消費税増税がもたらす不動産への影響

(公社)全日本不動産協会 全日本不動産近畿流通センター
Z-supportアドバイザー
押田公認会計士事務所
公認会計士 押田大輔
URL http://www.oshida-cpa-office.com

■景気弾力条項によって、消費税率は引き上げられないのか?

消費税率の引き上げは、平成24年8月に成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(以下、「改正法」といいます。)により決定しました。
なお、この改正法には、「景気弾力条項」というものが規定されています(改正法 附則第18条)。
しばしば新聞などでは、「景気弾力条項に、努力目標として名目3%、実質2%のGDP(国内総生産)の経済成長率が明記され、経済環境が急変したときには消費税率の引き上げを停止する」といわれています。
しかし、改正法附則第18条に記載の「名目・実質の経済成長率」は、政策努力の目標を示すものであるため、実際に消費税率の引き上げが停止される可能性は、ほとんどないものと考えられます。

■消費税率と用語の確認

消費税率と用語の確認

■新築住宅は、平成25年9月までに購入すべきか

I 経過措置について

物件の引き渡しが平成26年4月1日以後であれば、原則として消費税は新税率の「8%」が適用されます。
しかし、一定の住宅の請負に係る契約については、平成25年9月30日までに契約を締結していれば、引き渡しが平成26年4月1日以後であっても、旧税率の「5%」が適用されるという「経過措置」があります(改正法附則第5条3項)。

II 事業者側の注意点(経過措置の内容)

まず、この経過措置が適用される要件について整理しておきます。

(1) 平成25年9月30日までに締結した契約であること
(2) 「請負」に係る契約であること

(1)については、「契約の締結」を平成25年9月30日までにしていればよく、請負作業の着手自体は平成25年10月以降であっても問題ありません。
では、(2)の「請負」とはどういった内容であるかについてご説明します。

ここでの「請負」とは、「建物の内装及び外装等について、オーダーメイド可能である」と考えて頂ければ良いでしょう。
国税庁では、「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」で、建物の譲渡契約における「請負」の具体例を挙げていますので、参考にしてください。
下記の区分において、オーダーメイド可能であれば請負に該当するということになります。

建物の内装: 畳、ふすま、障子、戸、扉、壁面、床面、天井等
建物の外装: 玄関、外壁面、屋根等
建物の設備: 電気設備、給排水又は衛生設備及びガス設備、昇降機設備、冷房、暖房、通風又はボイラー設備等
建物の構造: 基礎、柱、壁、はり、階段、窓、床、間仕切り等

では、「請負」の考え方と、「経過措置」の適用について、もう少し具体的に見てみましょう。
下記では、いずれも平成25年9月30日までに契約締結をしているとし、それぞれのケースで「請負」と「経過措置」に該当するかを記載しています。

No ケース 「請負」に該当? 経過措置の適用
1 事前にモデルルームを公開して、マンションの完成前に売買契約を締結する場合(青田売りの場合) × ×
2 No1の条件に加え、購入者が壁の色やドアの形状等の内装について注文を付すことができる場合
3 No2のケースであっても、購入者の希望により標準仕様で建物を売買した場合(購入者が注文を付さなかったという選択をした場合)
4 建設済みの一戸建ての建売物件を売買する場合 × ×
5 No4の条件に加え、購入者の注文により、内装等の模様替えが可能な場合
(新築住宅に限る)

このように、平成25年9月30日までの契約であっても、「請負」(オーダーメイド可能である)に該当しなければ、「経過措置」を適用することができません。不動産業者が「経過措置」を適用する場合は、「請負」に該当するかの事前確認が重要となります。また、その内容を契約書や申込書で購入者に明らかにしておくことも必要です(後述の住宅ローン減税の関係で、「経過措置」を適用したかについての書面を残しておくため)。これらの点に十分留意しておくことが必要でしょう。

III 事業者側の注意点(住宅購入給付金)

自民・公明両党は、平成25年6月末に、住宅取得に係る消費税の負担増を軽減するため、消費税率引上げ時に現金による給付措置を実施する方針を固めました。
具体的には、住宅ローン利用者を対象に、消費税率が8%に引き上げられる平成26年4月以後の住宅購入者には、年収510万円以下を対象に現金10万円〜30万円が給付されます。10%引上げ時の平成27年10月以後は、年収775万円以下を対象に現金10万円〜50万円が給付されます。これらは住宅ローン減税と合わせて適用されます。
この給付措置により、事業者にとっては、消費税率アップ後の需要落ち込みが緩和されると期待できます。

IV 購入者側の注意点(経過措置と住宅ローン減税・住宅購入給付金)

住宅の購入について、購入者にとって注意すべき点は、「経過措置」、「住宅ローン減税」、さらに「住宅購入給付金」があります。
消費税率アップ前の駆込み需要の反動を緩和するため、住宅ローン控除額の拡大が平成25年税制改正で決定されました。また上記で述べたように、「住宅購入給付金」を給付する方針が固まっています。

平成25年税制改正内容は以下の通りです。

■(1)住宅ローン減税の改正(一般住宅の場合)
居住年 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 最大控除額
H26.1〜26.3 2,000万円 1% 20万円 200万円
H26.4〜29.12 4,000万円 1% 40万円 400万円
■(2)個人住民税における住宅ローン控除制度の改正

(住宅ローン控除可能額のうち、所得税から控除しきれなかった額を、以下の範囲内で個人住民税から控除する)

居住年 控除限度額
H26.1〜26.3 所得税の課税総所得金額等×5%(最高9.75万円)
H26.4〜29.12 所得税の課税総所得金額等×7%(最高13.65万円

従って、購入者が「経過措置」を利用して、平成26年4月1日以後に物件の引き渡しを受けた場合であっても、住宅ローン控除については「平成26年3月までに入居した」として計算されることに十分留意して下さい。

ここで、消費税率5%時に住宅を購入した方がよいのか、購入を平成26年4月1日以後(消費税率8%)にして「住宅ローン控除の拡大」と「給付金」の恩恵を受ける方がよいのか、シミュレーションをしてみましょう。

物件条件 購入者の前提
土地 2,000万円 所得 500万円
扶養家族 配偶者のみ
建物 1,500万円(税抜き)+消費税 年間の社会保険料 65万円
自己資金 500万円
住宅 一般住宅 住宅ローン 元利均等35年
ボーナス払いなし
金利2.2%
■消費税率5%時の取得と、平成26年4月以後取得(消費税率8%)で比較
  消費税率5% 消費税率8%
土地(消費税は非課税) 2,000万円 2,000万円
建物(税抜き) 1,500万円 1,500万円
建物に係る消費税 75万円 120万円
A:消費税率による取得価額の増加額 0万円 45万円
住宅ローンの利息総額 約1,380万円 約1,400万円
B:住宅ローンの利息負担増加額 0万円 約20万円
(1)負担増加額(A+B) 0万円 約65万円
(2)10年間の住宅ローン減税総額 200万円 約246万円
(3)住宅購入給付金の支給 0万円 10万円

上記シミュレーションの場合ですと、「消費税率アップに伴う負担増加額」は、(1)の65万円、「住宅ローン減税の拡大額」は、(2)の46万円、「給付金」は(3)の10万円となり、消費税率アップ前に住宅を購入したほうが約9万円お得という結果になりました。 もちろん、購入される方の自己資金や家族構成、金融機関の金利などの前提条件が異なれば、逆の結果になることもあるでしょう。

V 結論

住宅は一生に一度の大きな買い物です。消費税率アップの影響が大きいのは間違いありません。
平成27年10月1日からは消費税率がさらにアップし10%になりますので、現時点で良い物件が見つかっている方は、消費税率がアップする前に住宅を購入すべきでしょう。
消費税率アップ前の駆込み需要により、購入を迷っている間に良い物件がなくなってしまう可能性がありますし、消費税率の影響は、住宅そのものだけでなく、住宅購入後にそろえる家具や家電等にも影響します。
「経過措置」の利用を考えておられる方は、不動産業者に相談し、書面等でその内容も確認しておきましょう。

一方、上記シミュレーションのように、消費税率アップ後は住宅ローン控除の拡大や給付金の支給により、消費税率アップの影響はある程度は吸収することができます。
現時点では購入の意思がなくても、近い将来物件購入予定のある方は、一度シミュレーションしてみるのも良いでしょう。