【2015年4月号特集】「宅地建物取引士」制度について <平成27年4月1日施行>

宅地建物取引主任者から、
「宅地建物取引士」へ名称変更。

平成26年度宅建業法改正の概要

平成26年度改正の最大のポイントは、宅建業法における「宅地建物取引主任者」の名称を全て「宅地建物取引士」に改める、とされたことである。
宅建業法においては、―斗彁項説明(第35条第1項)、⊇斗彁項説明書への記名押印(同条第4項)、7戚鹹結時に交付すべき書面への記名押印(第37条第3項)の三つについて、従来から宅地建物取引主任者の専管事務として、宅地建物取引主任者以外の従業者が行っても宅建業者は宅建業法上の義務を果たしたことにはならないものとしている。これは、宅地建物取引は、各種の法令等が複雑に絡んでおり、また取引当事者の権利義務関係も画一的ではないとの考慮から、その取引の根幹となるべき部分について、宅地建物取引に相応の知識を有する者をして関与させ、併せてその関与の責任の所在を明らかにしておくことが、購入者等の利益保護と宅地建物の流通円滑化という宅建業法の目的に沿うゆえんと考えられたからである。
ところが、宅地建物取引主任者制度が創設された当時に比べ、重要事項説明の項目の一つをとっても極めて膨大かつ複雑化しており、また業務に関して必要な知識も多様化している。このような取引環境の大きな変化の中で、宅地建物取引主任者が宅地建物の安全な取引のために果たすべき責任の増大や中古住宅の円滑な流通に向けた関係事業者の連携等、その役割が大きくなっていることを踏まえると、その役割にふさわしい資格名称にすることが適切である。「主任者」を「士」に変更する今回の改正は、そのような背景事情の下に不動産業界のかねてからの要望ないし意見活動が立法府に受け入れられた結果である。

●宅地建物取引士に関する三つの規定の新設

宅地建物取引士への名称変更に伴い、宅地建物取引士に関する次の三つの規定が宅建業法に新設され、また、業法の解釈・運用の考え方にも関連項目が追加された。

1 宅地建物取引士の業務処理の原則(第15条)

宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。

業法の解釈・運用の考え方(第15条関係)

公正誠実義務について
宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、専門的知識をもって適切な助言や重要事項の説明等を行い、消費者が安心して取引を行うことができる環境を整備することが必要である。このため、宅地建物取引士は、常に公正な立場を保持して、業務に誠実に従事することで、紛争等を防止するとともに、宅地建物取引士が中心となって、リフォーム会社、瑕疵保険会社、金融機関等の宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携を図り、宅地及び建物の円滑な取引の遂行を図る必要があるものとする。

2 宅地建物取引士の信用失墜行為の禁止(第15条の2)

宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

業法の解釈・運用の考え方(第15条の2関係)

信用失墜行為の禁止について
宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として専門的知識をもって重要事項の説明等を行う責務を負っており、その業務が取引の相手方だけでなく社会からも信用されていることから、宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為をしてはならないものとする。宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為とは、宅地建物取引士の職責に反し、又は職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為で、宅地建物取引士としての職業倫理に反するような行為であり、職務として行われるものに限らず、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為も含まれる。

3 宅地建物取引士の知識及び能力の維持向上(第15条の3)

宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

業法の解釈・運用の考え方(第15条の3関係)

知識及び能力の維持・向上について
宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、常に最新の法令等を的確に把握し、これに合わせて必要な実務能力を磨くとともに、知識を更新するよう努めるものとする。

◆平成26年度の改正では、次のような宅建業法の規定新設や、業法の解釈・運用の考え方の項目追加も行われた。

1 宅地建物取引業者による従業者の教育(第31条の2)

宅地建物取引業者は、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない。

業法の解釈・運用の考え方(第31条の2関係)

宅地建物取引業者は、その従業者に対し、登録講習をはじめ各種研修等に参加させ、又は研修等の開催により、必要な教育を行うよう努めるものとする。

2 免許等に係る欠格事由等の追加(宅建業法)

この追加は、近時の反社会的勢力排除の流れに沿うものである。
‖霖老物取引業の免許の欠格事由および取消事由に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)が追加された(第5条第1項および第66条第1項)。 宅地建物取引士の登録の欠格事由および消除事由に、上記,汎瑛佑法◆嵋塾話聴等」が追加された(第18条第1項および第68条の2第1項)。

3 宅地建物取引士証の提示に関する事項(業法の解釈・運用の考え方)

宅建業法第22条の4および第35条第4項に規定する宅地建物取引士証の提示を行う際には、「住所欄」が見えないようにシールを貼ったうえで提示しても差し支えないとされた。この追加は、宅地建物取引士の個人情報保護の観点から明記されたものである。

‖霖老物取引士証の提示について(第22条の4関係)
宅地建物取引士証の提示に当たり、個人情報保護の観点から、宅地建物取引士証の住所欄にシールを貼ったうえで提示しても差し支えないものとする。ただし、シールは容易に剥がすことが可能なものとし、宅地建物取引士証を汚損しないよう注意すること。

宅地建物取引士証の提示について(第35条第4項関係、追加は「なお」以下)
提示の方法としては、宅地建物取引士証を胸に着用する等により、相手方又は関係者に明確に示されるようにする。なお、提示に当たり、個人情報保護の観点から、宅地建物取引士証の住所欄にシールを貼ったうえで提示しても差し支えないものとする。ただし、シールは容易に剥がすことが可能なものとし、宅地建物取引士証を汚損しないよう注意すること。


宅地建物取引士の心得

宅建業において、宅地建物取引士がその社会的使命を全うするためには、各人が守るべき基本的な心得がある。

第一は、顧客にとって重大な取引に関与する宅地建物取引士には、消費者の信頼に十分に応え得るだけの、取引に関する幡広い知識と高度な職業倫理を有していなければならないことである。
第ニは、不断の自己研鑽である。専門家としての経験を積み重ねるだけではなく、研修や資格取得により、知識の向上・ブラッシュアップを図ることは、取引の安全性を確保し、顧客のより望ましい選択に助言するためにぜひ必要である。
第三は、一般従業者への指導・助言である.

以上三つの観点から、宅地建物取引士の基本的な心得について説明する。

・永続的な営業努力と高度な職業倫理
企業が永続的に発展すべきであるのと同様に、個々の宅地建物取引士および従業者の営業努力も永続的でなければならない。短期的な利益追求だけを目的とした営業姿勢は、決して長続きするものではない。
そして、その姿勢も高い職業倫理で裏打ちされたものである必要がある。
不動産業は「信頼産業」でなければならない。それぞれの地域の住民から確固たる信頼が得られなければ、事業の発展もないといえる。そして、その信頼は個々の宅地建物取引士および従業者の永続的な営業努力から得られるものであって、短期的な視野からは決して得られないことを再認識する必要がある。

・要求される専門家としての知識
宅建業法においては、宅地建物取引の重要な過程において、宅地建物取引士を関与させ、公正な取引の実現を図っているが、宅地建物取引士がこの職責を全うするためには、この取引を安全に進めるための専門家としての知識が必要である。ここで要求される知識は、当該取引において直接必要となる宅建業法等の法令、税務知識等に関するもののみならず、社会的・経済的環境に関する知識なども含まれる。
今回の宅建業法改正に伴い、業法の解釈・運用の考え方:第15条の3関係(知識及び能力の維持・向上について)が追加され、「宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、常に最新の法令等を的確に把握し、これに合わせて必要な実務能力を磨くとともに、知識を更新するよう努めるものとする。」と規定されたように、宅地建物取引士として不動産業界をとりまく状況の変化や関係法令等の改正の動きを常時把握しておくなど、最新の知識・情報の収集に努めることが要求されている。
つまり、社会の素早い変化に対応するためだけではなく、前述した取引の安全性の確保および顧客の望ましい選択に助言するためにも、宅地建物取引士には不断の自己研鑽が必要となるのである。

・宅地建物取引士資格を有しない従業者との連携
今回の宅建業法改正に伴い、業法の解釈・運用の考え方:第31条の2関係が追加され、宅建業者による従業者の教育について「宅地建物取引業者は、その従業者に対し、登録講習をはじめ各種研修等に参加させ、又は研修等の開催により、必要な教育を行うよう努めるものとする。と規定された。
宅建業における最大の使命は「取引の安全」である。宅地建物取引に必要な安全確保のための措置、すなわち重要事項の説明や契約締結時に交付すべき書面への記名押印は、宅地建物取引士の責任において行われるが、そこに至る過程での担当者は、宅地建物取引士資格を有しない従業者である場合も多い。
宅建業者(=経営者)がこのような宅地建物取引士資格を有しない従業者を教育する責務を負うのは前述の新設規定によっても当然のことではあるが、宅地建物取引の重要な過程に関与し、その安全を担う宅地建物取引士は、当該取引に関与する宅地建物取引士資格を有しない従業者に対し、その個々の役割を自覚させるとともに、必要な助言・指導を行い、そして、常時、取引に関する情報を交換するなどの業務上の連携を通じて、自らが取引の安全確保を図る自覚をもつ必要がある。

<公益財団法人不動産流通近代化センター「宅地建物取引士の使命と役割」冊子より抜粋>