【2018年9月号特集】平成30年度税制改正について

公益社団法人全日本不動産協会 全日本不動産近畿流通センター
Z-support専任アドバイザー
福井税務会計事務所
税理士 福井 紀之

はじめに

平成30年度の税制改正は、平成29年12月14日、与党税制改正大綱が決定・発表の後、平成30年度税制改正関連法案は国会での可決、官報による公布を経て、原則本年の4月1日に施行されています。
最大の目玉は、事業承継税制の特例制度の創設です。雇用の約70%を担う中小企業の事業承継問題を、税制面から支援する新制度が創設されました。
また、デフレ脱却と経済再生を最重要課題とする安部内閣の下、法人課税においては、「賃上げ」「設備投資」「生産性向上」を後押しする内容となり、個人課税においては、働き方の多様化を踏まえた、給与所得控除・公的年金等控除の制度見直し、給与収入金額850万円で給与所得控除を頭打ちとし、基礎控除額を逓減・消失させる制度もできるなど、高所得層には厳しい改正となりました。
不動産関連の改正は、ほとんどが既存制度の延長となっておりますが、確認の意味から本稿では、主な不動産関連の改正事項を紹介させていただきます。

新築住宅に係る固定資産税の減額措置(延長)
住宅を新築した場合、税額を3年間(マンションの場合は5年間)2分の1に減額
住宅を新築した場合に係る固定資産税を3年間(マンションの場合は5年間)2分の1に減額する特例措置の適用期限を2年間延長(平成32年3月31日まで)
【適用要件】
  居住用部分の床面積が①家屋全体の2分の1以上であること、②一戸当たり50m²以上280m²以下であること。
  ※登記簿上の床面積
認定長期優良住宅に係る特例措置(延長)
適用期限を2年間延長(平成32年3月31日まで)
【減額内容】
 ・登録免許税:所有権保存登記 一般住宅特例 0.15% → 0.1%
        所有権移転登記 一般住宅特例 0.3% → 戸建:0.2%
                            マンション:0.1%
 ・不動産取得税:課税標準からの控除額を増額
    一般住宅特例:1,200万円 → 1,300万円
 ・固定資産税:一般住宅特例(2分の1減額)の減額期間を拡充
    戸建 3年 → 5年、マンション 5年 → 7年
認定炭素住宅に係る特例措置(延長)
適用期限を2年間延長(平成32年3月31日まで)
【減額内容】
 ・登録免許税:所有権保存登記 一般住宅 0.15% → 0.1%
        所有権移転登記 一般住宅 0.3% → 戸建:0.1%
買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置(延長・拡充)
・延長
買取再販事業者により一定のリフォームが行われた既存住宅を取得する場合、家屋の所有権移転登記の税率を軽減する措置を2年間(平成32年3月31日まで)延長
【減額内容】
  登録免許税:一般住宅特例 0.3% → 0.1%

・拡充
買取再販事業者が既存住宅を取得し一定のリフォームを行う場合、敷地に係る不動産取得税を減額(平成31年3月31日まで)
【適用要件】
  対象住宅が既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入する場合、または、「安心R住宅」である場合
【減額内容】
  ①45,000円
  ②土地1m²当たり評価額×1/2×住宅の床面積の2倍(上限200m²)×3%
  のいずれか多い方を減額
リフォーム促進税制(延長)
適用期限を2年間延長(平成32年3月31日まで)
耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修または長期優良住宅化リフォームを行った場合、翌年度の固定資産税額を
一定割合減額
【減額内容】
  耐震改修:工事の翌年度2分の1軽減
  省エネ改修:工事の翌年度3分の1軽減
  バリアフリー改修:工事の翌年度3分の1軽減
  長期優良住宅化改修:耐震改修または省エネ改修を行った住宅が認定長期優良住宅に該当することとなった場合、工事の翌年度3分の2軽減
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等(延長)
居住用財産の買換え等に係る特例措置の適用期限を2年間(平成31年12月31日まで)延長
【譲渡損が生じた場合】
 ・居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
  →住宅の買換えで譲渡損失が生じた場合で、買換資産に係る住宅ローン残高がある場合は、譲渡損失額を所得金額の計算上控除(以降3年間繰越控除)できる制度  ・居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
  →住宅を譲渡した際に譲渡損失が生じた場合で、譲渡資産に係る住宅ローン残高が残る場合は、住宅ローン残高から譲渡額を控除した額を限度に、所得金額の計算上控除(以降3年間繰越控除)できる制度
【譲渡益が生じた場合】
 ・居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
  →住宅の買換えで、譲渡による収入金額が買換資産の取得額以下の場合は、譲渡がなかったものとして、譲渡による収入金額が買換資産の取得額以上の場合は、その差額分について譲渡があったものとして課税する制度
耐震基準を満たさない住宅を取得後、耐震改修を行った場合の特例措置(拡充)
これまでは、新耐震基準に適合しない既存住宅を取得し、耐震改修工事を行った後に入居する場合で、新耐震基準への適合が確実であることにつき証明がなされた場合には、その建物につき不動産取得税の軽減措置が適用されていました。
今回の改正により、その建物および敷地についても不動産取得税の軽減措置の適用が可能。
【減額内容】
  ①45,000円
  ②土地1m²当たり評価額×1/2×住宅の床面積の2倍(上限200m²)×3%
  のいずれか多い方を減額
生産緑地法改正に伴う措置(新設・拡充・縮小)
農業従事者の減少・高齢化や、生産緑地の「2022年問題」に対応するため、農地関連の法整備に伴い、税制においても、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度及び固定資産税・都市計画税についての見直しが行われました。
また、生産緑地法の改正とあわせ、都市計画法が改正され、住宅と農地が共存する新たな用途地域として、「田園住居地域」が創設されました。
【改正内容】
  ①一定の貸付けがされた生産緑地に係る納税猶予の適用拡大(相続税の納税猶予)
農地等に係る相続税の納税猶予制度の対象になる農地の貸付けは、特定貸付け、営農困難時貸付けに限られていましたが、一定の法律により貸付けがされた生産緑地についても納税猶予の対象とする措置が講じられました。
一方、三大都市圏の特定市以外の生産緑地については、「20年」の営農継続により猶予中の相続税額が免除されていましたが、営農継続要件が「終身」となりました。
  ②生産緑地法、都市計画法の改正への対応(相続税・贈与税の納税猶予)
農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の対象となる特例農地等の範囲に一定の生産緑地(特定生産緑地)等が追加されました。
なお、特定生産緑地の指定又は指定期限の延長がされなかった生産緑地(買取申出が可能になったもの)については、納税猶予の適用範囲外となりますが、現に適用を受けている納税猶予に限り、農業経営の継続を要件に、その猶予は継続されます。
  ③特定生産緑地の指定がされた農地に係る農地課税の適用(固定資産税等)

【適用時期】
  上記①は、都市農地の賃借の円滑化に関する法律の施行日以後に相続等により取得する農地等について適用され、同日前に相続税の納税猶予の適用を受けている者については、選択により上記①の適用ができます。   上記②は、平成30年4月1日以後に相続等により取得する農地等について適用されます。
土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置(新設)
①相続により所有権を取得した土地の名義変更をせず死亡した被相続人がいる場合において、被相続人をその土地の登記名義人とする登記を行う際の登録免許税が免税となります。 【適用時期】
  平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に行う相続による所有権移転登記

②土地の所有権移転の登記促進を特に図る必要があるものとして指定され、かつ、移転登記時の登録免許税の課税標準が10万円以下のものについて、相続による移転登記をする場合の登録免許税が免税となります。 【適用時期】
  所有権不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行日から平成33年3月31日までの間に行う相続による所有権移転登記
その他(延長)
不動産の譲渡等に係る印紙税の軽減措置が2年間(平成32年3月31日まで)延長されました。