一般(賃貸借・管理)に関する相談

賃貸借契約の原状回復…傷つけたフローリングの張替え費用

新品にしてもらおうじゃないか!!
賃貸借契約の解約時にフローリングが傷ついており、その費用の負担を巡って家主側管理会社と争いになっています。
元々、入居のときに新築であったわけではなく、築年数が10年のマンションを借り、フローリングはその建物が建ったときからのものでした(若干の汚れや小傷があったと思います。私は5年間住みました。)。
引越しの時にベッドや家具を退けたらフローリングの床、8箇所に陥没跡が残っており、確かにキズがついていました。何度か模様替えをしたり、家具を買い換えたりした時のものと思います。管理会社は、もう全面張替えないと部分補修は無理だと言い、私に張替え費用を請求すると言っていますが、特に故意で傷つけたのではありませんので、納得がいきません。全額払わなければならないのでしょうか?契約書には、経年劣化を除く汚損破損は借主の負担とする、としか書いていません。
本件ご相談の文面からしか推測が出来ませんが、木のフローリング(一般的には合板)がベッドや家具を置いているだけで陥没するということが不可思議ではあります。通常の使用(どのような家具なのかが不明ですが、例えば介護用のジャギー機能が付いた鉄製ベッドなどであれば、相当の重量があります)を想定した場合、床材が柔らかい無垢の木材などではあり得るかも知れず、一般的なフローリングであれば考え難く、また10箇所(ベッドの脚は4本が普通)もの穴が在ると言うなら、5年間の賃貸借期間を考慮しても、何らか別の原因が在るように思えます。
例えば、その8箇所に注目すると、賃借人は期間中に何度かベッドや家具を移動させたものと推測され、既に陥没には気付いていたと判断出来る場合、その異変を賃貸人に連絡せず放置したということであれば、通知義務(一般的な賃貸借契約約款にも賃借人の通知義務が定められていることが多く、それに反した場合は修復を賃借人負担とするような特約があります)に違反したとして、その部分は賃借人に原状回復を請求することも可能と思料します。
ただし、その部屋のフローリングを全面張り替えることが損害賠償の対象とするには少々乱暴で、例えば8箇所のフローリングユニットに相当する面積を全面積から割り出すなどが適当で、全てを賃借人負担とした場合は賃貸人の不当利得を指摘される可能性があります。

日常生活にキズは付き物…
さて、本件ご相談内容には二つの論点があります。
先ず、フローリングの陥没跡が通常の使用によるものだとすれば、経年劣化であって賃借人が補修費用や張替に係るその部分に相当する費用を負担する必要はありません。言い換えれば家主は入居者に請求できないということです。
他方、前述のように、通常使用では起こり得ない損傷であるとの前提で負担を求めるのであれば、一つの考え方として、全面張替に対する8箇所のフローリングユニットに相当する面積の割合で金額を算出する方法(床面の陥没跡だけを修復することが可能ならその費用)により、その損傷は賃借人の責任だとして100%(賃借人負担分の全額という意味)請求出来るということです。

また、設備の耐用年数を基準に原状回復の負担割合を算出することもできます。その場合、本件賃貸借契約の締結時に設備品(内装材も含む)の通常使用と経年劣化に対する原状回復の負担割合を予め約定されている前提で、賃借人に負担割合に応じた原状回復費用の請求が可能となります。
もし、そのような約定がなされていない契約なら、退去時にその理屈を当てはめても相手方が納得しない限り請求は出来ません。家主側管理会社が如何なる理屈で賃借人の負担を算出しようとしているのかは分かりませんが、前提として本件賃貸借契約の約定に沿った対応が基本となります。

その上で、国土交通省による賃貸借契約の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を参考に記しますのでご参考ください。
前提条件は、フローリングの劣化に伴う原状回復の負担割合については、耐用年数における経過年数を考慮しない場合として「フローリングの部分補修」を想定しています。つまり、部分補修に係る費用だけを負担させるという考え方です(前述のとおり)。
一方、全面張替を行う場合は、耐用年数における経過年数を考慮するとしています。本件でもフローリングは当該賃貸借契約当初に新品ではない、ということですから、例えば本件建物の新築時に施工された内装を使用しているということであれば、鉄筋コンクリートの建物の耐用年数は47年(国税庁通達)、フローリング材の耐用年数は当該建物の耐用年数として47年(備忘価格1円)とし、築年数の経過がフローリングの使用年数であるので、負担割合は以下の式で算出します(ガイドラインによる)。
・(47−入居時の築年経過年数)÷47=賃借人の負担割合
・例えば、当該入居者が本件建物に入居した時、建物は築10年を迎えていた。それから入居者は5年住んだとすれば、退去時のフローリングの残存価値は
100−(100÷47×15)=68%
負担割合は(47−10)÷47=79%ですから、退去時に請求する原状回復(全面張替)の賃借人負担は54%(小数点四捨五入)となり、張替費用の凡そ半分は請求されることになります。

原状回復負担割合表の例(資料:賃貸経営管理業協会)
なお、その他の考え方として、本件フローリングの残存価値を68%と見て、全面張替は家主の資産の増加にあたることから、全面張替工事費の68%を最初に提案した8箇所のユニット分の面積割合で除せば、賃借人の損傷の責に対する補修費の妥当な計算根拠の一つには使えるかも知れません。こちらもご参考下さい。
2019.04.05
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