【2017年7月号特集】平成29年度税制改正

公益社団法人全日本不動産協会 全日本不動産近畿流通センター
Z-support専任アドバイザー
福井税務会計事務所
税理士 福井 紀之

はじめに
平成29年度の税制改正は、昨年12月8日に与党税制改正大綱が了承・公表。それを受けた政府税制改正大綱が12月22日に閣議決定。その後、第193回通常国会において、平成29年3月27日付で可決・成立しました。
全体としては、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の見直しが最大の焦点になり、「中小企業向け設備投資促進税制」や「事業承継税制」の拡充、「研究開発税制」や「所得拡大促進税制」の上乗せなどが、主な内容となっていますが、本稿では不動産に関係する部分で、重要と思われる部分を抜粋して紹介させていただきます。
各種特例措置の適用期限延長
  • (ア)住宅用家屋の所有権移転登記等に係る登録免許税の軽減措置
    →平成32年3月31日まで3年間延長
  • (イ)土地の所有権移転登記に係る登録免許税の軽減措置
    →平成31年3月31日まで2年間延長
  • (ウ)既存住宅の買取再販に係る登録免許税の軽減措置
    →平成31年3月31日まで2年間延長
  • (エ)特定の事業用資産の買換え等の場合の課税の特例措置
    →平成32年3月31日まで3年間延長
  • (オ)優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得税の軽減税率
    →平成31年12月31日まで3年間延長
  • (カ)法人及び個人の不動産業者等に係る土地譲渡益重課の適用停止措置
    →平成32年3月31日まで3年間延長
  • (キ)サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制
    →平成31年3月31日まで2年間延長
  • (ク)Jリート及びSPCが取得する不動産に係る流通税の特例措置
    →平成31年3月31日まで2年間延長
     ※不動産取得税の対象に有料老人ホーム等のヘルスケア施設及びその敷地を追加
広大地評価の見直し
  • (ア)広大地とは
    広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。(ただし、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除かれます。)
    つまり、標準的画地に比べて著しく地積が大きく、戸建分譲素地が最有効使用であって、戸建分譲地として開発するに当たり、開発道路等の公共公益的施設用地の負担を要する土地のことを指します。
  • (イ)評価方法の見直し
    相続税・贈与税を計算するにあたり、現行の広大地の評価方法は、土地の形状にかかわらず、面積が同じであれば評価額が同じになります。そのため、実際の取引価格に差があったとしても、相続税評価額は同じになってしまうため、形状と面積を考慮した補正率により評価することとなりました。
    改正後の広大地の評価=路線価×面積×補正率※1×規模格差補正率※2
    • ※1 形状(不整形・奥行)を考慮した補正率
    • ※2 面積を考慮した補正率
  • (ウ)適用要件の明確化
    また、現行では広大地に該当するか否かの明確な判断基準がないため、適用要件を明確化することになりましたが、具体的にどのように明確化されるか現状では決まっておりません。
  • (エ)適用時期
    平成30年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用されます。
タワーマンションに係る固定資産税等の見直し
  • (ア)概要
    現行は、階数に関わらず床面積が同じであれば、固定資産税額等も同じ額で課税されていましたが、高さが60mを超える居住用超高層建築物に係る固定資産税、都市計画税、不動産取得税については、高層階になるにつれ税負担が重くなるよう、階層の違いによる補正計算が行われます。
  • (イ)補正方法
    各区分所有者の専有部分の床面積を階層別専有床面積補正率により補正し、補正後の床面積により全体に係る固定資産税額等をあん分します。
    N階の階層別専有床面積補正率=100+10/39×(N−1)という補正率を用いますが、50階建ての場合、50階が6%弱の増税、1階が6%弱の減税となります。
  • (ウ)適用時期
    平成30年度から新たに課税されることとなるタワーマンションについて適用されますが、平成29年3月31日以前に売買契約が締結された住戸を含むものは除外されます。
住宅取得等資金贈与の非課税限度額適用時期の変更
消費税等の税率の10%への引き上げが平成31年10月1日に2年6ヶ月再延期されたことに伴い、住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度について、その適用期限が平成33年12月31日まで延長され、契約の締結期間が変更されました。
住宅ローン控除の見直し
従業員が勤め先から住宅資金を1%未満で借りる場合には、住宅ローン控除の対象外でしたが、平成29年1月以後に居住の用に供する場合から、0.2%未満に引き下げられました。
リフォーム減税の拡充
平成29年4月1日から、既存住宅の省エネ改修・耐震改修に加え、耐久性向上改修工事をローンを組んで行う場合は、5年間で最大62万5千円の税額控除ができ、自己資金で行う場合も、最大50万円の税額控除が受けられるようになりました。
なお、耐久性向上改修工事とは、(1)小屋裏、(2)外壁、(3)浴室・脱衣室、(4)土台・軸組等、(5)床下、(6)基礎若しくは(7)地盤に関する劣化対策工事、又は(8)給排水管若しくは給湯管に関する維持管理・更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築計画に基づくものや、工事費用(補助金等の交付がある場合には、補助金等の控除後の金額)の合計額が50万円を超えることなど、一定の要件を満たすものです。
参考情報(平成28年税制改正:空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
平成28年度税制改正により、「相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」が創設され、その適用にあたっては、家屋を取り壊さずに譲渡する場合にはその家屋が新耐震基準に適合するものであること、相続した空き家を取り壊してから、土地として売却した場合でも適用可能であること、以下の適用要件はご存知かと思います。 注意点としては、譲渡対価の額が1億円を超えるかどうかは、共同で家屋とその敷地を相続し、その後、時期を前後してこれらの資産を譲渡した場合などは、相続開始の日から最初に譲渡をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡を合計して1億円以下かどうかを判定することや、固定資産税等の精算金も対価に含めることになります。
また、被相続人居住用家屋の敷地等が借地であった場合、当該特例の適用の可否については慎重な判断が必要です。
借地人は借地上の家屋(建物)の登記・借地上の建物の存在により、土地に対して借地権の登記が無くとも第三者に対抗する事ができます。では、当該特例を適用するために、家屋を取り壊さなければならない場合はどうでしょうか? 借地権の登記もなく、家屋(建物)も存在しない状態で取引は成立しませんし、家屋(建物)が存在した状態で取引をすると、当該特例の適用は受けられません。
従って、相続した空き家が借地上にある場合には、当該特例の適用を受けられないということになります。
さいごに
平成29年度の税制改正は、不動産に関する分野では「大改正」というような内容ではありませんでした。しかしながら、タワーマンションを利用した相続税の節税手法が問題となっており、今後の動向に注視してください。
また、「8.参考情報」に関わる場合には、事前に税務署へ問い合わせるべきかと思います。