【2018年3月号特集】
第6回 Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会(前編)

【前編】「民法改正」

出席者
【Z-supportアドバイザー】(50音順)※敬称略
梅村武志(司法書士)、大庭清子(司法書士)、川崎竜輔(不動産鑑定士)、金 奉植(弁護士)
小礒ゆかり(税理士)髙橋芳明(不動産鑑定士)、竹田恵里(税理士)、中川裕紀子(弁護士)
中島宏樹(弁護士)、西本晋也(司法書士)、原 恵一(一級建築士)、福井紀之(税理士)
細谷明子(社会保険労務士)、松藤隆則(弁護士)、松本康正(弁護士)、森田文子(行政書士)

【近畿流通センター】
堀田健二  運営委員長
伊藤 靖  副運営委員長
南村忠敬  副運営委員長
坂本俊一  副運営委員長
角前秀史  システムソリューション事業部長
龍  優  システムソリューション事業部副部長
米原大輔  システムソリューション事業部副部長
田中勇人  システムソリューション事業部
荒木慎太郎 システムソリューション事業部
藤田勝志  システムソリューション事業部
月城 浩  システムソリューション事業部
宮崎彰太  システムソリューション事業部

米原:本日は大変お忙しい中、当センターが企画いたしました「Z-supportアドバイザーの先生方と当センターシステムソリューション事業部との座談会」にご出席を賜り、厚く御礼申し上げます。
ただ今より、開会させていただきます。私は、本日司会を担当いたしますシステムソリューション事業部副部長の米原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
はじめに、当センターの堀田運営委員長より、一言ご挨拶を申し上げます。
堀田運営委員長、よろしくお願いいたします。

堀田:皆さん、こんにちは。本日は大変ご多用の中、このように沢山の方々にお越しいただき、誠にありがとうございます。関東からお越しいただいた先生方もおられるということで、ご足労をおかけしております。
先生方には、日頃、会員からの様々な相談にご対応いただき、大変感謝しております。
本日は座談会ということで、先生方それぞれのお立場からの様々なご意見をお聞きしながら、活発な意見交換がなされ、有益な座談会にしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

米原:堀田運営委員長、ありがとうございました。
続きまして、南村副運営委員長よりご挨拶を申し上げます。南村副運営委員長、よろしくお願いいたします。

南村:皆さん、こんにちは。本日は大変お忙しい中、多くの先生方にお集まりいただき、本当にありがとうございます。
「Z-support」も今年の4月で8年目となりますが、先生方には大変ご苦労をおかけしていると思います。会員の資質向上を目的として、専門家の先生方のアドバイスを受けながら、会員に業務を行ってもらうというのが「Z-support」の当初の主旨です。先生方には、今後ともご理解とご協力をお願いいたしまして、簡単ではございますがご挨拶とさせていただきます。

米原:南村副運営委員長、ありがとうございました。
続きまして、角前システムソリューション事業部長よりご挨拶を申し上げます。角前部長、よろしくお願いいたします。

角前:システムソリューション事業部長を仰せつかっております、角前と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日はご多用の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。この座談会も、今年で6回目を迎えるまでになりました。会員支援サイト「Z-portal」は、元々は近畿圏の会員に限定されたサービスでしたが、現在は中国、四国、九州の会員にまで開かれ、おかげさまで西日本の会員の「Z-portal」の利用は、増加の一途を辿っているという状況です。
また、先生方にもご協力いただいております「Z-movie」も、昨年11月より一般消費者への公開を始めております。今後も、有益なサービスを提供していけるよう、システムソリューション事業部一同頑張っていきたいと思っております。
本日は長時間になりますが、協会にとって役に立つ座談会にしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

米原:角前部長、ありがとうございました。
続きまして、本日ご出席の方々のご紹介ですが、先生方からお一人ずつ自己紹介をお願いしたいと存じます。

松本:弁護士の松本です。座談会には毎年参加させていただいており、大変楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

西本:司法書士の西本でございます。昨年にアドバイザーに加わりまして、座談会は今回が初めてとなります。どうぞよろしくお願いいたします。

松藤:弁護士の松藤隆則でございます。本日の座談会のテーマである、民法改正、民事信託、家族信託については、様々な業種がコラボレーションしながら仕事をしていくことの重要性を痛感しておりますので、今日は大変楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

川崎:不動産鑑定士の川崎と申します。私は全日の会員でもありまして、座談会は初回から参加させていただいております。今回のテーマでもある家族信託ですが、つい先日に取引の関係者が突然亡くなるということがあり、今日はぜひ勉強させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

:プラスワン建築設計事務所の原と申します。座談会には初回から参加させていただいております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

梅村:司法書士の梅村と申します。今日は民法改正と民事信託がテーマということで、色々な士業の方がいらっしゃるので、様々な立場からのお話が聞ければと思います。また、私の知っていることでお役に立つことがあればお話しして、会員の方々に有益な情報発信の場になればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

大庭:司法書士の大庭と申します。座談会には3回目の参加となります。昨年は研修会の講師も務めさせていただき、大変良い経験ができました。ありがとうございました。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

中川:ウィンクルム法律事務所弁護士の中川です。毎年この座談会では、不動産取引の現場でのお話と最新のテーマについてお話させていただけるので、大変勉強になっております。今日もとても楽しみにしています。よろしくお願いいたします。

森田:行政書士の森田と申します。座談会は久々の参加となりますので、大変楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

小礒:税理士法人KTリライアンスの小礒と申します。本日のテーマの民法改正と民事信託については、ちょうど勉強したいと思っていたところでしたので、大変楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

:弁護士の金と申します。私は外国人、特に韓国人が関係する事案をよく取り扱っております。家族信託に関しては、外国人の場合はどうなのか等、この場で勉強させていただけたらと思っております。よろしくお願いいたします。

髙橋:不動産鑑定士の髙橋と申します。今回のテーマである民事信託・家族信託については、不動産鑑定士はなかなか直接的な関わりがあるものではないですが、他の士業の方々との連携の中で鑑定が必要な場面もあるのかなと思います。今日はそのあたりの接点を見出せればと思っています。よろしくお願いいたします。

福井:税理士の福井と申します。本日のテーマは民法改正と民事信託ということですので、税理士としては直接関わりのあるものではないかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

中島:弁護士の中島と申します。今回で参加は3回目となりますが、座談会での議論を楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

細谷:皆さん、こんにちは。社会保険労務士法人人的資源研究所の細谷と申します。座談会では毎回勉強させていただいております。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

竹田:たけだ会計事務所の税理士で竹田と申します。座談会への参加は2回目となります。今回のテーマは実務として扱ったことはないのですが、座談会を通じて勉強させていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

坂本:和歌山県本部の坂本でございます。今日は肩の力を抜いて、ざっくばらんに意見交換していただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

伊藤:滋賀県本部の伊藤でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

:システムソリューション事業部副部長の龍と申します。大阪府本部の所属です。今日は楽しみにしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

田中:京都府本部の田中です。どうぞよろしくお願いいたします。

荒木:京都府本部の荒木です。今日は皆様のお話を聞いて学びたいと思っております。よろしくお願いいたします。

藤田:藤田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

月城:兵庫県本部の月城と申します。今日はよろしくお願いいたします。

宮崎:和歌山県本部の宮崎と申します。今年も勉強させてもらいたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

米原:ありがとうございました。さて、本日の座談会のコーディネーターですが、当センターの角前システムソリューション事業部長にお願いしたいと存じます。それでは、早速座談会に入らせていただきます。角前部長、よろしくお願いいたします。

角前:それでは、早速座談会を始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
まずは、本日1つ目のテーマである民法改正について、弁護士の松本康正先生より簡単にご説明いただきまして、その後にディスカッションに移りたいと思います。
そして、2つ目のテーマである民事信託(家族信託)について、司法書士の西本晋也先生にご説明いただき、ディスカッションしていきたいと思います。士業間連携も含めて、活発な意見交換をお願いしたいと思っておりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
では、民法改正について、松本先生からご説明をお願いいたします。

<テーマ 〔泳_正> ※資料はこちら

松本:では、民法改正について簡単にご説明させていただきます。
民法改正の議論は数年前から本格的になっておりました。内容は概ね決まっていたのですが、国会でなかなか可決されない、という状況が続いておりました。昨年(2017年)に、やっと国会を通過いたしまして、2020年4月1日から施行されることが決定しております。
民法の内容は、財産法と家族法に大きく分かれております。財産法は財産の権利関係等が定められており、家族法では身分関係、結婚や離婚、相続の問題等が記載されています。
今回の改正では、財産法の部分、しかも債権法が抜本的に改正されるということで、不動産という財産を日々扱われている宅建業者の方々も大きく関わってくるところです。
ただ、抜本的に改正されるとは申しましたが、これまでの実務と大きく違ったり、今までの常識が全く通用しないのかと言いますと、そういうわけでもありません。これまでも旧民法で足りない部分というのは判例で補ってきたわけですが、そういった判例を明文化したり、不足分を補ったりというのが改正の中心になります。ですので、すごく心配される必要はないのかなと思っております。
さて、今回お配りしている資料は、以前のDVD研修で使用させていただいた資料になります。
民法改正のポイントといたしまして、「危険負担」「瑕疵担保責任概念の変更」「賃貸借契約についての諸改正」「保証についての改正」「法定利率の変更」と記載させていただきましたが、これらが主に宅建業者の皆様には関わってくる部分かと思いますので、順にご説明させていただきます。
では早速、危険負担についてですが、条文が少し変更になっています。まず、危険負担とはそもそもどういった問題なのかを説明しておきたいと思います。お互いが義務を負う「双務契約」において、片方の債務が履行不能になった場合、もう片方の反対債権が消滅するのか、というのが危険負担の問題になります。
現行法では、債権者負担ということで、片方の債務がなくなっても、もう片方の残った債務はそのまま残るという場合が多かったのですが、この制度には批判が多くありました。ですので、今回修正され、片方の債務がなくなった場合、もう片方の債務も消えるということが多くなりました。
宅建業者の方々におかれましては、これまでもこの点は特約として定められるのが通常だと思いますので、今申し上げた法改正を念頭に置かれて、特約としてしっかり記載するということが、今後はより一層重要になってくるかと思います。
次に、「瑕疵担保責任概念の変更」についてです。この部分は宅建業者の方々の関心が最も高い部分ではないかと思います。「Z-support」にお寄せいただく相談でも、「瑕疵になるのでしょうか?」「説明義務があるのでしょうか?」といった内容は大変多いです。ですので、今回の民法改正においては、皆様が最も懸念されているところではなかろうかと思います。
これまで、隠れた瑕疵が見つかった場合は、損害賠償や解除といった対応を取られていたと思います。"瑕疵"というのは、"ものに傷がある"という意味ですので、通常の状態・性能を欠いているものになります。そういった場合は損害賠償や解除ができるということになっていました。これが、今回の改正では表現が新しくなり、「契約の内容に適合しない」場合に、「追完、減額、損害賠償、解除」といった手段が取れるということになります。
実質的に何が変わったのかといいますと、それほど大きく変わるわけではない、というのが正直な感想です。と申しますのも、現行法でも「隠れた瑕疵」について、判例で「当事者の主観をも含めて解釈する」としています。例えば、リンゴを贈答用として買った場合は皮に傷があると困りますが、リンゴジュースの原料として買った場合は、皮に傷があっても果汁に影響がなければ問題ありませんね。もともと、瑕疵というのは契約の目的によって判断が変わるものです。そういった考え方をよりはっきりと明確な条文にしたのが、今回の瑕疵担保責任における条文の変更ということでご理解いただければと思います。ですので、それほど心配する必要もないかと思いますが、皆様が扱われる不動産というのは、高額であり重要な財産でもありますから、契約の内容や目的をしっかりと書面に明記しておく、あるいは重要事項説明としてしっかりと説明しておくということが、より一層重要になると言えます。例えば、築年数が古く老朽化している建物を扱う場合に、そういったことを十分認識したうえでの購入であるということを特約等に明確に記載しておく、ということが大切になります。
また、契約の内容や目的に適合しなかった場合にとれる手段についても少し変更があり、追完や減額請求ができるということになっています。
次に「賃貸借契約についての諸改正」についてですが、今回は時間の関係で割愛させていただきますが、改正内容としましては、期間の延長や、敷金に関する判例が条文として明文化されたということが中心になりますので、大きな変更があるというわけではありません。
敷金については、貸主が変更になった場合に、現行法では未払い賃料を控除の上、残額が承継されましたが、改正法ではそのまま承継されるということになります。これまでも、多くの場合は特約で処理されているものだと思いますので、引き続き契約の際にしっかり明記しておくということで大丈夫だと思います。
次に「保証についての改正」ですが、これが今回の改正では意外に重要なところです。資料にも記載している「個人根保証についての規制」ですが、個人の保証人に根保証をしてもらう場合に、極度額を定めなければ無効になるということが新設されました。これは重要なことです。根保証というのは、一定の範囲の債権に対して保証するという意味ですので、賃貸借契約における保証が根保証に入ると解される可能性がある、ということです。ただ、これはまだ議論が固まっていないようです。
では、どうなるのかと言いますと、賃貸借契約で個人に保証人となってもらい、賃料滞納や事故等で物件が損傷を受けた場合、保証人に対しても責任追及できるわけですが、個人保証の場合、極度額を定めていなければ無効になってしまう可能性があります。このあたりも問題視はされているみたいですが、どのような議論になっているのかは不明な部分が多いようです。
こういった規定ができていますので、保証会社の利用が多くなるのではないか、または賃料に転嫁されるのではないか、結果として賃料が上がってしまうのではないか、という懸念も生まれています。
あと、契約締結時の情報提供義務というものがあります。事業のための保証の場合、主債務者が負う情報提供義務となります。「主債務者」ですので、賃貸借の場合だと借主が保証人に情報提供しないといけないということです。これに反すると、取り消しが可能ということですので、貸主または仲介業者としては、このような情報提供が確実に行われているのか、ということをチェックした上で、保証を得ないといけません。そうしないと、保証人の署名はされているが、後で取り消されるということにもなりかねません。
今回の改正では、瑕疵担保責任に注目しがちですが、実務上で少し対応を変えないといけないのは、この保証人に関する部分と言えます。
あとは、法定利率の変更があります。これまで、法定金利は年5%、あるいは6%だったのが、変動金利になります。今までより低くなるということですので、遅延損害金でインセンティブを持たせるのであれば、遅延損害金の約定利率を定めておかなければいけません。
ここまで大まかに説明させていただきました。瑕疵担保責任に注目が集まりがちですが、実際にはそれほど変更があるわけではないということ、保証に関しては注意が必要だということに着目して説明をさせていただきました。

角前:松本先生、ありがとうございました。民法改正の5つのポイントについてご説明いただきました。まずは1つ目のポイントの危険負担について、ご意見等ありましたらお願いいたします。

南村:ちょっとお聞きしたいのですが、危険負担について元々の債権者主義については、我々不動産業者は特約に債務者主義で記載して何十年と取引をしてきました。そのことで特段トラブルもありませんが、今回の改正では当事者双方に帰責事由がない場合においての債務者主義ということでの明文化というご説明でした。我々としては、これまでと何ら変わりはないと考えて問題ないでしょうか。それとも、ここだけは変更があるから注意、という部分がありましたら教えていただきたいです。

松本:通常、契約では特約がありますので、特約がある限りは変わりないとお考えいただいて結構です。どちらかに帰責性がある場合は損害賠償の問題になりますので、特に何らかの対応を変更する必要が出てくるという場面は、おそらくないと思います。

坂本:瑕疵担保責任についてですが、以前に中古物件を売買したときに、旧耐震で利用しづらい建物があり、買主側は利用したいと思っており、売主側は利用しないでほしいと思っていましたので、売買対象金額からこの建物は除外するという文言を入れて対応したことがあります。この件は、その後もトラブルになっていませんが、こういった簡単な特約であってもクリアできるのでしょうか。

松本:土地建物を売買する場合に、売主においては建物の利用価値がないと思われるので、建物の評価額を0円として土地のみの金額で売却した、という事例かと思います。建物の評価額が0円であるということは、老朽化における瑕疵担保責任を追及しないということの一事情としては読み取れますが、必ずしもそれだけで瑕疵担保責任を排除したことになるかというのは、ケースバイケースです。他の要素も含み合わせて判断されることと思いますが、大きな要素ではあると思います。

坂本:売買の対象物には含まれていないということで、瑕疵担保責任は免れるという理解でいいのでしょうか。

松本:売買の対象だけれども評価が0円ということですよね?

坂本:売主は、売買の対象ではないので自由にしてください、ということです。瑕疵については責任を負わないとは明記されていないのですが、対象外ということなので。買主はその建物をリフォームして利用したいという気持ちがあるんです現在に至るまで何の問題もないのですが…

松本:先ほど、他の要素も含み合わせてと申し上げましたが、逆に言うと、他の要素を見ても瑕疵担保責任を負う事情というのがなかったのだと思います。ですので、建物の評価額が0円で売却しているということは、大きな要素となって、瑕疵担保責任が排除されているという理解でよろしいかと思います。

坂本:もう一文追加するとしたら、「売主は将来にわたって瑕疵担保責任を負わない」という内容を入れておけば良かったのでしょうか?

松本:そうですね。宅建業法や消費者契約法の関係で、排除できるか、できないかという色々なパターンがありますが、排除できない場合でなければ、排除しておけばいいだけの話です。宅建業者が売主になっている場合でも、どういった主旨でこの物件を売るのかということを明確にしておけば、老朽化については瑕疵ではない、という結論に持って行くこともできるかと思います。

坂本:わかりました。ありがとうございました。

田中:危険負担のところで出てくる「債権者負担」ですが、不動産売買では「債権者」とは誰のことを指すのでしょうか。

松本:ややこしいところですよね。建物を売って、まだ引き渡していない状態のときに、その物件が火災にあったり、何らかの理由で滅失した場合、代金請求は残るのかという問題です。今までは債権者主義ということでしたので、代金が残っていたということになります。物件は手に入らないのに、代金を支払わないといけないというのが原則だったんです。それがそうならないように改正されたということですが、これまでも特約で対応されていると思いますので、あまり心配はないと思います。

田中:ありがとうございました。あと、個人根保証の部分で、極度額を定めないといけないということでしたが、例えば1ヶ月10万円の賃料に対して、2年分の240万円という表現にすればスッキリするんだろうと思いますが、そうではなくて、「2か年の賃料相当額」という表現でもいいのでしょうか?

松本:ご質問の件については、多少議論が必要なところではあるのですが、ひとまずはそれで結構かと思います。まだ議論が定まっていない部分があるのですが、主債務者の債務額や性質など負担が変更された場合に、その変更が保証人に及ぶのかという点について、賃料が増額された場合に、増額された2年分なのか、元の額の2年分なのかということについては議論が必要です。

田中:ありがとうございました。

福井:情報提供義務についてお伺いしたいのですが、例えばテナントを借りているという場合に、更新契約の際にも適用されるものなのでしょうか?通常、テナントだと2〜3年で賃貸契約が切れると思うのですが、更新契約をするときにも情報提供義務が発生するのでしょうか?

松本:更新の際に、どのような手続きをされているかによって変わってくると思います。いったん契約が終了したことを確認した上で、新しく賃貸借契約を締結されるのであれば、情報提供義務が必要になってくると思いますが、自動更新だったり、自動更新でなくてもそのまま賃貸借契約の継続を確認するような性質のものであれば、その場合は不要になってくるかと思います。

福井:賃料に変更がある場合はどうですか?

松本:必ずしもそうではないです。賃料の増減というのは、賃貸借契約存続中にもあるわけですので、新たな契約を締結すると言えるかどうかがポイントになってくると言えます。賃料変更も一事情にはなりますが、それだけで決まるものでもないということです。

福井:ありがとうございました。

月城:個人根保証について質問ですが、これは2020年の4月1日以降の契約が対象ということでよろしいでしょうか。

松本:そうですね。個人根保証だけでなく、説明させていただいた民法改正については、すべて2020年4月1日から始まりますが、保証については改正前から徐々に注意しておいた方が安心かなと思います。

月城:ありがとうございました。あと、情報提供義務について、これは主債務者が負う提供義務なので、仲介する場合は保証人に対して財産や債務の状況を仲介業者が説明しなくてはならないのでしょうか?

松本:そういうわけではありません。賃貸借契約の典型的なケースを想定すると、借主が保証人に情報を提供しないといけないということになります。仲介業者の立場で重要なのは、そういった情報提供がきっちりと行われているかどうか、仲介業者を通して確認をしないと、保証が無効になってしまう恐れがある、ということです。ですので、その確認を明確に行わないと、業務を果たしたことにならないと思います。実務としましては、情報提供を受けたという言質を保証人から取る、ということになるかと思います。それは、定型文を用意しておいてもいいと思います。

月城:それがないと、保証が無効になってしまうということですか?

松本:無効になる可能性がある、ということです。そういった場合、仲介業者としては、貸主への責任が生じてしまうこともあり得る、ということですね。

月城:わかりました。あと、期限の利益喪失時が2か月以内の通知義務ということですが、2か月賃料の滞納があれば、家主は保証人に伝えないといけないということでしょうか?

松本:期限の利益ですので、滞納についてはまた別の話ということになります。

月城:賃料を滞納しがちな借主としっかりした保証人という場合に、滞納がどんどん溜まって、気づいたら100万円ほどになっていたということもあるかと思います。そういった場合に期限の利益というのも関係するのかと思ったのですが…。

松本:例えば、家賃の滞納が100万円あって、毎月の家賃とは別に10か月にわたって10万円ずつ上乗せして支払っていきますという約束をした場合に、100万円の支払いを待ってくれる、という利益が期限の利益です。このケースでは、毎月10万円ずつ上乗せして支払うと約束したのに、3か月目で上乗せ分が支払われなかったとすると、それでは残りの80万円を一括で支払ってください、ということになりますよね。そういったときには、保証人に対して通知をしないといけないということになります。

月城:わかりました。不動産取引ではあまり関係ないのでしょうか?

松本:例のような限定された場面で関係するかもしれませんね。

月城:わかりました。ありがとうございました。

南村:本日お越しの弁護士の先生方全員にお聞きしたいのですが、そもそも賃貸借契約の保証人について根保証という位置づけで進んでいるようですが、これについて法律家としてのご意見をお伺いしたいです。先ほど松本先生が仰ったように、まだ議論の余地があるというのもわかるのですが、どんな資料を見ても賃貸借契約の保証人については極度額を定めるということで進んでいます。今の段階では難しいかもしれませんが、ぜひご意見をお聞かせください。

中島:どれぐらいの金額になるのかわからないので、保証人にとってリスクであるということが問題としてあると思います。ですので、賃料や原状回復の範囲を考えて、極度額の想像がつくのであれば、一般の根保証とは違う扱いもあり得るのかなという気はします。そこまで細かなことについては、立法のレベルでは考えられていないのかもしれません。

南村:実務的に考えたときに、連帯保証人の保証債務は根保証ではないという位置づけで取り扱った場合、極度額の設定をしなかったからといって、保証債務が無効になるということはないと考えていいのでしょうか?

中島:はっきりとは言い切れませんが、おそらく運用の話になってくると思います。

:今後の判例の集積になってくるとは思いますが、極度額を定めていなくて無効になる可能性は出てくるのではないか、それを理由に争う人も出てくるのではないかなと思います。契約である程度予想される損害の範囲というのは、合理的に考えられると思いますので、取引事例等に照らし合わせて極度額を定めておく方が無難ではないかなと個人的には思います。

中川:保証人というのは本人の債務ではない債務を保証するという側面がありますので、はっきりした金額が定まっていない場合は根保証ではないかなという見解です。ですので、賃貸借契約の保証人も、ある程度予想はできるかもしれませんが、はっきりとした金額が定まっているわけではないので、極度額を定める方向で適用されるのはないかなと考えております。

南村:定期借家ではどうでしょう?定期借家契約であれば、負う債務の上限が予測できますよね?

中川:あくまで上限であって、金額ではないですよね。定まった金額でなければ根保証というかたちになるのではないでしょうか。

南村:根保証で極度額を設定しなくても、契約上に定まった金額がなくても、実態上はあるでしょう。ですので、極度額の設定が契約書になくても有効にはならないのでしょうか?

中川:原状回復等、賃料以外で債務が生じる可能性もありますし、それで極度額を設定したことにはならないと思います。すべての可能性を想定しておくというのは難しいと思います。

南村:わかりました。ありがとうございました。

松藤:実際に実務として扱ったことがあるのですが、保証人は優良な人でしたが、賃借人が些か問題のある人で、数年間賃料滞納を放置して、いきなり保証人に請求したという事案がありました。下級審で信義則違反だということで、半年程度の賃料滞納分と原状回復費用に抑えたという判例があります。おそらくそういった判例も意識して、貸している側にも早く明け渡して部屋をきれいにする義務があるだろうというような事例が過去にありました。また、実務上で問題になるのは、自殺等があったときに損害賠償請求ができる場合があって、これが保証人に請求できるのかというのは判例でも争いがあって、今までは認める方向だったんです。こういった規定ができたことで、今後はそれができなくなるんだろうということは、実務変更になるではと思います。根保証についても、貸金の根保証については以前から法律があって10年以上経ちますから、そろそろ根保証については金額を定めるという方向で考えているのかなと思います。
金額ではなく方法でもいいので、賃料○ヶ月分という定め方もあるということでしたが、契約書の書き方によっては、限度さえ定めていれば有効になる余地はあると思います。先ほどお話が出ました定期借家で、賃料に限定していれば計算できますのでオッケーかもしれません。あるいは原状回復義務と書いて、金額が予測可能であれば、もしかしたら有効になるかもしれません。そこははっきりとはお答えできませんが、工夫しておけば争える余地は出てくるのではないかなと思います。

坂本:この個人根保証の極度額設定については、2020年4月1日以降の契約から必要ということで、従前の契約はこれまで通りで大丈夫なんですよね?

松藤:そうです。改正後にあらためて保証契約を結ぶ場合が対象になります。改正以前の契約については、契約更新の際、契約内容や賃料の変更等があった場合に注意してください。更新であっても契約内容を変更すると、新たな契約とみなされる場合があります。

坂本:わかりました。ありがとうございます。

南村:関連して2点お聞きしたいことがあります。1点目が、賃貸借契約の継続性がありますので、根保証である以上、元本の確定をしないと保証人の地位が危うくなりますので、賃貸借契約の終了というのは実務的にも大変難しいんです。先ほど質問が出ましたが、2か月滞納したら、とか3か月滞納したら、とか、このあたりは先生方にもよく質問が届くと思います。これで契約解除できるのか、という質問です。元本の確定というのは、どのタイミングで確定させればいいのか、ということをお聞きしたいです。
もう1点が、極度額いっぱいまで保証人が保証債務を支払った場合、超過した分について、もちろん支払う義務はありませんが、保証人の地位と賃貸借契約の有効性というのはどうなるのかということをお聞きしたいです。

松本:まず、元本確定ですが、これは敷金を念頭においていただければご理解いただけると思いますが、明け渡し時までは原状回復義務等が残りますので、基本的には明け渡し時に元本が確定するとお考えいただければと思います。
もう1点のご質問については、多くの場合、極度額まで支払えば、賃貸借契約は解除事由などで消滅の事由になるかとは思いますが、理屈上では、期限までずっと保証人が家賃を払い続けるということもあり得るので、そこがリンクしているわけではないです。あくまで、賃貸借契約の主債務者である賃借人と、賃貸人との賃貸借契約において、契約終了原因があるかどうか、解除事由や定期借家なら期間満了のような理由があるのかということで、賃貸借契約終了が判断されます。履行した保証人は主債務者に対して求償できますが、それは宅建業者の皆様からすると向こう側の事情、といったことになるのかなと思います。

田中:個人根保証の限度額についてですが、賃料の何倍ぐらいまで可能なんでしょうか?極端な話、2億、3億と設定しても認められなければ意味がないですよね。例えば水漏れでマンション中が水浸しになったりした場合、200万円ぐらいの極度額ではなかなか難しいといったところがあります。テナントの場合も、原状回復に高額な費用がかかる場合があります。そういったときに、どのくらいまで極度額として許容されるものなんでしょう?

松本:例えば、物件そのものの価格を大きく上回るような額だと認められない可能性が高いです。信義則違反や何らかの法制違反になる可能性がありますが、だからと言って、現実に補修債務が発生しなければ別に構わないのではという議論もありますし、極度額をどれぐらいに抑えておくべきだということは、あまり考えていただかなくてもいいのかなと思います。先ほどから他の先生方から言及があります通り、保証の債務というのは賃料債務だけに限らず、田中様が仰ったような水浸しの修繕等、多額の費用が掛かる場合もあります。そういったことも含めてきっちり保証してもらうために、必要と思われる金額を極度額として定めることは、信義則違反にはならないと思います。火災は概ね保険で対応されると思いますが、漏水等の保険で対応できない部分も場合によってはあるかと思いますので、極度額を多めに設定しないと、逆に保障してもらえないということもあるかもしれません。ですので、必ずしも賃料をベースにして極度額を考えていただく必要はないのかなと思います。

田中:ありがとうございました。

伊藤:漏水に関してですが、オプションを外さない限り、通常は室内の漏水は火災保険にも含まれていて、填補されるというケースが一般的だと思います。

松本:それが一般的だと思います。ただ、実際にあったケースで、故意に水を出しっ放しにして、水浸しにしたという事例がありまして、その時は保険が出ないということになりました。そういったリスクを考えると、多めに極度額を設定しておいて損はないのかなと思います。

伊藤:資料の「賃貸借契約についての諸改正」の中で、「期間制限が50年まで延長」とありますが、これは事業用、居住用にかかわらずでしょうか?

松本:これは借地借家法の適用のないものについての話です。借地借家法の適用のないような不動産もありますので、そういった特殊な場合について、長期間の賃貸借契約が可能になったとご理解いただければいいかと思います。

伊藤:敷金について明文化されるということですが、敷引きについては色々と揉めて、様々な判例が出ていると思いますが、今後どのような方向に進んでいきそうなのでしょうか?

松本:主に消費者契約法の問題で、敷引きが何でも有効になるわけではないという主張がなされています。最高裁判例では、必ずしも敷引き特約は無効にならない、とされています。最高裁判例の事例では、敷引き額が賃料の2か月から3.5か月である場合に、敷引き特約が有効であると認めていますので、あまり無茶な敷引き特約でなければ認められるのではないかと思いますが、事例によりますのでケースバイケースですね。

角前:ありがとうございました。その他、松本先生からご説明のあった瑕疵担保責任概念の変更について質問やご意見はございませんか?

南村:この改正で買主救済の範囲が広がるということになりますが、今まで瑕疵担保責任の損害賠償請求については、履行利益は含まない、信頼利益のみということで判例でも確定していたと思います。色々な文献を見ますと、今後は履行利益も含むと出ておりますが、この点に関して我々不動産業者が注意すべきことがあれば教えていただきたいと思います。

松本:信頼利益に限られるのか、履行利益を含むのかということを一概に考えるのではなく、因果関係のある損害の範囲がどこまでなのか、これは事例によって異なりますので、一概に考えない方がいいと思います。そのあたりも含めて、損害論と因果関係論が今回の改正によってそれほど変わるわけでもないとご理解いただけたらと思います。今まで法定責任、瑕疵担保責任とされていたところが、契約責任になるのでそういった議論が出てきているというところです。

南村:ありがとうございました。

角前:皆様ありがとうございました。議論も尽くされたと思いますので、民法改正についてはここまでとさせていただきます。

(ラビットプレス+4月号に続く)