【2016年2月号特集】
Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会(前編)

『民法改正について』
『マイナンバー制度について』

出席者
【Z-supportアドバイザー】(50音順)
梅村武志(司法書士)、小礒ゆかり(税理士)、長岡史郎(土地家屋調査士)、中川裕紀子(弁護士)
中島宏樹(弁護士)、原 恵一(一級建築士)、福井紀之(税理士)、松本康正(弁護士)

【近畿流通センター】
南村忠敬 運営委員長
中川俊寛 副運営委員長
三本皓三 副運営委員長
坂本俊一 副運営委員長
龍  優 システムソリューション事業部長
角前秀史 システムソリューション事業部副部長
永松秀昭 システムソリューション事業部副部長
田中勇人 システムソリューション事業部
米原大輔 システムソリューション事業部
宮崎彰太 システムソリューション事業部

妹尾和江 財務部長
中西敦子 総務部副部長
大山健一郎 倫理綱紀情報管理部副部長
中野楠雄 総務部
百田克彦 監事






















永松:本日は公私とも大変お忙しい中、当センターが企画いたしました「ラビットプレス+新春特別企画"Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会"」にご出席を賜り、厚く御礼申し上げます。
本日、司会を務めさせていただく永松と申します。よろしくお願いいたします。
それではまず、近畿流通センターの南村運営委員長よりご挨拶申し上げます。

南村:皆さん、こんにちは。先生方には日頃大変お世話になっております。また、今日は年末のお忙しい中お越しいただき、本当にありがとうございます。Z-supportの先生方との座談会も今回で4回目ということです。現在、Z-supportでは約40名の先生方にご参加いただいており、神奈川や東京の先生方にも多数ご協力いただいております。今後も全国規模で先生方とのコラボレーションを広げていきたいと考えて、この仕組みを運営させていただいております。
細かな内容は、この座談会でお話が出ると思いますが、会員からの様々なご相談に親身になってお答えいただいていることにあらためて感謝を申し上げるとともに、今後もどうかよろしくお願いしたいと思います。

永松:続きまして、龍システムソリューション事業部長よりご挨拶申し上げます。

:本日は、お忙しいところご出席いただきまして誠にありがとうございます。私は、南村運営委員長の後任といたしまして、今期からシステムソリューション事業部長という大役をお受けしております。どうぞよろしくお願いいたします。
システムソリューション事業部とアドバイザーの先生方との座談会も今回で4回目という事で、大変うれしく思っております。本日のテーマですが、まずは民法改正について。次にマイナンバー制度に関して先生方のご意見をお聞きしたいと思っております。そして、不動産業と士業の接点について。このテーマは毎年お話させていただいているかとは思いますが、今年もまたお願いしたいと思います。最後に、先生方から事前にご提案がありました、Z-supportの現在の状況と、2015年7月から稼働しております「不動産査定サービス」についても少しお話させていただきますので、先生方のご意見をお聞かせいただけたら幸いに思います。
本日は長時間になるかもしれませんが、先生方の忌憚のないご意見をお伺いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

永松:龍部長ありがとうございました。続きまして、本日ご出席の方々に自己紹介をお願いしたいと思います。まずは先生方からお願いします。

梅村:司法書士の梅村と申します。大阪市中央区に事務所を開いております。この座談会には、3回ほど出席しているかと思います。今回のテーマは新しいことばかりなので、今日は私も勉強させてもらいたいと思います。よろしくお願いいたします。

小礒:こんにちは。税理士法人KTリライアンスの税理士の小礒と申します。私もこの座談会は3回目ぐらいになると思います。いつもありがとうございます。今回のテーマでは、我々の税理士業界ではやはりマイナンバーですね。1年前ぐらいから税理士会でも研修がさかんに行われていまして、顧問先様からも色々と尋ねられることが多いです。またマイナンバーについては後ほどゆっくりお話したいと思います。よろしくお願いいたします。

中川裕紀子:ウィンクルム法律事務所の弁護士の中川と申します。よろしくお願いします。事務所は神戸の三宮にあります。主に相続業務、不動産についても取り扱っております。今日は皆様のご意見をお聞きして、有意義な座談会にしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

中島:弁護士の中島といいます。松藤弁護士と同じ事務所で、事務所は京都にあります。今日は初めて参加させていただきます。京都では空き家問題の対策なども手がけておりますので、そのお話もできたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

長岡:皆さん、こんにちは。土地家屋調査士の長岡と申します。事務所は和歌山県岩出市にございます。座談会は今回で2回目の参加になります。よろしくお願いいたします。今回のテーマに関しましては、私の専門分野から少し離れるところですので、今日は皆様のご意見を聞いて勉強したいと思いますので、最後までよろしくお願いいたします。

:プラスワン建築設計事務所の原でございます。事務所は東大阪です。業務内容は住宅から施設系まで、耐震診断や空き家対策、定期報告調査もしております。この座談会には初回から出席させていただいておりまして、今日で4回目になります。よろしくお願いいたします。

福井:税理士の福井と申します。東京都町田市で開業しております。今日は、関東のアドバイザーが私ひとりなんですが、東京・神奈川のアドバイザーはとても仲が良く、色々な問題に一緒に対応することが多々あります。今日の座談会ではしっかり勉強して、また東京・神奈川の仲間に報告したいと思います。よろしくお願いいたします。

松本:こんにちは。大阪セントラル法律事務所の弁護士の松本康正です。大阪市中央区本町で事務所を開設させていただいております。この座談会は4回目になるかと思うのですが、毎年楽しみにしております。本日のテーマは、私どもの方でも話を聞かせてほしいと言われることが多いテーマでして、全日さんでも講演をさせていただきました。マイナンバー制度についてはむしろ税理士さん、社労士さんの専門分野ですので、今日は勉強させてもらえればと思います。よろしくお願いいたします。

永松:ありがとうございました。では、近畿流通センターの紹介に移ります。三本副運営委員長からお願いいたします。

三本:はじめまして。大阪府本部の本部長をつとめております三本と申します。座談会は初めて参加させていただきますので、今日は皆さんのお話をお聞きして色々と参考にさせていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

坂本:皆さんこんにちは。昨年は運営委員長として参加させていただきまして、今年もこのようなかたちで出席させていただきましたことをありがたく思っております。本日は色々なテーマがございますが、特にマイナンバー制度につきましては、宅建業法や我々の業務にも直接関係することがあると思いますので、ここでしっかりと勉強して和歌山の会員の皆様にも伝えたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

中川俊寛:滋賀県本部の中川と申します。座談会は2回目の参加になります。本日のテーマになっているマイナンバー制度に関しては、不安に思っている部分も多々ありますので、皆さんのご意見をしっかりお聞きしたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

角前:皆様こんにちは。近畿流通センターシステムソリューション事業部副部長を仰せつかっております角前と申します。毎年、この座談会での先生方との活発な議論を楽しみにしており、勉強させていただいております。本日もよろしくお願いいたします。

田中:今期からシステムソリューション事業部に配属となりました田中と申します。座談会には初めて参加させていただきますので、色々と勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

米原:こんにちは。私も今期からシステムソリューション事業部に配属されました米原と申します。今日は勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

宮崎:システムソリューション事業部の宮崎です。座談会は今回で4回目の出席になりますが、毎回先生方のお話を聞いて勉強させてもらっています。今日も皆さんの意見をたくさんいただいて勉強したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

妹尾:皆さんこんにちは。座談会は今回が初めての参加になります。近畿流通センターでは財務を担当しておりまして、所属は大阪府本部になります。今回は民法改正についてということで、高い関心を持っています。「瑕疵」という文言が消えて、そのかわりに「契約不適合」というのは一体どういうものなのか、また個人間売買の際にどのように変わるのかということに最大の関心を持っておりますので、今日はどうぞよろしくお願いいたします。

中西:こんにちは。和歌山県本部の中西と申します。座談会は今回で2回目の参加になりますが、前回たくさんのことを学ばせてもらいましたので、今日も楽しみにして参りました。よろしくお願いいたします。

中野:こんにちは。大阪府本部に所属しています中野と申します。大阪府本部では副本部長を仰せつかっております。座談会の参加は初めてになります。今回のテーマであるマイナンバーについては、テレビや新聞等でも目にすることが多いですが、今日はたくさん勉強させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

百田:こんにちは。大阪府本部所属の百田と申します。座談会には初めて参加させていただきます。今日は先生方のお話をしっかり聞かせていただいて勉強したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

<テーマ 〔泳_正について>

:では、最初のテーマである民法改正についてです。我々不動産業と民法改正の関わりについて、まずは先生方からお話をお伺いしたいと思います。なお、今年度のDVD研修では、松本先生が民法改正について講演をしてくださっています。松本先生には最後にお話をお聞きすることにいたしまして、まずは中川先生に民法改正と不動産業についてお話をお伺いしたいと思います。

中川裕紀子:たとえば不動産の賃貸の場面で考えると、敷金や原状回復に関する部分が明文化されることが変更点と言えます。売買の場面では、先程お話があった瑕疵担保責任がより強く出てくることになります。

:中島先生はいかがでしょうか。

中島:賃貸借に関しましては、従前の判例で規定されていたものが条文として変わることになるのかなというところで、実務にはそれほど大きな変更はないように思います。売買については、契約不適合など、概念が入れ替わる部分があると思いますので、一度きちんと整理して、どういう場面にどういう要件で、どういった責任を負わなければいけないのかということを、施行前にきっちり整理しておく必要があるかと思います。

:ありがとうございます。梅村先生、たとえば売買の際に不動産業者が司法書士さんに登記の委託をするかと思いますが、民法改正によって何か影響はあるのでしょうか。

梅村:登記関連では特にないように思います。民法改正では、契約に関する部分が変更になるという認識ですね。

:それでは松本先生、民法改正についてまとめてお話をしていただけますでしょうか?

松本:民法が改正される予定ですが、先般、折しも最高裁が民法の条文に関して違憲判決を出しました。ただこれは家族法の分野です。民法は、財産法、家族法に大きく分かれます。そのうちの財産法について抜本的な改正をするというのは、実に120年ぶりとなります。先ほど先生方からもお話がありましたが、基本的には取引のルールが一変してしまうわけではなく、これまで積み上げられてきた判例や実務、あるいは学説などを条文に反映させたというところになっています。ですので、現時点ではそれほど過敏になっていただく必要はないのかなと思っています。
ただ、少し気を付けた方がいいと思うのは、保証人の保護についての変更です。また、民事法定利率が変動制になります。今までは年5%だったところが、変動金利になります。要するに、遅延損害金などの約定金をきちんとしておかないといけないということです。このあたりが、不動産業者さんとしてチェックを要するところかと思います。

:ありがとうございます。先ほど質問が出ていました、瑕疵担保責任がなくなって契約不適合に変わるという件ですが、同じような概念で危険負担というのもあると思うのですが、このあたりはどう変わるのでしょうか。

松本:まず、瑕疵担保責任については不動産業者さんの関心の高いところだと思います。Z-supportや他の不動産の相談でも瑕疵がらみのご相談が多く寄せられています。ですので、民法改正によってどう変わるのかということは、皆さんとても気にしておられるところだと思いますが、結論から申しまして、あまり変わらないと認識していただいて結構かと思います。今までの瑕疵の有無が、改正後は「契約の目的に適合しているかどうか」という判断基準に変わります。その部分については、これまでとそれほど変わらないという認識で構いません。瑕疵というのはキズという意味ですので、物件や権利、状態に何らかの不備があるということです。それがあるかないかという問題と、契約の目的に適合しているかという問題です。言葉は違うように聞こえますね。契約不適合と言われると主観的なように一見思われますが、よくよく考えるとそうでもないと考えています。瑕疵の判断という部分において、今までの判例では当事者の契約の主旨や目的を重視して判断しています。そういったことから考えますと、今まで瑕疵と言われていたものが民法改正後は契約不適合でなくなったり、逆に今まで瑕疵ではないと思われていたものが民法改正後は契約不適合になるということは考えにくいと思います。瑕疵の有無については今申し上げた通りですが、効果については若干変更があります。これまでは契約解除や損害賠償についてだけが民法に明文化されていましたが、追完請求や代金減額請求の手続的な順序や、あるいは権利行使期間などの形式的なところの整備が変わっていますので、むしろその点を確認された方がいいのではと思います。

:ありがとうございます。妹尾さんは先生のご説明をお聞きになっていかがですか。

妹尾:私は不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター)の登録実務講習の講師もさせていただいているのですが、少し前までそのテキストには代表的な建物の瑕疵というのは「雨漏り・シロアリ」だったんですよね。ところが今では瑕疵というのは「雨漏り・シロアリ・建物傾斜」という3項目になってきたんです。中古住宅流通活性化もあり、これからは建物が主役の時代ですから、業者も建物を見られないといけない。少なくとも「雨漏り・シロアリ・建物傾斜」については重要事項説明でもインスペクション結果も含め、明記するのが望ましいし、というあたりのことを会員さんにもお話はしていたんです。
最大の関心事としましては、重要事項説明または物件に関しての情報の開示がどこまで必要なのか、実際にはケースバイケースで、トラブルになったときにはその時の判断という事になるとは思うのですが、取引士として今日お聞きしておきたいのは、どのようなことに気を付けて、どのような心づもりが必要なのかということをお聞きしたいと思います。

:2016年は宅建業法の改正があって、インスペクションの項目が入るというような話はちらほら聞くんですが、長岡先生はいかがですか。少し民法改正からは外れるかもしれませんが、重要事項説明にインスペクションの項目が入ることになるという話についてどうでしょうか。

長岡:今のところ、そういった情報は私のところには伝わってないので、まだ何とも申せませんね。

:私がちょっとお聞きしているのは、耐震やアスベストの有無を聞いて、有の場合はどのようなインスペクションをしたのかを明記するようになるのではないか、という話を聞いています。長岡先生の方では、インスペクションの要望なんかはあるんでしょうか。

長岡:要望は今のところないですね。

:原先生はいかがでしょうか。

:まだ耐震診断どまりなんですが、この前建築士会で第1回目の講習があり、今後は数値化して示すような役割を補うようになるということで、講習を受けてきた段階ですね。まだまだこれからのことかもしれません。

:我々にとって重要事項の変更というのは、かなり大きなウエイトを占めますので、そういった情報を事前に聞くと不安になる方も多いみたいですね。民法改正については松本先生にまとめていただきましたし、DVD研修でも学んでいただけたかなと思いますので、このあたりで次のテーマに移りたいと思います。

<テーマ◆.泪ぅ淵鵐弌疾度について>

:本日2つ目のテーマであるマイナンバー制度については、皆さんも関心の高いものだと思います。様々な研修会も実施されていますし、大阪府本部での研修会でも、かなり多くの参加希望者がありました。やはり不動産業者にとっても関心が高いという事がうかがえます。
ではまず、税理士の福井先生からお話をお聞きしたいと思います。

福井:不動産業者さんがマイナンバー制度によって最も影響がありそうなのが、支払調書に大家さんのマイナンバーを記載しないといけないという事、もしかすると大家さんから賃料徴収の代行をしている不動産業者さんの場合ですと、大家さんのマイナンバーを教えてください、というような電話があるんじゃないかということが想定できます。もちろん、不動産業者さん自身の源泉徴収に、従業員のマイナンバーを記載しないといけないということも当然ありますし、直近だと償却資産税の申告にもマイナンバーが必要ですが、これらは自身の会社の中だけの事なので、まだ判断しやすいと思います。しかし、支払調書に大家さんのマイナンバーを記載しないといけないという状況になったときに、不動産業者さんが間に入って大家さんのマイナンバーを気軽に聞いて、質問してきた人へ簡単に教えていいのか、という問題が実務上では一番大きな問題になるではないかなと思っています。

:ありがとうございます。私も勉強不足で申し訳ないのですが、マイナンバーは、まずは社会保険から導入されることになっています。よくお客さんから聞いたりするのですが、銀行もマイナンバーで統括して管理されるようになるのではないかという不安をお持ちの方もおられるようです。将来的にはどうなんでしょう。

福井:将来的には、銀行や証券会社でのマイナンバーによる管理、不動産業者さんに関係するものでいうと、アメリカのように不動産取引すべてにおいてマイナンバーを記載させるところまで実現可能ではあるでしょうが、まだそれは将来の話でしょう。預金については平成30年ぐらいに必ず預金通帳にマイナンバーを記載させる。どういう事かというと、たとえば資産家の方が遠いところの銀行口座を持っていて、そこに大金を預けていても分からないというようなことは、マイナンバーで管理することによって不可能になると言われています。また、先ほど社会保障ということがありましたが、社会保障の資格を取得するときに従業員のマイナンバーを登録するということは1年延期になっていると皆さん仰いますが、これはあくまでも年金や社会保険だけの話であって、雇用保険についてはちょっと違います。平成28年からは、雇用保険に入るためには、その方のマイナンバーが必要になるという事を忘れてはいけないと思います。
また、東京の方では、建設業の免許更新の際に、社会保険に入っていない会社は更新させないという運用が始まっています。これは実際に私のお客さんから聞いた話ですが、社会保険に入っていないから更新できない、だから社会保険に入るんだというお話もありました。また、東京都のある区では、社会保険に入っていない会社については、しっかり2年間遡って請求すると言われたケースもあると聞いています。実際に、社会保険に入っていないからといって、何年遡るかということは各自治体によって異なると思いますし、本当にすべてのそういった会社に対してそういう対応をするのかということは分かりませんが、社会保険に入っていない会社に対しては、"入っていますか?"というお尋ねが来ていると思います。これは、本来は社会保険に入らないといけない事業者で、国民健康保険や国民年金基金で運用しているような会社が実に多い。これは日本年金機構の適用事業所の数と、源泉徴収をしている法人数の差がだいたい70万から80万社あるということが統計上出ていますので、それらの会社をターゲットとしてお尋ねが来ているのではないかと思います。

:ありがとうございます。小礒先生にちょっとお聞きしたいのですが、今のお話にあったような自治体による温度差というのはあるんでしょうか?関西の方ではいかがですか?

小礒:今、福井先生から社会保険についてのお話があったんですが、確かに色々と温度差はあるなと感じます。私の専門分野ではないですが、たとえば建設業の許可を行政書士の先生にお願いしているんですが、都道府県によっては社会保険に加入していないと許可が取れない。今は兵庫県の事業者さんの許可をお願いしているんですが、兵庫県は厳しいです。大阪はまだそこまで厳しくはないですが、「ちゃんと加入していないと無理」というように仰っています。なので、都道府県によって温度差があるのかなと思います。

:ありがとうございます。梅村先生、司法書士の先生にはマイナンバー制度は何か関係あるんでしょうか?

梅村:今のところはそれほどないように思います。将来的には、不動産の登記にも紐づけられていくという話をちょっと聞いていますが、それによって登記の申請がしやすくなればいいなと思っています。

:たとえば免許証のように、身元確認の証明としてマイナンバーカードを使用するのは可能なんでしょうか?

梅村:顔写真も住所も載っていますので、住基カードよりもしっかりした本人確認の書類にはなると思いますが、本人確認の域を出てしまっているような気がします。マイナンバーカードはあまり気軽に提示しない方がいいと思いますので、本人確認については他の書類で対応できるなら、そちらの方がいいと思います。

:ありがとうございます。中島先生、弁護士の立場から見てマイナンバー制度についてはどのように思われますか?

中島:私たちが直接マイナンバーに関わるという事はそれほどないかと思いますが、事務員を雇う際などに皆さんと同じように提供義務が出てくるだろうと思います。そういった面では勉強しないといけないと思っています。あとは収入証明ですね。源泉徴収票とかで収入を調べる場合があるのですが、先日改正があり源泉徴収票にはマイナンバーを記載しないということになりましたが、もし仮に記載するということになれば、私たちが規制として目に触れることになりかねなかったのかなと思っています。そういう風に色々な場面で影響はあるのかもしれません。

:中川先生、マイナンバーについては罰則が結構厳しかったように思うんですが?

中川裕紀子:そうですね。マイナンバー流出の危険性は考えておかないといけません。私たちの仕事にも関わってくるかもしれませんし、想定していたよりも簡単に流出する危険があるのではないかと思っています。

中島:マイナンバー法における罰則よりも厳しいのが不法行為に対する罰則だと思います。最近では、とある企業で顧客情報を流出してしまって大変な事件になったこともありましたが、この事件では総額5億円くらいの損害賠償が請求されています。マイナンバーは顧客情報よりもさらに重要な情報になると思いますので、マイナンバー法上の罰則はもちろんなのですが、一度情報が流出してしまった後では回収も困難ですし、思いもよらない損害賠償を請求されることも考えられますので、管理者にあたる場合は管理の方法について重々注意を払う必要があると思います。

松本:先程のお話にありました本人確認についての補足ですが、マイナンバーのカードには「通知カード」と「個人番号カード」の2種類があります。今、配達されているのが「通知カード」でして、これには顔写真はありません。マイナンバーを取得する際に本人確認をするには、この「通知カード」と免許証等をあわせて確認する場合があります。「個人番号カード」には顔写真が載るんですが、これは申請しないと入手できないカードです。申請は1月から受け付けています。当面の間は、「通知カード」で確認されることになるのかなと思います。
あと、マイナンバーが必要ない時に「通知カード」や「個人番号カード」を確認することはどうなのかということです。マイナンバーが必要ないにも関わらず、マイナンバーを提供したり取得したりしてはいけないと法律で定められています。たとえば、マイナンバーが必要ないのに「通知カード」をコピーするといったことはしないように注意してください。

:ありがとうございます。マイナンバーは簡単にコピーしてはいけない、ということですね。

永松:質問なんですが、マイナンバーの通知を配達する際、不在とか受け取り拒否とかで配達できない場合もあると思うのですが、その場合はどうなるんでしょうか?

松本:少なくとも、マイナンバーを受け取る義務がある、というように解釈するのは難しいと思いますね。また、受け取る、受け取らないは関係なく、個人番号が割り振られていますので、本人が知っているか知らないかの違いになります。

妹尾:おそらく、マイナンバーの利用拡大については、今後慎重に議論されることと思います。実は先般、要介護の身内のケアマネージャーさんから「今後、介護保険を利用したり介護認定を受けるときには、マイナンバーの提示が必要になってくる場合があると思うので、『個人番号カード』を申請しておいてください」と言われてびっくりしたんです。そのあたりのことは、まだ何も決まっていないように思うのですが…。

松本:私もそういったケースの専門家ではないのではっきりとは分かりませんが、「個人番号カード」が必ず必要な場面というのは考えにくいように思います。ケアマネージャーさんという立場から、「個人番号カード」があると便利、と考えられたのかもしれません。「個人番号カード」には顔写真も入っており、免許証等と同じようにそれだけの身分証明になりますので、あれば便利というお考えでお話があったのかもしれません。ただ、民法上の責任能力がない場合等に、どのようにして「個人番号カード」を取得するのかというのは、ちょっと悩ましいかもしれませんね。その方の状態にもよると思います。

中島:「個人番号カード」を取得する、しないは自由だと思います。ただし、マイナンバーの管理については、ご本人の意思能力によって成年後見制度の導入という事になると思いますので、後見人がいる場合は後見人がマイナンバーについても管理しないといけないという事になると思います。そういった権限なしに、ケアマネージャーさんが「個人番号カード」を保管するということは、非常にリスクが高いと思います。マイナンバーについては、とても危険な情報を預からざるを得ないと言えます。私たちも、成年後見で補佐人や補助として関わる場合がありますが、本人の代わりとしてマイナンバーを扱うことになりますので、自分のマイナンバーと同じような管理が必要になると思います。ですので、何の権限もなしに、"個人番号をとりあえず預かっている"というのは、非常に危ういと思います。

米原:マイナンバーに関して2点質問したいと思います。まず福井先生にお尋ねしたいのですが、先程、東京では社会保険未加入の業者は免許更新させない、また関西では兵庫県は厳しいというお話がありましたが、"マイナンバー倒産"、要するに社会保険料を支払わなくてはならないから、そのせいで倒産に追い込まれる会社が増えてくるという記事を雑誌等で見かけるんです。不動産の需要の話になりますが、たとえば住宅ローンを申請する際も勤続年数が必要です。不動産の需要が減少するのではないか、そういった面で少し心配していますが、どのようにお考えでしょうか?

福井:実際にそういった事態に陥る会社は増えると思いますが、ただし会社を倒産させてまで社会保険料を徴収するかというのは別問題だと思います。たとえば、年金機構に支払について相談すれば善処してくれる可能性もあります。これは社労士さんの専門分野になりますが、たとえば先ほどお話した東京のある区でも、社労士さんにお願いした場合は「今加入すれば、支払は今からの分でいい」ということになったのに、自身で対処した場合は2年間遡って支払うことになったという話も聞いています。交渉次第ということになりますが、2年間遡って支払ったら倒産してしまうという場合に、まさか徴収しないだろうと私は考えています。
あと、住宅ローンのことで思い出したことがあるのですが、確定申告書にはマイナンバーが記載されます。たとえば大家さんが銀行にお金を借りる際に、マイナンバーが記載された確定申告書を提出しようとした場合、金融機関は一切受け取らないという事です。あまりないケースかもしれませんが、不動産業さんが確定申告書を預かって金融機関に持って行くときも、マイナンバーが記載された確定申告書は預からない方が無難かと思います。もし預かる場合は、マイナンバーが記載された箇所を塗りつぶして、そのコピーを持って行った方が安全だと思います。
また、住宅ローンは会社が倒産してしまったらどうなるのかということですが、勤続年数については正直申し上げてどうしようもないのかなと思います。

米原:もう1点弁護士さんに質問です。離婚がらみの仲介案件を扱っていますが色々と問題があるようです。何が問題になっているかというと、お互いに相手の収入がよく分からないということなんです。マイナンバー制度が導入されたら、収入についてもはっきり分かるようになるんでしょうか?

中川裕紀子:マイナンバー制度が整備されたら、所得証明や課税証明に反映されてくると思います。ですので、税務申告している内容が公的な書類にも反映されるので、結果として裁判所で争いになったときも公的な書類を提出してもらうことで、お互いの収入が明確になるのではないかなと思います。

田中:マイナンバーから少し脱線するんですが、先ほど東京では社会保険に未加入の場合は免許更新できない、兵庫でも新規は厳しいというようなお話がありました。地域によるかとは思うのですが、京都では数年前から宅建業と建築業の管轄が一緒になったんです。建築業で先ほどのお話のような動きがあるのであれば、宅建業でも同じ流れがあるのでしょうか?また、複数の会社に所属している場合、ひとつの会社で社会保険に加入していれば、他では加入しなくていいですよね。こういった場合はどうなるんでしょうか?

小礒:まず1点目のご質問ですが、おそらく宅建業も厳しくなっていくだろうと思います。厚生労働省から国土交通省にいって、そこから各都道府県にいっているはずなので、免許申請や更新の際には社会保険加入の確認があると思います。2点目のご質問ですが、基本的には正社員の4分の3以上勤務がある場合に社会保険加入義務が発生します。ただし役員の場合、たとえば会社を2つ経営している場合は、どちらにもしっかりと従事しているとみなされます。その場合は調整がなされて、両方の会社の所得の合計で社会保険料が決まってくるという制度になっています。実際に私の知っている会社でも、今まで社会保険に加入していなかった会社には指導が来ています。まだマイナンバー制度は始まってないんですが、その人の所得状況がすでに税務署から社会保険事務所に通知されているようです。それでもかなり捕捉されてきていまして、2ヶ所でお給料をもらっていて、1ヶ所では社会保険に加入しているけれど、もう1ヶ所では加入していないという場合、その加入していない方の法人にお尋ねが来ていたりしています。あるいは指導という事で色々と連絡が来ているような状況になっています。私が知っているのはすべて大阪府内の事例ですが、かなり厳しくなってきていると思います。社会保険に関しては、マイナンバーが導入されればさらに厳しくなると考えられます。

:ありがとうございました。福井先生、関東も同じような動きでしょうか?

福井:関東というよりも、建設業と宅建業とで考えたときに、宅地建物取引士については個人の資格ですので、免許更新の際に勤務先の社会保険加入状況によって更新させないというのは、実際に運用できるのか疑問に思う点があります。社会保険については、複数あれば調整しないといけないというのは現行法の通りですので、それに従えばいいと思います。我々が、"どうなるんだろう"と一番心配しているのは、たとえば個人事業主でありながら会社にも勤めている場合、個人事業の場合は国民年金と国民健康保険に加入しますし、会社勤めなら社会保険に加入します。こういった場合は今後どうなるのかなと思っています。
安全管理措置についてですが、"安全なクラウドサービス"というものが果たしてあるのかどうか。何かあったときの責任逃れのためにクラウドサービスを利用するのが流行っているようにも思います。情報が流出した場合に"システムのせいだ!"と言えるようにですね。大企業の例になりますが、社員が全国各地にいる場合にどうしているのかといいますと、やはりクラウドサービスを使って情報を収集しています。たとえば年末調整にともなって扶養控除の申請があると思います。家族のマイナンバーが必要な書類です。家族のマイナンバーは当該の社員本人に入力させて、他の従業員は一切関わらないという方策をとるためにも、クラウドサービスによるマイナンバー取得を進めている会社が多いと聞いています。
しかし、クラウドサービスが安全かというと必ずしもそうではないと思います。たとえば年末調整を税理士に頼んでいる場合があると思います。マイナンバーを渡す場合は、渡す先がマイナンバーをどのように管理をしているかチェックする必要があります。ですので、私の事務所では契約書の他に「マイナンバーはこういった管理をしています」という同意書を作って、すべてのクライアントに配ったという経緯があります。クラウドサービスの業者も同じようなことをしているのではないかなと思います。また、預かったマイナンバーは不要になったらすぐに削除するということも大切です。たとえば先ほどの扶養控除申請書については保存義務があります。これを紙で保管する場合はどうしたらいいでしょうか。たとえば金庫に入れてそれを鍵付きの書棚に保管したから大丈夫と言われるかもしれませんが、実際にそれで大丈夫かというと法律的には危ういのではないかなと思います。
あと、マイナンバーが流出してしまった場合どうなるのかということです。罰則については、会社の取扱責任者に400万円の罰金と4年の懲役が科せられることになっています。非常に重いといえば重い罰則ですね。我々税理士が流出してしまった場合は資格剥奪、事実上業務できないということになるでしょうから、やはり慎重にならざるを得ない。なぜ税理士が一番マイナンバーに詳しいのかというと、はじめに関わることになる年末調整があるから、嫌でも知らなくてはいけなかったという実情があるのではないかと思います。
紙で保管する場合にどうしたらいいかということですが、正直私も正解が分からないです。ただどのように管理していたかの記録は残した方がいいでしょう。先程マイナンバー通知カードの拒否の話がありましたが、年末調整時に家族のマイナンバーを教えたくないというケースは、私の知っている会社でも実際にありました。そういった場合は、必ず記録を残さなければなりません。「いつ、誰にマイナンバーの提出をお願いしたが、提出してもらえなかった」というところまでしっかりと記録を残さないと、事業者の責任を問われることにもなりますので、もし提出を拒否された場合も、詳しい記録を必ず残すようにしてください。

南村:たとえば従業者がマイナンバーの提出を拒んだ場合、職務命令に背いたとういうことで、解雇することは可能なんでしょうか?

中島:意見が分かれるところかもしれません。基本的に法律上は、会社側が個人に対してマイナンバーを提出させる権利はないんです。努力義務であって、「提出してください」とお願いするぐらいしかできません。その前提ですと、法的な提出義務がないものを、業務命令ということで縛って、違反したから解雇というのは行き過ぎだろうと思います。なので、先ほども仰っていましたが記録を残すことですね。記録をしっかりと残せば、会社として責任を果たしたという事になると思います。

松本:努力義務というのは国がはっきりと言っていることですので、努力義務に違反したという事を理由に強い懲戒というのは難しいと思います。軽い懲戒でもどうかなという感じですね。
また、マイナンバーの提出を拒まれた場合の各役所の対応はどうなるのかということですが、それによって不利益な取り扱いをすることはない、と国が明言しています。その点から言っても、提供を拒んだ従業員に対して強い懲罰というのは難しいと思います。
補足ですが、マイナンバーの管理については4つの措置をとりなさいと明確に言われていますので、結局そこに集約されると思います。4つの措置というのは「組織的措置」「人的措置」「物理的措置」「技術的措置」です。クラウドについては「技術的措置」にあたりますし、紙で管理して金庫に保管するというのは「物理的措置」にあたります。しかし、それだけではなく、先ほどルール化することが重要という話がありましたが、まずは「組織的措置」ですね。誰がどのようなアクセス系統になるのかというのは、部署ごとでまず整える必要があると思います。紙で管理する場合のルール、もしくは紙以外の方法の場合のルールを決めておくことが大切だと思います。順序としては、「組織的措置」や「人的措置」をしっかり整えた上で、「物理的措置」や「技術的措置」を講じていくことです。
私も実務的な細かな部分までは専門ではありませんが、総論としては以上のようになるかと思います。

:ありがとうございました。大変勉強になりました。

(ラビットプレス+3月号に続く)