【2016年4月号特集】平成28年度税制改正

公益社団法人全日本不動産協会 全日本不動産近畿流通センター
Z-support専任アドバイザー
福井税務会計事務所
税理士 福井 紀之

1 はじめに
「平成28年度税制改正大綱」は、平成27年12月16日に発表され、平成27年12月24日に閣議決定されました。
全体としては、法人実効税率の20%台への引下げや消費税の軽減税率導入が改正の目玉となり、配偶者控除など個人所得税制の見直しは先送りされましたが、不動産に関わる部分で最も注視すべきは、相続した空き家の譲渡所得に係る3,000万円特別控除の創設かと思われます。今回は、この特別控除を中心に、平成28度改正のうち不動産に係る部分で、かつ、重要と思われる部分を抜粋して紹介させていただきます。
また、例年、税制改正は、12月中旬に与党が「平成○年度税制改正大綱」を発表するところから始まり、その後、与党の改正大綱をベースとして、財務省と総務省が12月下旬までに「平成○年度税制改正大綱」「平成○年度地方税制改正案の概要」を取りまとめます。そして、閣議決定を受けた後、税制改正案を内閣が税制改正関連法案として国会へ提出し、3月末までに成立・公布、4月1日から施行されるのが通常の流れとなりますが、改正法の施行日等に注意が必要です。
2 所得税
(ア) 空き家に係る譲渡所得の特別控除
被相続人居住用家屋(相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、被相続人以外に居住をしていた者がいなかった家屋)及び土地を相続により取得した者が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡をした場合(相続開始日以後3年を経過する日の属する12月31日までの間にした譲渡)、居住用財産の譲渡所得の3,000万円控除を適用することができます。
対象
状況被相続人が相続開始直前まで一人暮らししていた自宅で、相続後は空き家であること
同居人がいる場合は特例適用不可
種類一戸建ての住宅であること
建物のみ・土地建物・建物を解体して土地のみの譲渡でも適用可能
年月日対象の自宅が昭和56年5月31日以前に建築されていること
譲渡関連
控除額譲渡所得金額から3,000万円控除可能
期間相続開始日以後3年を経過する日の属する12月31日まで
平成28年4月1日から平成31年12月31日の間の譲渡であること
価格上限譲渡価格が1億円以下であること(1億円超は適用対象外)
留意点
耐震性譲渡時の耐震規定に適合していること(不適合は特例適用不可)
空き家相続の時から譲渡の時まで、土地や家屋を事業・貸付・居住の用に供していないこと
区分所有区分所有建築物(マンション等)は特例適用不可
確定申告地方公共団体の長等の証明添付が必要
をまとめると「平成25年1月2日以降に、被相続人が一人暮らしをしていた一戸建ての自宅を相続し、その自宅が空き家の場合、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに1億円以下で譲渡すれば3,000万円の特別控除が適用される」ことになります。
特に、相続開始日から譲渡日まで空き家であること。つまり、事業・貸付・居住の用に供せず、何も使っていない一戸建てを譲渡し、その証明のため地方公共団体の長等の証明添付が要件となっていることに注意してください。
なお、自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(※1)、または、自己居住用財産の買換え等(※2)に係る特例措置のいずれかとの併用が可能となりますが、相続財産譲渡時の取得費加算の特例とは選択制となります。
  • ※1:同一年内に併用する場合、2つの特例合計で3,000万円が控除限界
  • ※2:特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
    特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
    居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
    特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
(イ) 三世代同居改修工事等に係る住宅ローン控除
リフォームローン型減税に三世代対応工事が追加され、個人が平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に、その者の居住の用に供した場合、ローン残高の一定割合を所得税額から控除できます(最大5年間控除)。
控除率対象工事限度額最大控除額
2.0%バリアフリー・省エネ・三世代同居
250万円62.5万円
(5年間)
1.0%その他750万円
(ウ) 既存住宅に係る三世代同居改修工事をした場合の所得税額の特別控除
リフォーム投資型減税の対象工事に三世代同居対応工事が追加され、個人が、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に、その者の居住の用に供した場合、工事費等の10%を所得税額から控除できます。
 限度額最大控除額
耐震250万円25万円
バリアフリー200万円20万円
省エネ250万円25万円
三世代同居
250万円25万円
  • ※上記(イ)(ウ)はいずれかの選択となります。
    医療費控除の特例の創設(セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除)
(エ) 非課税所得の範囲の拡大
  • 預金利息の所得税の非課税
  • 通勤手当の非課税限度額の引き上げ
  • 学資に充てるために給付される金品の所得税の非課税
3 法人税
(ア) 法人税率の引下げ
現行の法人税率23.9%が以下のように引き下げられます。
  • ▶平成28年4月1日〜平成30年3月31日の間に開始する事業年度:23.4%
  • ▶平成30年4月1日以後に開始する事業年度:23.2%
(イ) 減価償却制度の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物と一体的に整備される建物附属設備や構築物・鉱業用の建物の償却の方法について、定率法を廃止し定額法のみとなります(所得税も同様)。
(ウ) 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
地方公共団体に対する寄附金は全額損金加入ですが、地方公共団体が行う一定の地方創生事業に対して寄附を行った場合に、更に法人事業税、法人住民税の税額控除が認められます。
(エ) 繰越欠損金の利用制限の見直し
法人実効税率の引下げの財源として、繰越欠損金の利用制限が見直しされます。
(オ) 雇用促進税制の見直し
雇用促進税制について適用期限が平成30年3月31日までの期間内に始まる各事業年度まで延長され、所得拡大促進税制との併用が可能になります(所得税にも同様)。
また、現在は正社員か非正規社員を問わず雇用者数が5人以上(中小企業は2人以上)増加し、かつ、雇用増加割合10%以上等の要件を満たす企業は、適用年度における法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)から雇用者増加数1人当たり40万円の控除が受けられますが、平成28年4月1日以後開始事業年度より、対象となる雇用者が正社員に限定され、対象地域は雇用環境の悪い地域(有効求人倍率が全国平均の2/3以下)に限定されます。
(カ) 生産性向上設備に係る固定資産税の軽減措置
(キ) 外形標準課税の税率の見直し
4 消費税
(ア) 軽減税率の導入
平成29年4月1日から消費税が8%から10%に引き上げられますが、消費税増税の負担を緩和するため、飲食料品の譲渡等が8%(国税:6.24%,地方消費税:1.76%)の軽減税率の対象となります。
(イ) 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入
消費税の複数税率が導入されることから、現行の請求書等保存方式から適格請求書保存方式(インボイス制度)へ平成33年4月1日より変更されます。
(ウ) 高額資産を取得した場合における消費税の中小事業者に対する特例措置の見直し
5 その他
(ア) 各種特例措置の延長
  • ▶居住用財産の買換え等に係る特例措置:平成29年3月31日まで2年間延長
  • ▶新築住宅に係る固定資産税の減税措置:平成30年3月31日まで2年間延長
  • ▶新築住宅を宅建業者が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年を経過した日とする不動産取得税の特例措置:
    平成30年3月31日まで2年間延長
  • ▶新築住宅用土地に係る不動産取得税の減額措置について、土地取得後住宅新築までの経過年数を3年とする特例措置:
    平成30年3月31日まで2年間延長
  • ▶買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置:平成30年3月31日まで2年間延長
  • ▶耐震、バリアフリー、省エネ改修が行われた既存住宅に係る特例措置:バリアフリー改修の対象住宅に築後10年以上経過した住宅を追加したうえで、適用期限を平成30年3月31日まで延長
  • ▶長期優良住宅普及の促進に関する法律に基づく認定長期優良住宅を新築した場合における特例措置:30年3月31日まで2年間延長
  • ▶認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置:30年3月31日まで2年間延長
(イ) 国税のクレジットカード納付制度の創設
現在、振替納税やダイレクト納付の制度があり、銀行口座振替による納税が可能でしたが、インターネットを利用してクレジットカードによる納付が可能となる制度が創設されます。
国税の納付について、この改正は、平成29年1月4日以後に国税の納付を委託する場合について適用されます。
(ウ) 税務調査の事前通知後の加算税の見直し
国税通則法の改正により、税務調査の事前通知の義務化が行われましたが、加算税を回避するため事前通知直後に修正申告や期限後申告をする事例が多く見られるようになりました。これを受けて、平成29年1月1日より税務調査の事前通知から更正または決定があることを予知する前にされた修正申告による過少申告加算税が5%(現行0%)、期限後申告・修正申告による無申告加算税の割合が現行の5%から10%(税額500千円以上は15%)に引上げられます。
(エ) 短期間に繰返し無申告または仮装・隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置の導入
平成29年1月1日より、悪質な脱税を防止をするため、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を賦課された者が再び、無申告または仮装・隠蔽による修正申告の提出等があった場合、加算税が10%加重する措置が導入されます。
(オ) 農地の固定資産税軽減措置の創設
市町村が定める農業振興地域にある農地で、農地を全て農地バンク(農地中間管理機構)に賃貸して離農すると、賃貸期間が10年以上で3年間、15年以上で5年間の間は固定資産税が50%減額されます。
(カ) 耕作放棄地に係る固定資産税の特例廃止
農業振興地域のうち、農業委員会が農地バンクとの協議を勧告した農地については、農地に係る固定資産税の減額計算の特例を受けられなくなります(固定資産税が現行の1.8倍になります)。
(キ) 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の対象費用の明確化
(ク) 自動車取得税の廃止と燃費税の導入