【2017年3月号特集】
Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会(前編)

「災害時における不動産業者としての対策について」

出席者
【Z-supportアドバイザー】(50音順)※敬称略
青木 豊(司法書士)、大庭清子(司法書士)、小礒ゆかり(税理士)、酒井昌直(司法書士)
竹田恵里(税理士)、中川裕紀子(弁護士)、中島宏樹(弁護士)、原 恵一(一級建築士)
福井紀之(税理士)、松本康正(弁護士)

【近畿流通センター】
南村忠敬 運営委員長
坂本俊一 副運営委員長
龍  優 システムソリューション事業部長
角前秀史 システムソリューション事業部副部長
永松秀昭 システムソリューション事業部副部長
田中勇人 システムソリューション事業部
米原大輔 システムソリューション事業部
宮崎彰太 システムソリューション事業部

【特別出席者】
川﨑高正 全日神奈川県本部 相模原支部 副支部長



















南村:本日は大変お忙しいところ、遠方からもお越しいただきまして誠にありがとうございます。
座談会も今回で5回目となります。初回からご参加いただいている先生もおられますし、今回が初めてという方もいらっしゃいます。相談システム「Z-support」におきましては、会員の利用頻度も年々増加しております。先生方には、会員からのご相談に親身にお答えいただき、ご尽力いただいております。当初、「Z-support」を企画した際には、先生方に無償奉仕をお願いすることに対して、とても心苦しく思っていたのですが、今では約50名の先生方にご協力をいただけるまでに成長いたしました。今後もどんどん士業の先生方とのネットワークを広げていきたいと考えております。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。

:本日は公私ともお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
今回で座談会も5回目を迎えることができました。今後もこういった機会を続けていきたいと思っております。
また、当初は近畿圏の先生方を中心にご協力いただいておりましたが、現在は西日本の先生方や関東の先生方にも沢山ご協力をいただき、「Z-support」というシステムを運営させていただいております。これは、本当にアドバイザーの皆様方のご協力のおかげです。心より感謝申し上げます。
また、現在は近畿以西の会員しか利用できない「Z-support」ですが、いずれは北海道から沖縄まで、全国の会員が利用できるシステムにしていきたという大きな夢がございます。それには先生方のご協力が不可欠となりますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。

永松:龍部長ありがとうございました。続きまして、本日ご出席の方々に自己紹介をお願いしたいと思います。

大庭:こんにちは。立花駅前法務事務所、司法書士の大庭清子と申します。兵庫県尼崎市のJR立花駅のすぐ近くに事務所がございます。どうぞよろしくお願いいたします。

小礒:皆様こんにちは。税理士法人KTリライアンスの税理士の小礒ゆかりと申します。不動産のことなど、引き続き色々と教えていただけたら嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。

竹田:河内長野市で税理士事務所を開業しております、たけだ会計事務所代表の竹田恵里と申します。昨年夏頃からアドバイザーとして参加させていただいております。座談会は今回が初めてとなりますので、色々とお話を聞かせていただいて自分も勉強できたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

中川:皆様こんにちは。神戸・三宮でウィンクルム法律事務所を開設しております、弁護士の中川と申します。相続と事業承継を主に取り扱っています。不動産取引に関しましては、現場のご意見が参考になることがとても多いので、これからも色々と教えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

青木:東京都町田市で司法書士事務所を開設しております、青木と申します。町田市で開業して8年ほどになりますが、以前は兵庫県尼崎市の司法書士事務所に勤めておりました。座談会には初参加となります。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

酒井:皆さんこんにちは。司法書士の酒井と申します。神奈川県伊勢原市で開業しておりまして、座談会の参加は2回目となります。どうぞよろしくお願いいたします。

中島:皆さんこんにちは。弁護士の中島と申します。京阪藤和法律事務所の京都の事務所に所属しております。空き家対策にも力を入れておりまして、様々な活動を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。

:東大阪市でプラスワン建築設計事務所の代表をしております原と申します。住宅から福祉関係まで幅広く取り扱っています。よろしくお願いいたします。

福井:皆様こんにちは。東京都町田市で税理士をしております、福井紀之と申します。よろしくお願いいたします。
Z-supportに参加してから、座談会には毎年出席しております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

松本:皆さんこんにちは。大阪セントラル法律事務所の代表弁護士の松本と申します。大阪市中央区本町で事務所を開設させていただいております。座談会の参加も4回目か5回目になるかと思いますが、相変わらず緊張しております。本日はよろしくお願いいたします。

田中:京都府本部の田中と申します。今日は先生方のお話を楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

宮崎:和歌山県本部の宮崎と申します。この座談会は、自分の中では勉強の場と位置付けております。今日も先生方の貴重なご意見をしっかりお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

米原:兵庫県本部の米原と申します。神戸市中央区で開業しております。どうぞよろしくお願いいたします。

川﨑:全日神奈川県本部から参りました川﨑と申します。一般社団法人不動産相談協会を創設したメンバーでもございまして、今日ご参加の青木さん、福井さん、酒井さんと一緒に不動産相談協会を運営しております。本日はよろしくお願いいたします。

永松:大阪府本部の永松です。本日は司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

角前:大阪府本部の角前と申します。本日はよろしくお願いいたします。

坂本:和歌山県本部本部長の坂本です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

<テーマ 〆匈音における不動産業者としての対策について>

:本日のテーマといたしまして、2つのテーマをご用意しております。1つ目が「災害時における不動産業者としての対策について」、2つ目が「Z-supportアドバイザーから不動産業者への要望」です。これら以外にも何かございましたら、どんどん発言していただきたいと思います。
では早速、1つ目のテーマである「災害時における不動産業者としての対策について」を進めてまいりたいと思います。
神戸では1月に阪神・淡路大震災から22年を迎えましたし、3月には東日本大震災から6年を迎えます。また、昨年4月には熊本で震災がありましたし、その後には鳥取でも地震がありました。また、新潟の糸魚川では大きな火災がありました。ラビットプレス+でも、2016年6月号と7月号の「不動産Q&A」に、震災に関するQ&Aを掲載させていただきました。
まず、災害時において不動産業者が注意すべきことを、売買と賃貸に分けてお話しいただけたらと思います。

中川:私が神戸に来たのが3年ほど前ですので、震災を直接体験したわけではありませんが、毎年行われる追悼式に参加して、当時の大変だったお話を聞く機会はよくあります。震災時に実際に相談を受けられた弁護士さんに聞いた話では、住宅の補修や解体に関するご相談が多かったそうです。賃貸のトラブルとしましては、「補修してくれないのに家賃が安くならない」、「退居してほしいと言われてしまった」といった細かな相談が沢山出てくるとお聞きしています。
弁護士の立場から見ると、不動産業者さんというのは、困っておられる方にとって最も身近な相談相手になると思いますので、「今、何が問題になっているのか」を整理しながら、必要な専門家を紹介するといった対応が必要になるのかなと思います。

:ありがとうございました。青木先生も以前に尼崎におられたとのことですが、いかがですか。

青木:私がおりました頃は震災後15年ほど経っていまして、震災の爪痕というのはそれほど残っていなかったように思います。

:そうですか。兵庫県本部の本部長である南村運営委員長にお聞きしたいのですが、災害時の全日の対応というのはどういったものになるのでしょうか。

南村:まず、災害時の応急仮設住宅についての考え方がだいぶん変わってきたと思います。阪神・淡路大震災の時は、法整備があまり整っていませんでした。震災当時は法整備がない中で、色々な対応をした記憶があります。
東日本大震災に関しては、応急仮設住宅について問題がありました。国土交通省から業界団体に対して民間賃貸住宅の活用要請がありましたので、各団体が全国の民間賃貸住宅のストックを提供させていただきました。当時集まった物件数が約40万件あり、これらをリストにして提出したのですが、実際には活用されなかったという経緯があります。要は法律が整備されていないために、国として集まった住宅を活用することができなかったんです。
神戸の場合は直下型の地震でしたので、震源地から少し離れれば、行政が把握している空き地や空き公団住宅等をすぐに仮設住宅として活用することができました。しかし、東日本大震災ではそれができなかったのです。
応急仮設住宅には、いわゆる「建設仮設」と「借上げ仮設」がありますが、建設仮設については東日本では建設する場所がない。「借上げ仮設」については、基本的には地元行政庁の提携先からしか借上げしないという法律になっていたんです。では、どこと提携していたかというと、URなんです。URの物件というのは非常に数が少なかったので、あっという間にいっぱいになってしまって、結果多くの被災者が避難所から出ていくことができないという状況になりました。
さらに、福島の原発事故の問題もありました。
そういった状態で、全日といたしましては、私は当時「流通推進委員会」というところにいたのですが、理事長の了解を得て国土交通省に行ってまいりました。当時の審議官の方に直訴したんですが、結果はだめでした。
そんな中で動いたのが仙台市です。仙台市は国の制度や法律を無視して、特定行政庁の権限で民間賃貸住宅を借上げて仮設住宅として活用することにしました。そこに宮城県、福島県、岩手県が追随しました。この動きを受けて国が法整備に乗り出し、現在では民間賃貸住宅の借上げ型というのが応急仮設住宅に盛り込まれているという状況です。
震災のような大きな自然災害を経験して、民間賃貸住宅の借上げ制度が広まるきっかけとなりました。
熊本地震の際には非常に多くの賃貸住宅が集まりました。特に福岡、長崎、佐賀の物件は熊本県庁にそのままデータを持っていき、そのデータを持って熊本県の職員が避難所をまわって仮設住宅をあっせんしたんです。
阪神淡路大震災から20年以上が経過して、ようやく仮設住宅のあり方が少しは良い方向へ向いてきたのかなといったところでしょうか。
本来なら、民間賃貸住宅をもっと活用してもらいたいと思ってはいるのですが、行政庁と提携する必要がありますので、全日の47都道府県の地方本部すべてが行政庁と提携しているかというと、そうではありません。なぜかと言いますと「必要ない」という行政庁も中にはあるからです。例えば兵庫県がそうです。兵庫県は民間借上げの仮設住宅は採用しないとしています。阪神淡路大震災のときに、建設仮設でじゅうぶん対応できたからという経験がその理由です。ですので、今のところは民間借上げの協定は結んでおりません。全日兵庫県本部も結んでおりませんし、兵庫宅建協会さんも結んでいないということになります。
このように、地方行政庁によって温度差があるというのが現状かと思います。

:ありがとうございました。皆さんも熊本地震の際には様々なニュースをご覧になったかと思いますが、私がいちばん驚いたのは、被災者の方々が住むところを探すために不動産屋に押しかけ、2〜3時間待ちの状態になっているというニュースです。
和歌山県でも東南海地震が起きると、津波等の被害が想定されると思いますが、行政庁と連携はされているのでしょうか。

坂本:全日としましては、災害時の民間賃貸住宅借上げの協定を和歌山県と結んでおります。ただし、実際に災害が発生したときに、仮設住宅として使用できる物件がどれくらい残るのかは全く分かりません。また、民間の住宅というのは日々動きますので、いざ必要になったときに果たして空き家があるのか疑問があります。そういった部分では、平時に民間住宅の借上げ制度を一部作ってみてはどうかという提案もしてはいるのですが、予算面も含めてなかなか対応が難しいというのが現状です。
和歌山県本部にも、行政から空き家の情報提供の依頼が来ております。情報提供するためには、各会員に情報を提供してもらわなくてはなりませんが、なかなか会員も日々の業務に追われており、協力してもらうのは難しい状況です。こういったことは、平時の備えが肝心と理解はしているのですが、なかなか浸透しないという状況です。

:災害時に備えて、業界として今何をしているかということを説明していただきました。これが現在の不動産業界の実態でしょう。では、他の業界ではいかがでしょう。たとえば、弁護士会では災害時の備えというのは何かされているのでしょうか。

松本:弁護士会としての取り組みについてはあまり詳しくないのですが、災害が発生した際には無料法律相談などの対応がなされています。その際には、災害があった都道府県の弁護士会だけでなく、全国の弁護士会が協力して、被災地に弁護士を派遣しています。

:業界ごとに様々な取り組みがあると思いますが、不動産業者として気になるのは、やはり災害時の税務上の問題でしょうか。よく被災すると税金が安くなるとか耳にしますが、そういったことはあるのでしょうか。

小礒:今年の税制改正大綱で出てきたのですが、これまでは災害が発生するたびに特別法が制定され、税務上の手当てがなされていました。しかし、阪神淡路大震災以降、自然災害が増加していますので、今年の改正では災害時の対応について、恒久的な法整備がなされました。

:建築関係はいかがでしょうか。よく震災後に地盤がずれて、土地の境界が変わってしまったといった話を聞きますが、実際にそういったことはあるのでしょうか。

:阪神淡路大震災の発生時は、応急危険度判定士として毎日のように被災地を訪れていました。私は西宮市からの要請で被災地をまわっておりましたが、震災前は隣の家の擁壁が2m先ぐらいにあったのに、震災後は窓を開けたら手が届くところまで移動してしまったというところもありました。

:応急危険度判定士というのは、どういったことを判定するのでしょうか。

:保険のための判定とはまた別のものになります。この家に住んでも大丈夫なのか、危ないのか、といったことを判定します。阪神淡路大震災の時は、判定して欲しいという方が市役所に申し込んで、それを市役所が取りまとめて、各建築士会や大手ゼネコンに依頼して判定するといった流れでした。

:では、弁護士の先生から見て、災害時に不動産業者が注意すべきこととはどんなことでしょうか。

中島:大きな災害が起こったときは、普段やっておられる業務が一気に押し寄せることが考えられます。例えば、建物が歪んだので賃料を安くしてほしいとか、建物を補修してほしいとか、そういった要望が一気に発生します。実際にあった事例として聞いているのは、建物が倒壊してしまったので、あらためて契約し直すということになった際、この機に乗じて定期賃貸借に変えてしまうというようなことがあったらしいです。被災された方は心身ともに弱っておられるので、様々な配慮が必要になると思います。

坂本:災害時に賃貸住宅をあっせんした際、そうとは知らずに反社会的勢力に住宅をあっせんしてしまったことが後日判明した場合、業者はどのように対応すればいいでしょうか。

松本:まず、事前の予防策としましては、契約時に反社会的勢力でないことの誓約書をもらっておけば、契約違反ということで契約解除することができます。誓約書もなく、知らずにあっせんしてしまったという場合は、業者として調査したが見抜くことができなかったということで、家主に対して責任を負うことはないと言えます。ですが、簡単に分かったはずなのに、見過ごしてあっせんしてしまったということですと、業者側の落ち度となりますので、家主に対して責任を負う必要があるということになります。

坂本:災害時にどれだけ冷静に判断ができるでしょうか。

松本:過失があった場合の状況が重要です。大きな災害が発生して、なかなか調査ができなかったという状況であれば、平時であれば5つのチェックが必要なところ、2つしかできなかったとしても、過失の認定は個々のケースで変わってくると思います。

:関東の先生はいかがでしょうか。

酒井:関東はやはり東日本大震災の影響が大きかったです。司法書士会でも岩手や宮城、福島に司法書士を派遣して、相談会を開くなどしておりました。また、たくさんの方が亡くなられたことで相続が大量に発生しました。そのため、行政から司法書士会に対して、市役所で司法書士を雇用したいというような要請もありましたが、なかなかうまくはいかなかったようです。

福井:災害に対する基本法を制定するために税理士の政治連盟が活動して、先ほど小礒先生からお話があったように、恒久的な対応が平成29年度の大綱に盛り込まれることになりました。それまでは、災害に合わせて特別措置法を作ることでその都度対応していました。
東日本大震災の際に、実際にどういったことが起こっていたかと言いますと、震災が発生したのが確定申告の直前だったんですね。確定申告をしなければならない3月15日には、被災地の方は間に合わないだろうということになりました。東京は大丈夫だったのかと申しますと、そうでもなかったんです。東京の方でも避難された方が結構おられて、私のクライアントでも海外に避難された方がいらっしゃいました。被災地の方は、何かしらの措置が取られるだろうと予想できたのですが、東京の方が避難してしまい確定申告の資料も集められないといった場合に、税理士としてはかなり困ってしまったということがありました。
東京税理士会でも、被災地に税理士を派遣するということはしていたのですが、個人ではなかなか難しかったですね。
たとえば、被災地に賃貸アパートを所有しているオーナーの方で、アパートが被害を受けたために賃料が回収できなくなってしまいましたが、銀行への返済はしないといけません。オーナーさんと税理士と銀行の方とが、個別に話し合うしかないといった状況でした。このケースでは、実際に賃料の回収をしていたのは不動産業者さんで、オーナーさんはどんな人が住んでいるかも把握していないということでした。こういったときに、不動産業者さんとして、いったいどういった対応が必要だったのでしょう。たとえば、入居者のリストをもう一度オーナーに渡すとかいった対応がなされていたら、また状況は変わっていたのかもしれません。

:ありがとうございました。今回のテーマを提案された宮崎さんからは何かありますか。

宮崎:熊本地震の際にZ-supportに寄せられたご相談で、『これまで安い賃料で貸していたが、地震によって建物の修繕が必要になり、修繕したおかげで建物の価値が上がり、賃料も上げたいのですが可能ですか?』といった相談がありました。災害時は平時とはまた違った状況が生まれると思いますが、知っておくと便利な知識や制度があれば教えていただきたいです。

中川:どの部分の修繕にもよるかとは思いますが、使用目的が果たせないようなものでれば、安い賃料で貸していたとしても修繕する義務が発生します。やはり、個々のケースによって問題になっていることを確認する作業と、元の契約がどうなっていたかを把握することが肝心です。大きな災害では、契約書が失われてしまったということもよくあります。そこからトラブルに発展することもありますので、契約内容を確認してよく話し合いながら、お互いの妥協点を見出していくことをお勧めします。

松本:補修の問題と賃料増額請求の問題とを考える必要があります。補修は損壊の度合いや部分によりますが、必要な補修は賃貸人の義務ですから対応しないといけません。補修によって賃貸物件の価値が上がった場合は、借地借家法上の賃料増額請求ができます。実際の対応としては、補修する際に、入居者の方に「こういった補修をした場合は賃料を〇〇〇〇円上げます」と言って了承してもらうということになるかと思います。補修はしないで賃料をそのままにしてほしいという人もいるでしょうが、家主さんからすると補修しないと住宅が傷んでしまうという場合もあると思いますので、ケースバイケースになるかなと思います。
賃貸人には補修の義務があることと、賃料増額請求ができるということがポイントになるかと思います。

:ありがとうございました。米原さんは兵庫ですが、震災のことで何かありますか。

米原:神戸の震災のときは売買の仲介をしていました。そのとき体験したトラブルとしては、マンションの契約があって、決済前に震災が起きたということがありました。契約書の条項には、天災地変の際には売主が補修して…といった内容が書かれていたのですが、結局売主と買主が揉めるということありました。他にも、罹災証明では「全壊」とされたマンションなんですが、実際には住むことができるというものがあり、どのように処理するかといったことで頭を悩ませたこともありました。

中島:基本的には契約書の記載に従うというのが大前提になりますね。

:罹災証明では「全壊」とされたのに、実際は住めるということはあるんでしょうか。

:応急危険度判定での話になりますが、基本的は「住めない」です。半壊と判定された建物で、工夫しながら何とか住むということでしたらあり得るかもしれませんが、全壊では難しいでしょう。

米原:罹災証明では「全壊」とされても、取り壊さずそのまま残っている建物が神戸には結構あります。買い手からすると、全壊なんだから安くならないの、といったことだと思うんです。

南村:たしかに人が住めるかどうかの判定はなかなか難しいと思います。きっちりと建物の躯体を調べるのは時間もかかります。区分所有のマンションで売買契約の途中で災害が起こった場合、建物が傾いていても、買主さんは住むところがないので買いたいということがありました。1月16日に契約されて、翌17日に震災が発生して買主さんが住んでいた家が壊れてしまって住むところがない状態になってしまったんです。契約したのは空室のマンションでしたので、「すぐに決済するから入居させてほしい」ということでした。契約されたマンションは結構傾いていて、そのまま入居されるのはちょっと…という状況でした。しかし元から住んでおられた住人もほとんど避難せずに残っていて、最終的は3割程度減額して売るということになりました。数か月後には傾きを直して、今も建物は残っています。
賃貸のトラブルとしては、震災のあった翌日にオーナーさんが賃料を上げられるということがありました。上げても借りられることは分かっていますから。モラルとしてはどうかな、とは思いますが、災害時は完全に貸し手市場になります。賃料5万円だった物件が翌日には10万円になってしまうんですが、それでもお金のある人は借りますから。
びっくりした出来事としては、高齢のおばあさんがリュックサックに3000万円詰め込んで、住むところを探しに来たという出来事でした。
不動産業者として注意しないといけないことの1つとして、先ほども話が出ましたが、管理物件についてです。有事の際のオーナーさんとの連絡網を整備しておかないといけません。災害時の入居者の安否確認から現場の簡易な調査、また建物に残っている人がいるのかどうか、建物が倒壊しそうな場合は入居者を避難所へ誘導することも含めて、不動産業者の対応が今後はもっと大事になってくるかと思います。ただ、有事だからと言って、すべてボランティアで対応するのは難しいと思います。あらかじめ管理契約等で有事の際の対応や費用について、オーナーさんにある程度の費用補助をしていただくような管理契約というのが、今後は必要になってくるのかもしれません。

田中:自然災害ではないのですが、火災についてお聞きしたいことがあります。マンションの一室が全焼したんですが、消火活動と煙のために、両隣と上の部屋が住めない状態になってしまったんです。古いマンションだったこともあり、火災保険に入っておられず、補償もできないという状況でした。

南村:火災の際、失火責任は問われないという法律がありますから、それはいいと思うのですが、実際の損害賠償請求の実務では様々な問題が出てくると思います。
例えば借家の場合、借家人が火災を出した場合、失火責任は問われなくても債務履行責任は問われますよね。そういったことで、家主から請求されて困ったとか、そういったケースはありませんか。

中島:火災保険に入っていれば保険での対応になりますし、入っていないようでしたら債権回収の問題になると思います。後者の場合には、火を出した人に資産があるのかないのかがポイントとなり、被害者側は損害賠償請求をして、火を出した人が支払えなければ土地の差押えなどを検討することになると思います。

南村:現在、国をあげて耐震補強を推進していますが、なかなか進んでいません。耐震診断は補助が出るのでいいんですが、診断の結果、補強が必要と判明し、費用が何百万円もかかるとなった場合、実際にはなかなかすぐに補強工事までできないのが現実です。例えば、耐震性に問題があるということが予め分かっているが耐震工事ができないという場合で、震災が起こった際に、新耐震の建物や耐震工事をしている建物は倒壊しなかったが、耐震工事していない建物は倒壊してしまうということが考えられます。この倒壊した建物が借家で、住んでいた方が大けが、または死亡された場合、オーナーや管理会社の責任はどうなるんでしょうか。

松本:まず、オーナーさんに耐震工事をする義務があるのかという点ですが、既存不適格ということがありますので、耐震工事をする法的義務があるケースというのは本当に稀だと思います。レアケースというのは、本当に建物が危険な状態なのに放置していた、ということになると思いますが、そういったケースでなければ義務違反にはなりませんので、責任はないという結論になります。

:火災に関連してですが、新築のアパートの隣にお化け屋敷のように荒れた空き家があり、そこにホームレスの人が出入りして火を使っていたんです。そこから火が出て、隣の新築アパートの一部にも被害が出たということがあったんですが、こういった場合の責任はどうなりますか。

中島:建物を誰でも出入りできる状態にして放置していたということであれば、その空き家の所有者にも責任があると言えます。どこまで損害賠償を請求できるかというのはまた別の問題ですが、全く責任がないということはないと思います。
空き家に関しては、行政のほうで調べて管理や指導をしなければならないという流れですが、実際に事故があった場合に行政が指導しなかったからだ、といって行政に対して責任を追及できるのかは疑問です。
こういったケースでは、所有者に連絡するのはもちろんですが、行政に連絡して、そこから所有者に指導してもらうという手段も有効かと思います。

(ラビットプレス+4月号に続く)