「宅地建物取引士」誕生へ

宅地建物取引主任者を宅地建物取引士に改める宅地建物取引業法の一部を改正する法律案が、6月18日、参議院本会議(第186回通常国会)において、全会一致で可決・成立しました。

この資格は最初、宅地建物取引員と呼ばれ、1957年(昭和32年)の宅地建物取引業法の第二次改正により発足しました。宅地建物取引業者の資質の向上を図るため、1959年(昭和34年)8月1日から、事務所ごとに都道府県知事が行う試験に合格した宅地建物取引員を専任の取引主任者として1人以上置かなければならないこととされたことによるものです。1958年度(昭和33年度)の宅地建物取引員試験により初代の宅地建物取引員が誕生致しました。都道府県知事が行う試験の実施に係る基本方針については、建設大臣の諮問機関として設置された宅地建物取引員試験選考制度調査会において審議され、1957年(昭和32年)10月22日の同調査会答申に基づき、関係省令が制定され、試験は、都道府県知事が毎年少なくとも1回行うものとされました。しかし、都道府県ごとに独自に試験を行うと、宅地建物取引員の質が統一されず、不都合を生ずる恐れがあるため、1958年度(昭和33年度)の第1回試験以来、都道府県知事の申し合わせにより全国共通の問題を作成し、共通の日に行うこととされました。
1964年(昭和39年)の宅地建物取引業法の第四次改正により、翌年の1965年(昭和40年)4月1日から宅地建物取引員から宅地建物取引主任者に改められ現在に至っています。
宅地建物取引主任者を宅地建物取引士へ改める法施行は、公布後1年以内に政令で定められることとなっており、来年4月1日となる見通しです。

今回の改正で、宅地建物取引士の資質の向上を求めたのも大きなポイントです。宅地建物取引士が信用・品位を害するような行為を禁止する「信用失墜行為の禁止」が新設されたほか、宅地建物取引士に対して「必要な知識および能力の向上に努めなければならない」という文言も新たに追加されました。
このほか、宅地建物取引業者が従業者教育に努めなければならないとする項目も新設されました。また、宅地建物取引業者および宅地建物取引士の欠格事由として「暴力団員等」を追加するなど不動産業界のコンプライアンスも強化されました。
現在「5人に1人」とされている宅地建物取引主任者の設置要件は宅地建物取引士への名称変更後も変わらないこととなっています。

国土交通省は宅地建物取引士の資質の向上のため、7月25日に宅地建物取引士の法定講習の内容充実に向けた検討を行うと発表しました。これに伴い、有識者・関係業界等から構成される宅地建物取引士に係る法定講習充実検討委員会を設置、7月29日に第1回検討委員会が開催され検討が進められています。
今回の改正で、宅地建物取引士の業務処理の原則として、「宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならないこと。」が明文化されました。国土交通省は既存住宅の流通量増加に向け新築重視からストック活用の住宅政策へ移行しようとしています。 既存住宅流通市場の活性化に当たっては、消費者の安心や取引の透明性・効率性の確保などを目的に、宅地建物取引業者がインスペクション業者やリフォーム業者、不動産鑑定業者、アフターサービス保証提供者、金融機関といった関連事業者と連携を密に行い、中古住宅の価値が高まる方向に進むよう期待されています。また、ワンストップ型サービスの必要性等も高まっており、宅地建物取引士に求められる業務内容も多様化しています。今後、宅地建物取引士への期待は高く、倫理規定によりコンプライアンスを遵守し、教育研修により顧客に対し質の高いサービスを提供できるようより一層研鑚していかなければなりません。