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未曾有の自然災害の後始末…私道を襲った土砂崩れの復旧は?

水没した町は境界線も分からない…
この度の大雨により、自宅近くの崖が崩れ、道路(近隣7軒が共有している6m幅の私道)を完全にふさいでしまいました。幸い怪我は無かったのですが、自宅庭にも土砂は押し寄せ、とても家人だけの人力で積もった土砂や石を取り除くことは出来ないし、また、捨てるところも分かりません。裏山は確か個人の所有だと聞いています。近所の方々とも、これからどうしたらよいか途方に暮れているという状況です。
このような自然災害に遭遇し、被害を被った場合で、私道の復旧や土砂などの撤去については、何処が費用を負担して工事をしなければならないのでしょうか?所有権者である私道の持ち主?元々この土砂は裏山からのものですから、裏山の所有者?それとも自然災害ということで行政が負担してくれる(全部or一部?)のでしょうか。本当に困惑しています。教えて下さい。
この度の台風第7号及び前線等による「7月5日からの大雨」被害において、被災されました皆様に心からお見舞い申し上げます。

さて、ご相談に対する回答ですが、これには管轄の地方自治体における取扱いや担当部署の判断及び該当事案の個別状況などによって、対処の方法が異なることも考えられますので、あくまでも一般論としてお答えします。実際の対応には行政との十分な話し合いの中で解決を図って下さい。

先ず、日本の法令上「自然災害」は、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義されています(被災者生活再建支援法2条)。自然災害など不可抗力(自然現象)によってもたらされた被害の被災者を取り巻く法律について検討します。
大前提として押さえておくことは、民法709条及び416条に規定される損害賠償の対象に、自然災害による賠償責任は原則として問われることはない(不法行為等特に因果関係が立証される場合を除く)ということです。従って、今回の大雨による被害として発生した土砂崩れを対象として見てみると、土砂の流出元であると推測される裏山の所有者に対し、土砂の撤去や道路の復旧、原状回復を求めることは原則として出来ないということになります。
では、行政がそれを行ってくれるのか、ですが、順を追って見ていくことにします。
1.公的な施設(公共施設には公道や河川、軌道敷なども含まれる)及び設備の応急対策については、災害応急対策の実施の責任を有する者、つまり国または地方公共団体もしくは災害対策基本法に規定された行政機関や地方公共機関などの長が防災計画の定めるところによって実施しなければならない(災害対策基本法50条2項)とされています。
2.道路が私道である場合でも、その私道の性状が公共性(不特定多数が利用し、他の私道または公道に接するなど、住人の生活に不可欠な道路であるなど)、公益性を有していると認められる場合、公的な施設に準じた取扱いがなされることもあります。また、地方公共団体が定める私道災害復旧工事補助金交付制度など、一定の要件に当てはまる私道に対する補助(費用の全額が対象とならない)もあります。
3.除却した土砂等の処分については、災害対策基本法の廃棄物の処理及び清掃、防疫その他の生活環境の保全及び公衆衛生に関する事項の定めに従い、行政に処理を依頼することが可能です。

土石流などによる被害も甚大
次に、民家(私有地)に流れ込んだ土砂等の処理ですが、これは前述した道路の場合とは違い、原則はその所有者(使用者を含む)が行わなければなりません。しかしながら、これについても災害対策基本理念に基づき、地方公共団体が定める土砂等撤去事業補助金交付制度によって、掛る費用の一部が補助されますので、作業に入る前に、住居地を管轄する行政にご確認されることをお勧めします(申請に期限や事前の確認を要する自治体や、制度を具備していない自治体もあります)。

耐震性を有しない建物倒壊による責任は??
一方で、自然災害に関して発生した損害でも、その因果関係に基づき災害発生に土地や施設の所有者や管理者に重大な過失等が認められるなど、社会通念上、また客観的に所有者等が注意や安全性の確認を怠っていたと認められる場合は賠償の責めを負うことがあります。このような事案は案外多いのです。民法717条は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と規定し、また製造物の欠陥により損害が生じた場合と考えられる場合、製造物責任法2条2項は、「「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」として、欠陥によって他人に損害を与えた場合の責任に言及しています。これらは平常時においては危険を及ぼすに至らない程度であっても、自然災害の発生を予見し、予防措置を講じていれば起こり得なかった被害に対してまで法律で保護する必要はないという法理の原則であり、普段から自身の所有、管理に係るものに対して、防災の観点から、対策を講じておくことの重要性を認識しておかなければならないということが言えます。
2018.08.06
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