一般(賃貸借・管理)に関する相談

賃借人死亡と退去手続き…自力救済禁止と連帯保証人の役割

法治国家では、手続を飛ばせない!
賃貸物件の部屋において孤独死(病死)した入居者(甲)の賃貸契約に関して連帯保証人になっている御親戚(乙)からの相談です。
甲は離婚しており、死亡時には配偶者(妻)はいません。但し、子供は前々妻との間に1人、前妻との間に2人います。今回、相続人の一人(前妻の子供)に甲が死亡した旨の通知を乙からしていますが、連絡はまだありません。
そこで質問ですが、
  1. (1)甲の家財道具等の撤去処分や明渡しを、乙が独自に行っても良いでしょうか。その場合、撤去処分費用や一部家財の保管料を乙が立て替えた場合、乙は相続人に請求できますでしょうか?
  2. (2)甲には数ヶ月分の家賃滞納があり、乙が家主に立て替えて払った場合も相続人に請求できますか?
  3. (3)相続人は3人居ますが、そのうちの1人にしか通知を出していません。連絡がついた場合、家財道具の撤去処分や預貯金の引き出し等について他の2名を代表して、上記行為をして頂いて問題ないでしょうか。
  4. (4)相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の銀行口座にある預貯金から保証人が支払った撤去費用、滞納家賃の立て替え金返金を受けたいのですが、どうすれば良いでしょうか。差押えの必要がありますでしょうか。
以上、宜しくお願い致します。
先ず、不動産賃貸借の場合の連帯保証人の負担すべき債務の範囲について、裁判所は判例等で、賃料及び賃料相当損害金、原状回復費用、残置物撤去費用、強制執行費用等、賃借人の債務不履行に起因する一切の債務が含まれるとしています。
そこで本件ご質問の回答として、
  1. (1)法的には、賃借人の相続人が管理義務・明渡し義務を負うこととなります。また、第三者がこれを行う場合、原則としては賃借人の相続人らの承諾を取ることが必要です。しかし、相続人らに連絡がつかず、また、ついたとしても相続人が撤去等に応じない場合、やむを得ず、保証人が賃借人に代わってその債務を履行する場合も実務的にはあり得るでしょう。その場合、不法行為とされないよう相続人から明渡しに関する委任状を取り付けるなど、可能なことはやっておくべきです。なお、保証人が負担した費用は、賃借人の相続人らに請求できるのが原則ですが、全員が相続放棄した場合は請求できませんし、費用の額・作業内容に対して異議が出されることもあり、一定のリスクはあると言わざるを得ません(支払いを拒まれることも)。
  2. (2)滞納賃料については、生前の債務及び賃借人死亡から明渡しに至るまでの賃料についても連帯保証人が支払う義務を負っています。一方、連帯保証人は本人に対する求償権を有していますので、賃借人の相続人らにこれを求償することができます。しかし、これも相続放棄された場合、請求できないのは前述の通りです。
  3. (3)相続人が子であれば、全員等しく相続分があります。3名であれば1/3ずつの相続分です。相続人全員の同意がなければ(相続放棄した者は除く)、家財道具の撤去処分や預貯金の引き出しなどはできません。放置すると債務が増えていく場合に、やむを得ず、相続人の誰かが代表して(或いは連帯保証人が代わりに)動産の処分をすることはありますが、財産的価値があるものを処分した場合は、相続分に基づき、何らかの請求をされるリスクがあります。
    財産的価値がないものであれば、ゴミ処分レベルということでリスクは低いと思われますが、写真や形見品となるものなど、相続人にとっては財産的価値があると主張されるなど、異議が出されるリスクはあります。また、預貯金については、全員の印鑑・印鑑証明がなければ引き出せないのが銀行実務と思われます。
  4. (4)請求の相手方が不存在の場合、基本的には差し押さえをして払い戻しを受けるか、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任申立てを行い、管理人から払い戻しを受けるかのいずれかだと思料します。
    差し押さえについては、被告が存在しないので、特別代理人の選任申立てを行い、訴訟を提起し、判決を得て預金に対する差し押さえを行います。
    他方、相続財産管理人の選任申立てを行う場合は、滞納賃料や立て替え金支払債務の他にも別の債務がある場合、相続財産に対して全ての債務が按分により弁済となるため、満額の支払いとなるかは事案によります。

最近は保証会社セットで保証人不要契約も多い
因みに民法896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」とされています。相続人は、借主が死亡したその時から賃貸借契約を相続により承継していることになります。さらに、相続人が複数いるときには、「相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属する。」(民法898条) とされていますので、借家権は相続人が準共有(所有権以外の財産権を共同で保有する場合、『準共有』といいます)していることになり、その持分割合については、「各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」(民法899条) とされていますので、それらを踏まえ、先ずは賃借人の相続人と話し合う必要が急務です。
2019.02.05
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