事業者向けの相談

やりたい放題の元付け業者?…媒介契約の本旨と不法行為

買付証明に法的拘束力はあるか?
いつも拝見しております。
さて、この度弊社の購入客の困った問題について相談します。
5月の末にマンション購入にあたり、弊社顧客Aより買付証明書(満額)を売主側仲介業者Cへ提出しました。買付証明書を提出後、業者Cを通じ売主様の了承が得られたということで、契約締結の交渉を進めておりました。
ところが、6月に入り、別のお客Bが業者Cへマンションの購入相談に訪問したところ、Aの購入予定と同じマンションを、金額は当初の売出価格より高い金額で提示して紹介。Bは物件を気に入り同部屋の買付証明書をCへ提出したために契約締結の交渉がAと並行して進められております。
実は偶然にもAとBがお知り合いであったため、このことが発覚し、弊社のところにご相談に来られました。現在まだA、Bいずれも契約には至っていません。業者Cのこのような行為は許されるのでしょうか?何か法的に対処出来ないかと相談致しました。
ご相談の内容から、不動産の取引に関して宅建業者が介在する媒介における一般的な手続を経て現在に至ったものと推測し、回答致します。つまり、本物件は売主側(元付け)宅建業者Cが売主から当該マンションの売却に係る媒介契約を締結し、販売を開始したところ、貴社がそれを知り、購入希望顧客Aに紹介し、買付証明提出に至ったという前提です。
その上で、先ず、購入希望者Aについて、販売希望価格満額での購入申込を書面で行ったということですが、元付け業者がそのような購入希望者に対して媒介契約の目的である売買契約締結に向けた義務を果たさないことには相当の理由が必要となります。例を揚げるなら、Aには当該物件を購入する資力が欠如(年収や自己資金、ローン特約を希望する内容など)していると客観的に判断出来るとか、または反社会的勢力に属する疑いが在るなど、当該契約を遂行する上で売主と協議し、満額の申し込みではあるものの、それを受託出来ない理由が明らかであるというような場合は、当該申し込みを拒絶することも可能と思料します。
しかしながら、本件ではそのような理由は見当たらず、且つ別の購入希望者Bに対しては売主の販売希望価格以上の価格を提示し、売主の意思とは関係なくAの申し込みを排除しようとしたとすれば、元付け業者Cの行為は宅建業法31条(宅建業者の事務処理の原則)の規定に反すると共に、媒介契約の相手方(本件では売主)に対する業務処理の原則(購入希望者が現れた場合の対応=契約の成立に向けた努力義務及び業務処理状況報告義務等)にも反することになります。

思ったよりも高く売れるかも??
一方、Bの立場からすれば、本来売主が希望する価格以上の金額を提示されたことにつき、業者Cの心中を推測(あくまでも推測の域は出ないが)するに、通常媒介契約によって売却依頼を受ける宅建業者は、依頼者(売主)に対し媒介価格の根拠を明示する義務を負い、誠実に売却活動を遂行することが求められているところ、例えば、故意に媒介価格を低廉に抑え、実際には媒介価格以上の金額で販売を行うとするなら、購入希望者が出現したときに媒介業者が自ら物件を買い取り売却することで、その利ザヤを稼ぐことや、中間業者を介在させて仲介報酬を二重に取得しようとする意図が考えられなくもありません。本件において斯様な状況であるか否かは不明ですが、少なくとも媒介価格を超える金額の提示には、仲介報酬が若干増す程度の理由で、売主の利益のために、というような理由は考えにくいと思料します。
従って、万一前述のような意図が取引で実現されるとしたなら、業者の売主に対する詐欺行為(民法96条及び刑法246条・詐欺罪)、信義則違反(宅建業法31条)、不法行為(民法709条)、債務不履行(民法415条)などが浮上すると共に、通常の媒介契約による報酬を超えて得た利益は不当利得(民法703条)と看做されることもあるでしょう(媒介によらず売買契約により転売した事案に対し不法行為による損害賠償を命じた福岡高裁判決:平成24年3月13日判タ1383号234頁、中間者を介在させて報酬を二重に得る宅建業者の行為を権利の乱用として報酬請求権を棄却した浦和地裁判決:昭和58年9月30日判タ520号166頁など参照)。

宅建業者の信用失墜に繋がらないよう!
結論としては、業者間の慣習にも有る買付順位、価格交渉の有無、購入希望者の属性等を考慮して、一番手であるAに何の瑕疵も無いのであれば、元付け業者Cに対して当該契約の締結を申し入れるべきと思料します。また、当該物件がレインズ登録物件であれば、その登録内容を基に、所轄行政庁もしくは元付け業者の所属協会や指定流通機構に紛争の調停を申し出るなどして下さい。更に、本件におけるAの申し込みと売主の承諾(Aの買い付けに対する売却意思の表示)が立証できるのであれば、弁護士に相談し、不法行為に対する法的手段を講じることもご検討されればどうでしょう。
2017.08.05
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