『相続法改正』

平成30年12月7日
文責 弁護士 中島宏樹

はじめに
平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立し、同年7月13日に公布されました。
これにより、昭和55年以来、約40年ぶりに、民法のうち相続法の分野が改正されたことになります。
社会の高齢化が更に進展しているという社会経済情勢の変化に対応するのが、その目的とされています。
今回は、その概要及び施行日について、整理しておきたいと思います。
6つの柱
相続法の改正のポイントは大きく分けて6つあります。
  1. (1)配偶者の居住権を保護するための方策
    1. ア 配偶者短期居住権の新設
      遺産分割前の配偶者の居住用不動産の利用権については、被相続人と相続人との間で無償使用の合意を推認するといった最高裁判例が出されていましたが、被相続人が反対の意思を表示していたなど、配偶者の使用が認められない場合もありえました。
      今後は、配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、配偶者は無償でその居住建物を使用できるようになります。
    2. イ 配偶者居住権の新設
      配偶者は、原則として、遺産分割により居住用建物の所有権を取得しない限り、居住用建物にそのまま居住し続けることはできませんでした。
      今後は、配偶者は、たとえ居住建物の所有権を取得しなくても、遺産分割協議により配偶者居住権を取得することによって、当該居住建物に終身または一定期間、居住し続けることができるようになります。
  2. (2)遺産分割等に関する見直し
    1. ア 持戻し免除の意思表示推定規定
      夫婦間であっても居住用不動産の遺贈又は贈与は、特別受益として、持戻しの対象となりました。
      今後は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされた時は、持戻しの免除の意思表示があったものと推定されるようになります。
    2. イ 遺産分割前の払い戻し制度の創設等
      預貯金債権が遺産分割の対象となるとの平成29年12月19日付の判例変更により、預貯金債権については、遺産分割協議を経ない限り払い戻しを受けられませんでした。
      今後は、相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの遺産分割前の資金需要に対応できるように、遺産分割前にも払い戻しが受けられるようになります。
  3. (3)遺言制度に関する見直し
    1. ア 自筆証書遺言の方式緩和等
      自筆証書遺言を作成するためには、全てを自筆しなければいけませんでした。
      今後は、自筆でない財産目録を添付して、自筆証書遺言を作成できるようになります。
    2. イ 公的機関(法務局)における自筆証書遺言の補完制度の創設
      自筆証書遺言は、各自保管とされてきました。
      今後は、紛失のおそれ等を防止するために、自筆証書遺言についても、法務局において保管してもらうことができるようになります。
  4. (4)遺留分制度に関する見直し

    遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生じるとされていました。
    今後は、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じるとしつつ、受遺者等の請求により、金銭債務の全部または一部の支払いにつき裁判所が期限を許与することができるようになります。

  5. (5)相続の効力等に関する見直し

    相続させる旨の遺言等により承継された遺産については、全体について登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされていました。
    今後は、法定相続分を超える権利の承継については、相続させる旨の遺言等により承継された遺産についても登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができなくなります。

  6. (6)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

    相続人以外の被相続人の親族が、被相続人の療養監護等を行っても、相続人でない以上、相続人に対して金銭請求はできませんでした。
    今後は、一定の要件のもとで、被相続人の療養監護等を行った相続人以外の被相続人の親族も、相続人に対して金銭請求をすることができるようになります。

施行日
今回の改正は、原則として、平成31年7月1日付で施行されることとなります。
ただし、自筆証書遺言の方式緩和については平成31年1月13日から、配偶者の居住権を保護するための方策については平成32年4月1日から、公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度については、平成32年7月10日から施行されます。
条項によって施行日が異なりますので、注意が必要です。
終わりに
今回の改正はいずれも重要となりますが、不動産関係では、特に、2(1)配偶者の居住権を保護するための方策、2(5)相続の効力等に関する見直しなどは、実務に与える影響が大きいと思われます。
本稿を、相続法改正の概要を把握する機会としていただければ幸いです。

以上