが、建物については登記申請中と言うことなので、登記簿の調査やその内容についての説明ができません。登記簿に記載された内容や、短期賃貸借制度の廃止等の説明は省いてもよいのでしょうか?
ご質問から推測いたしますに、土地に設定された抵当権は、当該建物建築に要する資金を調達された際の担保設定と思われます。従って、建物の所有権保存登記と同時に、抵当権の追加設定登記がなされますので、その手続き中の可能性が有ると思われます。その場合は『改正民法395条・短期賃貸借制度の廃止』の説明をしておかなければいけませんし、登記の内容についても調査し、説明する必要があると考えます。
結論から申し上げますと、賃貸契約そのものは、建物保存・設定登記完了までお待ちになられるべきと思います。何故なら、抵当権の実行による不動産の競売の場合に、その不動産の賃借人が競落人(買受人)に対して賃借権を主張することが出来るか、出来ないか(改正民法395条の明渡し猶予制度の適用)は、賃貸借契約を締結して引渡を受けた(鍵を受け取った)日と抵当権の設定登記がされた日と、どちらが早いかで決まります(早いほうが優先します)。つまり、賃貸借契約を締結して引渡を受けたのが、抵当権の登記よりも早ければ、賃借人は買受人に対しても賃借権を主張して従前と同様に賃貸借契約に定められた期間は借り続けることが出来るからです。
一方、本物件に担保を設定した抵当権者(金融機関等)は、当該資金の融資に当たり、順位1番の抵当権を設定できること、抵当権の実行を阻害する他の権利が先順位で設定または存在していないことなどを条件として融資を承認している場合がほとんどです。従って、本件のように建物に対する担保設定より以前に、賃借権が設定(建物引渡し)されることは予測していないと考えられ、後に金銭消費貸借契約に反すると問題(要は違約、金返せ)になる可能性があります。このようなケースで、賃貸仲介業者は、契約の時系に特段の配慮を持ち合わせておられない場合が多いと思慮しますが、契約を急ぐあまり、大切な部分を見落とし、後に大きなトラブルとならぬようご配慮願います。
2011.01.31
▲一覧に戻る
重要事項の説明責任…瑕疵担保は要?不要?
いつもありがとうございます。全日会員です。一戸建ての契約書類を作っていますが、瑕疵担保の説明はどこで行なえばよいのでしょうか。重要事項説明書の雛形には「瑕疵担保責任の履行に関する措置」について書く欄はありますが、措置を講じないとチェックするとそれで瑕疵担保責任が免除されるように見えます。業者が売主の場合の瑕疵担保責任(引渡しより2年間)の説明箇所がありませんし、売買契約書には、「建物については」との断りがついています。土地の瑕疵担保責任は説明しなくてもよいのでしょうか?
重要事項説明書(宅建業法35条書面)、売買契約書(法37条書面)において宅地もしくは建物の瑕疵を担保すべき定めの説明及び記載について、法律(法令等含む)では次のように規定されています。まず宅地建物取引業法第35条第1項13号(重要事項の説明)
13.当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要。次に法37条書面作成においては、宅地建物取引業法第37条第1項11号で、11.当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容。
従って、ご相談に対する回答として法律は、重要事項説明書においては、瑕疵を担保するために省令、府令で定められたものの内、別途締結する保証保険契約や、保証委託契約または責任保険契約等があるか否か、及びある場合にはその契約内容としています。ただし、法35条第1項において、「少なくとも次に揚げる事項」とし、1項14号においては「その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性」といっていることから、法35条各列記事項に係わらず個別に必要と思われる事項や、特に消費者が欲する情報等は重要事項に当たるとされていますので、重要事項説明書に記載し説明することに何ら問題はありません。また契約書の特約に使われる「瑕疵担保責任」項の一般的条文には、ご指摘のように建物についてのみ定める責任の履行範囲を記載する傾向が有ります。従って契約書に特約されていない宅地についての瑕疵担保責任の履行とその範囲については、民法上の規定が適用されると解釈され、瑕疵を発見してから1年以内に相手方から請求されれば、その瑕疵を修補又は損害を賠償する責めを負うことになります。建物と比較しても瑕疵を予め特定することが難しいのでそのような慣習的取扱となっていると思われますが、宅建業者売主で2年間の特約期限を設けることは有効(法40条)です。その場合は出来る限りの調査(土壌汚染、地中埋設物、測量、筆界境界確定、地下坑道、配管埋設、心理的瑕疵など)を行ない、充分にその責務を果たすことが重要で、怠ると特約期間経過後であっても、特約が無効とされることもあることに注意が必要です。
2010.11.04
▲一覧に戻る
賃貸住宅管理業者の登録制度とは?
大阪市内で主に賃貸仲介と管理を取り扱っている者ですが、先般国土交通省から「賃貸住宅管理業の適正な運営確保」を目的とする賃貸管理業者登録制度を実施するとニュースで聞きました。どのような内容で、業者はどう対応すればよいのか、是非教えてください。
国土交通省より、平成22年3月末、賃貸住宅管理業者登録制度が公表されました。法律ではなく、国土交通省告示という省内規定により制度運営を開始することが予定されていますが、賃貸管理業者の業務に重大な影響を及ぼすと考えられますので、登録制度の施行前に十分に内容を理解しておく必要があると思います。
制度の目的は、登録事業者の業務についてルールを定め、業務を適正化させて消費者の保護を図るというものですが、対象範囲には居住用賃貸物件の管理、サブリース業に限られ、事業用賃貸物件専門の管理業者や貸家業(自ら貸主)は今回の制度の対象とはなっていません。制度の内容としては、任意登録制ですが、宅地建物取引業者の免許の基準又はマンション管理業者の登録拒否要件(成年被後見人、破産者・禁錮以上の刑に処せられ2年未経過の者、暴力団関係者等)などと同様、人的要件などの登録要件を設け、管理業務基準(業務処理準則)を遵守することが求められています。ルールに違反し、もしくは不正・不当な行為をした者への罰則は当然ありませんが、登録の削除(強制)と一定期間の再登録禁止などが盛り込まれ、消費者に対する注意喚起材料と期待されています。また、管理業登録業者には、毎事業年度決算終了後3ヶ月以内に国土交通大臣に対し業務内容と財産状況の報告が義務付けられ、法令違反や財産状況による業務改善を指導、監督されることになっています。
更に登録事業者には、賃借人へ向けた管理業務内容の書面交付や、賃貸人に対する管理受託内容の重要事項説明と書面交付、サブリース業者には転借人に対する賃貸借契約内容の重要事項説明と同書面交付を義務付けるなど、今までとは格段に業務内容が増加しますので、その対応を準備する必要があります。ただし、この制度自体、運用と並行して関係者や一般消費者からのパブリックコメントを募集し、改善を図っていくとしており、また賃貸管理業関係団体からは法制化を望む声も上がっているなど、民法、借地借家法、宅地建物取引業法などの関係法令との整合性も含め、今後更に検討が加えられていくことが考えられます。
2010.06.03
▲一覧に戻る
瑕疵担保責任の履行に関する措置の説明とは?
兵庫県内で仲介を主に取り扱っている業者です。昨年の10月1日に施行された「特定住宅の瑕疵担保責任の履行に関する法律」によって、我々仲介業者も重要事項説明の際に売主の瑕疵担保責任について説明するようになっていますが、それまでの瑕疵担保責任の説明と今回の法律と併せてどう説明すればよいのか、混同してうまく書類に書けないのですが、ご教示願います。
今回のご質問、実は会員諸氏から「重要事項説明書の記載方法がもうひとつわからない」部分として多くのお問い合わせを頂いていますので、今一度、法体系と宅地建物取引業法(以下業法)35条書面の記載方法を整理してみましょう。
  1. (1)瑕疵担保責任とは
    先ず、不動産の瑕疵担保責任は民法570条により売主が負うものとして定められており、買主がその事実を知ったときから1年以内に売主に対し、契約の解除又は損害賠償の請求を認めていること(民法566条)はご承知のことと思います。この部分はいわゆる重要事項の説明においてではなく、売買契約書(業法37条書面)に記載すべき内容として取り扱っているのが実務です。
  2. (2)瑕疵担保責任の履行に関する措置
    しかし、平成12年4月1日施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下品確法)」で、新築住宅の取得に関して瑕疵担保責任の特例(10年間の修補義務)が設けられ、平成18年6月21日に「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律」の公布により、業法関係では『当該宅地又は建物に関し、重要事項の説明事項に瑕疵を担保すべき責任の履行に関し、保証保険契約の締結等の措置を講ずるかどうか及び講ずる場合における措置の概要』が新たに追加されました。
  3. (3)特定住宅の瑕疵担保責任
    更に、品確法の規定をより実効性のあるものとするために、新築住宅(平成21年10月1日以降に引き渡される新築住宅=特定住宅)の施工者、売主に対して10年間の瑕疵修補に耐え得る資力の確保を義務付ける「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が平成21年10月1日から施行されています。(新築住宅=竣工後1年未満の未入居住宅)
つまり、宅建業者が重要事項の説明を行なう場合、上記(2)、(3)の説明義務を負い、(2)の説明は新築住宅のみならず、中古住宅や宅地にも適用があることに注意が必要です。従って、35条書面では、土地建物について調査した(2)の内容を説明し、当該住宅が特定住宅であれば(3)の説明も必要になりますので、該当する不動産ごとに記載するなど書面を整理すると、スムーズな説明ができるのではないでしょうか。
2010.03.01
▲一覧に戻る
現在の仕事をしながら不動産業を始めることはできるの?
私は現在、会社員をしています。いずれ起業をと考えているのですが、今は資金も乏しく不況で貯金もなかなか増えません。お金を余り使わず、今の勤務先も辞めずに不動産業を始めることは出来ますか?
まず宅建業は許認可業種ですので当然免許を取得する必要があります。免許取得に必須の条件が(1)供託金1000万円または国土交通省指定の保証協会加盟(弁済業務保証金分担金60万円+協会諸経費100万円程度潤オ所属県によって差異があります)(2)従業者5名あたり1名の宅地建物取引主任者)(3)事務所(行政庁により定められた所定の体裁)です。
  1. (1)については、資金の問題がおありのようですので、社団法人不動産保証協会への加盟となります。ただし、保証協会では資金の貸付や分割支払は法律で禁じられていますのでご自身でご用意いただく必要があります。
  2. (2)は、開業場所の都道府県によって管轄する協会の窓口が異なりますので、当協会・近畿流通センターホームページの「開業をお考えの方へ」ボタンからご確認頂きお気軽にお電話ください。
  3. (3)ですが、宅建業は厳格に規定された事務所形態を整えなければ免許の認可が下りません。ご自宅でも申請は可能ですが、独立した事務所(例えば喫茶店の片隅で事務所を兼ねるなど、境目が明確でない事務所は不可)に接客スペース、専用回線の電話、FAXが確認でき、外部(建物の外)から宅建業の事務所であることが確認できるよう、看板や業者票と呼ばれる事業者の内容を記した表札を掲げなければなりません。したがって、開業資金の最低限度(全日本不動産協会(関連団体含む)、不動産保証協会への加盟料と保証金分担金、事務所の体裁を整えるための経費など)の金銭は必要となります。
また、貴殿は現在会社員ということですが、貴殿が専任取引主任者を兼ねるのであれば、兼業は許されません。他に専任取引主任者を雇用する場合、法人免許の場合は代表者であっても非常勤が許されますが、政令使用人を届け出る必要があります。また、個人免許の場合は代表者の非常勤は認められておりませんので兼業は不可ということになります。
2010.02.08
▲一覧に戻る
入居差別の罪と罰…仲介会社の立場は?
滋賀県で賃貸仲介をメインで業を営んでいます。近隣に有名大学が数校あり、最近は留学生も部屋を探しに来ますが、管理物件のオーナー様の中には「外国人」に対する入居条件や審査にかなり神経を遣われる方がおられ、特に国籍によっては私どもに「断ってくれ」と審査も拒否されることもあります。弊社ではやんわりと「人権擁護」をお話しますが、その時代の教育を受けられた方は、「文化が違うと入居者同士のトラブルになる」「滞納賃料を精算せずに国へ帰られたら請求出来ない」などの理由でかたくなに拒みます。営業担当もトラブルを回避する方が得策と、最近は外国人に積極的ではなくなっており、頭を悩ませています。
年末も押し迫って来ますと、賃貸専科の会員諸氏はシーズンに備えて忙しく物件の整理をなされていることと思います。最近は大学や企業も随分国際化が浸透し、多くの留学生やビジネスマンが日本に滞在するための住居を必要としています。「人種」「国籍」「言語」などの別に捉われず、日本人と同じ扱いで住居の斡旋を行なうことは当然のこととされていますが、現実はまだまだご相談の内容に近いこの国の実情が見て取れます。仲介会社の方々はこぞって「差別」はしていないが家主がダメだと言うものを無理に斡旋できないと困惑顔で語られます。また同じ日本人でありながら、出身地や職業、性別、過去の経歴などによる「差別」もまだまだ存在しています。

不動産業実務における差別的取扱いの撤廃には、当協会も随分以前から法務省や関係官庁と協力し会員の意識啓発に力を入れておりますが、契約行為を司る私法の大原則としての「私的自治の原則」、憲法の趣旨としての「思想・言論の自由」も保障されなければならず、鶏と卵のような論争に終始してしまい、この種の裁判でも、国及び地方行政や仲介会社の責任論には言及せずに、殆ど「契約締結過程における信義則上の義務違反」を理由に不法行為による損害賠償を認めるに留まる判決になっています。いわゆる「差別」行為そのものの法的裁量(憲法、国際規約などに基づく違法性)には踏み込んでいないのが司法判断の現状です。しかし2006年10月5日の尼崎差別事件大阪高裁判決では、「国籍による不当な入居差別は憲法14条1項に違反する」という判断を示して不法行為を認定。併せて家主における「不当な差別による拒否」に対して、仲介会社は撤回を求めて働きかける義務があるともしました。

四方を海に囲まれた日本は有史以来、政治上の単民族国家として歴史を重ねてきました。しかし現代社会は、国家民族の壁を越えた国際社会の一員としての自覚と認識を求めています。個人がどのような感性や思想信条を持とうとも、法律行為においては国際社会人として振舞うことが今や必要なのです。理屈ではなく、社会全体のルールとして確立された取扱いを徹底しなければ、この問題の着地点は見えてこないように思うのです。
(参考法令と国際条約:日本国憲法14条1項(法の下の平等)・国際人権A規約・同B規約・人種差別撤廃条約・東アジア居住福祉宣言)
2009.11.25
▲一覧に戻る
業者売主の瑕疵担保免責特約の効力・・・古家付きのリスクは?
大阪市内に土地(古家あり)を所有している不動産業者ですが、このたび購入希望者が現れたので、地上建物をこぼろう(解体)と段取りしていたところ、買主から「そのまま建物を壊さずに譲ってくれ」と言われました。当方では築年数不詳のオンボロですので、後から瑕疵や不具合を言われても困ります。土地だけの売買としたいのですが、買主が修理して利用したいということと、住宅ローンの関係で建物の登記も残さなければならず、法令違反にならぬよう瑕疵担保免責を約定したいのです。よろしくご教授下さい。
ご質問の文面から、貴殿は民法566条、570条及び宅地建物取引業法40条に規定された夫々の定めについて十分ご理解されたうえでのご質問と思慮いたします。今回、瑕疵担保責任についての説明は省略させていただき、核心の部分を検討してみることにします。

さて、宅地建物取引業法40条(強行規定)において否定される瑕疵担保責任の免責特約及び民法566条3項の期間の設定について2年以上とする特約以外の無効(同条2項)は、民法570条の「隠れたる瑕疵」について規定していることは言うまでもありません。「隠れたる瑕疵」とは、通常一般人が持ち得る注意を払っても発見できない程度の瑕疵を言い、目的物の売主が予め告知したものや契約の時点または目的物の引渡しに際して発見し得る程度のものは、後に発見されたとしても民法570条の適用を認めるものではありません。また宅地建物取引業法40条は、瑕疵担保責任の特約の制限をした場合の規定であり、特約がない場合には適用されないことも理解したうえで契約の方法を考えることが肝要です。以下、本件ご質問に対する契約内容を規定する場合のポイントを整理しておきますのでご参考下さい。

《本件特有の事情》
  1. (1)買主における契約の目的が建物利用であることは明白。
  2. (2)売主は本件建物に関し売買(対価)の対象と考えていない。
  3. (3)売主は不動産業者、買主は一般個人消費者である。

《契約規定の考察》
(1)、(3)により売主は消費者契約法も視野に買主が不測の損害を被らないよう配慮する必要性から、瑕疵担保責任の免責または制限を特約するのではなく、契約締結前に現地を見分する機会を与え、目視できない建物構造上の各部の瑕疵についてもその恐れがあることを予め告知した事実を書面に記し、且つ見分時点で発見できなかった瑕疵が後に露呈したとしても上記売主の告知内容に包括されるよう、(2)の建物を利用するリスクを買主が承知のうえで本件契約を締結する旨を明記した書面を取り交わすことが有効と考えます。
2009.10.8
▲一覧に戻る
特殊な取引形態の注意義務…仲介業務の範囲とは?
兵庫県宝塚市内で傾斜地の土地の媒介を受けましたが、宅地の殆どが斜面地であり、一般に売りに出してもなかなか買い手が見つかりそうも無く、売主と相談の上、建売業者に住宅を建築させて分譲住宅として販売する計画を立てました。金融機関から融資を受けるため、建売業者に土地の所有権をとりあえず移しましたが、その後、建売業者が倒産し、所有権を戻すために訴訟を起こさざるを得ず、その裁判費用を売主から請求されています。すべて売主の了解の下で行った事業なのに、仲介業者として責任を取らなければいけないのでしょうか。
不動産売買等の仲介契約は、準委任契約と解するのが通説・判例です。これにより、不動産仲介業者は、民法644条により善管注意義務を負います。本件取引が、外見上は建売事業の形態を採っていますが、実態は一般人の売主を巻き込んだかなり特殊な販売方法を採用しているために、当該売主に対する保護対策が万全であったかどうかを考えなければなりません。所有権を回復させるために、訴訟を起こさざるを得なかったとあるように、万が一の場面を想定した保全策を講じなかったと指摘されても仕方ない業務上の過失があるように思えます。当然、売主には「売れた時払い」の約束であったと思われ、代金の授受無しに所有権を移転させる荒業を行なうには、登記上のテクニックとして、いくつかの保全策を講じるべきではなかったかと考えます。宅地建物取引業者の注意義務の程度については、抽象的には「職務の専門性に鑑み高度のものが要求される」とされていますので、事故に遭遇してからでは遅いのです。

なお、ご質問にある売主からの賠償請求が、裁判に掛かった費用ということですが、法的な解釈はともかく、今回の取引事故の原因を考え、売主の責任と仲介業者の責任(信義誠実の原則も含め)の範囲を話し合い、費用の一部を負担されてはいかがでしょう。

本件の解決策とは少し趣旨が違いますが、訴訟費用についての通説・判例をご紹介しますと、一般的には「裁判費用」として提訴から判決にいたるまでの掛かる費用全てを捉えているようですが、民事訴訟で判決文に付される「訴訟費用はOOの負担とする」というところの訴訟費用は、敗訴した側が支払い義務を課されます。しかし、その内容は純粋に訴訟に要した(裁判所に支払った)費用と実費交通費等であり、弁護士に支払う弁護士報酬は含まないとしています。なぜなら、日本の裁判所では、「仮処分申請」も「訴えの提起(その後の訴訟遂行)」も、必ず弁護士を訴訟代理人としなければならないとはしていないからです。従って、弁護士費用を証明しても敗訴側にその費用までも賠償義務を負わせないのが通例です。
2009.4.7
▲一覧に戻る
「建築条件付宅地の売買」…表示規約上の注意点は!?
奈良県で不動産、建築を営む者ですが、建築条件を付した宅地を分譲しようとしています。最近、不動産公正取引協議会の表示規約が変更されたようですが、土地契約に停止条件をつける場合の注意点をご解説頂けないでしょうか。
不動産の広告を行おうとするとき、公正取引委員会を主務官庁とする業界の自主規制団体である「不動産公正取引協議会」(以下公取協)の定めた「不動産の表示に関する公正競争規約」(以下表示規約)に従わなければなりません。
ご質問の「建築条件付宅地」の販売については、これまで公取協の定めた表示規約にその規定はなく、同規約施行規則第3条(12)に定めた定義と表示方法に基づき、公取協の運用指針が示されていました。それによれば、購入者と売主事業者(子会社を含む)又は代理人間において建築請負契約を停止条件として土地を販売する場合は、土地購入契約締結後 3ヶ月以内に、売主(売主の100%出資子会社を含む)又はその代理人である建設業者による請負契約を締結すること、及び当該請負契約が成立しなかったときは無条件で受領金銭全部の返還を約することを表示し、当該土地の取引であることを明示すれば独占禁止法19条に抵触しないものと取り扱われていました。
現在では、平成17年11月10日公正取引委員会告示第23号における表示規約第3章(第6条関係・建築条件付土地取引における建物に関する表示)の追加を受けて、「建築条件付宅地」の販売に関する広告表示は以下のとおり規定されています(表示規約6条抜粋)。
  1. (1)次の事項について見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で表示
    1. ア. 取引の対象が建築条件付土地である旨
    2. イ. 建築請負契約を締結すべき期限(土地購入者が自己の希望する建物の設計協議をするために必要な相当の期間を経過した日以降に設定される期限)
    3. ウ. 建築条件が成就しない場合、土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、すべて遅滞なく返還する旨
    4. エ. 表示に係る建物の設計プランについて、次に掲げる事項
      1. (ア)設計プランは参考一例であって、当該プランを採用するか否かは土地購入者の自由な判断に委ねられている旨
      2. (イ)当該プランに係る建物の建築代金並びにこれ以外に必要となる費用の内容及びその額
  2. (2)土地取引に必要な表示事項(表示規約第8条)を満たしていること
2007.11.15
▲一覧に戻る
「登記中間省略における契約類型」…どんな場合にできるの?
以前、質問をさせていただいた大阪府本部会員です。不動産売買において、登記中間省略が再び出来るようになったことは解りましたが、そもそも中間省略は、主に我々業者が転売目的物件の経費節減のために使う手法で、通常は売主の不動産を出来るだけ安く購入し、買主を見つけて利益を上乗せして売却するわけですから、「第三者のためにする契約」とか「買主の地位を譲渡する契約」とか言われましても、それが何を意味しているのかが全く解りません。解りやすく教えてください。
売買とは、あるモノの所有者が「譲渡人」となり、そのモノを欲する相手方が「譲受人」となって相当対価を支払い、モノの所有権を移転せしむる法律行為を言います。
売主Aはモノを譲ることで金銭対価を得ることを目的とし、買主Bはモノの占有・使用・所有を目的とします。しかし、ご質問のケースでの買主Bの目的はモノの占有・使用・所有には無く、転売利益を得ることですから、当該「売買契約」も当事者の目的に沿って締結されるとするならば、買主Bが当該物件を別の誰か(第三者C)に売り渡すことを前提とした契約内容にすべきという考え方になるのは当然です。したがって、転売人Bの所有権を登記せずに第三者Cへ直接所有権登記を移転させる理由(登記原因)を「当該買主Bの譲受目的は第三者Cへの譲渡」とすることで、A-B,B-C間の物権変動(所有権移転)をAからCへの物権変動であると認めるとしたわけです(運用)。 一方、買主の地位の譲渡は、A-Bの売買契約において、同様にBの地位を譲渡することを予め約定し、第三者CがBの地位を譲り受けた場合、当該売買契約はA-C間で締結したものとするものです。いずれの場合も契約内容、登記原因情報共にそのことを明文化し、売主A及び第三者Cの承諾を得て登記を直接移転させることが前提となっています。したがって、よく行われている「転売利益を得る売却行為を売主には伏せたまま」の登記中間省略を容認したものでは無いので、A-B・B-C間においてそれぞれ別個の売買契約が成立する形態とするなら、現行の登記制度上やはりそれぞれに公示(登記)することが求められてしまいますので注意が必要です。
ただし、どちらの契約形態を採った場合でも、予め第三者Cの具体的な指定がなされている必要は無く、A-B間の代金決済後でも、Aに登記を留保したまま(二重譲渡又はAの債権者からの執行手続き等のリスクはあるが)転売先を探すことも出来ますし、Bに登記を移転(移転先をBに指定する意思表示要)することも出来ます。また、Aに対して新たな印鑑証明書等の登記必要書類の提出を請求することも可能です。
2007.7.31
▲一覧に戻る
建築途中に施主が失踪…工務店の悲劇!
兵庫県で不動産業と建築業を営むものです。先ごろ三田市内で地主さんからアパート建築の請負を頂き、5月には棟上げも終わり、現在内装工事の段階ですが、この度施主と連絡が取れなくなりました。自宅に伺っても、全く人の気配がしません。近所の方に尋ねると、「どこかへ引っ越した(夜逃げ)みたいだ」とのこと。請負代金もまだ50%ほどしかもらっておらず、これ以上工事も進められず、どうすればよいか途方にくれています。良いアドバイスを頂けないでしょうか。
建物建築請負契約や建売住宅の売買に関し、発注者や購入者の権利を保護するための法整備(住宅の品質確保の促進等に関する法律、建築物の安全確保を図るため建築基準法の一部を改正する法律等々)は着々と進んでいます。一方、発注者や購入者の破産、倒産や債務不履行に対する事業者側の対抗策は私法の定めるところによります。
本件の場合、まず、当該建物の所有権者は地主であることに注意して下さい。そのうえで、貴殿の有する債権(請負代金債権)に基づき、地主が未破産の現段階においては、本件建物(被担保債権の対象)について、貴殿に留置権(民法295条)が認められることに異論は無いと考えます(本件債権は当該建物の請負契約から生じた商事債権であるから商事留置権も成立し、建物も完成間近であることから、敷地についても留置権が認められるケースもある:新潟地長岡支判昭和四六年一一月一五日判時六八一号七二頁・商法521条)。
貴殿は、この留置権に基づき本件建物を占有(使用)することができ、地主に占有をもって対抗することができます。留置権は、物上代位性を有しない(債権者に処分権が認められない)担保物権ですが、貴殿が当該建物を利用して得た収益を、代金の弁済に優先充当するこができます。又、判例等の立場は、本件敷地及び当該地主に債権を有する第三者の競売による買受人は、留置権者が有する債権を弁済しなければ明渡しを請求できないとしています。留置権の成立要件は「債権が弁済期にあること」及び「留置権者占有」ですから、貴殿は残工事を請負契約に基づいて完了させ、他の債権者からの異議に対しては内容証明郵便等により留置権の主張をなすことが必要です。
建築請負と留置権の問題については、その敷地に関して未だ論争が絶えません。紛争ケース(注文者の破産、抵当権者の競売申し立て、商事留置権と民事留置権の関係、敷地に対する留置権の効力の問題等)によっては、その裁判例も異なっています。しかるべき手続に関しては、専門家にご相談されることをお勧めします。
2007.7.4
▲一覧に戻る
「中間省略復活!?」…登記中間省略とは!?認められた手法は?
大阪市内で不動産業を営む貴協会員です。不動産売買において、いわゆる登記中間省略が再び出来るようになるという情報を聞きました。本当ですか?以前から業を営む者にとって当たり前に行なってきた中間省略が出来なくなったり、また出来るようになったり、一体どういう流れで解釈が変わってきたのか、その全貌を教えてください。
法務省民事局民事第二課は、「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申(平成18年12月25日)第 III章の11住宅・土地分野(2)登記制度の運用改善」の中で規制改革・民間開放推進会議、住宅・土地ワーキンググループが指摘した「甲乙丙三者が関与する売買契約であっても、第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権移転登記、又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権移転登記の可否につき、具体的な登記原因証明情報の明示があればいずれも可能である」という旨の内容につき、同ワーキンググループが照会(平成18年12月21日)したことを受け、「見解のとおり」とする回答を示しました(平成18年12月22日法務省民二第2878号)。これにより、現場における取り扱いについて、誤解や不一致の生ずることがないよう、照会・回答の内容を周知するため、平成19年1月10日付けで各登記所、日本司法書士会連合会、不動産取引関連団体に同内容の通知文書を送付しました。
この通知により、ご質問者の言われる「登記の中間省略」が一定の要件の下、事実上可能(復活?)となったのです。今回は、紙面の都合上、過去に「中間省略登記」が利用されるに至った経緯と法的見解を解説します。
本来、「権利に関する登記」とは、民法177条「不動産に関する物権の得喪・変更は、不動産登記法に従い登記をしなければ第三者に対抗できない」という規定が基礎になっています。つまり、物権の得喪・変更=変動した事実を登記するわけですから、登記原因なるものを必ず記載することが要求されています。このような仕組みから、AB間の売買があり、すぐにBC間の売買が行なわれたからといって、AC間で直接所有権の移転登記をすることは、元々許されてはいなかったのです(AC間には原因が無い)。これは不動産登記法の改正前後、不変の原則です。
しかし、最高裁判例(昭和40年9月)が三者の関与する売買契約において、現名義人と中間者の合意があれば、直接第三取得者に所有権登記の移転をなすことを認めたことや、改正(平成17年3月7日)前の実務においては、登記原因を証する書面を必須とせず、登記申請書の副本における申請を受理していたことなどを理由として、主に登録免許税や登記事務手数料、不動産取得税などの軽減を目的とする「登記中間省略」が頻繁に行なわれてきました。

「復活?」したと言われる中間省略登記の具体的申請の方法と、なぜそれが許されるのか(法務局が受理する理由)を解説します。
中間省略登記は、主に、A-B-Cと順次所有権が移転した物権変動の過程において、なおAに登記が存する場合、A-Cに直接移転登記をなすことを言います。平成16年の不動産登記法改正により、所有権の移転に関して「登記原因証明情報」の添付が必須となったため、A-B、B-C間の物権変動が明らかにされ、法の規定に従いそれぞれに公示(登記)することが求められることとなりました。これにより、上記のようなA-Cへの直接の所有権移転登記は認められなくなりました。しかし、「第三者のためにする契約」や「買主の地位を譲渡する契約」など、一定の類型の契約により実体上もA-Cと直接所有権が移転した場合には、現行制度の下でも直接の移転登記の申請は有効であることや、不動産の流動化、土地有効利用促進の観点から、現場取引の費用低減ニーズに応える必要もあるとして、登記制度を所管する法務省は一定の類型に該当する各申請があった場合、具体的な「登記原因証明情報」の明示をもとに、いずれも可能であるという見解を示しました。以下、その登記申請における具体的ポイントのみを記しておきますので、十分ご理解のうえご活用下さい。
「第三者のためにする契約・登記原因証明情報」記載例
  1. A-B間売買契約において、「買主(B)の指定する者に所有権を移転する」及び「買主(B)への所有権移転は、B自らを指定する意思表示があった場合とする」旨の特約を付し(所有権留保特約)、原因証明情報に記載する。
  2. 「所有権の移転先をCと指定する」旨の意思表示を原因証明情報に記載する。
  3. B-C間売買契約において「Cは登記名義人Aから直接所有権の移転を受ける意思表示をAに対してした」(受益の意思表示)ことを原因証明情報に記載する。
  4. BからAに対して代金の支払いがあったこと及びAからCへの所有権が移転したことを原因証明情報に記載する。
2007.6.25
▲一覧に戻る
「インターネット広告の情報メンテナンス」…ほったらかしはおとり広告?
弊社は奈良市で賃貸仲介を専門とする不動産会社です。最近は物件広告の90%をインターネット媒体に依存していますが、データメンテナンスに社内規定を設けており、1ケ月に1度、すべての物件情報をクリーニングしています。しかし、ある広告サイトが1週間という短い期間で情報精査を要求してきました。弊社では常時2,000物件ほどの登録があるため今までどおり、月に一度ぐらいの一括処理を行いたいのですが、公取規約に反するおそれがあると言われました。
その根拠になる公取規約の内容を教えてください。
固定式の看板広告やインターネットによる物件情報広告など、長期間にわたって継続表示が可能な媒体は一過性の媒体に比べ、費用対効果が優れているため有効な広告手段として利用されています。しかし、長期間、物件情報のメンテナンスを怠ると、条件変更や成約済み等の修正に対応できず、ユーザーの不信感を引き起こす原因となります。

特にインターネット広告では、情報の即時性、新鮮さが求められていますので、速やかにデータ修正、成約登録などの処理が必要です。
そこで、不動産公正取引協議会連合会では「不動産の表示に関する公正競争規約(平成17年11月10日公正取引委員会告示第23号)」第24条において「表示の修正・取りやめ及び取引の変更等の公示」の規定を設け、これに違反したとみなされる場合は、同規約第21条の「おとり広告」(21条2号・物件は存在するが実際に取引の対象となり得ない物件の表示)にあたるとして、警告または50万円以下の違約金を課すことにしています。更にこの警告に従わないときは、500万円以下の違約金を課し、協議会会員資格の停止または、除名並びに公正取引委員会への告発と、非常に重大な違反として取り扱いますので特に注意が必要です。

インターネット広告を取り扱う不動産物件情報サイトの運営会社では、最近のユーザー反響を受けて、情報掲載に関する規定を厳しくするところが増えてきているようです。有名なところではYahoo不動産が先物(業物)掲載は不可としたり、不動産ポータルサイトのHOME’sが物件掲載期間を30日から7日に変更するなどの動きが見られます。賃貸居住用の物件広告については概して成約速度が速く、データの陳腐化が起こりやすいことから、一般ユーザーの信頼を得るためにもデータメンテナンスは迅速に対応し、不要なトラブルを避けていただきたいと思っています。
2006.10.15
▲一覧に戻る
「耐震診断の調査・報告」・・・続・重要事項説明はどうする?
法改正後の重要事項説明について、もう一つの問題である「耐震診断の内容」についても併せて解説いただきたく、お願い致します。
まず、宅地建物取引業法第35条第1項第12号に規定する「国土交通省令に定める事項」として宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2第3号に、(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く)すべて(用途の別を問わず)の建物について、売買又は交換及び売買又は賃借の媒介の契約に際し、法35条の説明義務を負う業者が、建築物の耐震改修の促進に関する法律第4条第2項第3号の技術上の指針となるべき事項に基づいて指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体が行った耐震診断を行った記録が残っているかどうかを、石綿(アスベスト)の問題と同じく、売主及び所有者に、又区分所有建物の場合は管理組合、管理会社及び施工会社にも確認します。
  1. 耐震診断無しの場合:売主(所有者、区分所有建物の場合は管理組合及び管理会社・施工会社)に耐震診断の有無を確認した結果、当該診断の事実は無し(又は不明)とのことでした。したがって、専門機関による診断をご希望であれば、買主(借主)様の負担においてご依頼いただくことになります。
  2. 耐震診断有りの場合:下記(1)潤オ(5)の書面による記録を添付資料として提示説明してください。
    1. (1)住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1項に規定する住宅性能評価書(構造躯体の倒壊防止に対する耐震等級に係る評価を受けているものに限る)
    2. (2)地方税法施行規則第7条の6の2第2項に規定する書類(耐震基準適合証明書もしくは(1)の性能評価書)
    3. (3)租税特別措置法施行規則第18条の4第2項、同条の21第1項、第23条の6第3項第2号に規定する書類(耐震基準適合証明書もしくは(1)の性能評価書)
    4. (4)指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体が行った耐震診断結果評価書
    5. (5)建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第120号)の施行前に行った耐震診断について、改正前の同法第3条(特定建築物の耐震診断及び耐震改修の指針・平成7年建設省告示第2089号)に基づいた耐震診断であり、その実施主体が上記(4)に揚げる者が行った耐震診断結果評価書
2006.8.15
▲一覧に戻る
「石綿(アスベスト)問題の対応」・・重要事項説明はどうする?
はじめまして、昨今問題となっております石綿・アスベスト問題ですが、法改正後の重要事項説明についてわかりやすく解説いただけないでしょうか。
ご質問の件については、種々の解説書や記事が出ております。しかし、ほとんどの解説が改正趣旨と最低限の説明範囲を示すにとどまっておりますので、実際の現場でお客様から突っ込まれないような説明致します。
今回の改正宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2のポイントは、すべての建物について、売買又は交換及び売買又は賃借の媒介の契約に際し、法35条の説明義務を負う業者が、まず当該建物に石綿(アスベスト)が使用されているか否かを調査した記録が残っているかどうかを売主及び所有者に、又区分所有建物の場合は管理組合、管理会社及び施行会社にも確認します。
  1. 調査記録無しの場合:上記の調査結果、調査の事実は不明とのことでした。したがって、当該建物については石綿(アスベスト)含有建材等が使用されている可能性はあります。専門業者による調査をご希望であれば、買主(借主)様の負担においてご依頼いただくことになります。
  2. 調査記録有りの場合:書面による記録が存在し、係る内容が容易に確認できる記録が残っておれば、その書類を添付資料として提示説明してください。それ以外は、調査の実施機関名・調査範囲(一部分の場合はその旨特に明記)・調査の年月日(後に増改築等があればその部分についての調査記録の有無)・石綿(アスベスト)使用箇所、含有建材等の有無の4項目について説明します。そのうち一つでも不明な項目があれば、売主(所有者)等に補足の報告を求め、その事実を説明します。
最後に、いずれの場合であっても当該説明を売主(所有者及び関係機関含む)側からの提出資料等に基づき調査を行った場合は、その調査記録は売主等の責任下において為されたものであることを付け加えておくと後日の紛争防止に繋がると考えます(国土交通省総動発第82号平成18年3月17日参照)。
2006.7.15
▲一覧に戻る
「広告規約・大改正」…必ずチェックを?
京都市内で仲介業を営む事業者です。昨年、私たち全日本不動産協会会員が所属する不動産公正取引協議会(公取協)において、不動産の広告に関する表示規約が大幅に改正されたとありましたが、弊社では最近インターネットによる物件広告を多用していますので、特にそのあたりでの注意点を具体的に解説頂けませんでしょうか。
「不動産公正取引協議会連合会」は、消費者ニーズの変化や多様化等に伴う不動産取引市場の変化等に対応し、「不動産の表示規約」(以下表示規約という)を見直し、(1)事業者の理解と検索・引用がしやすいような構成、(2)過剰な規制の整理、(3)新たな問題に対応する規定の追加・整備、(4)公正で効率的な措置手続きの整備等の変更を行い平成17年11月9日付けで公正取引委員会の認定を受け、平成18年1月4日から施行しました。

変更点の詳細は紙面の都合上、変更後の規約並びに各府県本部から配布された小冊子「不動産の公正競争規約」をご熟読ください。
その上で今回の改正のうち、ご質問のインターネット広告についてのポイントを解説いたします。

表示規約第4章・「必要な表示事項」について施行規則第2章第3節第5条においてインターネット広告における必要な表示事項について別に規定しました。
それによればインターネットの分野では、今後も技術の進展が見込まれることや双方向性を有するなど、紙媒体と異なる性格をもっていることなどを考慮して、紙媒体による広告表示とは別に第5条に独立させて、別表11にまとめました。また、よく事業者の方から「インターネット広告と他の媒体による広告の違い」を聞かされますが、広告開始時期の制限、表示基準、不当表示の禁止等をはじめとする規約の規定は他の媒体(新聞広告、チラシ広告等)と同様に適用されます。

ただし、必要な表示事項のうち、紙媒体では「取引条件の有効期限」を表示しますが、インターネットの場合は、その特性を考慮して「情報登録日又は直前の更新日及び次回の更新予定日」を表示することになっています。なお、広告スペース等の関係で必要な表示事項をすべて記載できない場合に、ホームページのアドレスを記載し、ホームページで必要表示事項を充たした物件概要を見て貰うようにしても、必要表示事項の規定を充たしているとは認められず、当該規定に違反するものとして取り扱われますので特に注意が必要です。
2006.4.15
▲一覧に戻る
構造計算書偽造事件…あなたはどうする?
大阪市内で建売を業としている会員業者ですが、このたび「構造計算書偽造事件」を受けて不安が募っています。というのもぶっちゃけた話、建売をしているといっても建築のことは素人に毛の生えた程度の知識しかなく、ほとんどが提携先の工務店に頼っているのが現状です。ですから、もし顧客から販売した住宅の構造や躯体について突っ込まれ、何らかの不備が発見された場合、責任を取らなければならなくなるのではと思うと不安でなりません。
どういう対応をとればよいのでしょうか。
ご質問者のような業態をお持ちの会員様は、当協会でもかなりおられると思います。また保証協会においてもご質問のケースのようなトラブルが発生した時に、どの程度の弁済案件が出てくるのか、その対応策に今から頭を悩ませています。さて、ご質問の要点は貴殿の側に書類等の偽造や悪意の手抜き工事が無かったとしても、事業主の知らないところで施工者の手抜きがあった場合はどうかということですね。結論から申し上げると、お察しのとおり顧客の側からすれば問題の原因と責任の所在には関係なく、貴殿の売主という地位に対して損害の賠償を請求することになりますし、その責任を施行者に転嫁することはできません。今回の事件は構造設計書を偽造した、かの「姉歯建築士」と施工者・「木村建設」、事業主の「ヒューザー」それぞれが罪のなすり合いをしているようですが、マンションを購入した顧客の側は迷うことなく事業主の「ヒューザー」に対し係る損害の賠償を請求することになります。施工者に対する不法行為責任の追及は事業主と施工者・設計者間で勝手にやってくれ、ということです。その他民法上の損害賠償とは別に、不動産の売主としての責任、つまり宅地建物取引業法の規定(31条・35条)に違反したことはもちろん、刑法上の規定(246条・詐欺罪)にも抵触する恐れも出てきます。ここはジタバタせず、真摯な姿勢で顧客の調査依頼に応じ、万一瑕疵が発見された場合は速やかに補修に応じるなどの対応を心がけてください。
なお、建築を業態にお持ちの会員諸氏は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成12年政令第64号)に基づく住宅性能表示制度を設計段階から取り入れる等、今後は企業責任を明確にする努力は必須と考えます。
2006.1.15
▲一覧に戻る
差押え物件の賃貸借について
神戸で仲介業を営む業者です。このたび賃貸の契約を斡旋するのですが、その不動産は神戸市から差押られています(差押登記あり)。所有者は資金繰りに困っており、知り合いに安い条件で借りてもらうことになっています。借り手もその事情(差押も)を承知しています。 このような状態で賃貸契約を締結させても大丈夫でしょうか。また、業者として問題になりませんか。
差押とは、債権者が債務者に対して有する金銭債権の強制執行として、債務者の特定財産を金銭に換えて(換価)弁済を受けるためになす執行手続きをいいます。ご質問の意図は、すでに差押られている不動産を賃貸することが可能かどうか。言い換えれば、差押登記のある不動産を使用収益しても問題ないかということ及び、不動産業者の注意すべきことの2点をお聞きになりたいということですね。 まず、前者の行為が法的に問題となるのですが、差押は差押財産の執行機関による換価のために必要であり、その効果としての処分の禁止は換価のために必要な限度に限られます。つまり、売却したり、担保を設定または質入などの処分行為は換価を妨げることになり債権者に対して無効となりますが、賃貸(使用収益)することは利用行為であり処分行為ではありませんので可能です(民事執行法46条2項) ただし、賃貸借の相手方が例えば暴力団などで差押不動産の価格を下落させるような行為とみなされる場合、差押債権者の申し立てによりそれらの行為を禁止・抑制させることができます(同法55条・売却のための保全処分) 次に不動産業者はこのような物件を扱う場合、重要事項の説明の際に登記事項証明書の提示及び当該物件が強制競売開始決定を受け、貸主が債務の弁済をしない場合には本件賃貸借の権利(賃借権)は競売の買受人に対抗できず、敷金等の返還請求もできない旨を十二分に説明し、納得させる必要があります。また、前述した保全処分命令が発せられていないかも必ず確認すべきでしょう。
2005.8.15
▲一覧に戻る
契約解除請求について
私は大阪府で分譲マンションの販売代理を手がける不動産業者ですが、お客様の契約解除請求について質問いたします。このたびの契約は新築分譲の青田売りで、もうじき完成予定なのですが、契約当初ご婚約予定であった買主(結婚後も共働き予定)は、お二人の所得合算で住宅ローンの事前審査もパスし、そろそろ融資の本申し込みという段階になって「婚約破棄により、事情がかわったので契約を解除したい」と言って来られました。買主は「婚約者がいなくなり、ローンを申し込んでも通らないから白紙解約」と主張していますが、当社としては「婚約の解消による契約解除は、買主の一方的な理由によるものなので手付解除が相当」と反論しております、ご指導ください。
住宅の売買契約に際し、買主側に不確定要素が存在するにも関わらず契約を締結し、条件が揃う事を前提としてローン特約を付加する。予定通り物事が進めばなんの問題も無いのですが、一つ予定が狂うと契約を履行できなくなるというリスクを、売主買主双方が十分に注意を払わねばなりません。結論から申し上げますと、本件買主の主張が認められる確立は90%、残りの10%は買主側に意図的な詐害行為または重過失があるような場合に、貴殿の側に分がありそうです。紙面の都合上、箇条書きにて論点を整理いたしますのでご参考のうえご対処ください。
  1. 婚約・結婚予定ということが不確定要素であることを宅地建物取引業者として十分に認識したうえで本件契約を締結したか否か。(婚姻を証する事実を確認後、契約を締結する等の配慮)
  2. 買主の婚約・結婚という要素は、本件契約行為の重要な動機であり、売買契約と相当な因果関係を有すること。(婚約・婚姻の解消による契約の取り扱いについて、予め双方が合意した特約等)
  3. ローン特約はその申し込みと否決があってのみ有効とされる、とはならないこと。(不確定要素を含む融資の事前承認はまさに停止条件付き承認であり、条件が成就しなかったときはその効力を生じない)
  4. 買主に本件契約を解除する理由が別に存在し、または当初より婚約・結婚の予定はなく、単に物件購入の手段(融資を受ける方法の一つ)として売主並びに貴殿らを欺いたという事実があるか否か。(他に検討する物件があり、本件を買主の有利に解除しようとしたなど)
以上の論点を本件契約に照らしてご検討いただき、今後の契約に生かしてください。「これでは契約できない!」という声がきこえますが、不動産業界の慣習がすべて認められるとは決してならないことをご理解くださいね。
2005.7.15
▲一覧に戻る
造作買取請求権の放棄・制限について
平成3年に賃借人とマンションの賃貸借契約を結び、契約続行中ですが、本年3月末に退去することで契約が終了します。その際、賃借人から「契約期間中に入れ替えたシステムキッチン(食器洗い機付き)を買い取って欲しい」と申し出がありました。契約書には当初から「賃借人の造作物については賃貸人が承諾したものと言えども契約終了時、その所有権を放棄するものとし、賃貸人に買い取り請求できない。」とする特約を結んでいますので、当方としては買い取るつもりはありません。契約は自動更新で、一度も変更していません。「問題あり」でしょうか。
結論から申し上げますと、「問題あり」です。貴殿は賃借人が取り付けたシステムキッチンを時価で買い取らなければならないと考えます。 平成4年8月施行の借地借家法では、ご質問中の造作買取請求権の放棄・制限についての特約は有効としていますが、本件では旧借家法の規制が適用されますので、賃貸人が承諾した造作のうち、賃借人の所有に属し(賃借人が代金を負担)かつ建物の仕様に客観的便益を与える(流し台設置は判例において買取対象となる造作と認められています。)ものは、同上請求の放棄・制限を特約しても無効となります(旧借家法5条は強行規定とされています。同6条)。 一般的にこのような特約は、借地借家法の改正以前からよく目にしてきた条項ですが、この特約が全ての造作を当てはめる目的で利用されだしたころから、裁判などで家主敗訴の結果が目立ってきました。また反対に賃借人も、有益費償還請求権の範囲と造作を混同して、やみくもに買取請求をするケースも少なくありません。法の言う造作とは何を指すのかが判断の基準になります。 (最高裁判例・昭29・3・11民集8・3・672) なお、改正後の借地借家法は旧法下の契約にも適用されますが、前記特約が有効となるのではなく、新法施行後に新たに買取請求権の放棄・制限を取り決めた場合にその効力を認めるという趣旨ですから、平成4年8月以降の約定が在るか無いかがポイントになります。
2005.3.15
▲一覧に戻る
不動産売買契約の手数料について
私は大阪市中央区本町で仲介がメインの不動産会社を経営している者です。実は不動産売買契約の手数料の件で質問があります。不動産免許を持っていない個人(弊社と社員契約もしていない)に物件紹介料として手数料の一部を払わないといけないのですが、どのように会計上は処理すればよいのでしょうか?それから通常で物件紹介料はいくらくらいが相場なのでしょうか?今回、問題になってる手数料は540 万円で、その個人に180万円払いたいと思っております。ご返答の程よろしくお願いいたします。
平成14年度税制改正により、資本金5000万円以下の法人が交際費を支出した場合、年 400万円以下の部分の20%と年400万円を超える部分につき損金不算入となりました。本件ご質問の物件紹介料を税法上の区分でみますと、貴殿が仲介手数料の一部分として支払う認識であっても、所定の形式を備えておらず、立証が困難で常識の範囲を超えていると判断されれば、前述した交際費としてみなされます。つまり、本件手数料の発生根拠である当該取引の主たる支払経費としての仲介手数料は、あくまで手数料を受ける側に受領根拠(宅地建物取引業者の報酬請求権)があり、それに基づいて損金算入が認められています。しかし、報酬請求権のない一個人が手数料名目で受領しても、税法上隣接費用とされ、所定の形式を備えておらなければ交際費として支出したことになり、全額を経費として計上できないことになります。 では所定の形式とはどういうものかといいますと、本件のような情報提供に基づく紹介料のような場合、?情報提供者と事前に請負契約を締結していること?情報提供の内容とその対価について取り決めがあること?取り決めた対価が常識的な水準であることが必要とされています。従って、前記立証が出来ないような多額(本件の180万円は常識の範囲とは認められないと考えます)の紹介料は経費とは認められず交際費として計上しなければならないと考えます。なお、紹介料の常識的な範囲はケースバイケースのところもありますが、おおむね10万円程度が妥当かと考えます。また、当然のことながら、紹介料支払基準などの社内規定を整備する必要はあります。

ここで問題となるのが、「当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所」の定義です。  同法では「事務所」を次の様に定義しています。 第3条 宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。(第1項) つまり、宅建業法に言う事務所は、免許を受けた本店または支店の事務所(その他政令で定める場所を含む)が前提となっており、政令で定める場所とは、「継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」とし、法定の宅地建物取引士を設置しなければ契約等(申し込みを含む)を行えない場所として、
《宅地建物取引業法施行規則第6条の2第1項》
(法第十五条第一項 の国土交通省令で定める場所)
一 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
二 宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲(以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において「一団の宅地建物の分譲」という。)を案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所
三 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所 四 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあっては、これらの催しを実施する場所 と規定しています。

その上で、クーリングオフの説明が必要な場合とは、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、上記事務所等の要件を備えた場所以外の場所で買受けの申込みをした者が、事務所等以外の場所で契約を締結する場合に必要となります(ただし、当該宅地建物取引業者の相手方がその自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあっては、その相手方の自宅又は勤務する場所で契約を締結する場合を除く:法施行規則第16条の5第1項1号ニ)。また、売主となる宅地建物取引業者が、他の宅地建物取引業者に対し代理または媒介の依頼をした場合にあっては、当該代理または媒介を受けた他の宅地建物取引業者の事務所等以外の場所で契約を締結する場合も同様です(法施行規則16条の5第1項1号ハ)
2004.7.15
▲一覧に戻る