Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会(前編)

『士法と業法』『宅建主任者から取引士へ』

出席者
【Z-supportアドバイザー】(50音順)
辛島政勇(税理士)、川崎竜輔(不動産鑑定士)、金 奉植(弁護士)、小礒ゆかり(税理士)
酒井昌直(司法書士)、髙橋香織(税理士/行政書士)、髙橋芳明(不動産鑑定士)
長岡史郎(土地家屋調査士)、中川裕紀子(弁護士)、花上康一(土地家屋調査士)
原 恵一(一級建築士)、福井紀之(税理士)、細谷明子(社会保険労務士)、細谷健一(一級建築士)
松藤隆則(弁護士)、松本康正(弁護士)、森田文子(行政書士)

【近畿流通センター】
坂本俊一 運営委員長
南村忠敬 副運営委員長/システムソリューション事業部長
藤村憲正 倫理綱紀情報管理部長
龍  優  システムソリューション事業部副部長
宮崎彰太 システムソリューション事業部副部長
小山相一、永松秀昭、角前秀史、竹村秀一、伊藤 靖、中西敦子

特別出席者【全日本不動産協会神奈川県本部相模原支部長】
加藤 勉(関東流通センター企画システム委員長)


本日は公私とも大変お忙しい中、当センターが企画いたしました「ラビットプレス+新春特別企画"Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会"」にご出席を賜り、厚く御礼申し上げます。
はじめに、当センターの坂本運営委員長よりご挨拶申し上げます。

坂本皆様こんにちは。あらためまして、皆様に厚く御礼申し上げます。
本日は大変お忙しい中、当センターの座談会にご出席いただき、誠にありがとうございます。また、平素は協会員からの様々な相談に的確なアドバイスをいただき、会員を代表いたしまして心より感謝申し上げます。
本日の座談会は、毎月当センターが配信しておりますメールマガジン「ラビットプレス+」の特別企画になりまして、昨年も開催させていただき大変好評を博しました。今年の座談会は、『士法と業法』をテーマに掲げております。本日お集まりの先生方それぞれの専門分野において、法律が果たす役割と、業務上の問題点等を話し合いたいと考えております。
その他にも、本年4月1日から「宅地建物取引主任者」の呼称が「宅地建物取引士」にあらためられることになります。将来に向けて、宅地建物取引士が担うべき業法上の役割や社会的使命について、先生方から様々なアドバイスを頂戴できたらと思います。
また、相談システム「Z-support」の運営にあたり、先生方へのメリットと会員への業務支援を繋げる手法といたしまして、信頼できる業者へ不動産価格の査定を依頼できる「不動産査定サービス」の構築を検討しております。本日は、この「不動産査定サービス」の仕組みについてご確認いただき、先生方からご意見やご要望をお聞きしたいと考えております。
短い時間ではありますが、最後までどうぞよろしくお願いいたします。

坂本運営委員長、ありがとうございました。続きまして、システムソリューション事業部の南村部長よりご挨拶申し上げます。

南村皆様こんにちは。いつも大変お世話になり、本当にありがとうございます。会員に代わりまして、先生方のご尽力に厚く御礼を申し上げます。
今回で座談会は3回目になります。3回連続でご出席いただいている先生もおられますし、今日が初めてという方もいらっしゃいます。特に、神奈川県本部様にお力添えいただきまして、神奈川を中心に活躍されている士業の先生方がたくさんZ-supportのアドバイザーとしてご協力くださることになりました。現在Z-supportは、総勢39名の先生を抱えるネットワークに成長いたしました。西日本全域の会員へ、このシステムを開放しております。東日本にはまだ開放していないのですが、西日本の会員約10700社には、何かわからないことがあればZ-supportへ、ということで周知をしております。お陰様で、1ヶ月に40件ほどの相談が届くサポートシステムに成長しております。今後もこれを広げていき、続けていきたいと思っています。先生方には無償でボランティアをしていただいているという事で、私どももできるだけ先生方のご意向を聞きながら、一緒に"Win-Win"の関係を作っていきたいと思っておりますので何卒よろしくお願いいたします。

南村部長、ありがとうございました。それでは早速、座談会に入らせていただきたいと思います。本日の座談会のコーディネーターですが、当センターの南村システムソリューション事業部長にお願いしたいと思います。


南村それでは早速、先日、ご参加の皆様には事前に座談会のテーマを送らせていただきました。まず、第一のテーマが、先生方の業務を司っている士法という法律がございます。我々不動産業者の法律は宅建業法です。士法と業法という法律の中で、お互い仕事をしているわけです。法律の違いはありますが、先生方の苦労話なんかをお聞きしながら、2つ目のテーマである宅建主任者から宅地建物取引士への変更へ話を繋げていきたいと思います。
3つ目のテーマは、不動産査定サービスについてです。これは以前に先生方に色々とヒアリングをさせていただいた時に、我々不動産業者へ求めることとして複数いただいたご要望です。それぞれの先生方の業務範疇の中で、不動産に関わる案件が出た時に、だいたいの市場価格を把握したいというお声がございました。そこで、今期のシステムソリューション事業部の事業計画の中に、先生方と一緒に作り上げていく査定サービスというものを入れております。ほぼスキームができあがりましたので、今日は初披露させていただこうと思います。今後、このシステムを完成に向けて作り上げていくわけですが、先生方の色々な視点でご意見をいただきながら、査定サービスの内容を構築していきたいと思います。
あと、最後のテーマといたしまして、日頃、会員から先生へ様々な相談が届いていることと思います。その中で、印象に残った相談や、会員全体に対して「もっとこうすればいいのに」というようなことがあれば、ぜひお聞きしたいと思います。

『士法と業法』
まず、アドバイザーの先生方には、それぞれお持ちの資格について、その使命と職責を規定する士法があると思います。我々宅建業者には免許制度を基本とした業務を規制する宅建業法という法律があります。それぞれ仕事の内容は違うのですが、法律が果たす役割と実務上の問題点、また士法と業法はどう違うのか、ということも教えていただきながら話を進めていきたいと思います。

松藤先生、弁護士法とはどういった法律になるのでしょうか。

松藤一言で説明するのは難しいですね。基本的には、法律業務を行う場合は弁護士の資格がないといけない、というのが弁護士法の一番の特徴になると思います。資格なしで法律業務をすると罰せられることもある、というのが特徴的なんですが、その線引きは非常に難しいと思います。弁護士の仕事というと、まず相談に乗ること、書面を作成すること、それから調停、訴訟があります。訴訟は分かりやすいですが、それ以外は業者の皆さんが日常的にやっておられることと同じです。よく言われるのは、紛争性の有無です。一定の紛争性がある場合は、弁護士でないと解決してはいけないと言われています。利害の対立があるような場合ですね。ただ、この紛争性というのもまた微妙なんですね。特に立ち退き交渉なんかで、弁護士法違反で事件になったケースもありますから、この線引きは、実際は難しいと思います。

南村松本先生、いかがですか。

松本松藤先生が仰った通りですが、付け加えるなら、代理業務を行うかどうかということですね。違法になるかどうかの線引きで問題になってきます。あくまでメッセンジャー的な立場として業者さんが活動される場合と、最近はあまりないと思いますが、「俺に任せておけ」と踏み込んで自分でやられると違法性が出てくる場合があると思います。

南村原先生、建築士法はどういった法律でしょうか。

まず建築基準法がありまして、その下に建築士法という法律がございます。施行側としては建築業法という法律もあります。建築士法は一級建築士、二級建築士、さらに木造建築士という3つの建築士を束ねた法律になります。大まかに言いますと、一級建築士はこの規模の建物が設計できる、二級はここまで、木造はここまでというジャンル分けがあります。その他に、資料保管は何年しなさい、といったことなど諸々、建築士としての義務と罰則があります。一連の耐震偽装問題以降でしょうか、免許が更新制になりました。3年に一度、丸一日の講習を受けて、テストがあります。そのテストに受からないといけないというようになりました。私もこの前受けてきまして、60点以上ぐらいで合格なんですが、95点でした(笑)。

南村建築士の細谷先生、いかがでしょうか。

細谷健一まあ、たいていの場合は90点以上が当たり前なんですが(笑)。あと、建築士法では、建築士は図面を描くのが仕事であって、あとは現場に入ったときに予想もしていなかったことが発生しますので、その図面との食い違いに対してどう対処するのか、ということを考えなくてはなりません。また、そこで変更が生じた場合には、図面が変わるごとにちゃんと検査機関に届出をして、必ず中間検査や完了検査を受けるといった義務が我々にはあります。

南村ありがとうございます。では次に、我々と非常に密接な関係にある不動産鑑定士についてお伺いしたいと思います。不動産鑑定士の髙橋先生、お願いします。

髙橋芳明不動産鑑定士の場合は、宅建業者さんと同じように不動産鑑定士法というものはございません。不動産鑑定業法というもので規定されております。逆に言えば、不動産鑑定士の資格を持っていなくても、専任の不動産鑑定士を雇っていれば、不動産鑑定業務ができるということになります。たとえば、不当鑑定が行われたとなりますと、これは鑑定士個人に対して責任が問われます。国交省に対して、個人と業者とがそれぞれ登録しています。不当鑑定の責任は個人、業者の方は、監督責任を問われることになります。

南村税理士法について、小礒先生お願いします。

小礒税理士は税理士の資格がないと仕事ができないという事になっております。法律相談は、弁護士でなくても無償だったら相談に乗っていいというようなことがあるかと思うんですが、税理士の場合は、無償であっても個別具体的な相談には本来乗ってはいけないという規定があります。ただし、一般的な相談ですと、当然不動産業者の方も税金についてはよく出てくる話ですし、ファイナンシャルプランナーはどうしても税金が絡んできます。一般的な話は問題ないけれども、個別具体的な相談は税理士じゃないといけないという事になっています。

南村無償でもダメですか?

小礒はい、無償でもダメです。

南村税理士の髙橋先生、いかがですか。

髙橋香織今、税金の相談はとても多くて、「資格がないのに答えたけど大丈夫かな?」といった相談を受けることもあります。やはり個々で税金が違うので、資格を持った人物が直接相談者とお話しをして、その場できちんとお答えする方がいいと思います。

南村福井先生、いかがでしょうか。

福井税理士法では、税務代理と税務書類の作成、税務相談というのが税理士の独占業務となっています。しかし実際は、先程髙橋さんが仰ったように、簡単な質問にはいろんな人が答えています。そこに税理士法と実務上の矛盾があるんですね。でも、税務署に対して申告書を代理で作成したり、税務調査に立ち会ったりするには税理士の資格が必要だと法律で決まっています。ただ、それだと弁護士は何もできないのか、不動産業者は何もできないのかというと、事実上はそんなことないですよね。皆さんインターネットで調べて、お客様からの色々な相談に乗っておられると思いますし、税理士じゃないと何もできないのかというと、必ずしもそうではないです。ただ違うのは、最後の申告書を書くときにハンコを押せるか押せないか、電子申告で言うと代理送信できるかできないかというくらいの違いです。ただ、税理士である限りは、色々な特例について一般の人より詳しく知っておかなくてはなりません。東京税理士会では、勉強が義務化されます。やはり士業としては毎年勉強しなくてはいけないだろうという事で、年間36時間、必ず研修を受けなくてはなりません。

南村では次に、社会保険労務士法について、細谷先生お願いします。

細谷明子社会保険労務士は、社会保険の手続きのプロとして、当然ながらそれに付随する法律を知っているから手続きができる、ということになります。また、厚労省所轄の助成金の申請についても社労士じゃないとできないということになっています。さらに、手続きだけではなくて、最近は労使紛争が増えてきていますので、特定社会保険労務士という社会保険労務士だけが受けることのできる試験がありまして、それに合格すると、一定の紛争金額までの労使紛争の代理ができることになります。私も3年前に資格を取得しまして、代理ができるようになりました。そういった意味では、専門分野が深くなっているので、やるべき仕事も増えていっているのかなと思います。

南村次に、司法書士法について、酒井先生お願いします。

酒井司法書士法では司法書士の業務と義務が規定されています。業務としては、不動産業者さんとも関係の深い登記業務、また裁判所や警察署に提出する書類の作成があります。登記業務と書類作成業務の他には、相談業務もあります。平成14年から業務が拡大されまして、簡裁訴訟と代理業務が追加されています。義務については、受任義務というものがあります。これは、登記業務などが独占業務とされている反面だと思うのですが、正当な理由がない限りは業務を断ることができない、というものです。登記業務と書類作成業務については、正当な理由がない限りは、司法書士は断ることができません。簡裁訴訟と代理業務については、弁護士さんも受任義務はないと思いますが、司法書士も同じで、これらには受任義務はありません。その他にも、義務としては品位保持義務といった、曖昧なものもあります。大雑把に決められているものなので、いつも頭を悩ますところではありますが、日々修練を積んでいるところです。

南村では、行政書士法について、森田先生お願いいたします。

森田行政書士法は総務省管轄になります。司法書士の酒井先生が仰ったように、行政書士にも受任義務がありまして、官公庁に提出する書類と権利義務に関する書類の作成という業務があります。特徴としましては、とても範囲が広いという点です。官公庁といいますと、警察から府庁、市役所、それぞれ課が分かれています。また、代理業務ができないという特徴もありますし、登記もできませんが、お客様には分かりづらいようです。司法書士や弁護士との繋がりが強みになっています。

南村次に、土地家屋調査士法について、花上先生お願いします。

花上土地家屋調査士法は、監督省庁が司法書士と同じく法務省になります。土地家屋調査士法は司法書士法と似ているんですが、監督省庁が同じ法務省の資格としましては、司法書士と司法試験と土地家屋調査士があるんですけど、土地家屋調査士だけ人気がないんですよ(笑)今、受験者数がどんどん減ってしまっていますので、ぜひ皆さんに受けていただきたいと思っています。土地家屋調査士は不動産登記法という手続法の中で業務を行うことについて、できることを定めた資格です。土地家屋調査士ができる業務としましては、不動産登記手続きと、あとADRといって裁判外紛争解決手続というのが5〜6年前にできました。あとは筆界特定制度といって法務局の中にある筆界特定室というところで裁判によらないで筆界を特定しようという、とても良い制度があります。その中で、土地家屋調査士だけでなく、弁護士や司法書士と連携して一緒に境界をはっきりさせていこうという制度ができました。
また、別の資格で技術士という資格があるんですが、この技術士では資格試験で倫理規定やコンプライアンスに比重を置いています。一次試験で20%ぐらいがそういった問題です。それに比べると、土地家屋調査士は試験の中で倫理問題は少ないです。宅地建物取引主任者の試験の中ではコンプライアンスの問題も多かったように思います。土地家屋調査士も、もっとそういった問題を増やしていった方がいいのかなと思いますね。

南村同じく土地家屋調査士の長岡先生、いかがでしょうか。

長岡土地家屋調査士の第一使命であるのが、不動産の状況を正確に登記記録に反映することによって、不動産取引の安全性を確保し、国民の財産を明確にすることです。その中で、先程花上先生が仰ったように、近年は筆界特定制度ができ、ADR境界紛争解決センター等で弁護士の先生との共同受託によって筆界問題を解決していくというシステムもできてきております。ただ残念なことに、筆界特定制度が同時期にスタートしましたので、ADRがあまり使われていないというのが現状だと思います。筆界特定制度を使うと、ほぼ筆界が形成されますので、実務的にはそのほうがよろしいかと思います。また、その後に納得できないという場合は、裁判という事になります。筆界特定制度で決まっても、最終的には裁判によって覆すこともできます。また、土地家屋調査士は正当な理由がない限り、受託を断ることができません。ただし筆界特定制度の代理については業務が長期化するので、受任義務はありませんが、その他の業務については受任義務があります。

南村では川崎先生、不動産鑑定士は不動産鑑定士法という法律がなく、不動産鑑定業法という法律の中でお仕事をされていると思います。どちらかというと宅建業とよく似ているというお話が先ほどあったのですが、川崎先生なりの法律へのお考えがあればお聞かせください。

川崎不動産鑑定士には「不動産の鑑定評価に関する法律」という法律があります。ただこの法律は、資格試験についてや、罰則についての内容になっています。実際に我々不動産鑑定士が基とするものは、「不動産鑑定評価基準」というルールになります。これは時代の変遷とともに、日々更新されています。宅地建物取引主任者と同じく国交省管轄の資格でして、私は不動産鑑定士でもあり、全日のメンバーでもあります。宅建業者として、お客様に不動産価格の説明をする場合は、もちろん無料で説明します。ただ私は鑑定士でもあるので、手数料をいただくこともできるんでしょうけど、それはできないんです。非常に曖昧なところではあります。宅建業者の方が、そのエリアの市場価格について把握している部分もあります。私も全日の新人研修で講師をさせていただいていますが、物件評価に関する研修がありますので、本当に鑑定士と宅建業者の境界は難しいですね。手数料の取り方が違ってきますので、そこが一番の特徴になるかもしれません。

南村ありがとうございました。一通り、本日ご出席いただいている先生方の士業を取り巻く法律をご説明いただきました。辛島先生、税理士は相談業務が多いというお話が先ほど出ましたが、税理士でない人物が税務相談に乗るのは、無償であってもダメなんですか。一般的には、いろんな人が相談に乗っていますよね。

辛島そうですね。税理士の資格の特徴が「無償独占」という事になっていまして、税理士会でもそれを守っていこうとしています。でも実際は、私が相談を受けるお客様の中にも、税理士ではない人に申告書の作成をお願いしていて、ハンコはどこかの税理士の先生のハンコをもらっていたみたいなんですけど、作成してくれた人を税理士だと思っていたら実は違った、という話は珍しいことではありません。比較的よくある話です。法律で無償独占として縛っていたとしても、結局のところ資格がなくても知識があればできてしまうという部分はありますので、税理士としては、毎年変更があり年々複雑化している税法について知識を集積するなどして、差別化を図っていくしかないのかなと思っています。

南村先生方にはそれぞれ独自業務というのがあると思うのですが、森田先生が仰ったようにそれぞれの範疇が横に繋がっていますので、連携されることも多いのかなと思います。ADRについて、いわゆる訴訟外の相談解決業務についてですが、行政書士にもADRがありますし、司法書士にもありますね。我々宅建業会でも総本部でADRの話が出たことがあったんですが、話があまり進んでいません。
今まで弁護士が主に取り扱っていた業務が、他の士業に分散化されたようにも見えます。逆に言うと、弁護士の仕事が少なくなってきた、特に簡易訴訟についてはそんな風に聞くこともありました。金先生、そのあたりはいかがでしょうか。

私自身あまりキャリアが長くない方で、8年目の弁護士ですので、仕事が多かった時代というのがよく分からないですね。昔に比べて仕事が減ったというような印象はないです。ただ、いろんなところでADRの制度が作られていますので、その中で大阪弁護士会がやっている総合紛争処理センターのADR機関は、なかなか件数が伸びないとは聞いたことがあります。

南村中川先生はいかがですか。

中川専門家の方に入っていただいて、紛争が早く解決するなら、その方がいいと思っています。弁護士の仕事が減る、というような感覚は特にないですね。

南村税理士さんのお話の中で、年間36時間の研修を受けなくてはならない、税理士は非常に勉強しなくてはならないというお話がありましたが、どの先生方もこういった研修はあるんでしょうか。松藤先生、弁護士会でもあるんですか。

松藤喧々囂々議論された結果、大阪では研修が義務化され、京都では義務化されていません。各弁護士会によって異なるというのが、ちょっと不思議なところかもしれません。

南村松本先生は大阪弁護士会ですよね。研修会があるんですか。

松本はい。年間10時間程度だったと思います。受講しないと催促されます。催促されても受講しない場合は、弁護士会から何らかの処分があると思います。

南村弁護士会としての処分、ということですね。本来の弁護士の資格には影響しないわけですね。弁護士は更新制ではないですからね。更新があると仰った建築士の原先生、免許更新の試験でダメだった場合、本当に免許が更新されないんですか。

そうだと思います。免許更新については民間の企業が参入していて、そこが講習とテストをするんですが、毎週のように全国どこかでやってます。なので、4月に受けてダメだった場合は、今度6月に受けて、というようにもできます。ほとんどの人が合格するので、落ちた人はいないんじゃないかなと思います。

南村特定社労士や特定司法書士のように、訴訟代理が認められる士業が増えたように思うのですが、本業である弁護士の先生はこのあたりをどう見ておられるのでしょうか。金先生、いかがでしょうか。

私自身は他の士業の方と連携することが多くて、私が他の士業の方を紹介したり、逆に紹介していただいたりするケースが結構あります。社労士さんや司法書士さんとバッティングするということは、私自身はないですね。取り扱う事件としましても、過払い金の訴訟や敷金の返還請求の少額訴訟などを扱った経験があまりないので、そういう点でもあまりバッティングしている印象はありませんね。

南村ありがとうございました。では、我々を司っている宅建業法について、全日メンバーから意見を聞きたいと思います。角前さん、いかがでしょうか。

角前宅建業法というのは、どちらかというと昔の悪徳不動産業者をどうにかして真面目にさせようとしている法律のように思えます。今後、宅建士になりますが、それについての規定等はまだですよね。明文化はされたんですが、中身はまだ何も定められていませんので、これからどんどん締め付けが来るのかな、と思っているところです。

南村士業の先生の士法の中では、報酬規程、報酬の上限や下限を定められていた時期があると思います。不動産鑑定士にはないんでしょうか。

川崎基本的には自由です。逆に縛ってしまうと独占禁止法に触れる恐れが出てきます。

南村花上先生、土地家屋調査士には報酬規程があるんですか。

花上以前はあったんですが、今は撤廃されました。やはり独占禁止法の関係ですね。

南村今は士業の先生には報酬規程はないと思います。ただ、宅建業者にはあるんですよね。昭和45年の告示がずっとそのまま生きておりまして、3%+6万円の上限が定められています。藤村さん、業者としてはどう感じていますか。

藤村法律で定められていた方が請求しやすいし、もちろん悪いこともできないと思いますので、私は報酬額について定められている方がいいと思っています。

南村3%という率についてはどうですか。

藤村大きな仕事の際の3%はいいものだと思いますが、少額の場合の3%はものすごく低く感じますね。

南村そうですね。デフレの時なんかは大変ですね。


南村皆様ありがとうございました。テーマが色々と混在してきていますので、2番目のテーマへ進みたいと思います。今、各士業の先生からご自身の士業についての法律を話していただきました。あらゆる業種が互いに絡み合う時代になってきていますので、ひとつの業種だけで完結するのは難しいのかなと思います。皆がうまくコラボレーションしながら仕事をしていく、そんな時代に入ったのかなというように思います。

『宅建主任者から取引士へ』
平成26年6月に参議院を通過して、宅地建物取引主任者から宅地建物取引士に変わるという法律が成立し、平成27年4月1日に施行されます。呼称が宅地建物取引士に変わって、何が変わるのかという問題は今後出てくるだろうと思いますが、とりあえずコンプライアンスの部分で規定の明文化、それから業務処理の原則が規程の中に入れられています。信用失墜行為の禁止、知識及び能力の維持向上などが法律の中に入れられるということですが、実際にはピンとこないですよね。
我々は業法の中での資格という位置付けだと思いますので、取引士単独では商売できない、業者の免許があってはじめて仕事ができるということになります。そのあたりを将来も見据えて、取引主任者から取引士に変わる意味を法律の専門家に教えていただけたらと思います。中川先生、お願いできますか。

中川名称は変わりますが、中身はあまり変わっていないということなので、これから変わっていくのかなという気がします。今までは個人ではなく業務に対しての規制だったと思うのですが、取引士に変わることで業務を行う個人の資質が求められるようになるのかなと思います。内容についても、今後議論を重ねて変わっていくのかなと思います。

南村松藤先生はいかがでしょうか。

松藤「士」がつくということは、独立性が生まれるということになります。たとえば弁護士はひとりひとりが独立していて、法律事務所の所属ではありません。仮に上司や事務所や会社が「こうだ」と言っても、弁護士個人が「違う」と思ったら、それを主張しなくてはなりません。そこでもし間違ってしまったときには、弁護士自身が責任を問われるというのが「士」の意味なのかなと思います。

南村宅建業者ではなく取引主任者が責任を問われた判例というのは過去にあるんでしょうか。

取引主任者個人が責任を問われたケースというのは、ちょっと記憶にないですね。ただ、今後はそういったケースが出てくるかもしれませんね。また、この改正の内容では、説明義務や知識の更新について強調されています。説明義務に関しては色々と問題が出てくる部分でもありますから、これから判例が厳しくなっていくのか、今後の推移を見守る必要があると思います。

南村勉強はもっとしないといけないだろうなと思いますね。税理士さんは年間36時間の研修があるということですが、試験はないんでしょうか。

小礒試験はないです。36時間を満たさなかった場合も罰則はありませんし、免許更新もありません。税理士会の中では、本当は罰則規定を設けたかったようですが、実際には無理という判断だったようです。

南村宅地建物取引士に変わったときに、多くの先生方が仰ったのが、知識の習得や向上に関して今よりも厳しくなるだろうという事ですが、国家資格としての宅地建物取引主任者の試験が、平成27年から宅地建物取引士の試験になるわけです。試験内容は難しくなるものなんでしょうか。福井先生はどう思われますか。

福井かなり注目されていますので、受験者数は間違いなく増えると思います。受験者数が増えて、今まで通りの合格率にしていると、取引士だらけになってしまいます。そうすると試験を難しくして、ある程度合格者数を抑えるのではないかなと想像します。そもそも注目度が高く、あまり簡単な試験にして合格させるわけにいかないという判断があって、難しくなっていくのではないかなと思っています。

南村永松さんはどう思われますか。

永松従業者に対して主任者は、今は5人に1人なんですよね。昔は10人に1人でした。たくさんとってくれるなら、3人に1人とか2人に1人にした方が業界全体のレベルが上がるという考えがあるかもしれません。

南村今のところ宅建主任者というのは、法35条の説明義務、それから書面の交付義務、署名捺印する義務というのに集約されると思います。不動産取引がないと主任者が活躍する場面がないということになります。弁護士や税理士には相談業務があって、報酬をもらっていいということになっています。他の各士業の先生も同じだと思います。我々は不動産に関して相談に乗った場合、報酬をもらってもいいのでしょうか。

松藤いわゆるコンサルティング報酬については、原則として許されていると思います。ただ実態を見られるので、全部がいいというわけではないですが。

南村不動産の相談には、法律の話とか税務の話とかが全部入ってきますよね。それらをひっくるめて報酬をもらうということになると、すごく微妙な問題が出てくるんじゃないかと思います。
取引士に変わったときに、我々も宅地建物取引士法という法律が欲しいと思うんですよ。宅建業者が宅建業の免許を取得して仕事をするわけですが、鑑定士さんのように鑑定をするのは鑑定士個人であるように、我々も取引士個人ができる業務を会社の中で行なって、独立したかたちで仕事をするというイメージを私はちょっと期待しているんです。先生方はどう思われますか。

細谷明子「士」がついて、専門家として社会に認知されていくという事になると、それだけで仕事をしていけないと意味がないのかなと思いますね。士業は、"かなり勉強して知識を得た人たち"じゃないといけないし、それ相応の業務ができないと、資格を取る意味がないということになってしまうんじゃないでしょうか。

南村辛島先生は今も宅建主任者とお付き合いがあると思いますが、宅地建物取引士に変わって期待することはありますか。

辛島名称を「士」に変えるという事は、今後取引士の社会的地位を向上させていきたいのかなという気がします。その背景には不動産取引の複雑化があると思いますので、今まで以上に高度な専門的知識が求められるのかなと思います。私自身も、複雑な難しい取引の時に宅建主任者の方に相談させてもらって、有益な情報をいただけたら有難いです。

南村不動産鑑定士でもあり宅地建物取引主任者でもある川崎先生は、宅地建物取引士に変わることについてどうお考えですか。

川崎不動産価格に関して報酬をもらってアドバイスする場合は鑑定士の業務です。不動産の売買をする場合は取引士として立ち会うということになります。将来的に取引士が独立して業務をするということになりますと、デューデリデンス業務という業務があると思います。不動産調査のプロフェッショナルということです。買主が、「売主が作成した重要事項説明書では信頼できないので、自分の知っている取引士に重説を作成してもらう」という場合に、独立した取引士ができる業務として、ありえなくはないかなと思います。

南村長岡先生はいかがでしょうか。

長岡私自身も土地家屋調査士と宅地建物取引主任者を兼務しております。少し話が戻りますが、資格試験については急に難しくはならないだろうなと思っています。5人に1人主任者を置かなくてはならない、という観点から考えますと、これ以上試験を難しくするのは難色があるのかなと思います。急に難しくなるというよりも、民法などの専門的な分野のウェイトが大きくなるのではないかと予想しています。また、取引士に変わると、個人に対しての責任追及が厳しくなると考えられます。罰則規定等は、しばらくの間は従来通りだと思いますが、近い将来、会社の責任部分と有資格者個人の責任部分が明確に分かれてくるだろうと予測しています。

南村ありがとうございました。税理士の髙橋先生、宅地建物取引士に期待することはありますか。

髙橋香織私もこの仕事をするようになってから、宅地建物主任者の方々とも仲良くさせていただいているのですが、皆さん知識がすごく豊富ですね。私は税理士なので税務のことしか分からないのですが、例えば譲渡があった、または相続があったときに、実際はどうなのか、現地はどうなのかといった細かい話を主任者の方に聞けたのは本当に助かりました。士業の方々は、もっと宅地建物主任者の方とお知り合いになりたいのではないかなと感じています。

南村酒井先生、先程少し話が出ましたデューデリデンス業務について、以前はエスクローと呼ばれていましたが、重要事項説明書よりももっと詳しい説明書類を作成するということを、司法書士が中心になって進めようとする動きがあったと思います。そのあたりと宅地建物取引士については、どうお考えでしょうか。

酒井私は司法書士ですが、それをやろうとしてもすぐにはできないと思います。やはり宅地建物主任者さんがプロですよね。司法書士よりも、宅地建物取引士の方が今後もっと知識や技術を磨いていかれた方がいいのではと思います。また、先程永松さんが仰ったように、今は5人に1人の主任者を3人に1人、または2人に1人、あるいは資格を持っていないと業務ができないというようになってもいいのかもしれません。私自身も事務員を雇っていますが、事務員に頼んでいい業務かどうか、日々考えてしまいます。典型的なもので言いますと、不動産売買の決済の立ち会いは、昔は補助者と言われる司法書士の事務員が決済の場へ出かけて行って立ち会えばよかったんですが、今はそんなことをしているところはないと思います。そんなことが表沙汰になれば、今は懲戒処分ですから。取引士についても同じように、今後は変わっていくのかもしれません。

南村社労士の細谷先生にお聞きします。今後、宅地建物取引士の独立性が強まるにつれて、宅建業者との労使関係は変わっていくんでしょうか。また、今は5人に1人の主任者が3人に1人の取引士になったら、たとえば業者間で取引士の取り合いになったり、資格手当の金額が変わったりすることが考えられるのでしょうか。

細谷明子確かに経営的には考えないといけないでしょうね。例えば薬剤師や看護師は今取り合いなんです。人材確保をどうするかというと、お給料を上げるしかなくて、それによって経営が圧迫されるということがあります。私の知っている薬局の経営者の方によると、薬剤師の発言権がすごく高くなっているそうです。社長と労働条件について交渉できるぐらいの状況です。そういう意味で、資格を持った人をある一定数確保しないと業務自体ができないとなると、それはちょっと対策を考えておかないといけないと思います。

南村そうですね。そういったところで初めて資格が生きてくるのかもしれませんね。
建築士の細谷先生にお聞きしたいのですが、設計の図面は資格がなくても描いていいんですか。

細谷健一図面を描くこと自体はCADオペレーターという言葉があるように、資格は必要ないです。しかし、最終的に建築士がチェックして、その図面にハンコを押して責任を持たなくてはなりません。

南村建築士の先生から見て、不動産業者の建築に関する知識というのはどのように映っていますか。取引士になるんだからもっと知識を増やさないといけない、というようなことはありますか。

細谷健一私の知っている宅建業者さんは、知識がすごく豊富な方が多いですね。尊敬するくらいです。今もそうなんですけど、これからはもっと宅建業者さんが困っている人の相談窓口になって、そこから専門家を紹介したり、こういう家がいいよとアドバイスしたりするようなアドバイザー的な役割が求められるんじゃないかなと思っています。

南村ありがとうございました。加藤さん、これまでのお話をお聞きになっていかがでしょうか。

加藤私自身は宅地建物取引士への名称変更はあまり意味がないと思っております。名前が変わっても中身がともなわなければ意味がないですから。「士」にする以上は、もう少しハードルを高くするとか厳しさも必要なんじゃないかと思います。実態は、5年に1回の講習の時間が1時間伸びるだけなんですね。
不動産業者が実務の中で何をすればいいかという事については、ここにおられるような士業の先生方と、いろんなかたちで関わっていくことなんじゃないかと思います。専門家への相談というのは、お客様にとって解決への糸口になる非常に有益なものだなと思っています。私自身も神奈川で不動産相談協会というものに加入しておりまして、相談の対応にも参加しております。不動産相談協会で開催している相談会では各士業が集まりますので、一発で解決できてしまうという効率の高い内容になっています。ですので、Z-supportのような専門家相談という仕組みは、本当に意味のあるものだと思います。
宅地建物取引士と名前が変わるだけで、私たちの中身が変わるわけではない以上、こういった士業との連携が今後も不可欠だと思っています。

南村ありがとうございました。先生方の専門性に比べると我々の専門性というのはどのあたりにあるのかなと、ちょっと思うところはありますね。特に不動産というのはパーツも多いし、関連法も多いですから、いろんなことを広く浅く求められるんですけども、"これは取引士でないとできない"という部分が実際にあるのかどうか考えると、まだちょっと確立されてないのかなと思います。それが確立されたときに、宅地建物取引士法ができるという流れを作っていかないといけないと思います。
先生方に負けないように宅建業者も頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

(ラビットプレス+3月号に続く)