【2019年12月号特集】マンションを地域に活かすための方策を

株式会社不動産経済研究所 取締役編集事業本部長 田村修

 住宅事業はかつて、9割以上が建売住宅や注文建築を中心とした戸建て住宅事業のことだった。分譲マンションは大都市の中心部で供給されるマイナーな住宅であり、ビジネスとしての注目度は低かった。しかし現在は全国に約655万戸の分譲マンションストックがあり、大都市圏だけではなく地方都市でもマンション開発が盛んに行われるようになった。再開発事業における住宅の主役は完全にマンションである。
 一方でマンションは区分所有権という権利形態のため、建物が老朽化したり、設備機器に不具合が起きたりした場合の対策が区分所有者による合意形成なしでは進められないという足かせを抱えている。居住者が現役で働いている間であれば、ある程度の合意形成を図ることは可能だ。しかし、仕事をリタイアして年金収入だけになった高齢者が増え、さらには身体に障害を抱えたり認知症になるなど介護を必要とする人たちが多くなると居住者間の合意形成は難しくなる。空き家が増加すると管理費や修繕積立金が不足して建物自体の維持管理ができなくなる。
 合意形成を要するという仕組みを除けば、マンションには利点がたくさんある。戸建てに比べると建物が頑丈であり、災害に強い。最近のマンションは災害時に備えて非常用発電機や防災グッズ、非常用の飲料水や食品などを備蓄するようになった。セキュリティ対策も戸建てより万全だ。規模が大きいマンションは居住者がシェアできる共用施設も充実している。管理人が常駐していれば安心感もある。地域の中で一時的な防災拠点にもなれる要素をマンションは持っている。
 ただ、このまま高齢化が進めばマンションの適切な維持管理が覚束なくなり、マンションの存在自体が社会問題となってしまう。区分所有権は私的財産であり、私権が優先される日本の社会では公的な介入は難しい。今後は敷地や共用施設の一部を地域のために開放するなど、マンションを公益に資する仕組みを考える必要がある。マンションを地域と共生させることで、適切な維持管理のための公的な支援を導入していくことが望ましい。