【2016年11月号特集】犯罪収益移転防止法改正の要点

公益社団法人全日本不動産協会 全日本不動産近畿流通センター
Z-support専任アドバイザー
弁護士法人 京阪藤和法律事務所
弁護士 中島 宏樹

1 はじめに

「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)は、マネー・ロンダリング(資金洗浄)の防止及びテロ資金供与の防止の推進を目的として、平成20年3月1日に全面施行されました。
その後、平成23年4月28日及び平成26年11月27日に改正がなされ、平成26年11月27日付改正法は、平成28年10月1日付で施行されるに至りました。
マネー・ロンダリングの防止及びテロ資金供与の防止は、国際社会の課題でもあり、わが国についても例外ではありません。
犯罪収益移転防止法は、「特定事業者」に対し、①本人確認※1 、②本人確認記録の作成、③取引記録等の作成・保存※2、④疑わしい取引の届出、を義務付けています。
上記義務が課せられる「特定事業者」には、宅地建物取引及び不動産特定共同事業者も含まれており、上記義務が課せられる「特定取引」には、宅地建物の売買又はその代理若しくは媒介に係る業務が含まれています。※3
本稿では、犯罪収益移転防止法のうち、宅地建物取引業に関係の深い部分について、紹介させていただきたいと思います。

  • ※1 自然人:氏名、住所、生年月日/法人:名称、本店又は主たる事務所の所在地
  • ※2 7年間
  • ※3 宅地建物の賃貸に係る業務は対象外

2 平成23年4月28日改正について

(1)取引時の確認事項の追加等
特定事業者は、顧客等との間で、一定の取引を行うに際しては、当該顧客等について、本人特定事項のほか、(ア)取引を行う目的、(イ)当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の目的、(ウ)法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者がある場合にあっては、その者の本人特定事項、の確認を行わなければならないとされました。
また、特定事業者は、顧客等との間で、200万円を超える財産の移転を伴うハイリスク取引(なりすまし又は偽りの疑いがある取引、特定国等居住者(平成28年7月現在は、イランと北朝鮮)との取引等)を行うに際しては、本人特定事項のほか、当該特定顧客等について、資産および収入の状況の確認を行わなければならないとされました。
(2)特定事業者の内部体制整備等の努力義務等
特定事業者は、取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講じるとともに、使用人に対する教育訓練の実施のその他の必要な体制を整備に努めなければならないとされました。

3 平成26年11月27日改正について

(1)疑わしい取引の届出に関する判断の方法の明確化等
届出が求められる疑わしい取引とは、別紙のような取引をいうところ、該当性を判断するにあたっては、当該取引に係る取引時確認の結果、当該取引の態様、国家公安委員会作成にかかる犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し、主務省令で定める項目(他の取引の態様との比較、他の取引に係る取引確認の結果との整合性)に従って判断しなければならないとされました。
(2)本人確認書類と確認の方法
本人確認書類として個人番号カードが追加されたほか、顔写真のない本人確認書類を使用する場合は、提示に加え、その他の書類の提示を行うなど、追加的な確認措置が必要となりました。
(3)取引の任に当たっている自然人の確認
顧客等が法人である場合、その顧客等のために取引の任にあたっている自然人の確認方法について、正確を期するべく、その顧客等が発行した身分証明書を有している場合が削除されました。
(4)特定事業者の内部体制整備等の努力義務の拡充
特定事業者の努力義務として、取引時確認等の措置の実施に関する規定の作成、取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な監査その他の業務を統括管理する者の選任が追加されました。

4 おわりに

このように、マネー・ロンダリング及びテロ資金供与の防止を行うべく、宅地建物取引及び不動産特定共同事業者には、①本人確認、②本人確認記録の作成、③取引記録等の作成・保存)、④疑わしい取引の届出が義務付けられています。
これらの義務を怠った場合には、厳しい刑事処分が科せられ、例えば、本人確認義務に違反した場合には、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金または併科がなされます。
マネー・ロンダリングの防止及びテロ資金供与の防止へと向かう世界情勢の変化を受け、犯罪収益移転防止法は、平成20年3月1日の施行以来、頻繁に改正がなされてきています。
宅地建物取引及び不動産特定共同事業者の皆様におかれましては、常に犯罪収益移転防止法の最新の情報を入手するよう心掛け、期せずしてマネー・ロンダリング及びテロ資金供与に巻き込まれることの無いよう、日々の業務にあたっていただければ幸いです。
なお、犯罪収益移転法防止法の詳細については、国土交通省のHPもご参照ください。

不動産の売買における疑わしい取引の参考事例(宅地建物取引業者)

(全般的な注意)以下の事例は、宅地建物取引業者が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第8条第1項に規定する疑わしい取引の届出義務を履行するに当たり、疑わしい取引に該当する 可能性のある取引として特に注意を払うべき取引の類型を例示したものである。個別具体的な取引が疑わしい取引に該当するか否かについては、取引時確認の結果、取引の態様、その他の事情及び犯罪収益移転危険度調査書の内容等を勘案して判断する必要がある。
したがって、これらの事例は、宅地建物取引業者が日常の取引の過程で疑わしい取引を発見又は抽出する際の参考となるものであるが、これらの事例に形式的に合致するものがすべて疑わしい取引に該当するものではない一方、これに該当しない取引であっても、宅地建物取引業者が疑わしい取引に該当すると判断したものは届出の対象となることに注意を要する。なお、各事例ともに、合理的な理由がある場合はこの限りではない。

第1 現金の使用形態に着目した事例
(1)多額の現金により、宅地又は建物を購入する場合(特に、顧客の収入、資産等に見合わない高額の物件を購入する場合。)
(2)短期間のうちに行われる複数の宅地又は建物の売買契約に対する代金を現金で支払い、その支払い総額が多額である場合
第2 真の契約者を隠匿している可能性に着目した事例
(3)売買契約の締結が、架空名義又は借名で行われたとの疑いが生じた場合
(4)顧客が取引の関係書類に自己の名前を書くことを拒む場合
(5)申込書、重要事項説明書、売買契約書等の取引の関係書類それぞれに異なる名前を使用しようとする場合
(6)売買契約の契約者である法人の実体がないとの疑いが生じた場合
(7)顧客の住所と異なる場所に関係書類の送付を希望する場合
第3 取引の特異性(不自然さ)に着目した事例
(8)同一人物が、短期間のうちに多数の宅地又は建物を売買する場合
(9)宅地又は建物の購入後、短期間のうちに当該宅地又は建物を売却する場合
(10)経済合理性から見て異常な取引を行おうとする場合(例えば、売却することを急ぎ、市場価格を大きく下回る価格での売却でも厭わないとする場合等)
(11)短期間のうちに複数の宅地又は建物を購入するにもかかわらず、各々の物件の場所、状態、予想修理費等に対してほとんど懸念を示さない場合
(12)取引の規模、物件の場所、顧客が営む事業の形態等から見て、当該顧客が取引の対象となる宅地又は建物を購入又は売却する合理的な理由が見出せない場合
第4 契約締結後の事情に着目した事例
(13)合理的な理由なく、予定されていた決済期日の延期の申し入れがあった場合
(14)顧客が(売買契約締結後に)突然、高額の不動産の購入への変更を依頼する場合
第5 その他の事例
(15)公務員や会社員がその収入に見合わない高額な取引を行う場合
(16)顧客が自己のために取引しているか疑いがあるため、真の受益者について確認を求めたにも関わらず、その説明や資料提出を拒む場合
(17)顧客が取引の秘密を不自然に強調する場合
(18)顧客が、宅地建物取引業者に対して「疑わしい取引の届出」を行わないように依頼、強要、買収等を図る場合
(19)暴力団員、暴力団関係者等に係る取引
(20)自社従業員の知識、経験等から見て、不自然な態様の取引又は不自然な態度、動向等が認められる顧客に係る取引
(21)犯罪収益移転防止対策室その他の公的機関など外部から、犯罪収益に関係している可能性があるとして照会や通報があった取引
  • ※ 警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)

【2016年11月号特集】DVD/VODによる研修のお知らせ

一昨年度からDVDによる法定研修会の実証実験を実施させていただきましたところ、会員の皆様からは大変ご好評をいただきました。引き続き今年度も、DVDによる法定研修会の実証実験を実施いたします。
なお、今年度は新たにVOD(ビデオ・オン・デマンド)による受講も可能となります。
(※法定研修会実証実験およびVOD受講は、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県本部のみの実施となります)
会員の皆様におかれましては、ぜひ受講をお願いいたします。

DVD/VOD研修従来の法定研修会
研修場所自宅やオフィスなど動画の再生環境があればどこでも受講可能指定の各会場
研修時間研修期間内ならばいつでも好きなときに指定の時間
費用なし会場までの交通費
遠隔地ならば宿泊費
研修内容研修内容を統一し、会員間で知識を共有各府県本部によって異なる
受講者従業員全員が受講可能代表者、専任取引士等が対象
■DVD/VOD研修のメリット
  • (1) 会員様の交通費・時間的な負担が軽減されます。
  • (2) 従業員全員が受講できるので、社員教育にもお役立ていただけます。
  • (3) ご都合の良い時間に合わせて法定研修会を受講いただけます。
  • (4) DVDは繰り返し視聴でき、確実に知識の定着をはかることができます。
■動画にて研修を受講〜受講チェック考査で法定研修会出席を承認
  • ●大阪府本部、兵庫県本部、奈良県本部の会員様
     受講チェック考査のご回答をもって、「平成28年度第3回法定研修会」のご出席を承認させていただきます。
  • ●和歌山県本部の会員様
     受講チェック考査のご回答をもって、「平成28年度第4回法定研修会」のご出席を承認させていただきます。
  • ●滋賀県本部、京都府本部の会員様
     法定研修会とは別の補充研修としてDVD研修をお役立てください。
■受講の流れ
  •  DVD/VOD研修受講パック」が到着
     ※事業所に送付いたします。
  • DVDまたはVODにて研修を受講
     ※研修期間内の都合の良い時間に受講してください。
     ※従業員の方も受講していただくことができます。
     ※VOD受講は、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県本部のみの実施となります。
  • 受講後にインターネットで受講チェック考査に回答
     ※インターネットの専用フォームから受講チェック考査に回答してください。
     ※FAXで回答することもできます。
    ※受講チェック考査は、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県のみの実施となります。
■受講チェック考査の回答方法
受講チェック考査では、インターネットからの回答を推奨しております。
近畿流通センターホームページまたは所属府県本部ホームページの「受講チェック考査」ボタンをクリックし、専用フォームから回答を送信してください。回答送信後は送信完了のメールが届きますので、そのメールをもって回答受領とさせていただきます。なお、回答の送信は必ず定められた期間内にお願いいたします。
※FAXでの回答方法は、受講パックに同封された案内書をご覧ください。
■受講チェック考査について
受講チェック考査の回答を送信していただいた会員様が受講承認となります。
大阪府本部、兵庫県本部、奈良県本部、和歌山県本部の会員様は必ず定められた期間内に回答送信をお願いいたします。
■アンケートにご協力ください
この試みは法定研修会の在り方を検討し、実地研修会における会員の皆様及び協会運営サイドから見た時間的制約と労力、経済的損失を勘案して、時代に則した媒体利用による新しいスタイルを確立していくことを目的として行っている実証実験です。今回のDVD媒体による研修を実際に体験されてお感じになられたことをご記載ください。

※DVDまたはVODでの受講が困難な会員様は、所属本部又は支部にて受講が可能です。
詳細は各府県本部へお問い合わせください。
(大阪府本部:06-6947-0341、兵庫県本部:078-261-0901、奈良県本部:0742-20-7788、和歌山県本部:073-473-6679)