【2018年4月号特集】
第6回 Z-supportアドバイザーとシステムソリューション事業部との座談会(後編)

【後編】「民事(家族)信託」

出席者
【Z-supportアドバイザー】(50音順)※敬称略
梅村武志(司法書士)、大庭清子(司法書士)、川崎竜輔(不動産鑑定士)、金 奉植(弁護士)
小礒ゆかり(税理士)、髙橋芳明(不動産鑑定士)、竹田恵里(税理士)、中川裕紀子(弁護士)
中島宏樹(弁護士)、西本晋也(司法書士)、原 恵一(一級建築士)、福井紀之(税理士)
細谷明子(社会保険労務士)、松藤隆則(弁護士)、松本康正(弁護士)、森田文子(行政書士)

【近畿流通センター】
堀田健二  運営委員長
伊藤 靖  副運営委員長
南村忠敬  副運営委員長
坂本俊一  副運営委員長
角前秀史  システムソリューション事業部長
龍  優  システムソリューション事業部副部長
米原大輔  システムソリューション事業部副部長
田中勇人  システムソリューション事業部
荒木慎太郎 システムソリューション事業部
藤田勝志  システムソリューション事業部
月城 浩  システムソリューション事業部
宮崎彰太  システムソリューション事業部

<テーマ◆〔瓜(家族)信託>  ※資料 ※資料

角前:それでは本日2つ目のテーマである民事(家族)信託に進みたいと思います。討論に入る前に、司法書士の西本先生からご説明をお願いいたします。

西本:まず、民事信託と家族信託ですが、指し示す内容は同じです。正式には民事信託というのですが、家族信託の方が一般の方にも馴染みやすいということで、家族信託という呼び方で広まっています。
家族信託については、話を聞いたことがあるという方や、ある程度内容を知っているという方もおられると思いますが、本日は私から家族信託の概要をかいつまんでご説明させていただき、不動産業者の方々が、どのようにこの仕組みを活用されればよいのか、ということをお話していきたいと思います。
平成19年に信託法が改正され、今回ご説明させていただくような家族信託が可能になりました。ですが、改正後、それほど家族信託が話題になることはありませんでした。ここ数年で、弁護士や司法書士が家族信託を取り扱いだしたことから徐々に広まって、最近ではテレビや新聞でもよく特集されています。
そもそも家族信託とはどんな制度かと申しますと、“家族を信じて財産を託す”という制度です。現代の社会背景として高齢化、長寿化があります。その結果、認知症の方が増加しています。不動産取引の現場でも、当事者の方が認知症で…というケースは本当によくあることだと思います。認知症というのは家族信託の大きなテーマになっており、「認知症になっても困らないように対策ができる」ということが最大のメリットです。また、民法による相続制度の限界に対して、有効な手段になるということです。家督相続から法定相続に変わって70年ほど経ちますが、所有者不明の土地が全国で膨大な面積になっているという報道もあり、法定相続にも限界があるのかなと個人的には感じます。そういった問題に対して、家族信託は新しい手段になります。
資料,4ページ目に「不動産オーナー様のお悩み…」として、認知症の問題を挙げています。家族が認知症になって、まず直面するのが、介護をどうするか、誰が面倒をみるのか、介護認定、施設等々の問題ですね。
家族信託は、家族が認知症になった場合に困る財産の管理について、対策を講じることができます。資料に記載している通り、認知症になると、所有不動産、預貯金、自社株式が動かせなくなります。その結果、困るのは家族ということになります。
資料5ページ目には「認知症は他人事?」として、認知症患者数の将来推計を掲載しています。2012年には、認知症になっているだろうという方が462万人でしたが、2025年には700万人を超えるという予想になっており、65歳以上の方の5人に1人が認知症という予想になります。この数値を見ていますと、認知症は決して他人事ではないということが、お分かりいただけるかと思います。
6ページ目には、よく一般のご家庭で起こるケースを掲載しています。定期預金の解約も自宅の売却も、本人が認知症になってしまうと、家族がやろうと思ってもできません。こういったケースでは、これまでは成年後見制度を利用していましたが、新たな選択肢として家族信託を紹介したいと思います。
資料8ページ目に、家族信託の仕組みを分かりやすく図解しています。お父さんがアパートを所有しているとすると、委託者であるお父さんが息子を信じてアパートの管理を任せます。受託者である息子は、アパートの管理を適法に行うことができます。アパートの家賃収入は、受益者であるお父さんに渡すという仕組みです。普通の信託の仕組みと同じですね。
資料10ページ目には、「信託がスタートすると…」として、家族信託を行うと、実際にどのようになるかを記載しています。
信託がスタートすると、財産の名義を変更します。不動産であれば、所有権移転登記と信託の登記をして、受託者である息子に名義を変更します。たとえば、息子がその不動産を売ろうと思えば、所有権の名義人は息子なので、意思確認の対象は息子ということになります。お父さんが認知症や、たとえば寝たきりであっても、不動産を売却できます。
次の11ページには、信託が終了するとどうなるのかを記載しています。たとえば、財産を託したお父さんが亡くなったら信託を終了するということであれば、お父さんが亡くなると信託は終了します。終了すると息子に託していた財産は、信託契約で定めた、残余財産帰属権利者に移ります。簡単に言うと、遺言と同じ効果を持たせることができるということです。
家族信託の基本的な仕組みは以上になります。家族信託で何ができるかと言いますと、お父さんの生前、元気なときから亡くなるまで、老後の対策ができるということ、あとは亡くなるとき、相続時の資産の承継先を生前に決めておけるという利点があります。
ここからは家族信託の活用事例についてお話します。
資料13ページに「ケース1」として事例を掲載しています。地方では特に深刻ですが、実家に親しか住んでいないというケースです。ご夫婦で暮らされているうちはいいのですが、どちらかが先立たれた後は独り暮らしになってしまいますね。そうなると、子どもと同居したり施設へ入居したりということになります。施設に移られる場合、自宅をすぐに売却するというケースはなかなかありません。たまには自宅に帰りたいという気持ちや、思い出がつまっているということもあります。ですが、そうこうしているうちに認知症になってしまい、いざ自宅を売却しようにも売れないということが往々にしてあります。
これまでだと、子どもが実家を売却して施設の入居費用を工面しようとしても、できませんでした。また、定期預金の解約もできませんでした。そこで、成年後見制度を利用していたわけです。ただ、成年後見制度にもいくつか課題はありまして、2年前ぐらいの発表では、成年後見人を申し立てて、裁判所が選任する後見人のうち、約65%が弁護士や司法書士といった専門家が選任されているという状況でした。そうすると、後見人への報酬が必要になりますし、ご家族が望むような後見と、専門家が行う後見とでは乖離があったりします。そもそも後見制度はそういったものですし、それが悪いというわけではないのですが、ご家族からすると後見制度では柔軟な対応ができないという不満がありました。
家族信託では、お母さんが元気なうちに自宅を息子に託しておけば、お母さんが認知症になっても、息子が自宅を売却できるということになります。
14ページでは、高齢者不動産オーナーの資産管理の事例を掲載しています。資産が多ければ多いほど、認知症になったときの問題は拡大していきます。収益物件や遊休地を所有していたり、事業をしていたりと、資産の種類や量が多くなると、家族が困ることも増えてきます。資料の例では、高齢の不動産オーナーが家族信託をしていなければ、万が一認知症や脳梗塞などで意思判断能力がなくなった場合、アパートの管理はどうするのかという問題を挙げています。これまでは、賃貸借契約書に長男や長女が代筆でサインすることで何とかしてきたということもあるかと思います。
今後はあらゆる分野において、本人確認と意思確認がより徹底されていくと思います。そうなってくると、長男や長女が代筆でサインするというのは限界があります。さらには、たとえばアパートが老朽化してきたので大規模修繕するという場合になると、金額も大きくなりますので、長男や長女が代筆というのは難しいですよね。
元気なうちに家族信託しておけば、不動産の名義は受託者である長男に移りますので、長男が大規模修繕の発注をして、その支払いをするということが可能になります。
資料15ページからは共有名義の問題になります。たとえば相続がきっかけで、不動産を共有しているというケースが散見されます。親が亡くなって兄弟4人で相続した不動産があり、兄弟は皆高齢になっているという場合、誰か1人でも認知症になってしまうと、その不動産はどうすることもできなくなってしまいます。兄弟の誰かの子どもに信託をしておけば、その方が管理権限を持つことになりますので、土地活用したりアパートの管理をしたり、もしくは売却したりということを、その方1人の権限でできるようになります。意思確認もその方1人に対して行えばいいということです。

続いて、資料△麓益者連続型家族信託についての説明になります。
これまで、財産を誰に遺したいかというのは遺言で決めていました。たとえば、お父さんが自分の財産や不動産を長男にあげたいという希望が叶うのが遺言です。ですが、現代では核家族化、非婚化、また結婚されていても子どもを持たない夫婦もおられ、家族形態が昔とは変わってきています。
資料△4ページ目で例に挙げていますが、代々続いてきた土地を長男に遺したい、ただし長男には子どもがいないという場合、長男が亡くなってお嫁さんも亡くなると、最終的にお嫁さんの一族がその土地を相続することになります。家族信託を利用すると、先祖代々の土地を長男に相続し、長男が亡くなったら次男の子どもに引き継ぐというように、何代か先まで資産の承継を設定できます。代々続く土地をお持ちの地主の方や事業をされている方には、ニーズのある仕組みだと思います。
また、他の活用例としては、ご夫婦と障害のある長男の三人家族の場合、お父さん、お母さんが亡くなると資産は長男が引き継ぐことになります。長男は障害があるので遺言を書けず、相続人もいないとなると、長男が亡くなった後の資産は国庫に帰属することになります。家族信託を利用すると、お父さんが資産を長男に遺し、長男が亡くなった後は、お父さんの甥など相続権のない親族に引き継いでもらう、というように設定することが可能です。

ここまで簡単ですが、家族信託の仕組みをご説明しました。家族信託は、今までの制度では対応しきれなかった部分にも対応できる仕組みです。最近はテレビなどでも多数取り上げられ、それに応じてインターネットの検索数もかなり伸びています。一般の方の家族信託への認知が急激に進んでいると感じています。
家族信託が最も普及しているのは東京で、一般の方から不動産業さんに対して「うちの不動産も家族信託しておいた方がいいですか?」と質問されるケースもあるようです。一昨年ぐらいまでは、家族信託は一般にはまだまだ知られていませんでした。我々のような家族信託を扱う専門家や、相続分野に特化した不動産業者さんなどが、お客様に提案するという状況だったのです。たとえば、賃貸管理会社の方からオーナーさんに向けて「家族信託をしておいたらいかがですか?」というようにアプローチしていたのが一昨年くらいまでの話です。ですが、一般の方には家族信託があまり知られていなかったので、利用数はあまり伸びませんでした。ですが、昨年末からは、一般の方から家族信託について質問されるという状況に変わってきています。
今後は、家族信託という制度がもっと広く認知されていくだろうと思っています。ですが、一般の方々が直接我々のような専門家に相談されるということは少なく、もっと身近な不動産に詳しい人や、相続・資産管理に詳しい人、保険業の方等にまず相談されるということが多いかと思います。では、不動産業者の方がお客様に家族信託について質問された場合、どのように答えるのがいいか考えてみたいと思います。不動産業を営む上で、相続に関する知識はこれまでも必須だったと思います。同じように、家族信託に関する知識も今後は必須になってくると考えた方がいいでしょう。すでに一般のお客様から質問が出てきている以上、「知らない」というのでは困りますよね。まずはお客様のお話を聞いていいただき、専門家に橋渡しするという対応は必要になると思います。
家族信託を不動産業に取り入れることで、様々なメリットが生まれると考えています。たとえば賃貸管理会社の場合、オーナーであるお父さんとはお付き合いがあるけれど、子世代とは全く付き合いがないというケースは多いと思います。家族信託をきっかけとして子世代とも深く関わり、次世代も管理を任せてもらうための足がかりにすることができます。また、仲介業でも、顧客が認知症になったら不動産の売却ができないというリスクを予防できますし、予防することで将来売却になったときに仲介を任せてもらえるということに繋がります。こういったメリットがありますので、不動産業者の方々から、積極的に家族信託をアプローチしていただけたらと思います。

角前:西本先生、ありがとうございました。家族信託についてご説明いただきました。我々不動産業者の立場ですと、昨今、取引に際して成年後見制度を利用するという場面が増えてきているように感じます。家族信託と成年後見制度をどう使い分けていけばいいのかというヒントが、今のご説明で見えたようにも思います。そういったところを含めて、ご意見等々お願いいたします。

月城:資料12ページに「委託者=受益者⇒贈与税や不動産取得税、譲渡所得税はかからない」と書かれていますが、たとえば息子に信託する際に所有権移転で金額を1円などに設定して、ということですか?

西本:金額が1円というと、売買をイメージされているのかもしれませんが、信託ではあくまで管理の権限を託すだけで、名義を移すという手続きになります。経済的な価値はお父さんに残ったままということになります。名義が変わるだけですので贈与税はかかりませんし、売買しているわけでもないですから対価もないですし、譲渡所得税もかかりません。不動産を取得したわけでもありませんから不動産取得税もかかりません。ただ、名義を変えるので登録免許税が少しかかります。

月城:ありがとうございました。受託者が家を売却して、受益者にその代金が入ったときに課税があるということですか?

西本:そうです。売却した際の売却代金はお父さんのものですので、利益が発生すれば譲渡所得税がかかります。

月城:売却する際は、受託者が自由に売却することを決められるのですか?

西本:信託契約等の内容によります。

月城:わかりました。ありがとうございました。

田中:通常の信託登記であれば、固定資産税等は信託者に通知書が来ると思いますが、家族信託の場合も同じでしょうか?

西本:家族信託の場合も、受託者である息子に課税されます。

田中:税金を支払う義務が発生するけれども、収益物件なんかで利益があれば相殺できるということでしょうか?

西本:通常は不動産と一緒に金銭も託すことが多いです。資産がそれほど多くない一般の家庭をイメージしてください。お父さんが自宅を所有していて、定期預金があり、普通預貯金もあるというケースだと、お父さんが高齢のため自身で預貯金を管理するのが難しく、認知症になったら困るので、息子に資産を託すという場合では、不動産と一緒にお金も託しますので、その中から固定資産税を支払うということが多いです。アパート等を所有していれば家賃収入がありますので、そこから税金を払うということもあります。

田中:ありがとうございました。受益者連続型家族信託についてですが、先ほどのご説明では長男が亡くなった後は、次男の子どもに財産を引き継がせるという設定ができるというお話でした。ですが、たとえばお父さんが亡くなった後に、長男に子どもが生まれるとか、想定していなかった状況になることも考えられますよね?そういった場合に資産承継の変更はできるのでしょうか?

西本:変更できるように設定することもできますし、変更不可とすることもできます。家族信託はとても柔軟性があります。家族の現状や希望、これからのことを踏まえて、専門家が設計します。ですので、将来を見据えて、そういった可能性がある場合は、変更できるような信託の内容にします。

田中:そういった特約のようなものがなければ、原則的には変更できないということでしょうか?

西本:そうですね。

田中:変更できるということも含めて、お客様に提案した方がいいということですね。

西本:そうです。あくまでお客様のご意向次第ということになります。

田中:わかりました。ありがとうございました。

角前:ありがとうございました。うまく家族信託を利用することで節税につながったり、たとえば一棟の収益マンションの場合、収益の受益権を父親に残しておいて、またそれを息子に渡してということも可能になるのでしょうか?

西本:基本的には、家族信託をしても税務上のメリットは何もありません。デメリットもないです。ただ、資産家の方だと相続税対策を考えておられると思いますが、相続税対策はお父さんが元気なうちでないとできません。たとえば、10年かけて対策しようとしていたとしても、5年ほど経った時に認知症になってしまったら、6年目以降にやろうとしていた対策はできなくなります。家族信託をしておけば、お父さんが認知症になってしまっても、10年間の対策を実行できます。たとえば、現金があるのでアパートを建てようと計画していても、認知症になると実行できませんが、家族信託をしておけばアパートを建てられます。納税資金を用意するために不動産を売却するということも、お父さんが認知症になった後でも可能です。

角前:ありがとうございました。そういった対策をしたい場合、たとえばアパートを建てるというような取り決めをしておく必要があるのでしょうか?

西本:ある程度具体的に決めておくこともできますし、好きにやっていいよと息子に託してしまうこともできます。

角前:財産の運用を任せる、という一言でも大丈夫ということですか?

西本:そういうことです。 “管理は任せるけれども、代々続いた土地だから売るのだけは駄目”、というように決めておくことも可能です。

角前:わかりました。ありがとうございました。

川崎:たとえば、家族信託でマンションの土地建物を持っていて、受益権だけを第三者に売却した後、受託者を変更すると売買のコストが下がるかなと思うのですが、信託受益権をそのまま第三者へ売却することは可能なのでしょうか?

西本:可能です。仰っているのは、一棟のマンションを財産管理会社に売却するようなケースでしょうか?

川崎:お父さんが持っている受益権を私が買ったとして、息子さんである受託者を信託銀行に変えてしまうということです。信託されている登記のまま、取引をするということです。

西本:受益権を売買することはできます。受益権の売買がどういったイメージかといいますと、投資信託を買って、買ったという立場だけを売るというようなものです。受益権はできるのですが、その後に受託者を信託銀行に変えるというのは、現実的には難しいと思います。いったん家族信託を終了して、信託銀行に託し変えるということになります。

川崎:受益権売買ですと、不動産取得税がかからないということですかね?

西本:そうです。不動産取得税と登録免許税は、不動産を売買するから課税されるのであって、受益権という権利を売買する際は、不動産を取得しているわけではないので課税されません。よく財産管理法人にアパート3棟を売買するという節税のスキームがありますが、アパートを3棟売買して1億円だったとすると、500万円近くの不動産取得税と登録免許税がかかってしまいます。それを、信託をしてから受益権だけを売買すれば、不動産取得税と登録免許税はかからない、という方法があったのですが、おそらく近いうちにできなくなるだろうと思います。そもそも信託は節税のために利用してはいけないものなので、税制で否定されるだろうと思われます。また、信託が終わるときに同じだけの不動産取得税と登録免許税がかかってきます。ですので、こういった使い方をする場面というのは、かなり限定されると思います。今の例ですと、信託銀行に託し変える前に家族信託を終えますので、そのときに不動産取得税と登録免許税がかかることになります。

川崎:たとえば、家族信託の枠組みごと私が購入して、私の子どもを受託者にするということはできなくて、いったん家族信託を終了してから売買をしないといけないということでしょうか?

西本:枠組みごと、というのもできるのですが、信託を終了させるときに課税されますので、結局は節税効果がない、ということになります。

川崎:持ち続ければ、課税されないということですね?

西本:持ち続けるか、再度売却するか、ですね。受益権を買って、また受益権を売れば、不動産取得税と登録免許税が課税されないまま、転売差益が得られるということになります。ただし、信託法上、節税のために信託すると、脱法信託ということになってしまいます。

角前:ありがとうございました。家族信託は、節税のためには利用しない方がいいということですね。家族に何かあったときのための備えとして、家族信託を利用するということだと思います。

高橋:成年後見人制度では、全国で横領総額が26億円にのぼり、そのうち親族によるものが9割を占めたというニュースがありました。家族信託の場合、たとえばお父さんが長男を受託者にして資産の管理を任せたときに、他の兄弟が納得していればいいですが、実は長男に対して不満を持っている、ということもあると思います。また、成年後見人制度ですと、家裁に報告した際に横領が発覚ということになるかと思いますが、家族信託ではそのあたりのチェック機能はどうなのでしょう。家族信託後に財産が不当に減ってしまったとか、売却した不動産の代金がどこかに消えてしまったというときに、どのようにチェックされるのでしょうか?

西本:家族信託は、委託者であるお父さんと受託者である長男だけで契約し、受託者のみが資産を管理しますので、受益者であるお父さんがチェック機能を持ちます。ですので、さらにチェック機能を付加させたい場合は、信託の設計の段階で、家族や弁護士、行政書士、司法書士、税理士等に信託の監督人を依頼するということになります。また、専門家にお願いしなくても、通常家族信託をする場合は、ご家族全員に説明して同意をいただきます。しっかり説明しておけば、家族間や兄弟間でチェック機能が働くのかなとも思います。信託をしようとしまいと、“長男夫婦に預金をかなり使いこまれてしまった”というような話は、世間では往々にしてありますね。どこまで厳格な信託にするのかということを決めるのも、ご家族次第ということになります。兄弟仲が良好でなく、“お兄ちゃんに任せるのは絶対に嫌だ”というご家庭では、後見制度の方が適していると言えます。

高橋:ありがとうございました。

角前:ご家庭によって、家族信託と後見制度を使い分けていくことが大切ということですね。

西本:そうですね。日本は遺言を書かないんですね。日本での遺言の普及率は1割ぐらいと言われています。任意後見制度を利用している方もごくわずかです。ご自身の老後の財産に関することなので、任意後見制度か家族信託を利用して、きちんと設計しておくというのが理想だと思います。認知症になってから、後見人を裁判所に選任してもらう法定後見制度は、どちらかというとセーフティーネットの役割を担うべきなのではと思います。なかなか実現は難しく理想論ではありますが、そのように考えます。

角前:ありがとうございました。

小礒:いくつか質問させていただきたいことがあります。まず、実際に家族信託はどれぐらいの登記がされているのか、という点です。2点目は、先ほども質問がありましたが、受益者連続型家族信託についてです。長男が財産を引き継いだ後は次男の子どもが引き継ぐという例がありました。長男が財産を引き継いだ後に、長男に子どもが生まれたら、というお話がありましたが、遺留分の問題が気になります。もし息子が法定相続人1人ということですと、他に財産がなかった場合に、信託財産に遺留分の権限が及ぶのかというのが2点目の質問です。3つ目の質問は、負の財産である債務は信託財産に含めることができないということですが、実務上はどのようにするのかという点です。4つ目は、不動産と一緒にお金も信託されることが多いというご説明でしたが、預金口座の信託口口座を作れる銀行が少ないと以前に聞いたことがありまして、今は増加しているのかという質問です。たくさん質問があって申し訳ないのですが、よろしくお願いします。

西本:まず1点目ですが、統計というのは私も見たことがありません。関西は最も家族信託が普及していません。こういった状況から考えると、日本全国でも家族信託の数はまだまだ少ないですね。ただ、2016年と2017年の昨対比でみると、5倍ほどの増加になっていると聞きます。2018年はさらに伸びるのではないかと思っています。
2点目の遺留分に関するご質問ですが、いくつか見解を拝見しますが、最高裁判例が出るまでは、各専門家の見解でしかないという感じですね。
3点目のご質問の債務についてですが、仰るように債務は信託できません。たとえば、アパートローンが残ったままのアパートだと、物件そのものは信託しますが、アパートローンは信託に含みませんので、金融機関とどう交渉するかということになります。

小礒:その場合、たとえば建て替えや修繕の必要が出てきたときに、普通の不動産でしたら借り入れをして、ということもできると思いますが、信託している場合、その債務は受託者である息子さんが負うことになって、物件そのものと切り離されてしまうんじゃないかという懸念を耳にしたことがあります。信託契約の中にうまく入れておくような方法があるのでしょうか?

西本:たとえば、お父さんが息子さんに土地を託しました。更地なので相続税評価も高いため、アパートでも建てて有効活用してほしいとして託した後で、お父さんが認知症になってしまいました。意思能力が欠けてしまった後で、息子がアパートを建てようと思ったときに、金融機関に対して信託を受けているからお金を貸してほしいと願い出た場合、それが有効かどうかというところですが、これも見解が分かれています。無効だという立場は、意思能力のない人に帰属する債務は認められないというような意見です。さらに、それが相続税の債務の控除にあたるのかということも、明確な通達がないので、基本的にはしない方がいいのではと思います。実際に行われているのは、アパートを建てようと思うが、完成までに1年半かかり、お父さんが90歳なので、建築中に何かあったら引渡しも何もかも延期になってしまうというリスクを補填するときに、信託を使うという方法です。アパートの建築費用が1億円必要だとすると、お父さんが元気なうちに金融機関から1億円借りて、借りたお金を息子に信託し、アパートを建築するという方法が現実的かと思います。

小礒:いい案ですね。ありがとうございました。

西本:4つ目のご質問の預金口座についてです。まず、信託と預金口座がどういった関係かと言いますと、たとえば息子に5000万円を託しました。それを息子が日常生活に使用している口座に入れてしまうと、その口座には息子さんの給与が振り込まれたり、生活費を出したりしますので、混沌としてしまって、わからなくなってしまう恐れがあります。ですので、息子さんは信託用の口座を別に用意しなくてはなりません。そして、その口座はお父さんが亡くなろうと、息子さんが亡くなろうと凍結されない、という機能を持った口座でなくてはなりません。もし息子さんが亡くなって相続手続きを進めることになった場合、信託用の口座が凍結されてしまうと、お父さんから預かっている財産なのに、息子さんの相続人が相続することになってしまいます。それを防ぐ機能を持っているのが信託口口座ですが、取り扱っている金融機関は全国的に見ても少ないです。関西はかなり少ないですね。

小礒:ありがとうございました。信託口口座の開設についても、関西は少し遅れをとっているんですね。

西本:そうですね。関西でも、もっと広まってほしいと思います。

大庭:子どもの立場からすると、親が元気なうちに遺言なり民事信託なりをきちっとして安心したい、という気持ちがありますが、親の立場では、まだまだ元気だから大丈夫という気持ちなのでしょう、なかなかスムーズにいかないことが多いように思います。あと、信託口口座のお話が出ていましたが、信託口口座を開設する際は、どういった書類が必要になるのでしょう。たとえば信託契約は公正証書にしているほうがよいなど、何か気を付けておかなければならないことはありますか?

西本:公正証書は必須となります。三井住友信託銀行は、士業に対してのバックアップが充実しています。後見制度支援信託や信託口口座について、士業の方向けのバックアップを積極的に行っていますので、色々と質問しても答えてくれると思います。信託契約の契約書案を銀行に提出して、違法性や不正がないかチェックが入ります。その上で公正証書にして申し込むということになります。

大庭:ありがとうございました。

梅村:私もこれまで家族信託を取り扱ったことはないのですが、不動産業者さんでお客様から質問や相談があったという方はおられるのでしょうか。

田中:家族信託の相談はないですが、成年後見の相談でしたらありましたね。また、ちょっと違うケースにはなりますが、所有者が第三者に売らないように信託登記をし、保全をして、売却したということがありました。

角前:昨今は、高齢のお客様から不動産を売って施設に入居したい、というような相談を受けて、後見制度を利用するということが大変多くなっていると感じています。そういった際に、認知症になる前に家族信託をしていれば、もっとスムーズに入居したい施設へ移り住むことができたのに、ということを痛感します。昨年は特にそういったことが多かったですね。

西本:昨年(2017年)、東京の方では、一般の方から不動産業者さんに対して、「売却をお願いしている実家のことで、親が認知症になったら売れないってテレビで言ってたけど…」という質問がちらほらとあったようです。それが関西まで広がって、頻度が増えていくのが今年から来年にかけてなのかなと思います。家族信託というのは、元気なうちにやっておけば、裁判所に関与してもらわずに自宅の売却ができる、大変便利な制度だと思います。私たちのような専門家が家族信託を広めようとしても、なかなか難しいところもあります。私たちよりも、もっと一般の方々に近いところにおられる不動産業者の皆様から、「不動産は認知症になったら売れないんですよ」ということを、どんどん広めていっていただきたいと思います。

梅村:少し前に、任意後見制度が盛り上がりを見せたときも「市民後見」と言われて、一般市民が後見人になるような働きかけがあったのですが、あまり普及しませんでした。家族信託についても、基本的には家族や親族が担う制度で、監督機能もないということなので、広く普及させていくにはそのあたりが心配に思います。

西本:監督機能がないから不安だというのは、もしかすると専門家の立場からの意見なのかもしれません。実際に制度を利用するお父さんが監督機能を必要としているのかどうか。きっちりと誰かに管理してほしいと思っているのかどうか、というのもひとつの観点にはなると思います。また、監督機能はないと申しましたが、帳簿をつける義務や報告をする義務というのはあります。受託している不動産がアパート等だと家賃収入がありますので、毎年税務署に信託調書というものを提出することになります。それが自宅だけだと特に収入はありませんので、税務署に何か提出するわけではありません。

角前:ありがとうございました。税理士の先生方は、相続税のご相談などで、家族信託に関わることもあるかもしれませんが、いかがでしょうか。

福井:税理士の立場から言いますと、贈与税や譲渡所得税がかかるのか、かからないのかというところで、委託者と受託者が同じ人なのかという点だけを注意していれば、それほど難しい税務はないでしょう。相談を受けることがあるとすれば、不動産に関わることよりも、事業承継に関することだろうと思います。株式の議決権と配当受益権をどうするかという相談は多々受けるのですが、不動産の処分や運用に関することまでは、一般の方ではなかなか難しいというのが現状のように思います。

角前:ありがとうございました。竹田先生はいかがでしょうか。

竹田:家族信託は勉強会で話を聞いたことはありますが、実際にお客様から相談を受けたり、取り扱ったりしたことはありません。生前贈与など、相続をどうするかという相談はありますので、そこまで考えておられる方になら、選択肢のひとつとして家族信託を提案してもいいかもしれません。あと、ちょっとお聞きしたいのですが、認知症になったら不動産の売却ができないということですが、どの程度の症状だとできないのでしょうか。また、症状の確認というのは、どういった手順で行われるのでしょうか。契約の種類や金額によっても違うのでしょうか。

角前:おそらく金額の問題ではないですね。我々も登記のときには司法書士の先生立会いのもとで、意思確認をしていただきます。何か法律が絡んでいる場合は、弁護士の先生にも立ち会っていただきます。

松藤:ケースバイケースなんですが、意思能力は15歳相当の能力がないといけないと言われています。具体的には、医師の診断を受けていただいて、その結果次第ということになります。微妙という場合は、医師の診断を受けていただいています。少なくとも、どの物件をいくらで誰に売るといった最低限の理解は必要です。

竹田:保険会社の場合だと、契約後に電話で確認があったりしますが、そういったことはないのでしょうか。

松藤:受け答えがしっかりできているからといって、問題ないということにはなりません。

竹田:その場では問題なかったとしても、後から調査があるということもあるのでしょうか。

松藤:よく裁判になっていますね。受け答えは意外としっかりできるというケースは多いんです。ですが、きちんと理解して回答しているか、というのは別問題ですので、裁判になることは多いです。

角前:ありがとうございました。

南村:民事信託も信託法の範囲の中のものですから、信託財産についても不動産、株式などがあり、分離信託も可能だと思いますし、受託者を複数に設定することも可能だと思います。そういった中で、我々不動産業者がコンサルタント業務として、クライアントに信託の設計からアドバイスをして費用をいただくというのは、いずれかの士業の法律に触れることにはならないのでしょうか。

西本:私は宅建業者の方がお客様に家族信託のアドバイスをされることを肯定的にとらえています。コンサルティング業務としてアドバイスや提案をして報酬をいただくというのは、資格制限や士業制限はないと思います。ただ、法律上の鑑定的な深い部分まで関わることになると、難しいのかなと思います。まだ、こういったことで裁判になった事例もなく判例もないので、これからかもしれません。

松藤:一般的には紛争性があるのかないのか、法律事務と呼ばれるものなのか、単純な資産運用的なものなのかでグレーだとは思いますが、現実として、たとえばホームページなんかを見ていますと、一般の会社がコンサルティングをしているのは多く見かけますね。ファイナンシャルプランナーとか様々な職種の方が、いろんな立場でコンサルティングされているようなイメージです。紛争予防の側面があるような場合は、弁護士に相談していただいた方がいいのかなと思います。単に、“介護施設に入居するので、自宅を託したい”ということなら問題ないかとも思いますが、あくまで一般論となります。

角前:ありがとうございました。

南村:たとえば不動産を信託財産とした場合、我々宅建業者が管理をして家賃収入が発生します。受益者はもちろん家賃収入を得るわけですが、受託者に対する受託者報酬というのは、たとえば受益者に支払う金額の何%といった、何かしらの制限があるのでしょうか。

西本:制限について法律で規定はありません。ただ、家族に財産管理を託しますので、ひとつは後見制度の後見人の報酬が目安になるのかなと思います。だいたい2万円から5万円ぐらい、資産が多ければもう少し増えてもいいでしょう。問題になるのは、報酬をもらいすぎたときです。贈与とみなされて、贈与税が課税される恐れがあります。信託報酬が月に50万円だとした場合、実質は贈与の節税だと指摘されれば、贈与税が課税されることになります。また、管理会社に任さずに、息子が自主管理で信託財産であるアパートやマンションを管理するのであれば、管理会社に支払う程度の信託報酬を息子が受け取ってもいいのかなと思います。

南村:ありがとうございました。

角前:原先生は建築士として何か質問やご意見はございませんか。

:お客様から我々に家族信託についてご相談があった場合、司法書士の先生方はちょっと敷居が高く感じられるので、銀行に相談してもいいのでしょうか。

西本:信託には商事信託という分野があります。信託会社や信託銀行が財産の所有者から財産を託され、報酬を受け取るという仕組みです。それ以外の信託を民事信託というのですが、民事信託は信託銀行とは関係なく、個人と個人が信託契約を結べば成立します。ですので、信託銀行に相談すると、おそらく何かしらの信託銀行の商品を勧められるでしょう。実際に家族信託をしようとするならば、信託を扱っている弁護士や司法書士、税理士、行政書士に相談していただくということになります。

角前:ありがとうございました。細谷先生はいかがでしょうか。

細谷:今日お話を伺って、どうしても生前贈与でいいのでは、と思ってしまいます。相続では兄弟間でよく揉め事に発展するとお聞きするので、家族信託だとさらに揉め事が多くなりそうな気がしてしまいます。

中川:確かに相続の際には、思いもよらない原因で揉めるということがよくあります。信託を利用する場合は、きっちりと設計をすること、また、利用する場面を限定することで、生前対策としては大変有効に働くのではないかと思います。ただ、今までもお話がありましたが、新しいこと、今までやったことがないことをするのはとても勇気のいることです。先ほどもお話がありましたが、信託と遺留分に関して判例がないということでもわかるように、実例・前例が少ないので、そこで躊躇されている方が多いのかなとも思いますが、今後は有効な対策として普及していくのではと思います。

角前:ありがとうございました。森田先生はいかがでしょうか。

森田:家族信託について、関西ではまだまだ普及していないとは言うものの、関心を持たれているのかなという印象はあります。行政書士会でも、相談が増えてきているという話は聞きます。家族信託の相談というよりは、他のことで相談があって、その際にあわせて家族信託についても質問がある、といったケースが多いようです。ただ、一度説明しただけでは、なかなか理解していただくのが難しいですので、何回か説明しないといけませんね。信託での最大の利点は、お父さんが元気なうちに自分の希望を伝えられることだと思います。相続はそれができませんから。そういった面では、一般の方もとっつきやすいとは思います。現状としては、資産家の方や何か事情のある方は、家族信託について考え始めておらえるように思いますが、一般の家庭ではまだまだ浸透していないように思います。また、認知症が本当に身近になり、他人事ではないという意識が芽生えているように感じます。前例や実例がまだまだ少ないということなので、今後様々なことがはっきりとしてきたら、もっと普及していくのかなと思います。

角前:ありがとうございました。

田中:私たち不動産業者が家族信託をお客様に提案する場面というのは、お客様が元気なうちで、認知症にもなっていないというケースだと思います。通常の信託契約だと、契約した時点から受託者に任せることになりますが、家族信託の場合、お父さんが元気なうちに契約しても、元気なうちはなかなか子どもにすべて任せるということにはならないと思うんです。たとえば、元気なうちに家族信託の契約をするけれども、実際に財産の管理を任せるのは、医師から認知症の診断がおりてから、というような取り決めもできるのでしょうか。

西本:そういった取り決めも可能ではあります。ただ、認知症の診断というのも、医師や病院によって違っていたりするので、他の親族から「いや、もっと前から認知症だった」とか、「いやいや、まだ元気だから大丈夫」などと言われて、揉め事に繋がりかねませんので、あまりおすすめはできません。それよりも、“後見人の審判が確定したとき”などのように、明確な条件をつけられるケースが多いですね。最近は70代の方はまだまだお元気で、アパートの管理もご自分でしっかりされているので、信託を利用されることは少ないです。ただ、80代になって、所有している不動産の管理や預貯金も家族に任せるようになっていて、事実上の信託状態になっているというご家庭は多いです。そんなご家庭で、不動産を売却したいという意向を持っておられて、その不動産を売却するのに1〜2年かかりそうということなら、家族信託をおすすめいただくのがいいと思います。2、3ヶ月で売却できそうな物件なら大丈夫でしょうが、売却するのに長期間かかりそうな場合は、不動産業者さんから家族信託をご紹介していただくと、「じゃあやっておこうか」ということになるかもしれません。

田中:ありがとうございました。

月城:基本的なことなのですが、委託者が死亡した場合、家族信託は終了するのでしょうか。

西本:それは自由に設計することができます。家族信託を認知症への対策という目的で言えば、死亡ということは認知症によるリスクは一世代分解消したということになります。ただ、お父さんが亡くなったので対策をやめたとすると、次にお母さんへの対策は?ということになりますね。ですので、お父さんが亡くなって、その後お母さんが亡くなるまで信託を設計しておくということもできます。また、たとえば20年経ったら信託契約を終了するという設計をする等、様々なかたちで終了させることができます。

月城:信託契約が終了していない状態でお父さんが亡くなった場合、相続税はどうなるのでしょうか。

西本:資料,8ページの例で言いますと、受益者であるお父さんが亡くなった後、お母さんが新たに受益者になるという場合は、相続税が課税されます。

月城:評価は通常の物件等と同じやり方ですか?

西本:通常の物件と同じように評価をします。小規模宅地や配偶者控除のような特例も変わりません。

月城:資料△里茲Δ兵益者連続型で、受益者が変わっていく場合は、受益権の譲渡のような形になって課税されないのでしょうか。

西本:亡くなるたびに受益者が変わっていく契約でしたら、その度に相続税がかかります。

月城:それは受益権の評価ということになるのでしょうか。

西本:受益権だからといって評価が変わるわけではなく、信託財産そのものを評価します。

月城:わかりました。ありがとうございました。

藤田:そもそも、受託者になれる親族の範囲というのは決まっているのでしょうか。

西本:“家族信託”というのはあくまで俗称であり、“民事信託”というのが正式名称です。ですので、親族ではない友人や近所の人でも受託者になれます。信頼できるかどうかが重要なポイントになります。また、私たちのような士業をしている者や、不動産業者の方が受託者になろうとする場合は、信託の免許が必要になります。

藤田:そうなると、友人を装って、ビジネスとしての受託者になるということも可能なのではないですか?

西本:ビジネスということになると、反復・継続が必要になってきますし、報酬も得ることなりますので、それは駄目です。ただ、赤の他人であっても、この人を信用して老後の財産を任せたい、ということであれば、託すことはできますね。

藤田:ご家族の同意を得て、家族信託は契約するということでしたね。

西本:そうです。ただ、ご家族の同意は法律上必須というわけではなく、専門家が実務上行っている手順になります。

荒木:ご家族の同意は義務ではないんですか。

西本:義務ではありません。ご家族の円満のために行っていることです。家族信託の最大のメリットは、お父さん、またはお母さんが元気なうちに遺産分割について話し合いができることだと思っています。遺産相続で揉めるのは、遺言も何もなく、残された家族はお父さんの希望が全くわからないからという面があると思います。お父さんが元気なうちに、お父さんの希望を聞きながら家族信託についてご家族で話し合っていただくことで、皆さんが納得した形で遺産相続できると思います。そういった流れで、私たちもご家族の方々に説明させていただいています。

荒木:ご家族の同意を得ずに、家族信託を契約してしまうということも可能ではあるのですか?

西本:それも可能です。

荒木:それはちょっと怖いですね。

西本:そうですね。たとえば「絶対に次男にだけは財産を渡したくない」という場合、次男の同意はまず取れませんので、お話もできないということはありますね。

荒木:なるほど。ありがとうございました。

宮崎:孫への資産継承という例が書かれていましたが、将来、受託者がそれを拒否することもできるのでしょうか。また、拒否した場合はどうなるのでしょうか。

西本:拒否する権利はあります。その場合どうするか、という点は、信託を設計する時点で考えておきます。

宮崎:わかりました。ありがとうございました。

米原:長時間にわたり、ありがとうございました。以上をもちまして、座談会を閉会させていただきます。それでは、閉会のご挨拶を龍副部長にお願いいたします。

:本日は大変長い間、お疲れ様でございました。活発な討論や興味深いお話をしていただき、感謝申し上げます。大変有意義な座談会になったと思っております。本日は誠にありがとうございました。

米原:本日はありがとうございました。

座談会を終えて - 参加者の方々の感想やご意見 -

▼アドバイザー(50音順)

  • 梅村 武志
    司法書士(司法書士法人梅村事務所)

    座談会を終えて
    座談会に参加をさせていただき、専門家の方々の意見を聞けて、大変勉強になりました。また、今後も民法改正後の実務での取り扱いの変更や、民事信託において担える役割等について積極的に情報を得て、自分なりに考え、自ら情報を発信して役に立てる存在でありたいと感じました。

  • 大庭 清子
    司法書士(立花駅前法務事務所)

    民事信託について
    雪のちらつく寒い日でしたが、寒さをふっとばすような白熱した座談会でした。
    民事信託が取り沙汰されることが多くなってきている昨今、皆様と民事信託についてお話しする機会がもてたことに感謝いたしております。
    民事信託や家族信託という名前は聞いたことはあるけれども、内容については知らない方が多いという印象を受けましたが、皆様とても興味を持たれていらっしゃるんだと思いました。

  • 川崎 竜輔
    不動産鑑定士(株式会社アプレスト)

    座談会を終えて
    本年も座談会に出席させていただきありがとうございます。
    私は不動産鑑定士でありながら全日メンバーとして仲介業務を行っております。
    不動産鑑定士は弁護士、税理士の先生方と比べ不動産業に近い立場なのですが、宅建業者のほうが不動産マーケットに詳しく、残念ながらメンバーの皆さんからのご質問も減ってきております。
    今回のテーマは「民事信託」についてでしたが、直前の不動産取引で関係者が急にお亡くなりになるということがあり、非常に興味をもって参加させていただきました。
    また、他の士業の方々がエンドユーザーのために新しいことを考えご提供されていることに特に感銘を受け、不動産鑑定士・宅地建物取引士ももっと皆さんのお役に立てるよう努力しなければと痛感した次第です。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  • 金 奉植
    弁護士(大阪ふたば法律事務所)

    参考になりました
    2年ぶりに座談会に参加させて頂きました。
    民法改正・家族信託について一応の勉強の上、座談会に臨みましたが、他の先生方のお話、業者の皆さんの問題意識をお聞きすることができ、大変参考になりました。
    良い勉強の機会をご提供頂いたことに感謝申し上げます。

  • 小礒 ゆかり
    税理士(税理士法人 KT リライアンス)

    有意義な座談会でした
    今年の座談会は、とても勉強になりました。特に、民事信託は、ここ数年流行っていますが、効率的な使い方や、実務上の問題点など、再確認できました。高齢化社会が進展していく昨今、不動産業者の皆様におかれても、課題解決策の一つとして有効であると感じました。

  • 髙橋 芳明
    不動産鑑定士(有限会社髙橋アプレイザル)

    貴重な勉強の機会になりました
    民法改正論点セミナーでは、不勉強部分なところもあり、知識の補充が出来ました。
    また、家族信託のセミナーでは、知らないことばかりで非常に勉強させて頂きました。
    貴重な勉強の機会を頂きありがとうございました

  • 竹田 恵里
    税理士(たけだ会計事務所)

    座談会に参加して
    民法改正や民事信託についてのレクチャーを受け大変勉強になりました。
    高齢化が進み、相続だけでなく、認知症に備えることが必要な時代になったことを改めて認識しました。税理士としても、不動産賃貸業者の相続対策のひとつとして参考にしたいと思います。

  • 中川 裕紀子
    弁護士(ウィンクルム法律事務所)

    座談会を終えて
    毎年気になるテーマを取り上げていただく座談会に今年も参加させていただきありがとうございました。
    今年のテーマは民法改正と家族信託ということで、活発な議論も含めてとても勉強になりました。
    また来年の座談会も楽しみにしております。

  • 中島 宏樹
    弁護士(京阪藤和法律事務所)

    石の上にも三年
    座談会に参加させていただくのも、今回で3回目になります。
    民法改正、民事信託といったホットなテーマについて、実務に根差した議論を行うことができ、大いに刺激を受けました。議論の結果をふまえ、一つでも二つでも、今後の業務に生かして行きたいと考えています。

  • 西本 晋也
    司法書士(つなぐ司法書士法人)

    有意義な座談会となりました
    今回のテーマである民法改正と家族信託について、両テーマともに質の高い質疑応答がされ、今後のZ-supportの運営につきまして有意義なものとなりました。
    Z-supportアドバイザーとして、会員各位の知識向上に努めたく存じます。

  • 原 恵一
    一級建築士(プラスワン建築設計事務所)

    新しい知識を学べた座談会
    例年のように、他業種の専門家の方々のお話を聞かせていただき、有意義な時間を過ごさせていただきました。
    今年のテーマは民法改正と家族信託で、ほぼ建築士としては出番がありませんでしたが、逆に講習を受ける気分で新しい知識を学ぶことができ、業務でも活用できる話題が増えました。皆様ありがとうございました

  • 福井 紀之
    税理士(福井税務会計事務所)

    勉強になりました!
    今回は、「民法改正」と「民事信託」ということで、税理士分野のテーマとは直接関係なく気楽な気持ちで参加させていただきました。
    しかし、税理士として、両テーマとも知識は必要です。もちろん、不動産業にとっても必要な知識なのだと思います。
    難しいテーマにも関わらず、わかりやすく説明いただき、非常に有益なものとなりました。
    座談会というより研修を受けた気分です。ありがとうございました。

  • 細谷 明子
    社会保険労務士(社会保険労務士法人 人的資源研究所)

    最新の情報に触れる貴重な機会であると実感
    Z-supportの士業の先生方が一堂に会する貴重な場、それが座談会ですが、本当に「貴重」だなと実感できる時間でした。ビジネスにおいて最新の情報、トレンドをつかむことは非常に大切です。しかし法律に関することは、とかく分かりにくい・・・。そこがネックなのですが、分かりやすく解説していただけるのでいつも非常に参考になります。今年も参加させていただき、ありがとうございました。

  • 松藤 隆則
    弁護士(京阪藤和法律事務所)

    今後もホットな議論に期待しています
    今回は特に注目の2分野についてお話しさせていただき、とても勉強になりました。
    家族信託については、具体的なヒントをいただき、早速、何件かの案件が動き出しています。
    今後とも専門的でホットな議論に期待しています!

  • 松本 康正
    弁護士(大阪セントラル法律事務所)

    勉強と刺激の場になって嬉しく思っています
    恒例の座談会に参加させていただき、ありがとうございました。
    今回は、2度目の民法改正のテーマで解説も拝命賜りましたが、少しでも皆様方の知識向上などの一助になりましたら幸いです。
    逆に、家族信託、民事信託につきましては、小職も勉強不足の面もありましたので、勉強の場にもなったことを嬉しく思います。
    不動産業者様と士業の益々の協力と発展を願っています。

  • 森田 文子
    行政書士(スカイケア行政総合事務所)

    不動産業界における今後の信託制度について
    この度、座談会に参加させて頂き、家族信託の役割として所有者は親でありながらその管理や処分は受託者である子どもが自分の名義で行なえる為、今後大きな一つの役割を果たす制度であると思います。一方で、信託は当事者間で自由に取り決めができる為リスクもあります。元気なうちに対策を練らなければならないという現状は同じであると思います。

▼近畿流通センター

  • 堀田 健二
    全日本不動産近畿流通センター 運営委員長

    座談会へのご参加ありがとうございました
    年初のご多忙にも係わらず、座談会にご参加頂き、誠にありがとうございました。近畿流通センター運営委員長として心より感謝申し上げます。
    また、日頃からお世話になっている、アドバイザーの先生方との討議は非常に有意義であり、大変勉強になりました。
    頂いた知識を元に、今後の当センターの運営においても、会員の為に最大限の努力をして参りたいと考えております。

  • 伊藤 靖
    全日本不動産近畿流通センター 副運営委員長

    託して安心 家族信託
    高齢化社会に伴い、認知症患者が増大しています。このことは相続や事業継承面でも障害となっています。
    委託者・受託者双方にとって安心度の高い家族信託は、柔軟性の高い財産管理が行え、不動産取引をスムーズに行う画期的な制度です。
    建築物の維持管理においても修繕や建て替えがスピーディに行え、年々深刻となる空き家対策にも寄与できるのではないかと期待しています。

  • 南村 忠敬
    全日本不動産近畿流通センター 副運営委員長

    宅建業者の新分野になるか!?
    今回のテーマの一つである「民事信託(家族信託)」に関する詳細な説明と、疑問に対する明快な回答を交えた座談会は大変有意義なものでした。単に家族信託を勧めるに留まらず、信託スキームの設計から各専門家の先生方とのコラボによって、我々の新しい分野の業務として勉強する価値があると感じています。

  • 坂本 俊一
    全日本不動産近畿流通センター 副運営委員長

    座談会の意義並びに今後について
    大変お忙しい中、士業の先生方にお集まり下さいまして有難うございました。
    民法改正が始まった中、あらゆる法律が施行され不動産業にとりましても喫緊の課題と思います。
    センター役員並びに会員に改正された法律を今後とも講習並びに和気藹々と意見交換を続けて参りたいと思いますので、末永く宜しくお願いしたします。

  • 角前 秀史
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部長

    より良い会員サービスの提供に向けて
    この度は、ご多忙にも係わらず、座談会にご参加頂き、誠にありがとうございました。
    この座談会も、今年で6回目を迎えるまでになりました。今回の座談会では、民法改正と、民事信託について各分野からの目線で活発な意見交換が行われ、非常に有意義で刺激的時間を過ごす事ができました。
    今後も、先生方と様々な視点で連携し、より良いサービスを会員へ提供して参りたいと考えております。

  • 龍 優
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部副部長

    年に一度の刺激をいただく日
    今年で6回目を迎えるZ-supportの先生方とシステムソリューション部会の部員との座談会。
    毎年のように、先生方の熱心な議論に感心し、また新部員の一生懸命さにマンネリと成りつつある自分自身を奮い立たせ、またもっと学び勉強しなければ、と思う一日でした。

  • 米原 大輔
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部副部長

    毎年恒例の座談会を終えて
    不動産業界は経済・金融情勢だけでなく国の政策や指針に左右される業界であり、民事信託・民法の大改正を勉強し、法律の意図することを理解することは、今後の業務の方向性を考えるうえでも重要であり、意義深い座談会であったと思います。

  • 田中 勇人
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部

    ツボに入った座談会
    どの業務にも影響がある民法改正と、消費者様に選択肢の一つとして提案活用ができる事を気づかせていただいた、民事信託。注意を受けるほど沢山の質問をさせていただき、僕にとってたいへん有意義な座談会になりました事を感謝いたします。

  • 荒木 慎太郎
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部

    家族信託
    弁護士、税理士、社会保険労務士、不動産鑑定士、宅地建物取引士が家族信託について具体的に色々な角度から彫り込んだ話ができ、家族信託について具体的にイメージができてきて良かった。家族信託は良いシステムだが、悪い奴に悪用されそうな気がするので注意は必要だと思いました。

  • 藤田 勝志
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部

    貴重な機会を頂戴し有難うございました
    今回、初めて座談会に参加させていただきました。
    我々、宅建業者の実務、ならびにそれを取り巻く環境に対し少なからぬ影響を及ぼす法改正やその運用に関し、直接ご教示いただき、さらに、様々な専門分野の方々から、そのお立場ごとの解釈や認識について「生の声」をお聞かせいただいたこと、貴重な体験となりました。
    この座談会の意義がより多くの方々に、できる限り正確にお届けできることを願います。

  • 月城 浩
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部

    座談会大変勉強になりました
    今回、初めて座談会に出席させて頂きましたが大変勉強になりました。
    民法改正では、特に賃貸の場合の個人の根保証の扱いについて、改正後留意していきたいと思います。
    家族信託は是非一度案件として関わってみたいと思いました。
    先生方、お忙しいところご教授いただきまして、ありがとうございました。

  • 宮崎 彰太
    全日本不動産近畿流通センター システムソリューション事業部

    座談会を終えて
    今年の座談会のテーマは民法改正と民事信託でした。
    両テーマともに我々の業界には大事なテーマで非常に勉強になりました。
    知っていれば日々の業務に役立つ内容でありますので、会員の皆様にも広めていければと思いました。