事業者向けの相談

親亀こけたら子亀もこける??…賃貸人と転借人の法律関係

転貸人の賃料不払いで追い出されるのか?
土地所有者Aと土地賃借人Bは、事業用定期借地契約を締結(公正証書による。借地権譲渡・転貸許諾特約付)し、AB間の借地権を登記。Bは借地上に自己名義の建物を建築し所有権登記を行った後、その建物をCに譲渡しようと考え、Cとの間に事業用定期転借地契約を締結(公正証書)して建物所有権をCに移転した(BC間の転借地権登記は未了)。
この場合、AB間の借地契約の終了及びAまたはBの事情変更など、不測の事態が考えられますが、転借地人Cの権利にどのような影響を及ぼすのか。また、BC間の転借地権設定の登記を行っていた場合はどうか。
宜しくご教示下さい。
ご質問の転借地人Cの権利とは、BC間における転借地権契約に基づき土地を使用収益出来る権利(建物をCに売買する段階で、Bの借地権を譲渡せず、新たにBC間でAB間の事業用定期借地契約に準じる転貸借契約を締結)及び所有権に基づく建物の使用収益及び処分の権利です。また、本件では、これらのCの権利が適法に取得されている前提で、土地所有者A、その賃借人B(BはCの転貸人)の事情変更とは如何なるものが考えられるのか。以下その内容毎にCの権利について解説致します。

1.Bが賃借権を第三者に譲渡した場合
BがAとの間に締結した事業用定期借地契約に基づく賃借権を第三者に譲渡した場合、当該第三者がA及びCとの関係をBから同一の条件で引き継ぐこととなりますので、Cの権利に影響しません。ただし、BがAに、CがBに対してそれぞれの賃料債務等の担保として敷金・保証金等を預託している場合は、賃借権譲渡の際にそれらの清算に関する取り決めを確認しておくことが必要です(賃借権譲渡に関し、敷金は当然に引き継がれないとする裁判所の考え方)。

2.Aが土地を第三者に譲渡した場合
Aが土地(底地)を第三者に譲渡した場合も、B借地権は登記を得ているので対抗出来、Cの転借地権も適法に成立しており且つC名義の建物登記も備わっているので問題なく対抗出来ます。従って、Cの転借地権を敢えて登記する必要は無いと考えます。

3.Bが破産した場合
民法旧621条本文は、「賃借人ガ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ賃貸借ニ期間ノ定アルトキト雖モ賃貸人又ハ破産管財人ハ第617条ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得」と規定しており、賃借人Bが破産宣告を受けたときには、賃貸人AはAB間の賃貸借契約の解約申入れをすることが出来、AB間の賃貸借契約が終了すれば、BC間の転貸借契約も消滅するとしていました。しかし、新破産法が制定されたとき(平成16年)に上記旧621条は削除され、新破産法にも賃借人の破産宣告に基づく賃貸人からの解約に関する規定を置かなかったことから、Bの破産によるAB間の賃貸借契約の解除は出来ないこととなりました。一方、Bが破産した場合に、破産管財人の側から、AB間の賃貸借契約を解除することについては、破産法上は可能です(破産法53条1項)。しかしながら、Bの借地権は破産財団の重要な財産ですので、特段の事情が無い限りBから契約解除をすることは考え難く、管財人が借地権を譲渡することが予想されますので、結果は設問1.と同様です。

転貸人が破産することも…
4.Bの債務不履行(賃料滞納)によりAが借地契約を解除した場合
AB間の賃貸借契約がBの地代賃料滞納(債務不履行)を理由に解除されると、Cが有していた転借権をもって土地所有者Aに対抗することができなくなります。これは、転借権が賃借権の上に成立しているため、賃借権が消滅すれば、転借権もその基礎を失って消滅してしまうためです。つまり、"親亀こけたら子亀もこける"の論理はこの由です。
そこでしばしば問題となるのが、賃貸人(土地所有者)は適法な転借人から直接賃料を受ける権利を有するという民法613条1項の規定を前提とする主張です。すなわち、転借人CはBに対して債務不履行は無く、Bが地代の支払いを怠ったのであれば、Aから直接Cに賃料を請求すべき、という論法です。しかし、民法613条1項は、賃貸人は転貸人だけでなく転借人に対しても賃料の請求ができる、という意味以外はなく、賃貸人が必ず転借人に対して賃料を請求しなければならない、と規定しているわけではないのです。これは最高裁でも判示(昭和37年3月29日判決)されており、賃借人(転貸人)に賃料の不払があれば、転借人に督促することなく、賃借人(転貸人)に対して、相当期間を定めて未払家賃を催告し、催告期限内に賃借人(転貸人)からの支払がなされなければ、賃貸借契約を解除することができるということなのです。

5.Aに対する抵当権が実行された場合
土地所有者も事業として土地を利用している場合、土地を目的として担保設定し、融資を受けていることがあります。そして、その抵当権が債務不履行等の理由により実行され、競売に付されることもあります。この場合、本件ではAの抵当権設定登記とAB間の事業用定期借地契約に基づく賃借権設定登記の前後によってCの転借権が対抗出来るか否かが決まります。つまり、賃借権も転借権も、その登記または対抗要件を具備した時期が抵当権の登記に遅れるなら競落人に対抗できず、Bに対して明渡し請求がなされると、明渡し猶予期間(6ヶ月)満了と共に本件土地を明け渡さなければなりません。その場合、Cの転貸借(転借権)も存在の基礎を失うことは前述のとおりであり、C建物については収去して明け渡さなければならないこととなります。

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2017.10.05
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