【2016年7月号特集】震災と不動産

売買

(質問)
売買予定の土地が、地震の影響で、隣地との境界だった柵が動いて坪数が小さくなったようです。一応、実測取引で測量済みだったのですが、この状態で契約を進めなければならないのでしょうか?
(回答)
ご質問では、「売買予定」ということですから、売買契約がまだ成立していないとの前提でお答えします。
売買契約が成立していないわけですから、坪数が少なくなって、売買を希望しないのであれば、契約するのを中止すればよいと思います。
契約締結交渉がここに至るまでに費用や労力がかかっている場合に、契約締結を中止するといわゆる契約締結上の過失として損害賠償の問題が発生することがありますが、本件の場合には、地震という不可抗力の事情によるものですので、損害賠償責任を問われる可能性は低いと思います。
(質問)
一戸建ての中古住宅の売買で、契約を交わして手付金を入れて決済を待っているさなかに地震があり、建物が半壊(大規模半壊・全壊)になった場合、今後どのように契約を進めたらいいのでしょうか?
(回答)
これは、講学上、危険負担と呼ばれる問題です。いまだ引渡しがされていない状況下での建物引渡しの履行不能と考えられますので、危険は債務者、つまり売主が負担することになり、売主は建物部分の売買代金の請求をすることができなくなります。土地を含む売買の場合ですと、事実上、土地部分のみの売買として契約の履行が進められることになります。
現実的には、話合いにより、建物損傷の程度に応じて、売買契約を合意解約するか、売買代金を変更して契約を継続するのが通例かと思います。

賃貸

(質問)
所有しているテナントビルが地震で半壊状態に。水道管も割れ水浸しになり、営業ができなくなった。補修費や営業保証はどこまですればいいの?
(回答)
テナントビルのオーナーは、テナントに対して、賃貸物件をテナントとして使用するのに適した状態にする義務を負います。それは、天災のような不可抗力の事情によって被害を受けた場合も同様です。不可抗力による事情ですので、営業補償までする必要はありませんが、ライフラインの復帰など、テナントとしての使用に必要な修理費はすべてオーナーの負担となります。これをすみやかに行わない場合には、営業補償に相当する損害賠償責任も発生することになります。
(質問)
月極駐車場に止めていた車が、地震で倒れた隣地のブロック塀で破損しました。車両保険は適用外といわれたので、貸主に修理代を請求できますか?
(回答)
何百年に1回あるかないかといった予想を超える天災によってブロック塀が破損した場合には、不可抗力であって、貸主や隣地地主に損害賠償を求めることはできません。
しかし、たとえ地震による損害であっても震度が3や4程度で、その発生が十分に予想可能である場合には、貸主や隣地地主は、その程度の地震によって借主や他人に損害を及ぼさないように配慮する義務があります。ですから、たとえば、貸主が隣地のブロック塀の補強を要求するか、あるいはブロック塀が倒れた場合でも借主の車を守るような手段を講じない限り、貸主に対して管理責任を追及することができる場合もあるでしょう。
【回答】
公益社団法人全日本不動産協会全日本不動産近畿流通センター
Z-support専任アドバイザー
神戸湊川法律事務所
弁護士 藤掛 伸之