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他人の土地上に建つ実家の相続・・・相続人の取得時効は成立するか?

土地には名前が書いていない!?
昨年、実家の母親が死去し、土地建物共に母名義であった不動産を相続人間の分割協議により私一人が相続することになりました。
この家は昭和40年代に父が購入し、平成4年に父が建替えをして現在に至ります。途中、父が死去(平成7年)したので全て母が相続していました。
今回、相続登記を終えて権利書等が出来上がりましたが、登記簿謄本の記載に不明な点があり、司法書士さんに確認すると、「お母さん名義の土地は一筆で30番1の土地ですが、建物の地番が30番地1と31番地となっており、31番の土地はお隣の方の土地です。おそらく借地ではないですか?」と言われました。私はそのような話を聞いたことが無く、地代などは払っていなかったので母も知らなかったと思います。勿論、31番の土地所有者から何らの連絡もこれまでもありません。
そこで質問ですが、このお隣の土地(31番)ですが、時効によって私が取得出来るものでしょうか?ご教示下さい。
そもそも時効とは、一定の事実状態が一定期間継続した場合、その事実状態が真実の権利関係に合致するか否かに関係なく、事実状態に権利関係を適合させる制度のことです。本件では民事法上の取得時効で所有権の問題ですから、民法162条がその根拠となっています。同条1項は、20年間という長期の時効について、第2項では10年間の短期取得時効についての規定で、違いは「所有の意思を持って平穏かつ公然に占有を始めた」ときの占有者の状況の違いで、短期の時効成立には、「その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったとき(善意無過失)」という条件が付されていることです。善意無過失とは、“本当に何も知らなかった”状態を言います。
また、時効制度の目的は、
  1. 1.長期間に亘り継続している事実状態を尊重することで、社会的な混乱を回避する。
  2. 2.事実関係を証明する証拠保全の救済措置として、長期間放置された権利関係を確定させる。
  3. 3.権利の上に眠る者は保護に値しない。つまり、自らの怠慢を棚に上げて権利を主張することは法治国家の根幹に関わるのであり、法律で守る必要はない、ということです。

今日からここは私の土地!?
さて、本件では他人地への越境によって生じた時効取得ではなく、そもそも他人地を借りて建物を建築していることから、占有の時点での善意無過失の主張は認められないと考えなければなりません。ご相談の内容だけでは、どのような経緯で亡父が建替え時に建築確認を申請し、取得したのかが不明ですが、建築基準法上の建築確認は、「物理的な建築物の位置・形状」を元にした公的規制であり、「土地の使用権の内容=権原」は建築確認の審査対象ではありません。従って、極端なことを言えば、亡父が勝手に他人地を確認に利用した可能性も否定できないということです。
本件ご相談は、その土地(31番)に対する時効取得の援用は可能か?ということですから、建築時の経緯は特段、まずは実際に31番の土地上に相続された建物が立地しているかを調査する必要があります。

次に、調査の結果、31番地上に建物が存在すると判明したとして、本案の時効取得の問題を検討します。
本件の被相続人である亡母は建築後の建物に居住(自己占有)し、所有の意思をもって約22年間住み続けて来られました。一般的には売買等の事情がなければ相続された土地建物の地番調査などはされないことは理解しますが、建物の登記上に他人地の表示が存在する以上、所有者であった亡母において、それらの調査をすれば事実関係が判明するのであり、この調査を怠ったために、31番地が相続した土地に含まれ、自己の所有に属すると信じて占有を始めたときは、亡母は無過失ではありません(最高裁判決昭和43年3月1日民集第22巻3号491頁)。従って短期時効の対象にはならないのですが、すでに20年以上、平穏公然にお住まいであったことは、長期の取得時効の対象として取扱うことは可能でしょう。

【被相続人の時効取得と相続人の援用】
本件では、当該不動産(31番の土地)を時効によって取得する権利を有する当事者は亡母です。しかし、所有権の取得時効の援用については、原則として目的物の占有者本人およびその承継人(他に論争あり)で、直接に利益を受ける者が対象ですから、ご相談者が亡母の時効取得を援用出来ます(援用権者)。

詳しくは専門家に相談!!
2019.06.05
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