事業者向けの相談

消費税10%が目前!・・・不動産業者に忍び寄る改正の陰!?

軽減税率、インボイス!?
令和元年10月1日から消費税の税率が10%(原則)となりますが、食品や新聞の定期購読については軽減税率8%が適用されるとしています。
私自身は宅建業者ですが、個人免許で細々と仕事をし、主に家主業での収入で生計を立て、時折賃貸仲介や売買仲介をすることもありますが、年間の売り上げは1000万円に満たないので、これまで消費税については免税事業者としていました。
この度の消費増税では、消費者として支払う消費税の軽減税率の適用はありがたい一方で、免税事業者といってもこれまでテナント賃料の消費税や手数料に消費税を頂いていますので、10月以降は消費増税分の値上げをしようと思っています。前回の増税時には、継続する賃貸借契約においては経過措置があり、5%据え置きで対応した経験がありますが、今回もそのようにしなければならないのか、また、私のような事業者に対する消費増税の影響はどこにあるのか、どうかご教示頂ければ幸いです。
いよいよ消費税の税率が10%に引き上げられるときが見えてきました。本件執筆時においては、多少流動的な(増税のタイミングを遅らせる可能性)状況も取り沙汰されてはいるものの、国税庁等省庁の公報や動きを見るに、よほどの経済情勢の悪化や広域大規模災害、事変等が無い限り、本年10月1日のタイミングで税率10%となることは揺るがないものと思われます。
本件では宅建業者であるご相談者において、今回の増税がどのような影響を及ぼすか、というご質問ですので、新しく採用される「軽減税率」に関する説明はさておき、先ずは貴殿の生業である「不動産貸付」に係る影響を見てみます。

【非住宅不動産の貸し付けに係る消費税の経過措置】
今回の経過措置は、「2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した資産の貸付け」に係る契約に基づいて、2019年9月30日以前からの継続契約に係る資産の貸付けについては、10月1日以降も8%が適用されます。
ここで注意すべきは、上記にある契約締結時期の制限です。本年9月末現在で継続中の賃貸借契約(非住宅)であるだけでは適用要件を満たさず、その契約が本年3月31日までに始期を持つものでなければならないということです。更に、契約上、貸付事業者(大家)が事情の変更その他の理由により、対価の額の変更を求めることが出来る旨の定めがないことも要件とされていることに注意が必要です。なぜなら、一般的な賃貸借契約約款ひな型においては、事情変更による賃料増減請求権(借地借家法32条)に対応している特約が備わっていることが殆どで、何気なく見過ごしているこの特約が、正に「対価の額の変更を求めることが出来る旨の定め」であり、この特約を有している契約では、原則として当該経過措置の対象とはなりません。
本件は、大家の視点でのご相談ですから、言い換えれば、この特約が無ければ原則としては経過措置の対象となり、依然8%の消費税しか課税出来ないこととなります。

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【インボイス(適格証明書)方式導入による影響】
現在(2019年6月)時点で、消費税受取や支払いに係る領収書もしくは請求書に特段の指定はなく、「請求書等保存方式」が採用されています。つまり、事業者は会計処理上、商品を仕入(購入)したとき、相手方の消費税の課税事業者または免税事業者の別なく、消費税の計算上、「売上に係る消費税(受取)」から「仕入に係る消費税(支払い)」を控除した額を納税する仕組み(仕入税額控除)になっています。
しかし、2023年10月1日より導入される予定の「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」は、レセプトに事業者登録番号が記載されます。これは帳簿及び税務署長の登録を受けた課税事業者(適格請求書発行事業者)から交付を受けた適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となり、免税事業者から商品の仕入れ(購入)を行った場合、仕入れ税額控除は原則として使えないことを意味しています(現在のところ、段階的廃止の案で進んでいる)。
すなわち、貴殿のように現在1000万円以下の売上で、消費税免税事業者として消費税の納税が免除されているということは、消費者から適法に受け取った消費税額(不動産業の消費税法におけるみなし仕入れ率40%相当分≒0.08×0.4=0.032)についても免除され、利益(益税)として計上することが可能となっています。しかし、このインボイス方式が導入されると、前述のとおり課税事業者が免税事業者から仕入れ(購入)や手数料等を支払った場合、これまで出来ていた仕入れ税額控除が認められなくなり、実質的な消費税負担増となります。これは何を意味するかというと、全く同じ取引内容であっても、免税事業者との取引は、課税事業者同士の取引に比して損になるということであり、取引相手の選別に繋がる可能性が出てくるということです。
従って、近い将来、免税事業者(売り上げの低い零細企業など)との取引は避けられ、大手を中心とする寡占の市場に拍車が掛るかもしれません。“免税事業者は得”というような風説は、都市伝説になろうとしているのです。

売り上げは少ないが課税事業者を選択するか・・・
2019.07.05
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