消費税率引き上げに伴う留意点〜不動産業の場合〜

公益社団法人全日本不動産協会全日本不動産近畿流通センター
Z-support専任アドバイザー
税理士法人KTリライアンス
税理士・CFP 小礒ゆかり

1.はじめに

平成26年4月1日より、消費税率が5%から8%に引き上げられました。具体的には図1の通りです。

図1 消費税率の改正
税率 平成9年4月1日〜
平成26年3月31日
平成26年4月1日〜
平成27年9月30日 
平成27年10月1日〜
合計 国税 5% 4% 8% 6.3% 10% 7.8%
地方税 1% 1.7% 2.2%
不動産業を営む事業者は、今回の消費税率の改正に関して、業種的に次のような特徴があります。
  1. (1)取引金額が大きいため、消費税率引き上げの影響が大きい。
  2. (2)土地の譲渡、土地の貸付、居住用建物の貸付は消費税が非課税であることから、納税額の計算が複雑で、注意すべき点が多い。
上記の特徴を踏まえた上で、今回の消費税率引き上げについて、不動産業を営む事業者が特に注意すべき実務上の論点を解説します。

2.不動産の売買と消費税

(1) 土地の売却は非課税、建物の売却は課税
土地の売却は、消費税は非課税です。ただし、土地の売買に伴う仲介手数料や、土地の整地に伴う造成費は、消費税が課税されます。
一方、建物の売却には、消費税が課税されます。
土地と建物を同時に売買する場合において、消費税等の納税額を正確に計算するためには、土地の対価と建物の対価を明確に区分しなければなりません。不動産業者が土地建物を売買した場合、又は、不動産業者が土地建物の売買の仲介をした場合には、契約書に土地の対価と建物の対価が明示されていなくても、契約書の消費税額から逆算して、合計金額を土地の対価と建物の対価に分けることができます。不動産業者が作成する売買契約書においては、建物に係る消費税額を契約書に明記しなければならないとされているので、契約書に記載された消費税額から、建物の対価の額を計算することができるからです。

図2 土地建物の売買代金の逆算方法
(2) 不動産を売買した日と税率について
不動産の売買の日は、引き渡しの日になります。実務上は、決済日が引き渡しの日になりますので、決済日が平成26年3月31日までであれば、建物の消費税は5%となり、決済日が平成26年4月1日以降であれば、建物の消費税は8%となります。
(3)  不動産を引き渡した日が平成26年4月1日以降でも消費税率が5%となる場合
  1. 例外1
    建物の内装・外装、設備の設置・構造について、買う側の「注文」に応じて建築される建物(いわゆる「注文住宅」)の場合は、平成25年9月30日までに売買契約を交わしていれば、引き渡し日が平成26年4月1日以降であっても、5%の消費税率で計算することになります。なお、5%の消費税率が適用される「注文」の内容とは、図3のようなものになります。

    図3 5%の消費税率が適用される「注文」の内容
    区分 「注文」の内容
    建物の内装 畳、ふすま、障子、戸、扉、壁面、床面、天井等
    建物の外装 玄関、外壁面、屋根等
    建物の設備 電気設備、給排水又は衛生設備及びガス設備、昇降機設備、冷房、暖房、通風又はボイラー設備等
    建物の構造 基礎、柱、壁、はり、階段、窓、床、間仕切り等
    (注)1.注文の内容、注文に係る規模の程度及び対価の額の多寡は問いません。
    2.その注文が壁の色又はドアの形状等の建物の構造に直接影響を与えないものも含まれます。
  2. 例外2
    新築住宅の売買においても、買う側が内装等に特別な注文を付けることができる場合には、平成25年9月30日までに契約を交わしていれば、引き渡し日が平成26年4月1日以降であっても、5%の消費税率で計算されることになります。ただし、平成25年9月30日以降に請負金額が増額される場合には、増額される部分については、8%の税率が適用されることになります。
  3. その他
    1、2の規定の適用をうけた場合には、適用を受けた部分の対価の額と消費税額の両方を契約書・請求書等に記載して、相手方に通知する必要があります。
    また、平成26年4月1日以降に居住の用に供した住宅について、住宅ローン減税の借入限度額が拡充されましたが、1、2が適用されて消費税が5%になる場合には、これまでどおりの借入限度額の範囲でしか住宅ローン減税の適用は受けられません。

3.不動産の貸付と消費税

(1) 不動産の貸付に係る消費税
土地又は建物を貸し付ける場合の消費税の取扱いは、それぞれ図4、図5の通りとなります。

図4 土地の貸付と消費税
  貸付の状況 消費税
土地の貸付 貸付期間が1月未満 課税
貸付期間が1月以上 野球場、テニスコート、駐車場などの施設の貸付(青空駐車場を除く)
更地の貸付 非課税
図5 建物の貸付と消費税
  貸付の状況 消費税
建物の貸付 住宅以外(店舗、事務所等)の貸付 課税
住宅の貸付 貸付期間が1月未満
旅館、ホテル、貸別荘、リゾートマンション、ウイークリーマンション等
一戸建て住宅、マンション、アパート、社宅、寮、貸間等(共益費含む。)
(敷金、保証金のうち返還しない部分含む。)
非課税
(2) 貸付期間と税率
不動産の貸付が消費税の課税取引に該当する場合、平成26年3月末までの貸付は消費税率は5%になり、平成26年4月以降の貸付は消費税率は8%になります。
例えば、当月分の賃料を前月○日までに支払うこととなっている賃貸借契約で、平成26年4月分の家賃を平成26年3月に受け取る場合には、平成26年4月分の家賃は、8%の税率が適用されます。
逆に、当月分の賃料を翌月○日までに支払うこととなっている賃貸借契約で、平成26年3月分の家賃を平成26年4月に受け取る場合には、平成26年3月分の家賃は、5%の税率が適用されます。
(3) 平成26年4月以降の貸付でも5%の消費税率が適用される場合
(2)の例外として、図6の要件の全てを満たす場合には、平成26年4月以降の貸付であっても5%の消費税率が適用されます。

図6 平成26年4月以降の賃料であっても消費税率5%が適用される要件
  1. (1)平成25年9月30日までに契約した賃貸借契約であること。
  2. (2)平成26年4月1日より前から継続して貸付けられていること。
  3. (3)平成25年10月1日以後に対価の額の変更が行われていないこと。
  4. (4)貸付期間、対価の額が定められていること。
  5. (5)対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
不動産業者が作成する契約書については、経済事情の変動等による賃料の改定条項が入っており、(5)の要件を満たしていないことがほとんどです。従って、不動産業者が作成するような第三者間の賃貸借契約においては、この規定が適用される事例はほとんどないと思われます。
ところで、グループ会社間や、同族会社とその法人の代表との間で作成される賃貸借契約書の中には、賃料の改定条項が入っていない場合があります。この場合、図6の要件を全て満たしていれば、平成26年4月以降の賃貸であっても、5%の消費税率が適用されることになります。
図6の(4)の貸付期間、対価の額の定めについて、平成26年4月以降の賃貸についても5%の消費税率が適用されるか否かの判定は、図7の通りになります。

図7 貸付期間、対価の額の定めと5%の税率の適用の有無
契約内容 5%の税率が
適用されるか否か
契約書上の賃貸期間が2年間で、自動継続条項がある場合 H25.9.30以前の更新日から2年間 適用あり
次の更新後(賃料を改定しない場合も含む) 適用なし
H25.9.30以前の契約日から2年間は賃料の改定ができない場合 契約日から2年間 適用あり
契約日から2年経過後 適用なし
賃貸期間が2年間で、1年目と2年目の賃料を具体的に契約書に記載している場合 適用あり
「賃貸料はその年の固定資産税評価額の○%」としている場合 適用なし

4.不動産業者の仲介手数料の売上計上時期と消費税

(1)  売上計上時期の原則的取扱い
不動産業者が不動産の売買や賃貸などの仲介をしたことによる手数料は、原則として、売買や賃貸の契約の効力が発生した日に売上として計上します。従って、平成26年3月31日までに契約が成立すれば、消費税率は5%となり、平成26年4月1日以後に契約が成立すれば、消費税率は8%となります。
(2) 売上計上時期の例外的取扱い
不動産の売買の仲介の場合、実務上は、契約が成立した時点では、仲介手数料の全額を収受しない場合が多いです。契約成立時と物件の引き渡し時に、半額ずつを収受する場合や、契約成立時には仲介手数料を収受せず、物件の引き渡し時に手数料の全額を収受する場合などがあります。このような場合には、手数料を収受した時点でその収受した金額の売上を計上することができます。ただし、この売上計上方法は、継続してこのような経理処理をしていることが条件となります。
従って、平成25年10月1日以後に締結した不動産売買等の仲介契約において、例外的な経理処理をする場合には、手数料を収受する日(売上を計上する日)が平成26年3月31日までであれば、消費税率は5%となり、手数料を収受する日(売上を計上する日)が平成26年4月1日以降であれば、消費税率は8%となります。
(3) 平成26年4月以降の売上計上でも5%の消費税率が適用される場合
(2)で説明したとおり、平成26年4月以降に物件の引き渡しがあった場合で、物件の引き渡し時に売上計上しているときは、通常は消費税率は8%で計算されます。しかし、図8の要件の全てを満たす契約の場合には、平成26年4月以降に物件引渡し及び入金があっても、消費税率は5%で計算されることとなります。

図8 平成26年4月以降の売上計上でも5%の消費税率が適用される要件
  1. (1)平成25年9月30日以前に契約した不動産売買等の仲介契約であること。
  2. (2)当初3ヶ月間を契約期間として締結した仲介契約を更新した場合の更新日は、平成25年9月30日以前であること。
  3. (3)依頼者の希望売買金額が契約書に記載されているものであること。
(4) まとめ
(2)と(3)の取扱をまとめると、図9のようになります。

図9 売買契約締結時、物件引渡し時に売上計上する場合の消費税率

5.簡易課税制度を選択している不動産業者の場合

平成26年度の税制改正大綱、簡易課税制度を適用している事業者のみなし仕入率が図10の通り、改正されることになりました。

図10 不動産業のみなし仕入率
  事業区分 みなし仕入率
改正前 第5種 50%
改正後 第6種 40%
これまでは、原則課税よりも簡易課税の方が有利だった不動産業者も、再度有利判定を行う必要があります。特に、外注先が多い不動産管理会社等は注意する必要があります。
この改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間について適用されます。
ちなみに、不動産業を営む事業者が購入した不動産を販売する場合は、販売先が事業者の場合は第1種事業、販売先が消費者の場合は第2種事業になります。また、購入した中古不動産をリフォームして販売する場合には、第3種事業に該当することになります。第5種事業から第6種事業に変わるのは、不動産賃貸による収入・他社物件の管理収入・仲介手数料収入のみとなります(図11参照)。

図11 簡易課税の取引内容と事業区分
取引の内容 事業区分
購入した不動産(棚卸資産)の売却 事業者へ売却 第1種
消費者へ売却 第2種
工務店に依頼した建売住宅の売却
中古不動産をリフォームして売却
事業者へ売却 第3種
消費者へ売却
不動産賃貸収入 第5種(現行)

第6種(改正後)
他社物件の管理収入
仲介手数料収入

6.その他の留意点

(1) 価格設定と取引先への通知の問題
これまで述べた通り、今回の消費税率の改正においては、取引毎に消費税率が5%になるのか8%になるのかの個別判断が必要になります。しかしながら、平成26年4月1日をまたぐ取引の消費税については、一般消費者のみならず、事業者であっても判断が難しいケースがあります。法律上の取扱を確認するだけでなく、それを取引先に対して明確に説明し、トラブルを防ぐことが重要になります。
(2) 会計システムの問題
消費税の申告義務のある事業者、特に原則課税が適用される事業者の場合には、課税期間中の全ての取引について、課税区分や税率を分けて集計しなければならず、会計ソフトを使っての記帳が申告の前提になります。古い会計ソフトを使用している場合には、消費税率の引き上げに対応できないことも考えられます。早めに会計ソフトのバージョン等の確認をしておくべきです。
(3) 課税仕入れの個別論点
消費税率が8%に引き上げになっても、税率5%で計算される取引には、他にも種々のものがあります。不動産業者が日常的に出てくる経費等の中で、平成26年4月1日以後の使用分であっても5%の消費税率で計算されるものには、図12のようなものがあります。

図12 平成26年4月1日以後の使用分でも5%の消費税率で計算されるものの例
  1. (1)平成27年3月31日以前にリースを開始したリース契約のリース料
  2. (2)平成26年3月31日までに決済が終了している、平成26年4月1日以後に使用する旅客運賃(定期代を含みます。)(ICカードのチャージ料を除きます。)
  3. (3)平成26年4月1日をまたいで請求される電気代、ガス代、電気代などの水道光熱費
  4. (4)平成26年4月1日以後に精算する、平成26年3月31日以前に購入等した立替払いの領収書
請求書、領収書等で、取引内容と適用されている消費税率をチェックすることが必要になります。