【2018年8月号特集】民泊新法

住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)案は2016年から観光庁で検討会などを立ち上げ2017年3月10日に閣議決定され、2017年6月2日に衆議院を通過、2017年6月9日の参議院本会議にて可決・成立しました。住宅宿泊事業者の登録申請受付開始日は2018年3月15日、民泊新法が2018年6月15日施行され、今までは限られた地域でのみ活用される旅館業法の特例(特区民泊)等以外ではグレーゾーンに置かれていた民泊事業がついに法律の後ろ盾を得て公的に認められる事になりました。

施行に伴いそれまで、インターネット等で募集されていた物件数が一時的に大きく減少しましたので、申請が間に合わなかった件数も含まれますが、民泊がいかに非合法な形で急増し、運営されていたかを裏付けされたことだと思います。それでは、なぜこのような状態で民泊事業が広がってしまっていたのでしょうか。

やはり一番の理由は訪日外国人の急増に伴う宿泊施設の不足ではないでしょうか。03年度には524万人だった訪日外国人が同年からスタートした政府主導の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の効果もあり16年には2403万人、17年には2869万人と5年連続で過去最高を更新しました。18年の上半期でも1600万人を超え今年も訪日外国人数記録を更新される勢いです。さらに政府は「東京オリンピック・パラリンピック」開催が予定されている20年には4000万人、30年には6000万人を目指すことから、既存宿泊施設不足問題に対処する上でも宿泊施設の増設が急務となっている状況であるのと、欧米などはバケーションレンタルやコンドミニアムなどという形で、すでに普及している事から、日本でのライフスタイルを経験したい、各地方・地域の特色を体験したい、シンプルにリーズナブルな宿泊先を確保したい、といった旅行者のニーズの高まりから一般の民家も供給されていきました。

その中で運用されている民泊の中で旅館業法の簡易宿所として許可を受けた一部と特区民泊で認定された物件が全体の約2割とみられ、本来は旅館業法があり、一般の建物・設備で安易に有料の宿泊をさせることができません。それでも需要が有る為、非合法な形で民泊の数は急増してきているのが実態でした。さらに非合法民泊が急増するに従い、安全面・衛生面の確保がなされていないことや、騒音やごみ問題などによる近隣トラブルで民泊は大きな社会問題となってきました。この為、民泊に対しての地域の心象はとても悪いのではないでしょうか。

しかし、訪日外国人が急増するなかで民泊を新しい宿泊形態として認めていく必要に迫られ、近隣トラブルや観光旅客の宿泊ニーズに対応するため、一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図るものとして、新たに制定された法律が民泊新法です。

民泊新法では、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」そして宿泊客を募集する「住宅宿泊仲介業者」という3つに大きく分担をし、それぞれに対して役割や義務等が決められています。

その中で不動産所有者や、運営する立場の人を住宅宿泊事業者とし、業務を運営するにあたっては、下記等の取決めがあります。

・部屋単位、または建物単位で宿泊者に貸し出すことができる。
・都道府県知事などへの届出を行わなければならず、届出物件には、公衆の見えやすい場所に国が定めた様式の標識を表示。
・非常用照明器具の設置、避難経路の表示、火災・災害時の宿泊者の安全確保。
・1年間の営業日数の上限は180日以内。
・宿泊日数の定期的な報告。
・宿泊者名簿の備え付け。
・各部屋の床面積に応じた宿泊者数の制限、清掃など衛生管理。
・外国人観光客向けの施設案内、交通案内。
・周辺地域の生活環境悪化防止のため、外国人観光客に対する説明。
・周辺地域の住民からの苦情、問い合わせに対する適切かつ迅速な対処対応。

他にも「地方自治体は各地の状況に基づいてその他の制限も設定することができる」とあり、現在3割以上の行政区が、宿泊者の安全確保や周辺住民への配慮・地域により別に民泊可能な営業エリアや営業時間について独自規制を設けている様です。
例えば、東京都新宿区は金曜日の正午から月曜日正午までしか民泊事業は行えないとし、京都市は管理者が800メートル以内に常駐し、さらに住居専用地域での営業は1月15日から3月15日までの60日間に限定、岡山県倉敷市の美観地区や兵庫県芦屋市では、年間を通じて民泊の経営を禁止しました。

違法な民泊経営を行った不動産所有者または民泊事業者に違法行為が発覚すれば営業停止処分と、これまで3万円以下としていた罰金が100万円以下に大幅に増額されるようにもなりました。

ただ、その反面、基準を満たしていれば、届け出で認可されるという簡易なもので、最低床面積は3.3平方メートル/人、住居専用地域での営業も可能。非常用照明や消防用施設等も住宅宿泊事業者が自身の生活の拠点として使用している住宅で、宿泊室の面積が小さい場合は不要となっています。

不動産シェアリング事業は合法化された事によって、基準が明確になり、一部の民泊ではホテルや旅館に引けを取らないほどレベルアップし、ある民泊ではコミュニケーションを重視するなど、既存の宿泊施設とは一味違う新たな発展を築きつつあります。ホテル等の既存宿泊施設不足の受け皿としての位置づけで、単に訪日外国人や観光客の受け入れだけでなく、人口減少や少子高齢化の中で空き家等の再活用、地域活性化などにも大きな期待が寄せられているのでしょう。

民泊に興味をもっていただき、住宅宿泊事業者に応じた活用を地域とともに、適正に運用していただければ幸いです。