その他の相談

ご近所付き合いの難しさ…相隣関係の法律はドライです!!

隣の埃が凄いので、マスク代を請求??
〜工事現場の施主から〜
現在、購入した中古住宅の全面改装工事を建設会社に依頼して行っています。工事内容は、外壁の一部や外回りの改修工事と内装工事です。具体的には外壁の解体、ブロック塀の撤去から新設工事と塗装工事、内装は間取り変更や床のフローリング工事、設備の入替、クロス等の仕上げ工事となり、工事期間は約1ヶ月です。工事前に不動産屋さんに近所の挨拶に回ってもらい、予定通りスタートしましたが、隣の方から現場にクレームが入ったそうです。埃が凄くて食事も出来ない!窓も開けられない!などなど。結局、何か物理的な対策をしろということになり、建設会社からその費用として10万円ぐらい掛ります、と言われている。
〜隣人から〜
隣の工事のせいで、粉塵が舞い込み、窓も開けられない日が続いている。健康を害するかもしれない。どうしてくれるのか??
菓子折りぐらいでお茶を濁されても困る。現場監督や職人にも文句を言ったが、改善される気配も無い。具体的な解決方法を提示してもらわなければ納得できない。
〜工事管理の不動産業者から〜
現状を確認し、粉塵が極力飛散しないよう養生シートをブルーシートに変更し、職人には窓を閉めて作業するよう指示した。併せて、工事終了時には毎日隣家の玄関付近を掃除することを徹底し、現在はかなり改善されている。全く埃を立てないよう工事することは不可能であり、埃や音、臭いが出る(塗料などの)のも2週間ほどで終わる。許容の範囲だと思う(実際に他のご近所からは一切クレームは無い)が、当該隣家からは納得できないのでどうにかしろ!と言われている。
近隣の工事、特に公共工事とは区別して住人や民間会社の用に供する目的で行う工事(建築工事、道路工事など)に関する苦情やトラブルは日常的に起こっている。「人は生きているだけで多かれ少なかれ、誰かに迷惑を掛けている(人は誰かに迷惑を掛けながら生きている)」とは、慣用句的に使われる語群であるが、日本には古くから控えめ(謙遜的)で謙虚な心持が美徳とされてきたことも影響してか、自分さえ我慢すればとか、全て自分の責任であるとかの、一種卑下にも近い感覚で社会は動いているようにさえ感じる。
他方、インドにはこのような慣用句が存在する。
「貴方が生きるためには誰かに迷惑を掛けている。だから、人から迷惑を掛けられてもそれを許してあげなさい(ムハトマ・ガンジー・1869〜1948 India・弁護士、政治家)」。ずばり、「お互い様」の精神であるが、これらの感覚が働くためには、当事者双方の行為の均衡が大きく影響する。すなわち基準=許容のレベルだ。

ガンジー元首相
本件では施主と隣家の間に改装工事に起因する許容レベル(我慢の度合い)に対し、施主側は「この程度の工事」と内心、隣家は我慢の限界は超えていると、すでに互いの均衡は揺らいでいるところ、間に入っている不動産会社は客観的に状況を確認しているように見えるが、そもそも施主側の依頼を受けているのだから、筆者には施主側への偏りが感じられる。
工事のトラブルに関しては、責任の所在を明らかにしておくことが必要だ。原則として、工事によって生じた隣地の損害に対する責任は、工事の発注者(施主)ではなく、実際に工事にあたる請負業者にある。つまり、工事の発注者は、請負人が第三者に与えた損害を賠償する必要はないのである(民法716条)。勿論、これには例外もあり、施主が請負契約に関して無理な契約(例えば一般的な工期を極端に短縮させることで請負人が夜間まで工事を行う必要が生じ、それが元で近隣に損害を与えることとなった場合など)を強いるなど、過失が明らかなときは、発注者が責任を負う。
本件では原則論で言えば施主に責任は無いと言える。

次に、隣家の住人が「我慢の限界を超えている」感覚を訴えているようだが、これには個人差が大きく影響する。騒音や臭気などの限度について訴訟になったケースの判例の多くは、「受忍限度」の判定に客観的な事実を証拠として採用する(例:騒音規制法や地方公共団体が定める規制基準など)。音や臭気は機械測定が可能であるから、一般的な受忍限度を超えているか否かの判断は容易になってきているが、本件の埃についてはどうか。実際の現場での現状を確認し、到底許容できないほどの粉塵が入り込むのであれば、やはり施工における過失が認められるだろう。従って、建設会社は何らかの措置を講じて受忍限度の範囲内まで粉塵を減少させる責任を負うことは当然である。また、その費用を施主に求めることは前述のとおり原則出来ないと解すべきだろう。なお、当該隣家以外の隣人から同様のクレームは無いことについては、当該隣家との位置関係や工事箇所(実際に製材したり、セメントを混ぜたりしている場所)を判断材料として、例えば場所を変えるとか、養生シートの二重化など、対策を講じてみるのも必要だろう。現実に対策を講じているとのことなので、その前と後で、どの程度改善されたかを双方で確認し、埃が止んだのであれば速やかに謝罪し、事を収める努力をする方が得策と考える。

ご迷惑をお掛けしました!
最後に、もし相手方が必要以上にクレームを発し、慰謝料的な金銭賠償や過度の対応を求めてきたとしたらどうか。
これも世間ではよく聞く話ではあるが、相手方が反社会的組織と関係が無いとしても(関係者なら話は別)、必要以上に要求をエスカレートさせる行為や威圧的、高圧的な言動は脅迫行為として対応することも必要だ(刑法222条、恐喝249条)。これは、はっきりと金品の要求が無くても暗にそれを匂わせたり、誠意を見せろ!などの言葉も状況によっては脅迫または恐喝罪(恐喝罪は未遂も罰せられる・刑法250条)が成立する場合がある。このようなときは直ぐに警察に相談すべきだ。

金を出せとは言ってないだろ〜
2018.07.05
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