事業者向けの相談

高圧線や鉄塔の影響を受ける土地売買など…重要事項の説明内容は?

お客さまの工事計画と送電線の関係を調査。
(資料:関西電力)
電力会社の高圧線が上空を過っている土地の売買や住宅の売買、賃貸など、宅建業者として気になる重要事項の説明についての相談です。
対象物件の登記情報に地役権が設定されているものは容易に判断できるのですが、地役権登記の無いものや、隣接する土地で高圧線下と看做されない土地などの対処はどのように考えればよろしいのでしょうか。
まず、前提の整理を行っておきましょう。
1)高圧線とは
電気設備に関する技術基準を定める省令(以下技術基準)
(平成九年三月二十七日通商産業省令第五十二号)最終改正:平成二四年九月一四日経済産業省令第六八号
(用語の定義)
第一条
六 「電線」とは、強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体をいう。
八 「電線路」とは、発電所、変電所、開閉所及びこれらに類する場所並びに電気使用場所相互間の電線(電車線を除く。)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物をいう。

(電圧の種別等)
第二条  電圧は、次の区分により低圧、高圧及び特別高圧の三種とする。
一  低圧 直流にあっては七百五十ボルト以下、交流にあっては六百ボルト以下のもの
二  高圧 直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては六百ボルトを超え、七千ボルト以下のもの
三  特別高圧 七千ボルトを超えるもの

つまり、高圧線とは、直流で750V、交流は600Vを超え、7000V以下の強電流電気の送電の為の電線と電線路設備(地中、架空含む)と、特別高圧(7000Vを超える交流)電線及び電線路設備の総称として使用される言葉。又、電線には、通信回路のような弱電流電気の伝送に使用されるものやケーブルは含まれておらず、それらを電線とは呼ばない。 要するに100V 以上の電源回路に使用される裸線、絶縁電線及びケーブルと思ってよい。
一方、「鉄塔」とは、本件の場合高圧送電用鉄塔を言い、技術基準においては、架空電線路の支持物の一つを指す。JEC-127「送電用支持物設計標準」に基づいて「鉄塔」として設計されたものを「鉄塔」と定義する。鉄塔として設計されていないEC-129の「鉄柱」と区別する。鉄塔には線路名、鉄塔番号、建設時点が識別できるように鉄塔番号札を掲示してあるので、対象地両方向の鉄塔を鉄塔番号札の情報で特定し、電力会社に電圧、送電線地上高、離隔距離などを問い合わせることが出来る。

2)高圧線下(高圧線下地)とは
電気事業者が電気を送電するために架設した電線が架空された土地を「高圧線下地」という。電気事業者が、電気設備に関して公共の安全を確保するため、技術基準では、架空電線の建築制限や建造物との接近等について定めている。電気事業者は技術基準を遵守しなければならないため、線下の土地所有者との間で私法上の契約をして技術基準に適合するよう、利用制限することになる。つまり、この利用制限の掛る範囲が高圧線下と定義されるのが一般的である。
電気事業者は、上述のとおり土地所有者との間に、地役権設定による地役権設定登記で第三者対抗力を備えているのが一般的(この場合は地役権図面が提出されているので、平面的にその範囲を特定することが可能)であるが、当該登記がなされず、送電線架設保持に関する契約(債権契約)のみを交わしているケースもある。又、例外的に何らの契約も存在しないケースも存在するので、その範囲を確定することが難しい場合も在る。

3)架空電線の建築制限や建造物との接近等
■技術基準133条:特別高圧架空電線と建造物との接近
使用電圧の区分 離間距離
35000V以下のもの 3m
35000Vを超えるもの 3mに使用電圧が35000Vを超える10000V又はその端数ごとに15cmを加えた値
建造物等の建築制限に関していえば、使用電圧のレベルにより建築等を制限する離隔距離が異なっている。

使用電圧が17万Vを超える 使用電圧が
35000Vを超え17万V
使用電圧が
35000V以下
電線を中心に3m+αを半径とする区域と相互(特別高圧架空電線と建造物)の水平距離(第二次接近状態)を3mとし、3m以内の直下の範囲が建築できない。 3mに使用電圧が35000Vを超える10000V又はその端数ごとに15cmを加えた値の範囲は建築できない。 送電線からの離隔距離である直線距離3mの範囲内は建築できない。
※建設可能な高さを算出する計算例
地上より20mに16万Vの高圧電線下の場合
3m+[(16万−35000)÷10000]×0.15=4.875
20m−4.875m=15.125mとなる。

線下地の範囲は、第2次接近状態に相当する送電線の最外線から3mの範囲とされることが多い。
電気事業者との債権契約による賃料は「両側側線の線間幅に左右3mずつの距離を加えた範囲」を対象として算定されている。土地収用委員会の裁決例では、この範囲について不明確なものが多いが、やはり外側線から3mまでのものが比較的多いようである。


東電の鉄塔番号札

不動産調査の注意点
不動産の調査で現地実査をするとき、上空の高圧線を確認することを忘れがちである。対象地の境界や、道路幅員、未登記建物の有無等々、通常視界域の確認には注意を払うが、上空を仰ぎ見ることをつい失念してしまう。「送電線が上空にあれば地役権登記があるはず」と、安易に思い込んでいると、線下地で地役権登記がなされていないものに該当した場合、思わぬ事態に契約そのものが危ぶまれることも覚悟しなければならない。従って、当該対象不動産に高圧線の影響が考えられる場合、前述したとおり最も近くに在る鉄塔に記されている識別情報を確認し、管轄電力会社へ詳細を問い合わせるなどして、建築制限や接近距離などを重要事項として調査することが肝要である。

又、価格査定時の注意事項としては、特別高圧架空電線が対象地の上空を通っており、架空電線の建築制限や建造物との接近等で制約があれば、線下の土地所有者は、そのエリアで最有効使用と判断される建物を対象地上に建築することが困難になるため、経済的価値は当然減価されることになり、この減価の程度は、対象地の最有効使用がどの程度の阻害を受けるかで判断されることになる。例えば、平屋が多い工場地と中高層マンションが標準的利用形態であるマンション適地域では、立体的利用の阻害程度は異なることにも注意が必要である。一般的にこの阻害程度による減価の査定には、国土交通省損失補償取扱要領による「土地立体利用率配分表」、「建物階層別利用率表」が用いられている。

更に、景観や送電線通過による心理的圧迫感、騒音や電磁波等の影響(医学的根拠は希薄で確立された所見は無い)による減価は、購入予定者夫々のメンタル面に大きく依拠するため、物理的減価のような定量的分析は困難である。この減価率を根拠付けていくには、多くの線下地の取引事例の蓄積と送電線の各種要因の属性がデータベース化されて分析され、その属性と減価との相関が統計的手法などで解析することが必要とされる。

高圧線下地図面(イメージ:SUUMO)
2013.12.05
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